ラモーヌさんとアルダンさんの姉妹の間に挟まれたメジロに転生してしまったお話   作:雅媛

48 / 66
9 梅雨の花嫁

 ビューティドリームカップは花嫁衣裳を模した勝負服を着たウマ娘が走るレースです。選手に選出されれば勝負服が一つ手に入るわけですからこういうのが好きなウマ娘はみな一生懸命になります。とはいえ出走枠は、その年によって多少変動はありますが20前後しかないために競争は熾烈になります。

 一方スポンサーとしてデザイナーなどの服飾系の人たちも多くかかわるため、そちらのアピールも熾烈になります。レース自体テレビで流れますし、そのデザインをした個人や会社の広告効果はすごいことになるわけです。

 

 当然決め方によっては賄賂やらなんやらが飛び交うヤバい状況になります。昔はURAが主催していたらしいですが、不祥事で運営主体が生徒会に移りました。マジかよ…… と思いますよね。

 まあなんにしろメンバーを決める必要があります。まず、ウマ娘側の参加者の決め方はわかりやすい客観的な基準でここ3年ほどはやっています。すなわち、筆記試験の成績順です。各学年の成績優秀者のうち希望者だけ参加できるわけです。これ勉強を頑張ってもらえればいいですしね。1年生は入学試験の筆記試験の結果です。各学年から上位5人で希望者を集めれば、全員出ても30人ですし、大体20人前後に収まります。

 それでここ3年程はウマ娘の選抜は苦戦しませんでしたし、今年も苦戦しませんでした。で、あとは参加者が自分を担当する服飾メーカーを決めて、ウェディングな勝負服を作ってもらう、という流れです。

 

 この方式の問題だと、あまり有力なウマ娘が候補にあがらない、ということでしょうか。レースの成績と筆記の成績は反比例しがちですからね。さらに言うと実績があるウマ娘は、6月はクラシックならオークスやダービー、シニアなら宝塚記念や安田記念がありますから、レース以外のことに対応できる余力が著しく低いわけです。

 なので、実績あるウマ娘が参加者に少なく、そのせいでメーカー側が一部のウマ娘に集まりマッチングがうまくいかないということが問題になっていました。とはいえいい解決策もない状況です。

 

「だからラモーヌ姉さまは参加しませんって。もう切りますね」

 

 そんな集まってしまうウマ娘のトップがうちのラモーヌ姉さまです。

 ラモーヌ姉さま自身の成績は次席ですから今回の条件に合ってしまいますし、GⅠ2勝、外見も魔性といわれるぐらい美しいものですから、オークス直後であるため調整の問題から不参加を表明してもいまだ勧誘の連絡がトレーナーであるボクの方に届きます。質が悪いところは情報を回して今回以降のイベントそのものに参加できないようにしていますが、鬱陶しいのがなかなか終わりません。そろそろメジロから誰か人を出してもらうべきか…… 安心沢さんにでも来てもらおうかな……

 

「マーリンは参加しないの?」

「どうしようか悩んでいます。あまり余裕がないですからね」

 

 ボクも主席ですから、参加資格はあるんですよね。最年少トレーナーを舐めてはいけません。姉さまのトレーナーとしての仕事があるから当然欠席、と思っていたのですが、同じく参加資格のあるアルダンが出るようで出てほしそうにしているんですよねぇ。

 姉さまと違ってボクは調整の問題がないので参加できなくはないですが、前向きに検討しても、トレーナー業務の分準備期間があまりとれないんですよ。さすがに服飾メーカー側に嫌がられるかなと思っています。

 

「ここにすれば対応してくれるかもしれないわ」

「これは?」

 

 姉さまが取り出したメモには、ビューティ安心沢という所への連絡先が書いてありました。

 

「今回から安心沢さんの妹さんがドレスメーカーのデザイナーとして参加しているわ。安心沢さんと仲が良いみたいだし、ある程度は話を聞いてくれるんじゃないかしら」

「なるほど、一度お話聞いてみましょうかね」

 

 早速連絡を取ってみると、翌日には来てくれることになりました。

 

 

「いらっしゃいませ。メジロマーリンです」

「メジロアルダンです」

「付き添いのメジロラモーヌよ」

「こんにちは、いたずら妖精さんたち。ご活躍は姉さんからかねがね聞いているわ」

 

 ビューティ安心沢さん(店名ではなくご本人の芸名のようです)はボクたち姉妹を見てそう言いました。まあ、世話はかけてるからねぇ……

 

「今回ドレスを作るのは、マーリンさんとアルダンさんでいいのかしら?」

「そうです」

「じゃあまずラモーヌさん」

「なにかしら?」

「あなたからお話を聞きましょうか」

 

 付き添いのラモーヌ姉さまに話が振られ、ボクとアルダンは困惑します。

 

「私が意見を言ったら面白くないわ」

「そうね。でもあなたの服装が知りたいわ」

「ふふ、そうね」

 

 わけわからん話が始まりました。

 姉さまに時々あることですが、これに文句を言うとアルダンが「姉さまたちもよくそういう会話していますよ」といわれます。解せぬ。

 アルダンは笑顔を浮かべていますが、あれは何もわからないからひとまず笑ってごまかそうの態度です。

 

「安心沢さんに確認してくださいな」

「わかったわ。ではお二人とも、お待たせしたわね」

「よろしくお願いします」

 

 姉さまとの会話は終わったようなので、次はボクたちとお話なようです。

 

