ラモーヌさんとアルダンさんの姉妹の間に挟まれたメジロに転生してしまったお話 作:雅媛
チーム理子ちゃん(仮)に加入したボクの生活は非常に快適になりました。
まず、1日のスケジュールを全部理子ちゃんが考えてくれます。
朝練をどれだけするかとか、夕方はどれくらいトレーニングするかとか、生徒会の仕事は何時までやるかとか、夜何時までには寝た方がいいかとかのスケジュールも計画を組んでくれます。
スケジュール外の予定が入っても即座に対応して計画を作り直してくれるし、本当に快適です。
「そういうの、マーリンは嫌がると思っていたんだけど」
「でも~ 快適すぎるんだもの~」
全部強要されたら即キレていたでしょうが、理子ちゃんのスケジュールはボクにできるだけ合わせてくれるようになっているし、こちらから変更もできます。気になった点だけ返事すれば後は自動で合わせてもらえるんだから快適すぎます。
「マーリンちゃん、おやつ出来ましたよ。ラモーヌさんもいかがですか?」
「わーい」
「……いただくわ」
理子ちゃんのトレーナー室で姉さまとグダグダしていると、理子ちゃんが手作りおやつを持って戻ってきました。これはニンジンプリンですね!!嬉々として席に着くと、理子ちゃんがため息をつきます。
「マーリンちゃん、ちゃんと髪を乾かさないと」
「めんどうなんだもの」
「ほら拭いてあげるから」
「はーい」
トレーニング上がりでシャワーを浴びた後でしたが、髪を乾かすのが面倒で放置していたのを理子ちゃんにとがめられました。
バスタオルをかけられてわしゃわしゃと拭かれます。理子ちゃんに任せたまま、ボクはプリンを食べ続けます。甘さもちょうどよくてとても美味しいです。
髪を拭いてもらって、尻尾も拭いてもらって、大体15分ぐらいかかりましたが、理子ちゃんのターンはまだ終わりません。
「お肌とか髪とか尻尾とかのケアもちゃんとやらないと」
「そうなんですけどー」
「はぁ、しかたないですね」
理子ちゃんがヘアオイルをブラシで塗り込み始めます。全部なされるがままです。
髪と尻尾にオイルを塗りこまれて、顔に化粧水と乳液を塗り込まれました。
「体は寝る前に自分で塗ってくださいね」
「理子ちゃん塗ってー」
「さすがに同性でも体は嫌です」
「しょんぼり」
残念ながら全身まではやってくれないようです。
あとで自分で塗りましょう。
そんなことをしていると、ラモーヌ姉さまがなんか微妙な表情をしています。不機嫌なのだろうと思うのですが、どうして不機嫌かがいまいちわかりません。
「姉さま、どうしました」
「……何でもないわ」
何でもないときは何が? みたいに聞いてきますから、何でもないというときは何でもあるときです。
しかし何でしょうね。
「あ、姉さま今日はボクが世話してあげましょうか? 自分でやるのに飽きたとかじゃないですか」
「違うわ」
今まではラモーヌ姉さまの世話はボクがしていました。髪を乾かしたりオイルを塗ったりとかから、全身マッサージまでやってました。ですがメイクデビューすることになってからラモーヌ姉さまは自分のことは自分でする、と言い切ってボクに世話をされないようになりました。
ラモーヌ姉さまはやるとなれば完璧主義ですから、ボクがやっていたころよりも髪や尻尾のツヤはいいように思いますが、自分でやるのは大変でしょう。ボクが理子ちゃんにされているのを見て羨ましくなったのかと思いましたが違うようです。
「じゃあ理子ちゃんにしてもらいます?」
「他人に触られたくないわ」
理子ちゃんのテクニックを試してみたいのかと思いましたがそれも違うようです。
まあ姉さま、結構こだわりが強くて保守的なところありますからそれはわかるのですが、ではなぜ不機嫌なのでしょうね……
「……マーリン」
「なんですか?」
「あーん」
ラモーヌ姉さまが笑顔でスプーンに掬ったニンジンプリンを差し出してきました。
姉さまからあーんされたのなんていつぶりでしょうか。なんでそういう行動に移ったかわかりませんが、ちょっと感動してしまいます。
迷いなくパクっと食いつくと、ニンジンプリンはちょっと生温かったです。
「で、今日話したいのは今後の予定なんだけど」
「はい」
「こんどのメイクデビューの後をどうするかね」
「勝ったら、ですよね」
「もちろんだけど、勝てる可能性は高いと思いますから」
理子ちゃんは勝ち目が高いと分析しているようだ。
まあ確かに、純粋なスペックならばボクは今のラモーヌ姉さまに少し劣るぐらいでしょう。ラモーヌ姉さまと併走を重ねているから、同時期のラモーヌ姉さまより上かもしれません。後はやる気ですが、さすがにメイクデビューぐらいは勝ちたいので頑張りたいです。
「主にクラシックとティアラとどちらを目指すかだけどどっちがいいですか?」
「ティアラの方かなぁ」
「わかりました」
適性的にはクラシックの方が向いていそうな気がしますが、何となくウマソウル的にティアラの方が良さそうな気がしています。気分ですが。
「そうするとステップをどこにするかですが…… ラモーヌさんみたいに西のクラシックウマ娘特別に出ますか?」
「うーん、あまり手札はさらしたくないし、違う路線がいいかなぁ」
優先出走権があれば確実なのはわかりますし、トライアルは上位5人まで優先出走権が得られますからお得なのは間違いないです。
ただ、この時期だとシニアと違って実績を積めるわけではないですから、オープン戦を1勝もしくは重賞で2着に入ればまず確実に出られるでしょう。
「あまり遠征したくないし、1月終わりの東京でメイクデビューして、そのまま2月中頃の共同通信杯、そこから桜花賞直行とかどうかな?」
「……無茶苦茶なローテーション考えますね」
共同通信杯クラシックステークス(トキノミノル記念)は、クラシック路線だとよくつかわれるレースです。とはいえ皐月賞までは中8週、桜花賞で見ても中7週なので、通常もう一回ステップレースを挟むのが常識的です。
「ブランク開きすぎますが大丈夫ですか?」
「そのあたりも含めて調整してみたいなって。調整時間長い方がいいんじゃないかと思ってるんだよね」
「なるほど詳しく」
ボクのトレーナーとしての意見に興味を示した理子ちゃんの目が鋭くなります。
常識的に考えると、中4週ぐらいが適当といわれていますから、中7週はかなり間延びします。長くなりすぎるとそれはそれで調整が難しいといわれていますが、十分な休養とトレーニングを積めますからむしろ有利ではないかとボクは考えたわけです。とはいえかなり冒険的な手法です。普通に担当しているウマ娘ならこんな冒険的なことをやらせるのはかなり躊躇しますが、自分でやる分にはそういったことを何も考えなくていいのは楽ですね。
中7週開ける場合の体調維持とトレーニングについて、理子ちゃんと二人でああだこうだと議論を繰り広げるボクを見て、ラモーヌ姉さまはため息をつきました。
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