ラモーヌさんとアルダンさんの姉妹の間に挟まれたメジロに転生してしまったお話   作:雅媛

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12 凱旋門の壁

 シリウスさんの出走した第65回凱旋門賞は各国のGⅠ勝利ウマ娘が11人も参加するすさまじいレースでした。

 前哨戦のフォワ賞ではどうにか勝利を収め、ヨーロッパでの勝利を手にしたシリウスさんでしたが、今回は正直厳しいと言わざるを得ません。特にあの、ヨーロッパ最強といわれたダンシングブレーヴがどう見てもヤバすぎます。全盛期のルドルフと同じような絶対性をパドックに立っているのを観客として眺めるだけでもひしひしと感じます。

 

「あの子、ヤバくない? ルドルフなら勝てる?」

「去年だったらやってみたかったかな」

 

 ルドルフでも無理だと言外に述べます。怪我をしピークも過ぎたとはいえルドルフすら勝てない相手です。競馬に絶対はないとはいえ厳しいとしか言えないでしょう。

 

「おハナさんはどう思う?」

 

 東条トレーナーも今回観戦に来ていました。今までもちょこちょこシリウスさんの様子を見には来ていたようです。ルドルフの世話が忙しいだろうに大変ですね……

 

「あれに勝てるイメージが全然浮かばないわ。むしろあの子の育成をしてみたいぐらいよ」

 

 日本有数の名トレーナーでも匙を投げるレベルです。どうしようもないとしか言えないように思います。

 

「で、マーリンは何したの?」

「何かしたのを前提に聞かないでください」

「シスコンの貴女がティアラ三冠がかかった大事なお姉さんをほっぽり出してでもフォローしてるんだもの。何もしてないはずがないでしょ」

 

 ボクは別にシスコンじゃないですしロリコンでもないですし新人トレーナーでしかないのにおハナさんはボクをなんだと思っているのでしょうか。

 

「まあ、相手がルドルフみたいなものだと考えれば、シリウスさんは一度ルドルフに勝ってますからね。二匹目のどじょうは狙ってみましたよ」

 

 とはいえ何もしていないわけではないです。シリウスさんの状態は正直あまりよくありませんが、今の状態なりにどうにかいい状態に持ってきました。周りをどうにかするのが一番大変でしたけどね。ウマ娘で年少なボクを舐める奴が多いこと多いこと。最後はまあ力でどうにか理解らせましたが。理解できません、人間がウマ娘に勝てるわけないんですよ。

 

「勝負になるかしら」

「難しいかと。あのダービーの時の状態で今の芝に慣れている経験があれば勝負にはできたでしょうが、正直あまり状態がよくないです。ボクは魔法使いでも何でもないので」

「今のシリウスを今なりに絶好調に持ってこれる時点で貴女は魔法使いよ」

「別に大したことないですって」

 

 確かに東条トレーナーではできなかったでしょうが、こちらは幼馴染の従姉であり、昔から遊んでもらった大好きな『お姉ちゃん』の一人です。ボクならできることは山ほどありますし、それを全力でやればここまでは持ってこれます。それはトレーナーの腕ではなく単なる今までの個人的関係の問題です。相手がダイナムヒロインさんとかなら東条トレーナーの方が絶対にうまくやれるでしょう。

 

 レースの方は、ライバルが手薄な年ならもう少し期待はできたかもしれませんが、今年は層が厚すぎます。

 ダンシングブレーヴだけでなく、そのダンシングブレーヴに唯一土をつけた英愛ダービー勝者シャーラスタニ、フランスシャンティレース場でレコードを持つベーリング、鉄の女トリプティクなど、万が一ダンシングブレーヴがアクシデントで実力を発揮できなかったとしても厳しいレースです。

 

「まあそれでもあきらめたくはなかったので」

 

 勝てるとは思っていない。勝つのが重要でもない。ただ、うちのシリウスシンボリもこれだけすごいんだと魅せたい。それだけの気持ちでどうにか頑張りました。

 後はボクたちは結果を待つことしか出来ませんでした。

 

