せっかく転生したんだからネコ嬢を一目見たい   作:ワザップシャガル

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前編

 

 

 転生した。

 

 何言ってんだこいつと思うかもしれないが状況的に転生したとしか言えないのだから仕方ない。

 

 しかし、転生したと気付いたはいいものの、意識が覚醒した直後に感じたのは何か固い殻に包まれている感覚。つまりは卵の中、そもそも転生先が人間じゃないと来た。

 

 やっとの思いで卵の殻を割り、慣れない四足歩行と生まれたばかりで上手く目を開けられないせいで四苦八苦しながら這いずっていると、ザラザラした触感の湿っぽいものが身体中に触れてきた。

 

 それから体感で数時間が経ちようやく目が開いたので目の前にいたのはモンスターだった。特徴的なのは銀色の鱗と甲殻に覆われた流線型のフォルムと独自の形をした翼脚……つまりはバルファルクだ。ちなみに例のザラザラしたものは親龍の舌だった。

 

 

─────天彗龍バルファルク、それは俺の大好きなモンスターである。

 モンスターハンターXXで初登場した古龍にあたるモンスター。やはり、最大の特徴は他のモンスターのように翼を羽ばたかせて飛ぶのではなく、翼の先端部から出す「龍気」と呼ばれる赫い炎のようなエネルギーを使って超高速で飛行することだろう。しかも、この龍気、攻撃にも使える便利なエネルギーである。

 また、直線を爆速で飛ぶだけでなく、翼の角度や噴射する龍気の威力やを調整することで、空中でホバリングを行ったり急カーブをしたりと、他のモンスターと比べてもその飛行能力は圧倒的と来た。

 しかも高速で飛行してる最中でも海中を泳ぐ獲物を捉えられるくらいには眼がいい。

 

 

 そして、転生してからはや数日、この飛行能力と目の良さを最大限に活かす方法を俺はふと思いついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 せや、ネコ嬢ちゃん見つけたろ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ひょっとしたら『そもそもネコ嬢って誰』という人もいるかもしれないのでまずはネコ嬢の説明からしよう。

 

 彼女はMHXで初めて登場したオトモを斡旋してくれるキャラ、過去作でのネコバァにあたる役割の人物だ。

 彼女はまず第一に可愛い。とにかく可愛い。その可愛さからXのEDとXXのEDで天に召された人も多いだろう。かくいう俺もその一人だ。

 それから声がいい、何せCV上田○奈だ。良くないわけが無い。

 (ミルシィ)も好きだが、やはり俺はカティの方が好きなんだ。だらしない古龍ですまない……

 

 

 そして、そんな彼女に会うためにその日からはとにかく飛行練習を繰り返す日々。

 

 龍気の作り方に関してはバルファルクとして生まれたからか何となく分かっていたが、一つだけ問題が発生した。

 

 どうやら俺は突然変異的な何かで龍気を生成する気嚢が異常発達しているらしい。

 そもそも、バルファルクは龍気を生成する器官でもある気嚢が翼を貫通して呼吸を一方通行にすることで酸素効率と龍気を噴射する翼の冷却効率を底上げしているらしい。しかし、俺の場合は酸素効率と龍気を作り出す機能だけが発達してるくせに冷却効率は大して変わらない。

 つまり、龍気を連続して使い続けると排熱が間に合わなくなるのだ。

 

 

Q.そんな状態で飛び続けたらどうなるでしょうか

 

A.(俺の場合は)翼がアツアツになって冷えるまで飛べなくなります。それでも無理して飛ぶと多分翼がぶっ壊れます。

 

 

 バルファルクなのに飛行時間に制限が付けられるとはこれ如何にと言った感じだが、そうなってしまったものは仕方ない。

 また、気嚢の異常発達のせいか俺の場合は龍気の見た目も通常種とはかなり違う。

 通常の龍気は赫い炎みたいな見た目なのに、俺のはなんか青い上にピカピカ光ってる、表現的には『GN粒子を青くしたやつ』というのが一番近い気がする。俺がガンダムだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 と、まあそんなこんなで数年。巣立ちの日が来た。この数年間、ルドロスを狩っては食べ、アプトノスを狩っては食べと狩りと飛行の練習を積んでるうちに思考はかなりモンスター寄りになったと思う。

 両親は『お前本当に大丈夫か?』とちょっとバカにしたような感情を向けてきているような気がするが気のせいだろう。

 軽く唸って大丈夫だということを伝え、周辺の空気を頭と胸の吸気口から取り込んでいく。

 そして、両親がじっと見つめる中、生成した青い龍気を一気に翼から放出した。

 

