ラモーヌさんとアルダンさんの姉妹の間に挟まれたメジロに転生してしまったお話 作:雅媛
「拾ったところに返してきなさい」
「やーだー!!!」
ため息をつく理子ちゃん。
床で子供のように駄々をこねるボク。
間に立つ、連れてこられて困惑している子は、いいんちょーによってソファへと連れていかれます。この風景が最近のチーム理子ちゃんの良くある風景でした。
話の発端はうちのクラスのいいんちょー(実際に彼女は学級委員長である)からの頼まれごとでした。
「マーリンさん、トレーナー契約してもらえない?」
「ほへ?」
冗談でよく契約しようよみたいなことを言われたことは少なくないですが、真剣な表情でそういわれたのは初めてでした。イベント事でいいんちょーにはいろいろなことをお願いしている身としては相談されればなかなか無碍にはできません。
「どうしてそんなこと言いだしたの?」
「全然スカウトがこなくて……」
しょんぼりするいいんちょーと、いいんちょーについてきたクラスメイト二人。
どうやらトレーナーとの契約が全然できないようです。デビュー時期を考えれば今から契約してもメイクデビューの時期が終わるまでかなりギリギリどころかもう旬は過ぎている感じですし、新入生も入ってきている時期ですから、今まで売れ残ってしまったウマ娘にスカウトの芽はほとんどないでしょう。
トレセン学園側としては、全校生徒がトレーナーと契約できるように十分な数のチーム、トレーナーを用意はしているのですが、それでも全員が契約できるわけではありません。予備の枠を多めにとるトレーナー、チームは少なくないため、こうやって溢れてしまうことは珍しくないです。
そして契約ができないとメイクデビューに出られない訳です。多分いいんちょーたちは、ラモーヌ姉さま以外とは契約しないと言っているボクのところまでお願いに来るぐらいまで追い込まれているのでしょう。つまり、ボクに断られたら後がないはずです。
もちろんメイクデビューしなくたって学園には残ることは可能です。専属のサポーターなんて典型的ですし、勉強を頑張って進学を目指す子もいます。ただ、それでもメイクデビューできないというのはかなりつらいでしょう。やって負けた、とそもそもやれない、の間の差は大きいですから。それで退学する子も珍しくないです。
特にいいんちょーたちには非常にお世話になってます。
生徒会の仕事やら、イベントの運営やらで毎回手伝ってくれている良い子たちです。ここで断るのは不義理な気がしました。
「全然面倒みられないだろうし、レース資格あげることしか出来ないよ、多分」
「もちろんそれで構わないわ」
「多分、勝つの難しいよ」
「出れないよりは負けて諦めたい」
「ならいいよ」
加入の書類を3人に差し出します。
「……ありがとう、ごめんね」
「気にしないで。チーム理子ちゃんへようこそ。放課後にさっそく顔合わせしようね」
「ちーむ、りこ、ちゃん?」
「うちのサブトレーナーだよ」
こうしてチーム理子ちゃんはボッチから4人に人数が増えました。
こういう感じでぎりぎりまで担当トレーナーが決まらずに困っている子を拾っていたら、現状チーム理子ちゃんはボク含めて10人まで増えました。
そうして、ボクがこういう感じでだれかを拾ってくるたびに理子ちゃんは怒り、ボクは駄々をこねているわけです。
怒る理子ちゃん。駄々をこねるボク。そんなボクたちを眺めながら新入りさんに書類を書かせるいいんちょー
「これ書けばあなたも私たちの一員よ」
「え、勝手に書いていいんですか?」
「メイントレーナーがいいって言ってるんだからいいんでしょ」
「え、全然いいっていう雰囲気じゃないですけど……」
「ああ、あの怒っている方は樫本理子サブトレーナーで、メイントレーナーはあっちで駄々こねてるメジロマーリンの方よ」
「……」
チーム理子ちゃんの構成は実は結構複雑です。
本来ある程度経験が必要なメイントレーナーですが、ボクはなんせティアラ三冠トレーナーですからメイントレーナーになることができます。一方理子ちゃんは新人ですから実はメイントレーナーにはなれずにあくまでサブトレーナーなんですね。で、ボクはそのサブトレーナーにトレーナーとして指導しながら、担当ウマ娘として指導を受けているという謎のマトリョーシカが発生しています。
ちなみにチームリーダーはボクではなくいいんちょー、フェニキアディールさんですのでさらに複雑です。チームリーダーはウマ娘のまとめ役ですので、ボクの上になります。権力関係が複雑怪奇すぎます。
すでに泣き止んで土下座懇願を始めたボクをみて、理子ちゃんはため息をつきました。
「これが最後ですよ。これ以上はたぶん手が回りません」
「はーい」
放置でもいいという約束で引き受けたので、ボクはレース出走の手続き以外は基本放置でいいかなと思っていたのですが、理子ちゃんは同情して初日に3人分のトレーニングプランを用意しました。理子ちゃん、本当にフィジカル以外は有能なんですよね。その後噂を聞きつけて増えていく人たちのトレーニングプラン、レースプランを立てていますから、本当にすごいです。