 

 

「やっぱり無理か……」

 

 シリウスさんがとった戦法は、ダンシングブレーヴへの徹底マークでした。

 相手をシンボリルドルフに見立てれば、一度勝った方法を使うのがベストだろうと判断しましたが、最後で突き放されてしまいました。

 相手への分析不足、戦法の適否、コース状況予想の不足。いろいろなものが頭をよぎります。もっと何かできたのではないか、と考えてしまいそうになりますが、ひとまずそれらを頭から排除し、地下道でシリウスさんを迎えます。

 

「ちっ、情けない走りを見せた」

「そんなことないですよ」

 

 今までずっとヨーロッパで一人で頑張ってきた天狼星はボクにはひときわ輝いて見えました。

 でもやっぱり悔しいですね。勝てないというのは。

 

「~~~~~」

「え、なに、なんですか!?」

 

 シリウスさんの頬を撫でしんみりしていると、あとから来たウマ娘に声をかけられました。

 ダンシングブレーヴさんです。ですがフランス語ですから何を言っているかはまるで分りません。

 途中から英語になりましたが、そんなにリスニング得意じゃないんですよ。

 シリウスさんと二人、何か話しているのですが何を言っているかまるで分らずに困っているとシリウスさんがボクのことを抱きかかえました。何言われたんですかね……?

 

「こいつは俺のだからな。勝利はくれてやってもおまえにはやれねー」

「シリウスさん!?」

「なんだ、キスしてやろうか」

「シリウスさん!!」

 

 そんな風に言われボクがもがいていると、ダンシングブレーヴさんが肩をすくめて去っていきました。

 いったい何だったのでしょうか。

 まあ、帰ってくれたなら正直どうでもいいですが。

 

「じゃあ約束通り、一度日本に帰りましょう」

「シンボリの爺さんがうるせーからやだなぁ」

「トレセン学園の寮に戻ればいいじゃないですか。もしくはメジロの方で部屋用意しますよ」

「マーリンが添い寝してくれるならメジロにお世話になるかねえ」

「いやまあいいですけど」

「……こいつの羞恥心のポイントが相変わらずわからん……」

 

 こうしてシリウスさんの1年以上にわたるヨーロッパ遠征は終わりました。

 これがどういう意味を持つのかはボクにはわかりません。ただ、シリウスさんが一度戻ってくるのがボクにとっては重要でした。またヨーロッパに戻るのか、日本に残るのかは落ち着いてから決めればいいでしょう。

 ただ、一つ誤算だったのは……

 

「なんでてめぇがここにいるんだよ」

「ライバルにてめぇ、などとは無粋だね、シリウスシンボリ。私はただキミのマ・シェリに会いに来ただけだよ」

「フランスに帰れ」

 

 なぜかダンシングブレーヴさんが日本に留学してきて、なぜか知らないけどボクに付きまとい始めたことです。

 

「マーリンはモテモテね」

「姉さま助けてください……」

 

 そんな状況を見て、姉さまは楽しそうに笑うだけで助けてはくれないのでした。




カワカミ「おじいちゃん!!」
スイープ「ぐらんぱ!!」

 ダンシングブレーヴは引退後少し経った後ではありますが日本に輸入されています。
 ウマ娘的にはキングヘイローの父でスイープトウショウの母父です。
 他にはキョウエイマーチやテイエムオーシャンなどの産駒がいます。

アニメSeason3みて新作始めました
そして、みんなの愛バになった ウマ娘キタサンブラック伝
https://syosetu.org/novel/335390/
こちらもよろしくお願いします。

評価お気に入り・感想お待ちしております

適当にウマ娘についてしゃべるディスコードサーバー
https://discord.gg/92whXVTDUF
そこそこ前から動いているディスコード鯖です。
気になった方はお気軽にどうぞ

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