 

 

 

 

 空を飛びながら勢いのままに水中を泳ぐルドロスを捕まえ、捕食していたらふとあることに気付いた。

 

 モンハン世界に転生したとは言ってもネコ嬢がいる時代って確定したわけじゃないじゃん。

 

 …………はてさて本当にどうしたものか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 困った困ったと空を飛んで各地を放浪していると、とある集落…から少し離れた所にある花畑を俺のバルファルク's アイ*1が捉えた。

 

 金髪碧眼、猫耳のカチューシャ、ワンピースのようなゆったりとした服。間違いない。ネコ嬢(カティ)ちゃんだ。

 翼の向きを調整して花畑に直進、更に少しずつ龍気の放出量を減らして減速。最後の最後に体ごと翼の向きを地面に向けその場で一瞬ホバリングしてから花畑に着陸する。

 

 

「……え?」

 

 

 

可愛いでちゅね〜^(キィィィィィィィン)*2

 

 

 目の前の少女は耳を押さえたまま何もかもを諦めた泣きそうな瞳でこちらを見ている。

 やっちまったぜ。

 

 

 それから一時間あまり、敵意がないことを示すために何もせずその場で横になっていたらようやく向こうも察してくれたのかこちらに近寄ってきた。

 

 

「モンスター?でもこの辺りじゃ見た事ない種類だし……」

 

 

 意外と肝が座っているのか、逃げずに俺の周りを歩きながら甲殻やら翼脚やらを観察している。

 

 

「それにムーファみたいに大人しい……」

 

 

 バルファルクの飛行能力でも往復で一日はかかる位置にある標高の高い山の広いスペースを一時的な巣とし、それから三日から四日に一度のペースでこの花畑に来るのが習慣になった。

 

 

 

「聞いてください!お母さん達、ミルシィにかまってばっかりで…」

 

 

 会話……という名のネコ嬢ちゃんから俺に対しての一方的な話を聞いているうちに分かったのだが、どうやら今のネコ嬢(カティ)一家は(ミルシィ)が生まれたばかりらしい。*3

 また、その話の内容から察するにこの前飛行中に見えた集落は竜人族の集落かと思われる。

 つまりはネコ嬢がベルナ村で働き始める前の年代だということ。

 

 それから一つ気になったのが何故かネコ嬢の喋っていることが完璧に理解出来ていること。生まれてこの方モンハン世界の言語には触れてこなかったが意外と頭がいいのかそれとも言語チートなのか…まあ、知るための術も無いしこれは深く気にしても仕方ないことだろう。

 

 

「彗星さん、こんにちは!」

 

 

 彗星さん?なんだそれと思い、顔を上げると少し期待を隠せないでいる顔があった。あら可愛い。

 

 

「いつまでもモンスターさんって呼ぶのも悪いかなって思って家の図鑑で探したんですけど見つからなくて」

 

「それで初めて会った時に彗星みたいに飛んでたから彗星さんって名付けたんですけど……どうですか?気に入ってくれましたか?」

 

 

 やっぱり色が違くても龍気の尾を引きながら飛ぶのは下から見ると彗星に見えるのだろうか。

 そんなことを考えながらも軽く縦に頷くとニコニコしながら周りの花を摘み始めた。花を摘んでいる様子を眺めていると前世の頃にシリーズ通して何度も聞いたメロディーが聞こえてきた。

 

 

 

 これは…歌?(某ジョー)

 

 

 

 歌っちゃらめぇぇぇぇ!!!成仏しちゃうぅぅぅぅ!!!!となったがすぐに冷静さを取り戻す。

 そう、これは英雄の証のサビだ。鼻歌なので歌詞はついていないがあの特徴的なサビを聞き間違えるはずがない。

 

 

 そこで龍になったおかげで前世の頃よりも遥かに優れた聴覚が何かを踏みしめてこちらに歩んでくる音を捉えた。

 少なくともモンスターでは無い。足音から判断するに人型、恐らくは竜人族の集落の誰かしらだろう。

 

 

「カティ、こんなところにいたのか。最近は変なモンスターの目撃…目……撃………」

 

 

 現れたのは竜人族の青年だった。その服装から判断するにハンターではないが、自衛用のためか片手剣を装備している。ほんの少しの間、呆然としていた青年がはっと我に返り片手剣を抜き放ってこちらに向かってきた。

