ラモーヌさんとアルダンさんの姉妹の間に挟まれたメジロに転生してしまったお話   作:雅媛

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12 勝つということ 負けるということ

 未勝利クラスと一勝クラスの間には深い溝があります。

 未勝利戦というのはクラシックの秋までしかありません。

 そしてそれを過ぎると、参加できるレースはありません。格上挑戦という選択肢はなくはないですが、そこまでやるのは余程素質があって怪我をしてずっと出られなかったといった、例外中の例外です。

 強制的な引退。それが未勝利クラスの未来です。

 

 一方で一勝クラスになれば天国かというとそんなことは全くありません。

 未勝利戦やメイクデビュー戦は1開催日に4つも5つも開催されますが、一勝クラスのレースは多くて2回、開催されない日もあるぐらいです。

 時間制限はありませんが選択肢は未勝利の時代と比べると極端に狭まり、ライバルもより強力になります。結局勝てなければ、最後は引退するしかありません。

 

「こう考えると、勝っても負けても地獄だねぇ……」

「なんでそんなこと言うのマーリンちゃん……」

 

 この分析を話したところ、やっと未勝利から抜け出したいいんちょーはドン引きしていました。いやでも真実だと思うんですよ。一勝から二勝、二勝から三勝とクラスを上げても大変になっていくのは変わりないですし、それはG1に勝っても変わりません。

 まあなんでこんなことを言ったかと言えばあまり大きな意味はないです。

 単に未勝利を脱出するべく頑張るライトハローさんを見て頭をよぎっただけです。

 

 

 

 最初から担当しているウマ娘を未勝利に勝たせる、それはボクでも方法は思いつきます。

 地獄のように特訓すればいいのです。ボクがやっているような特訓を繰り返せばトレセン学園に入学できるだけの素質があるなら確実に一勝はできます。

 ただ、それだけの特訓をするだけの適性や経験、体質が必要で、それを身に着けるのが難しく、特訓ができるようになるまでに多大な時間がかかります。

 つまり、そのようなごり押しは今のハローさんにする余裕はないわけです。というか春ごろに加入した他のメンバーすらそういう手は使えませんでしたし。

 そうするとハローさんに合った、最大限有効なトレーニングを重ねつつ、レースをできるだけ多く走り勝ちを拾うのを狙う、ということになります。

 正直茨の道ですね。

 

 

「というかマーリンちゃんもティアラ三冠最後のエリザベス女王杯、大丈夫なの?」

「精一杯やっていますよ」

 

 夏合宿中特訓を重ねたボクの実力はかつてないほど高まっています。

 ローテーションはセントライト記念から直行というまた間隔が空くものにしていますが、春も似た様なローテーションでしたし問題はないでしょう。

 これで負けたら相手の方が上手だったとあきらめるしかできないでしょうね。

 世間は姉妹ティアラ三冠を望んでいますが、別にそこまで重要だと思っていませんし。まあ全力は尽くしますが。

 

 ちなみに同年代のクラシック戦線の方は、皐月賞を勝ったサクラスターオーさんとダービーを勝ったメリーナイスさん、阪神ジュニアステークスを勝ちながらクラシック戦線へ挑戦したゴールドシチーさんなど、群雄割拠状態です。タマモクロスさん、タマちゃんなんかは食が細いせいでなかなか体が出来上がらずに苦労してるみたいですね。未勝利から抜けたのも結構遅かったですし。

 みんながみんな苦労してるわけですし、ボクも自分なりに一生懸命やっています。

 

 そんな感じでボクは無事前哨戦には勝利をおさめ、調整も完璧に整えて、本番を迎えることになりました。

 

 

 

 さすがにここまでの二冠に勝っているわけですからボクが一番人気です。

 周りの視線がパドックの時からヒシヒシと突き刺さります。

 まあ観客からのいろんな視線が突き刺さるのは前からですが。

 そんなにエッチですかねぇ、この勝負服。単に腰まで切れ込みが入ってるハイレグと、胸元が空いていて谷間が見えるのと、そのほかの部分もぴったり体にフィットしてるから体の線が完全にわかる程度で、当然ですが大事なところはちゃんと補強してわからなくなってます。

 姉さまの勝負服だって胸の谷間思いっきり見えていましたし。まあURAがOK出しているからセーフですよねきっと。

 この勝負服を気に入っている理由は、軽さと空気抵抗の少なさによる速さです。ひらひらスカートは空気抵抗が気になってどうしても受け入れがたかったです。まあウマソウルの力の方が強いようで、気にならない人なら実力以上の力を出せるから差し引きプラスらしいですが。

 いつものように大量に写真を撮られながら、あっちに手を振りこっちに手を振り愛想を振りまきます。

 

 ここまではいつもですが、今回は、というか前回のセントライト記念の時もそうでしたが、ライバルの警戒もさすがにすごいですね。

 理子ちゃんとした事前分析では、下手すると全員ボクをマークしてくるかもしれない、という予想になっています。マークというのは結構厄介で、特に多人数にマークされると囲まれて直線で前に出る進路がなくなることもあります。

 

 このような状況における対処方法は二つ、一つは最後の直線まで脚を溜めて、最後の直線で一気に抜き去る方法です。お互いに相談してブロックしているわけではないですから、ラストスパートに入れば絶対ばらけて進路ができます。そこをついて一気に抜ける方法です。ただ、今回これは勝ち目が薄いと思います。

