ラモーヌさんとアルダンさんの姉妹の間に挟まれたメジロに転生してしまったお話 作:雅媛
桜花賞は阪神レース場で行われる1600mのレースです。
前哨戦として出た報知杯阪神クラシックウマ娘特別は阪神レース場1400mのレースで競馬場は同じですが、距離が200m伸びています。向こう正面の直線からスタートする1400mと違い、第二コーナーの先にある一コーナーポケットからスタートする1600mのコースは内枠が有利といわれています。
そんな中、22人参加で5枠13番という単枠指定ながら微妙な枠番を引いた姉さまでしたが、あまり気にしているようには見えませんでした。
「これだけ大人数でしかもちょうど真ん中ですが大丈夫ですか?」
「どうにかするわ」
今までのレースで最多出走数だったのは前回の報知杯阪神クラシックウマ娘特別で17人立てです。参加人数がさらに5人増えてスタートしてから200mも行かずにコーナーに入るというコース構造まで合わさると本当にごちゃごちゃになりそうです。
「マーリンはどういう作戦を立てるかしら?」
「無理はしないで外目待機でいいかと思います。阪神は直線が短いですがコーナーが小回りなので、姉さまの末脚がちゃんと残っているなら最後尾で直線に入ってもマクれるはずです」
「なるほど」
「一番怖いのはバ群に飲まれて進路確保できないことなので、外にでる、というのが普通の戦略だと思いますし安定した作戦かと」
阪神レース場の基本戦略です。基本的に阪神レース場は直線が短く前目有利です。
ですが、コーナーが小回りなうえ直線に坂があるので、差し追込が有利な展開も作りやすかったりします。
その一つが大外に出て一気に抜ける方法です。小回りなコーナーをきれいに曲がろうとすればよほどコーナーリングテクニックがない限り減速せざるを得ません。一方外を回れば距離は不利ですが減速せずに回れますし、芝が荒れていれば大外に回れば内と比べて圧倒的にきれいな芝を走れます。
もちろん短い直線で追い込めるだけの相応の末脚の鋭さが必要になりますが、ラモーヌ姉さまならその心配はないですし。
「そうね、でも……」
「つまらない、ですよね」
「そうね」
「奇を衒って前に出るとかするのでなければもう一つ、最内を突きましょう」
もう一つの選択肢はあえて道中はバ群に飲まれて、第四コーナーでばらけた隙を狙って強引に進路確保する方法です。
特に桜花賞は春先で芝の状態が良いでしょうから、内ラチギリギリでも芝が荒れておらずスピードが出る可能性も高いです。そうするとコーナーリングの難易度がさらに上がります。恐らくバラけるでしょうからそのバラけた隙を狙う、という方法です。
「そうするわ」
「予想展開はやりますか?」
「いいわ。多分今までと違って前に出てレースを進めようとする子が一人や二人、いるはずよ。予想はたぶん当たらないわ」
ティアラの初戦でしかも絶対的に強いラモーヌ姉さまがいますから、勝つために奇を衒ってくるウマ娘は多いでしょう。そうすると誰がハナを切って逃げるか、もなかなか読めません。
下手に予想してその考えに固執することを姉さまは嫌いました。
「注意する相手は?」
「ダイナムエルフさんぐらいですね。ダイナムヒロインさんはこの前レース前トラブルで一か月の出走禁止受けましたから」
「残念ね」
本当に残念そうにため息をつくラモーヌ姉さま。
ダイナムヒロインさんも桜花賞を目指していたと聞いていますが、桜花賞1月前のすみれステークスで出走前にゲート内でパニックを起こすトラブルを発生させたため、ゲート試験となり1月の出走禁止処分を受けてしまいました。そのせいで桜花賞も出られなくなってしまいました。
ダイナムエルフさんは今回3回目の対戦ですし、直近の前走での感じを見ても姉さま相手だとちょっと力不足感があります。他の前評判で人気がある方というともう一つのトライアルであるチューリップ賞を勝ってきたフジソロンさんか同じく2着だったマヤノクイーンさんぐらいでしょうか。
まあこんな一強だからこそレースが乱れる可能性も否定できませんし、注意が必要ですが……
「大丈夫ですか?」
「どうにかするわ」