「まずはマーリンさんからご要望を聞こうかしら」

「暑がりなので薄くて露出多めでお願いします」

「ほかには」

「あとはお任せします」

 

 1分かからずにお話が終わりました。

 アルダンがため息をつきます。

 

「マーリン姉さま、塩対応すぎます」

「だって興味ないし……」

「色とかデザインとかあるでしょう?」

「それを考えるのが一番面倒くさい…… というかウェディングドレスなんて白に決まってない?」

 

 ちゃんとしたドレスを作るのは注文側も非常に手間がかかります。普段ならラモーヌ姉さまとかおばあ様が決めてくれて、ボクは着るだけですが、さすがに勝負服の一種であるこれでも誰かに決めてもらうのは問題です。ですが自分で決めるのも面倒なので、デザイナーさんに丸投げです。

 ビューティさんはあきれたようにため息をつきます。

 

「姉さんが言っていたとおりね」

「レースに出れるものなら何でも着るから、お任せするよ」

「しかたないですね。アルダンさんは?」

「一応デザインは考えてきました」

 

 アルダンは準備がいいようでちゃんと案を考えてきたようです。

 ただ、パッと見た感じ、文字が半分ぐらいアルダンの筆跡ではないですね。チヨノオーさんと一緒に考えたのでしょうか。ラモーヌ姉さまに気づかれるとまたハンカチさんが殉職してしまうので黙っておきましょう。仲が良いのは良いことです。

 アルダンとビューティさん二人でキャッキャしながらデザインを決めるのを見ながら、ボクはラモーヌ姉さまの調整プランを考えるのでした。

 

 

 

 ビューティドリームカップはオークスもダービーも宝塚記念も終わった頃に実施されました。

 オークスもそのトライアルレースも無事勝利したラモーヌ姉さまは、何かいそいそと準備しておりましたが、それと関係なくボクもビューティドリームカップのへ準備がありました。

 

 レース当日、作成してもらったドレスを確認します。ドレスは、ボクのようなファッションがよくわからないウマ娘から見ても素晴らしいものでした。

 

「色は黒なんですね」

「何色でもいいというからね。あなたは全体的に白いし、体格もいいから黒の方が似合うわ」

「外見の色合いが同じようなアルダンはピンクですけど」

「アルダンさんはそういう可愛い方が似合うでしょう?」

 

 隣の部屋で着替えをしていたアルダンのドレスがピンクのフリフリだったのは確認していて、ボクのとずいぶん趣が違いました。

 まあ確かにアルダンによく似合っていますし、ビューティさんの腕がよくわかる仕上がりです。あとは頑張ってデザインを考えたアルダンとボクの差でしょうね。

 カワイイは作れますが、作るというのは努力が必要なんですよ……

 

 ひとまず着替えてみると、確かによく似合っているな、という印象です。

 スカートは軽くテンションが上がります。無駄にくるくる回ってみていたりしたら控室の扉がノックされました。

 

「はあい?」

「マーリン。迎えに来たわよ」

「姉さま?」

 

 そこには白タキシードでキメた姉さまがいました。

 

「ドロワでマーリンのこと誘わなかったのを拗ねていると聞いてね」

「シービーさんばらしたな……」

「マーリンはエスコートされるとか嫌いかと思っていたのよ。ごめんなさいね」

 

 まあ確かに前世の記憶が混じってしまっているボクは女の子女の子しているものというのが得意ではない。姉さまはその辺を配慮してくれていたようだ。

 

「確かにちょっと苦手ですけど、それ以上に姉さまのこと好きですから」

「ふふ、可愛いわね」

 

 姉さまに頭を撫でられて、ボクは絶好調になりました。

 

 

 

 

 パドックでチヨちゃんにエスコートされたアルダンが現れたせいで姉さまのハンカチがまた殉職するなどのトラブルもありましたが、レースは無事ボクが勝ちました。

 他の子たちのドレスもきれいでしたが、みな真っ白なものでせいぜい刺繍がある程度だったので、黒のボクと濃いピンクのアルダンはとても目立っていて、ビューティさんの評判もうなぎのぼりだったようです。

 

「あまり仕事が来過ぎても困るんだけどね」

 

 ビューティさんはそんなことをボヤいていましたが、評価されたことはかなり嬉しそうでした。




評価お気に入り・感想お待ちしております


【挿絵表示】

男装姉さま

適当にウマ娘についてしゃべるディスコードサーバー
https://discord.gg/92whXVTDUF
そこそこ前から動いているディスコード鯖です。
気になった方はお気軽にどうぞ

今後多めに出してほしいキャラ

  • 妹 メジロアルダン
  • 義理の妹? メジロパーマー
  • ぱくぱく メジロマックイーン
  • まだちょっとしか出てない メジロライアン
  • ようじょ メジロブライト
  • ようじょ メジロドーベル
  • マック姉 メジロデュレン
  • 同期 ダイナムヒロイン
  • 同期 アキツテイオー
  • 同期T 奈瀬さん
  • 同期T 可児さん
  • 先輩T 小宮山さん
  • 後輩 ゴールドシチー
  • 後輩 タマモクロス
  • 後輩 サクラチヨノオー
  • 後輩 オグリキャップ
  • 後輩 スーパークリーク
  • 先輩 シリウスシンボリ
  • 先輩 シンボリルドルフ
  • 先輩 ミスターシービー
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。