若干理子ちゃんがブラック労働になりつつあるのは気になりますが、でもデビューもできないのかわいそうだし、と思うと断りにくいんですよ。
ただ、最後通告を出されましたから、これ以上は他の人に回しましょう。可児さんとか奈瀬さんなら引き受けてくれると思いますし、あとはメジロのトレーナーを無理やり引っ張ってきてもいいですし。
「副会長、そろそろウエルカムパーティやろうよー」
「わーい、やるやるー」
「え、え、え?」
困惑する新入りさん、ショートスリーパーさんの困惑は放置して、部屋が盛り上がります。
リコちゃん特製ケーキと理子ちゃん特製のお菓子と、ボク特性のロイヤルビタージュースが出てきます。
「ふくかいちょー、今回のRBJは?」
「マーク13、一番味がマシな奴」
「よし、みんな覚悟決めろー」
いいんちょーの掛け声でみんなロイヤルビタージュースを持ち、そのまま一気に飲み干します。
「かー、まずい!!!」
「雑草の味がする……」
「食べ物の味じゃない……」
みんなのやる気が下がりますが、体力回復効果がすごいのでなかなかやめられません。新入りさんも頑張って飲み干して、倒れました。まだ慣れてないから体が耐えられなかったようです。
ちなみにチームメイトのみんなは大体、ボクのことを副会長って呼びます。会長というとシンボリルドルフ、副会長というとボク、というのがかなり染みついているようです。副会長歴長いですからね……
「そういえばこの前、いい感じのマニキュア見つけたんだよね」
「へー、今つけてるやつ?」
「かわいいでしょー」
お菓子を食べながらそんなガールズトークも始まります。
正直何を話せばいいかほとんどわかりませんが、これでもウマ娘の端くれなので頑張って話についていこうとします。ほとんどわかりませんが。
「ふくかいちょーはマニキュアつけないの?」
「今もつけてますよ」
「? 何も色ついてないけど」
「色がないやつです」
爪の保護剤として付けているだけですからね。おしゃれとは程遠いものです。
「ふくかいちょってもっと乙女だと思ってた」
「ボクのどこに乙女要素が!?」
「着飾ると綺麗だし、いろいろ噂多かったし」
「噂?」
「奈瀬トレーナーといちゃいちゃしてたり」
「同期なだけですよ」
「可児トレーナーともいちゃいちゃしてたり」
「あれはボクの心のお母さんです」
「お母さんなんだ……」
「面倒見いいですし、会うたびにちゃんとご飯食べてるって聞かれますからね」
「マジでお母さんじゃん」
うちのママみたい、とツボに入って笑い転げ始めたのはクレセントエースさんです。
「あとはシリウスシンボリさんと仲良かったり」
「シリウスさんはボクの従姉ですから仲いいですよ」
「じゃあやっぱりラブラブじゃん」
「パリデートはしました」
キャー、と声を上げるみんな。
こういう話、好きですよね。
「あとはミスターシービーさんとか?」
「あの人は生徒会でのつながりだけですよ。業務的なことだったらいいんちょーの方がやり取り多くないですか」
「え? 私?」
フライドチキンに齧り付いていたいいんちょーは突然話を振られて動揺しています。実働の多くをやっていたいいんちょーの方がシービーさんが代行していた時は余程いろいろ話していたと思います。
「一度シービーさんには喫茶店でおごってもらったけど」
「デートじゃん!!」
「いいなー」
そのあとはどのトレーナーがカッコいいとかそういう話題へとシフトし、うちの理子ちゃんが一番かわいいという結論を持ってウエルカムパーティは終わりました。
「で、調子は戻りそうですか、マーリンさん」
「うーん、わかんないなぁ」
模擬レースの後、何となくずれを感じています。ピークオーバーも疑いましたが、そんな感じではないです。
共同通信杯は逃げを打ってフィジカルで押し切ることで勝利しましたが、桜花賞ではこんな雑な戦法で勝つのは難しいでしょう。共同通信杯ですら結構追いすがられましたし。
模擬レースに合わせて鍛えすぎたのかもしれません。
どうにか体調は戻そうとしているのですが、うまくモチベーションが沸き上がらない状態です。まあ、ルドルフとラモーヌ姉さまはボクにとって超えられない壁でしたから、それに勝って気が抜けてしまったのは否めません。
ただ、チームメンバーを増やしてワイワイとトレーニングしていると少しずつ調子が戻ってきているような気がします。
調整自体は順調ですが、桜花賞がどうなるか、まったく予断を許さない状況になりました。
【挿絵表示】
勝負服案
ラモーヌ姉さまが谷間でアルダンがデコルテ丸出しなので、マーリンは横を出してもらいました(謎)
メジロはみんな叡智すぎる。
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適当にウマ娘についてしゃべるディスコードサーバー
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そこそこ前から動いているディスコード鯖です。
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