 ティアラ路線を走るウマ娘は比較的小柄で、その分末脚の切れ味は非常に良い子が多いです。一方ボクの方はまあアルダンほどじゃないにしても、いろいろ肉付きが良くて大きいわけで、全体的なスピード勝負ならまだしも、一瞬の速さ勝負になれば正直不利です。スタミナを残しておいてもいい勝負は難しいでしょう。

 となると……

 

『各ウマ娘一斉にスタートしました。スタンド前を使っての先行争いですが、メジロマーリン、いいスタートを切りました。先頭に抜け出すメジロマーリン、外から前をうかがうエイシングレシャス、間から抜け出そうとするトップコート。しかし先頭はメジロマーリン。ぐんぐんと差をつけて2,3バ身といったところです』

 

 こういう大逃げという選択肢になります。自分の能力で一番自信があるとしたらスタミナですし、体内時計でペースキープをするのは得意です。

 このまま早めのペースで先頭を維持していきます。

 京都の2400mはスタートから第一コーナーまでがそれなりに長いため、ポジション争いはそこまで激しくもならず、全体的に縦長な展開になっていきます。

 

『第一コーナーに入り先頭はメジロマーリン、リードは2バ身から3バ身。追走しますトップコート、そこから少し間が空いてエイシングレシャス、追いかけるストロングレディー。マックスビューティは後方に控えます。縦長な展開になってきました』

 

 他のウマ娘たちもかなり迷っているようです。ガンガン逃げるボクについていこうとするウマ娘と、スタミナ切れを狙って控えるウマ娘に完全に分かれたため、全体が非常に縦長になります。

 ボクは身体能力を生かした逃げで春の重賞勝っていますし、逃がしたらとらえきれないと判断したのはわかりますが、リードを稼がれても差し切るという判断をした子たちは、自信があるにしてもその胆力がすごいです。

 

『ここから頂上から下りにかかります。先頭はメジロマーリン。リードをさらに広げ5バ身から6バ身と引き離す。追走するエイシングレシャスは外にぶれる。後方集団は外に広がった。先頭はメジロマーリン』

 

 京都のコーナー前の坂を上り、第三コーナーから下り坂に入りますが、ボクはここからさらに加速します。体力的にきつくないわけではないですが、ここで一気に押し切るつもりです。

 京都のコースは基本的に直線に入ってからスパートをするのが正攻法です。第三コーナーから第四コーナーは下り坂で、ここでスパートすると外に吹っ飛んで距離のロスが厳しいからですね。

 まあその常識を破る人もいるわけですが、ミスターシービーさんとか。

 今回はシービーさんにあやかるのもあり、早めのスパートです。遠心力はすさまじくなりますが、この速度で内に切り込んでいけばさらにリードは稼げます。後方のマークしていた子らはペースを乱されてスパートタイミングを逃したり、外に吹っ飛んで行ったりしてわちゃわちゃになってくれているようです。

 完全にペースを握りました。

 

『先頭はメジロマーリン、リードは6バ身。これは強い。後方集団は懸命に追いかける。先頭はメジロマーリン。間から飛び出てきたマックスビューティ。徐々に距離を詰める』

 

 この状況で勝つのは2パターン、一つはシービーさんのようにコーナーの下り坂をものともしない狂乱の追込みをするという方法です。とはいえ、コーナー下り坂のスパートは末脚が鋭いほど難しくなりますし、三冠ウマ娘ほどコーナーリングがうまいメンバーはいないと読んでいます。

 そうなると最後の選択肢は、自分の末脚を信じて直線に入ってからスパートをかける、王道の戦術です。

 

 当然これをやるのは容易ではありません。気持ちよく先頭を走る、一番人気のボクを見てセーフティリードを稼がれているのではないかという不安を押し殺し、コーナーでスパートをかけたボクにつられず脚を溜め、直線で全力を出す。いうは簡単ですが、たとえG1クラスのウマ娘でも我慢するのは非常に難しいです。

 それができたからこそマックスビューティさんは猛追してきているのですが。

 

『200mを切った、先頭はメジロマーリン、マックスビューティ追いかける、マックスビューティ並んだ』

 

 もうちょっとセーフティリードを取れていたと思っていたのですが、残り1ハロンで追いつかれてしまいます。もうこうなると後は気合の勝負です。

 最後の力を振り絞り、差し返します。相手も無理して差してますから予想以上に限界だったようで、並んだあと突き放せていません。

 1cmでも距離を稼ごうと、前傾を強めて足首を使って走ります。こうなるともうこういった小細工も結果に影響したりするわけです。

 そのまま二人並んで、どちらが勝ったかわからない状態でゴールに飛び込みました。

 

 

 

 結果はハナ差でどうにか勝ちました。本当にわずかな差だったようです。

 わずかな差が絶対的な結果の差になるわけですからレースは怖いですよね。

 手を振るボクの後ろ姿を、彼女はどんな目で見ているのか。怖くて振り返ることはできませんでした。




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適当にウマ娘についてしゃべるディスコードサーバー
https://discord.gg/92whXVTDUF
そこそこ前から動いているディスコード鯖です。
気になった方はお気軽にどうぞ

マーリンちゃんのこの後は

  • もうお話終わりでもいいかな
  • トレーナーとしてアルダンにつく
  • オグリちゃんの方がいいよ
  • マックちゃんと仲良くしようぜ
  • いやドーベルちゃんでしょ
  • アヤベさんの担当になるんだ
  • タキオンお世話しないと干からびてそう
  • カフェちゃんとネコカフェをやるんだ
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