ラモーヌさんとアルダンさんの姉妹の間に挟まれたメジロに転生してしまったお話 作:雅媛
1 新年
年末年始は寝正月をきめ込むことになりました。
さすがに年末まで忙しすぎたので主治医さんから休むように言われたのです。
幸い学園も新年関係のイベントはありません。個々人でいろいろやっている話は聞きますが、公式イベントではないので生徒会が関与しなくてもいいわけです。
だから仕事もなく、メジロの新年会は主治医さんから休むように言われたのを大義名分にぶっちぎる予定でした。お姉さまの対応はお姉さまが適当にしてくれるでしょう。疲れたら雑にあしらって帰ってくるでしょうし。
ということで年末年始は寝正月、そういう予定だったのですが……
「ねえさまー」
「はい、よしよし」
ベッドに寝転がってグダグダしていたらまず来たのは妹のアルダンでした。
最近姉さまの世話ばかりであまりかまってあげられていませんから、今はかなり甘えん坊モードです。お風呂までずっとついてきますしトイレにも入ってこようとしてきます。やめてほしいです。代わりに全身洗ってあげますから……
体はムチムチの暴力的なボディに育っているのに中身はまだ甘えん坊なんですから困ったものです。
「姉御~」
「はいはい、パーマーもよしよし」
次に来たのはボクが完全休養だと聞いて来た自称舎妹のメジロパーマーです。
メジロをこじらせることもなく元気に頑張っているようですが、メジロへのこだわりを捨てた彼女は外で楽しんでいるようです。
面倒見がいい彼女はどうやら外で舎妹を大量に作っているらしく、公道野良レースを主とする謎の一大グループができていると聞いています。ボクの顔も知られているらしく時々知らない人から挨拶されることもあります。そっちは知っていてもこっちは知らないんだよなぁ、と困惑しかしませんが。
彼女は名目上ボクの面倒を見に来てくれたということになっており、ご飯を食べさせてくれたりお風呂で体を洗ってくれたりとかいがいしく世話をしてくれます。
まあ、ボクがアルダンにしてあげているところを見て羨ましそうにするので結局同じことをしてあげる必要が出るせいで、手間はあまり変わっていません。
「おねーたま」
「はいはい、アヤベちゃんもよしよし」
「えへへ」
そして増えた妹分、アドマイヤベガちゃんです。
学園祭で知り合っただけだったのですが、後日アヤベちゃんのお母さまがお礼に来てくれました。生徒会副会長といわれていたことやテレビで姉さまのトレーナーをやっていた時に見たことがあったせいでだれかわかったようです。
そして、再度会ったアヤベさんにすさまじく懐かれました。かわいいからいいんだけど、年末年始こっちに泊まりっぱなしでいいのだろうかと思ってしまいます。
まあ、多分アドマイヤの方のお家も新年のあいさつで忙しいでしょうし、子供を預けるのにちょうどいいと思われたのかもしれません。可愛いし大人しいのであまり手間がかかりませんし。
ちなみに新妹分と他二人の妹たちの仲は良好です。パーマーが加わったときは面倒なことになりましたが、さすがにアヤベちゃんは年がかなり下ですから二人とも可愛がっています。
むしろ若干取り合いになってそちらの方が面倒になっています。末妹のアルダンはまだしもパーマーは世話焼く相手として適当な舎妹はいっぱいいるだろうに……
さて、そんな感じで年末はずっと右手にアルダン、左手にパーマー、おなかの上にアヤベちゃんという謎のフルアーマー状態でベッドでごろごろしていました。
「マーリン……」
「なんです、姉さま。ボクはお休みですが」
「そう……」
ラモーヌ姉さまが、時々恨めしそうにこちらを見ていましたが、休養中なので妹としての気遣いも休養することにしています。
「……アルダン、あなたは行くわよ」
「えー」
「えーじゃないの」
「あー! マーリン姉さまタスケテ!!」
「行ってらっしゃい。パーマーも一応出ておきなよ」
「姉御が言うなら……」
時々アルダンがラモーヌ姉さまに引き擦られてパーティやらなんやらに出させられていましたし、アルダンが行くときはパーマーも渋々一緒に行っていましたが、ボクは休養中なので全部欠席しました。代わりにメジロのちびっこやら来賓客のちびっこやらが部屋に詰め込まれて託児室になっていましたが。
「ふごふご」
「ふにゃぁ」
「やわらかい……」