まあラモーヌ姉さまがどうにかすると言っているなら大丈夫でしょう。
さて、桜花賞ですがメジロ総出で応援になりました。
メジロ家はおばあ様含め盾を春秋合わせて4つも取りましたが、ティアラやクラシック三冠にはいまだ手が届いていません。2着に入った人は結構いるんですけどね……
なので姉さまへの期待、メジロ初のクラシッククラスGⅠ制覇への期待が否応なしにも高まっています。おばあ様をはじめ、主治医さんなどの普段メジロ家でウマ娘たちに世話を焼いてくれる皆さんや、メジロのウマ娘たちなど大応援団が結成されています。
まあ、そこにボクは加わることなくトレーナー席で観戦です。ボク自身はそっちに行っても問題ないのですが、ドーベルちゃんはいじめられていた経験がありそうなのでそちらに連れていけないですから。
「……」
「ほわ~?」
「……」
「ほわ~♪」
そのドーベルちゃんですが、今回はライアンちゃん経由でいつの間にか仲良くなったブライトちゃんと一緒に来ました。無言のドーベルちゃんとほわ~語のブライトちゃんの謎の異文化コミュニケーションが行われていますが、何か通じ合っているものがあるようです。
「マーリン、もう一人産んだの?」
「奈瀬さん、ボクを経産婦にしないといけない使命でもあるんですか?」
「いや、分裂したのかもしれない……?」
「さすがに分裂しないですよ可児さん。あとボクが分裂してもこんなかわいい子は発生しません」
「それもそうか」
「……」
「ギブっ!! ギブ!! 頭われる!!!」
失礼なことを言う可児さんをアイアンクローで持ち上げたら、幼女二人は楽しそうに笑いました。どうやら受けたようです。何が受けるのかわからないな……
さて、ラモーヌ姉さまのレースですが、パドックも問題なし、ゲート入りも特に問題なし。事前に何も問題なくレースはスタートしました。
22人立てのほぼ真ん中からスタートした姉さまは、バ群の流れに乗り、前目の集団外側の方につけます。最初の予定ではもっと内につける予定でした、無理はやめたのでしょう。そのまま外目につけたまま、向こう正面の直線を駆けていき、第三コーナーに入りました。大体内側に3人いるぐらいの位置でコーナーに入りましたから、位置的には結構不利です。1つのコーナーで一人分外に出るたびに1mの距離ロスがありますから、最内を回るのと比べると、第三、第四コーナーで6mは不利になります。
ですがそこは姉さまでした。少しだけペースを落とし、横に並ぶ他のウマ娘の後ろに潜り込むと、コーナーで内側に切り込みました。
コーナーリングテクニックの差に加え、最初から外側にいた分、内側に切り込むのは容易になります。コーナーを回り直線に入った時点で、姉さまは内ラチ際から抜け出しました。
スパートをかける姉さま。いつも綺麗に結われている姉さまの髪が解け、長く棚引きます。
後ろにいた子たちがスパートをかけて姉さまを追いかけますが、外を回る不利に加えスパート速度の差もありますから姉さまに突き放される一方です。ゴール板前をそのまま先頭で姉さまは駆け抜けました。
「これで2勝、ですね」
メジロ家初ティアラ勝利ですが、トライアルレースも含めればまだ6戦中2勝でしかありません。目指すは後4勝です。
次はオークストライアルのサンケイスポーツ賞クラシックウマ娘特別、そこから続くオークスです。特にオークスは2400mとなりますからさすがにスタミナの不安もありますし油断はできません。
ですが、負けるつもりはありません。観客に手を振る姉さまを見ながら、ボクは決意を固めるのでした。
改装前の阪神競馬場は今の内回りコースしかなく、1600mのスタートは東京2000mみたいにスタートしてすぐコーナーでした。
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感想でムチに飽きたといわれたので怒りのラモーヌ姉さま投入
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そこそこ前から動いているディスコード鯖です。
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