ラモーヌさんとアルダンさんの姉妹の間に挟まれたメジロに転生してしまったお話   作:雅媛

7 / 66
第三部 シンボリの二人のレース
7 親族づきあいというのは子供でも気を遣います


 メジロ家というのは比較的歴史のあるウマ娘の名家でありまして、当然ながらほかのウマ娘の名家とつながりがあります。

 メジロ家の場合シンボリ家とかなり結びつきが強く、親戚関係にあるウマ娘がお互い多数いたりします。例えばメジロ家の後輩であるマックイーンさんから見ると今目の前にいるシンボリルドルフさんは叔従母に当たったりします。そんな関係ですからお互い行き来は盛んで、シンボリルドルフさんやシリウスシンボリさんはボクたち三姉妹にとっても幼馴染に当たります。年齢も近いですしね。

 

「マーリンちゃん、トレーナー試験合格おめでとう」

「ありがとうございますシリウスさん」

「これ、合格祝い」

「わぁ、ありがとうございます!!」

 

 シリウスシンボリさんが合格祝いとしてボールペンをくれました。トレーナーになったら何かを書く機会が増えるだろうという配慮なのでしょう。かっこよくて大人になった気分です。

 ボクの前世記憶だとシリウスシンボリさんというとアウトロー気味のイケメン女子な印象ですが、実際のシリウスシンボリさんは優しいお姉ちゃん、という感じで全然印象が違います。美人なのはそうですけどね。

 

「マーリン、おめでとう」

「心がこもってないルドルフに言われてもなぁ」

「がるるるるる」

「ぎゃおー!!」

 

 シンボリルドルフも来て、一応お祝いの言葉を述べてくれますが、心がこもっていないのは一目瞭然でした。シリウスさんがお祝いを一緒に買いに行こうと誘っているに決まっていますが、何も持ってこない時点で考えがバレバレです。

 シンボリルドルフも、前世の記憶とは性格が全く違います。実際のシンボリルドルフは暴君ネコちゃんですね。すぐボクに突っかかってきて面倒なのです。ただやることが結構かわいらしいからまだ許容範囲ですが。

 お互い吠えていると、ラモーヌ姉さまが呆れたようにため息をつきました。小学校に上がってさらに色気が出ています。

 

「二人とも、まったく成長しないわね」

「成長しないのは向こうの暴君ライオン丸だけです! ボクは日々成長しています!!」

「どこが成長しているんだい? ちんちくりん」

「むきょー!!!」

「はいはい、二人とも騒がないの」

 

 身長が三姉妹の中で一番小さいのを指摘されて、ボクの怒りは有頂天です。ラモーヌ姉さまはまだしも、アルダンに抜かれているの結構気にしているのに……

 怒ったボクに対し、ルドルフはボクを見下ろしながら告げます。

 

「文句があるなら走って勝負しようか」

「嫌ですよ。そっちの得意分野じゃないですか。ボクはインドア派なんです。勝負ならラモーヌ姉さまやシリウスさんと走ってきてください」

「逃げるのかい?」

「ただ走るだけなら付き合いますよ」

 

 レース自体は嫌いではないが、現状の実力でいえばボクはこの5人の中で一番下です。ルドルフ、シリウスさん、ラモーヌ姉さま、ボク、アルダンという順番で全員年齢が1年ずつ違いますが、年齢差を加味してもボクは一番下です。というか年下のアルダンと比べても遅いですからね。

 これは才能云々以前に努力量の差です。トレーナー試験の勉強をしたり、漢方薬の調合の研究をしたり、笹針の打ち方を習ったりとインドアなことばかりしていますから、走るということに関しては努力してないんですよね。だから単純にほかの4人がすごいというだけですが、この暴君ライオン丸は時々こうやってレースを吹っかけてくるのです。結果わかってるだろうに。

 だから挑発されても乗る気にすらならないんですよね…… レースしてもいいんですが、結果が見えてて面白くないでしょう。

 

「ほらルドルフ、そうかっかしないで」

「うるさい!!」

 

 シリウスさんが仲介に入ってくれます。いつもならこれで終わるのですが、今日のライオン丸はご機嫌ナナメでシリウスさんの手も振り払いました。

 

「私より遅いくせに! 邪魔するな!!」

「っ!!」

 

 ライオン丸が吠えます。それ自体はいつものことですが、シリウスさんがそれを聞いてうつむきます。遅いくせに。ボクが言われたらまあそうだね、ということですが、シリウスさんにとっては致命的な何かだったようです。ライオン丸も、それに気づいて一瞬にして激情が覚め、ばつの悪そうな表情をしました。

 

「るーどーるーふー」

「えっ、あがががががが」

 

 そして切れたのはラモーヌ姉さまでした。年齢が近いですし、ボクやアルダン以上に付き合いの多いラモーヌ姉さまはその発言の意味を完全に理解していたようです。麗しい満面の笑顔で、ルドルフの顔面にアイアンクローをかましています。

 普段無表情がデフォルトなのに、怒るとすごい笑顔になるんですよね、ラモーヌ姉さま。笑顔とは威嚇の表情である、というのを体現しています。

 

「やれー、ラモーヌ姉さまー」

 

 アルダンはそれを見て、ヒーローものでも見ているかのように声援を送ります。いや、これそういう場所じゃないから…… でもかわいいから許す。

 

「ルドルフ、あなた、天狗になってない? 皇帝でいることは結構。傲慢であることも結構。それでも、今のはいただけないわ」

「じゃあ何だい? 君が私に勝つのかい?」

「いいえ、それじゃあつまらないし、侮辱されたのはシリウスよ。だから、シリウスが勝つわ。1月後に、あなたに。天才トレーナーであるマーリンの指導のおかげでね」

「えっ!? ボクが!?」

 

 急に無茶振りされて僕は動揺します。聞いてないよ!

 

「マーリン、できるわよね?」

「は、はい」

 

 姉さまの笑顔に思わずイエスと答えてしまいます。あの表情、答えはハイかイエスしか許さないと雄弁に語っています。

 満面の笑みのラモーヌ姉さまとルドルフ、困惑するシリウスさんとボク、そして楽しそうなアルダンという状況で、戦いの火ぶたは切られたのでした。




評価お気に入り・感想お待ちしております。

次はどんな話にしようかな(10話以降)

  • 三姉妹のちびっこレース
  • メジロ87年組との絡み
  • 同期トレーナーとの絡み
  • 早く学園編に入れ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。