ちびっ子たちに一番人気だったのはおなか枕で、次が太もも枕、その次がおっぱい枕でした。どうやら太ももは微妙に硬すぎて、おっぱいは微妙に柔らかすぎるらしいです。アヤベちゃんはおっぱいにずっと埋もれていましたが。
子供たちに全方位抱き枕にされてもボクは頑として動かなかったので、やられたい放題でしたが、幸いメジロの子たちは気心知れていますし、よその子はパーティに連れてこれる程度にはいい子ばかりなのでいたずらなどもなく、ただただ枕にされるだけでした。よだれで結構べとべとになった程度です。ちゃんとしたお世話はメイドさんたちがしてくれるしね。
そんなこんなで人肌に包まれ続けた年末が終わり、年始になって思いました。
「そうだ初詣に行こう」
さすがにずっと寝ていたので多少飽きてきました。
メジロの二人はパーティなどの社交をしていましたし、アヤベちゃんは同年代の子と遊んでいる時間もありましたが、ボクはトイレとお風呂以外ベッドから動いていません。さすがに不動すぎるだろうと思い立ちました。
妹たちを可愛く着飾りたいという邪な気持ちもかなり入っています。除夜の鐘は聞いた気がしますが煩悩は抜けきらなかったようです。
ひとまずラモーヌ姉さまに助力を求めます。さすがに一人で着付けするのは大変なので手伝ってもらおうと思ったのですが……
「ラモーヌ姉さま」
「ふにゅぅ」
「初詣行きません?」
「いくぅ」
ラモーヌ姉さまがへちょっていました。ボクもアルダンもあまりかまってあげなかったせいで妹欠乏症になってしまったようです。お労しや姉上……
ラモーヌ姉さまが役立たずになっていたので急遽予定変更です。アルダンとパーマーはメイドさんに手伝ってもらえば自分で着物を着ることができるでしょう。なので問題はアヤベさんだけでしたが、幸い、ご両親に連絡したら着物を持ってきてくれたので特に問題ありませんでした。
一番問題なのは大きな幼女になってしまったラモーヌ姉さまで、大苦戦しながらどうにかピンクの桜柄の着物を着せました。普段だったら絶対着ないような華やかな奴ですが、へちょると好みも変わるようです。
どうにか皆着物を着て、初詣に行くことができました。
「マーリン姉さま、それ寒くないんですか?」
「むしろ暑いぐらいなんだけど……」
「まあ、そうですよね」
アルダンがボクの着物を見て聞いてきます。確かに露出が多いですが、これくらいじゃないと暑いんですよね。暑がりもつらいです。
「……」
「どうしたのアヤベちゃん」
「酒饅みたい……」
「じゃあ屋台で買おうか」
ボクの胸を見てそんな感想を述べるアヤベちゃん。まあ、白くて柔らかい塊が、湯気を挙げていたら確かに酒饅に見えてくる。自分でも自分の乳房が酒饅にしか見えなくなってきた。
ひとまずお参りをして、帰りがけに酒饅を3つ買う。一つはアヤベちゃんの、一つは自分の、もう一つは、他の人には見えていないアヤベちゃんの妹ちゃんの分だ。
この、ボクだけ見えているらしいアヤベちゃんの妹はアヤベちゃんの周りにチョコチョコ発生する。大晦日の時もアヤベちゃんと反対のボクの胸にくっついていたし、初詣の時も着物を着て初詣についてきている。今は受け取った酒饅をおいしそうに食べている。
ほっぺを触るとプニプニしてるし、謎の幽霊みたいな存在である。
あまりの不思議現象に一度アヤベちゃんのお母さんに事情を話して聞いたところ、生まれてこれなかったアヤベちゃんの双子がいたのは確からしいから、その子なのではないかという推測はしている。見えているのはボクだけのようだが、アヤベちゃんは何となく感じているらしく、亡くなった妹がいることも知っているらしい。
それで気に病んで、昔ほど活発ではなくなってしまったとのことである。
これで悪霊だったりしたら考えるが、二人並んでベンチに座り、おいしそうに酒饅を頬張る彼女が悪いものとはとても思えない。
アヤベちゃん、真面目そうだし性格が変わったのは単に自身の精神的な問題だろう。どうにかできないかとボクは悩みつつ、へちょって酒饅とボクのおっぱいを間違ってボクの胸に齧り付こうとするラモーヌ姉さまを投げ飛ばすのであった。
【挿絵表示】
着物マーリン
一応普通のもあったのですがこちらの方がそれっぽいとディスコで言われたので。
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