ラモーヌさんとアルダンさんの姉妹の間に挟まれたメジロに転生してしまったお話   作:雅媛

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8 勝負というのはやってみないと分からないです

「ラモーヌ姉さま、勝手に決めて……」

「あら、感謝してくれてもいいのよ?」

 

 あの後、シンボリルドルフ激おこぷんぷん丸状態で帰っていって、シリウスさんだけメジロ家に残りました。1月の間、メジロ家で特訓するためです。

 ここまで全部ラモーヌ姉さまが決めていて、ボクは完全に蚊帳の外でした。今はシリウスさんはアルダンと遊んでくれていて、ボクはラモーヌ姉さまと作戦会議です。

 

「むぅ」

「ほら、大好きなお姉ちゃんにいいところ魅せなさい」

「そうなんだけど……」

 

 あの瞬間、結構頭に来ていたのはボクも同じでして、ラモーヌ姉さまの素早い動きで冷めたというのはあります。シリウスさんを慕っているボクとしては、あの暴君ライオン丸に一泡吹かせてやりたいのはボクも一緒です。

 ただ、勝てるかどうかはまた別の話です。

 

「ラモーヌ姉さまから見て、シリウスさんとルドルフの間にはどれくらい差がありますか?」

「現状で勝負すればルドルフ100、シリウス0ね」

「その差はどこから来てますかね?」

 

 知識の多さというだけなら前世知識もありトレーナー試験の勉強もしたボクの方が上ですが、人を見る目、ということならラモーヌ姉さまのほうが上なのはボクも認めるところです。さらに二人との付き合いも深いラモーヌ姉さまなら、なぜ勝てないか、がわかるのではないでしょうか。

 

「執念、よ」

「執念?」

「あなたがルドルフに勝てないのと一緒」

 

 問題は、ラモーヌ姉さまの言うことがあまりにポエミィすぎて解読が必要だということです。これだから天才肌は…… これを即座に読解できるルドルフはすごいとボクでも認めざるを得ません。ボクもアルダンも、雰囲気でしか理解してませんから。

 

「マーリン、あなたがルドルフに勝つ方法を考えればいいのよ」

「ふむ、そんなものですか」

「シリウスとルドルフの差は、あなたとルドルフの差よりよほど少ないもの」

 

 二人の知る限りのことを頭の中で思い浮かべると、そう大きな差がなさそうに思います。シンボリのメニューを真面目にこなすシリウスさんと、やりたい放題だけどすさまじい努力家のルドルフです。

 スピード、スタミナ、パワー、そのあたりは確かにルドルフさんのほうが上ですが、その差は微々たるものですし、理論通りのシリウスさんのほうが我流のルドルフよりも安定していますから、負け越すならばわかりますが一度も勝てないというのは少し不思議です。

 おそらく原因はこれだろうという目星は付けました。一度確かめることにします。

 

 

 

「ということでみんなで一度レースをします」

「マーリンちゃんがレースしようなんて提案するのは珍しいね」

「姉妹では時々してますよ」

 

 あのライオン丸はうるさいからしたくないだけです。負けるとマウント取ってくるし。必然的にシリウスさんとする機会も減っているだけでしかないです。

 

「レースは1000m、コーナーありです。枠順は年下が内側で」

「かまわないよ」

 

 年下のほうが不利ですから、こういう時には有利な内枠は年下、という暗黙の了解があります。その通り、いつものように並びました。

 

「アルダン、スタートの合図をお願い」

「はい、よーい、スタート」

 

 アルダンの掛け声で、メジロ三姉妹&シリウスさんのレースが始まりました。

 

 

 

 さっさとボクは予定通り、一番走りやすいポジションを取ります。普段ならほかのメンバーがどう動くか見える位置にいますが、今回は勝つために ベストポジションを早々とって、まったく譲らない戦法です。

 独占力、といわれるルドルフさん得意の戦法です。いいところに常にいるから本当に邪魔なんですよね。ラモーヌ姉さまがボクに競りかけてきますが当然ですがまったく譲るつもりもありません。接触ぎりぎりまで来ても引かないボクを見て、一度離れます。さすがにルドルフのようにタックルまでしてくるつもりはないようです。

 絶対に譲らないボクと、譲らせようとするラモーヌ姉さまのやりあいで、あとの二人は自分のペースが取れなくなっているようです。それに焦れて、爆発したのがアルダンでした。

 

「ああああああ!!!」

 

 大外からの強襲です。コーナーを抜けるときの遠心力も使って加速したそのスパートは圧倒的な速度を誇っています。ただ、まだ早いんですよね。

 一瞬一番をとった後、スタミナ切れを起こしたようで、どんどん速度が落ちていきます。そんなアルダンを尻目に、ボクは悠々とスパートをかけました。

 ちょっと外によってラモーヌ姉さまの進路を垂れてくるアルダンに重ねれば、ラモーヌ姉さまもスパートに失敗します。シリウスさんも後ろでウロウロしているだけでスパートのタイミングを逃したようです。このままボクは悠々と一番でゴールに飛び込んだのでした。

 

 

 

「これでわかりましたよ、シリウスさんが勝てない理由」

「ね、言ったとおりでしょう?」

「できれば負けた私にやさしくしてくれるといいんだが」

「そこです、勝とうとする意志が足りません」

 

 周りに合わせて走っているのですから、これでは勝てません。

 正直ボクも同じ傾向があります。レースより誰かと走っているのが楽しいものですから、レースになってもだれかに合わせてしまうのです。

 今回は心を鬼にしてルドルフのマネをして、自分の走りを貫き、ラモーヌ姉さまもそれに付き合ってくれたからボクが勝ちました。普段のままではとても勝てなかったでしょう。

 

「ウサギはカメを見ていた。カメはゴールを見ていた、です」

「ふむ?」

「ウサギとカメでなぜカメが勝ったか、です。メジロではこう言い伝えられています」

 

 同じように考えればわかりやすいですが、ルドルフはゴールを見ていて、シリウスさんはルドルフを見ているわけですから勝てるわけがありません。

 

「荒っぽくて安定しないルドルフに比べて、シリウスさんは真面目に積み重ねてきた安定した技術があります。自分の持ち味を生かせばそうそう負けるとは思いませんよ」

「……」

 

 思い当たるところがあるのでしょう。シリウスさんは一瞬うつむきます。

 

「私が勝てると思えば、勝てるかな」

「自分を信じ、ゴールを見つめればきっと」

 

 年齢差も考えれば、実力はシリウスさんのほうが上といってもいいでしょう。

 あとは勝つための精神力だけです。そういうとシリウスさんは晴れ晴れとした表情をしました。

 

「それなら、頑張るよ」

「はい、とっても頑張ってください!」

「……ん?」

「レースまで1月もあるんです。特別トレーニング、しましょう?」

 

 さて、敗因分析がわかったわけですから、あとは改善するだけです。幸い1月もありますからいろいろなことができます。

 

「食事から改善する必要があるわね。何にしたらいいかしら」

「スペシャル薬膳ver.6.2がいいかと思います」

「この前、シェフがver.7.0を考えたといっていたわ。不味いけど体にいいって」

「じゃあそれにしましょうか。実験かねて」

「なんか実験とか言う不穏な言葉が聞こえたのだけど?」

 

 当然実験です。ボクたち三姉妹の体質はかなり改善されましたが、体質改善プロジェクト自体は今も続いていますからね。最近考えているのは薬膳料理ですが、これが不味いんですよ。体にいいことしか考えていないので味が最悪で、それを少しずつ改良していっている最中なのです。バージョンの小数点以下が大きいほど味の改善がされていますので、7.0はかなりヤバいです。

 でも、体にいいのは疑いがないから大丈夫ですよきっと。

 

「アルダンも手伝います!」

「じゃあ、4時間走に付き合ってもらって」

「わかりました!」

「なにそれ……」

「アルダンは走るのが好きすぎて、ずっと走っているんですよ。具体的には4時間ほど。なのでそれに付き合ってください。大丈夫です。精神力も鍛えられますよ」

 

 走ることに一番魅入られているのがアルダンで、体質改善が進んでからは本当に延々と走り続けているのです。ボクは早々に付き合うのをギブアップし、ラモーヌ姉さますら時々付き合うので精いっぱいの、ただただ走り続けるという狂気の沙汰だったりします。アルダンの将来が楽しみですね。

 それを1月も続ければ精神力も鍛えられるでしょう。無心で走る、禅の概念ですよ。

 

「お泊まりなのでかなりトレーニングできますよね。1日10時間ぐらいやってみましょうか」

「……」

 

 嬉々としてトレーニングメニューを組むボクにシリウスさんの目は死んでいました。




評価お気に入り・感想お待ちしております。

アンケート的に次が同期トレーナーの話になりそうなのでご意見募集中
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=303235&uid=349081

次はどんな話にしようかな(10話以降)

  • 三姉妹のちびっこレース
  • メジロ87年組との絡み
  • 同期トレーナーとの絡み
  • 早く学園編に入れ
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