 

 

 仕方ない。

 

 

 あの片手剣はバルファルクの装甲にとっては痛くも痒くもないだろう。だが、流石に攻撃してきた相手を何もしないまま見逃すということが出来るほど人としての理性が残り切っている訳でもない。

 

 殺しはしない、別に食べる訳でもないのに殺すのは割に合わないから。威嚇の意を込めて足元に少しだけ龍気を放つだけだ。巻き込まれて怪我をしてもそれはそれこれはこれ。

 

 すっかり定位置と化した花畑の一角から立ち上がり龍気を溜めたところで竜人族の青年と俺の間に小さな影が乱入してきた。

 

 

「待ってお父さん!」

 

 

 

 

 は?

 

 

 お父さん???

 

 

 

 いや、確かに竜人族は実年齢に比べて見た目は若い。それでも目の前の青年はどこからどう見ても10代後半から20代前半くらいにしか見えない。この見た目で2児の父親ってマジ?

 

 

「カティ、離れろ!未確認のモンスターだぞ!」

「で、でも彗星さんは大人しいしさっきも本気で攻撃するつもりじゃ」

「……ん?カティ…?お前、その目は……」

 

 

 これはしばらく終わらなそうだ。

 目の前で何やら言い争っているのを後目に、再びその場に腰を下ろす。

 すると、何やら小さい黒い物体がモゾモゾと動いていた。その物体が俺に見られていることに気付いたのか……

 

 

「わぉ!」

 

 

 驚いたような声を出してぴょんと跳ねた。黒髪と黒い大きなリボンというメラルーを思わせる出で立ち、それから姉と同じ色の瞳と一度聞いたら頭から離れない声は言うまでもなく

 

 

「「ミルシィ!?」」

 

 

 カティの妹のミルシィであった。ちなみに、この後二人は父親に引っ張られて帰っていった。

 

 

 

 

 

 それから数日後、カティとミルシィが改めてやってきた。

 

 

 

「彗星さん、改めまして私の妹のミルシィです」

「よろしく!」

 

 

 なんでも、俺を見た直後に斬りかかってくるくらいには慌てていた父親が集落の長と話したら渋々とだがここに遊びに来ることを認めてくれたらしい。そのときついでにミルシィの方も遊びに来るのを認めさせたとか。見た目と違って意外とちゃっかりしてる姉妹である。

 

 

「彗星!今日は背中乗せて森の方まで連れてってよ!」

「もう!流石にそこまでしてもらうのは……え、いいんですか?」

「じゃあ飛ぶのは?」

「飛ぶのは流石に危ないから無理だって」

「え〜」

 

 

 

 

 

 

 数週間後にはカティとミルシィの一家が揃ってやって来た。

 どうやら子守りをしていると思われてそのお礼に来たらしい。

 

 

 一ヶ月後にはカティとミルシィ一家以外の竜人族がやって来るようになった。

 この頃から徐々に、飛行する俺に気付いた竜人族が手を振るようになってきた。

 

 

 

 三ヶ月後には集落の竜人族がこぞってやってきた。なんでもこの時期は雪が降って非常に冷えるらしく、そんな季節には龍気を放った後の俺の翼脚は暖を取るのにちょうどいいらしい。

 

 人里離れた秘境にある単一部族の集落と聞くとどうしても排他的な場所を想像してしまうが、意外にもこの集落はそんなことは無いそうで割とオープンなのだが立地が悪すぎて滅多に人が来ないと言う。

 

 自分の周りに竜人族が集まって談笑をして、時折こちらにも声をかけてくる。騒がしいのは嫌いだが賑やかなのは嫌いじゃない。身も心もモンスターに傾ききったと思っていたが思っていたよりも人としての自分も残っていたらしい。

 

 

 

 

 …バルファルクの性質上、いつの日か他の龍脈を目指して旅立つ日が来る。でもそれまではこんな日々を楽しんでもいいだろうか。

 

 

 

 

 

 巣に戻って目を瞑ると、ふと違和感を感じた。

 

 違和感の正体はすぐに判明した。

 この巣を作った山はちょうど龍脈の流れの上に位置していてその恩恵にあやかって豊かな生態系を確立している。

 その龍脈が来た時に比べると、明らかに痩せている。

 これはかなり大きな問題だ。確かに俺も龍脈からエネルギーを吸収することはあるけれど、それは生態系に影響が出ない範囲で収めている。ただ、今の痩せた龍脈でエネルギーを補給すれば下手したら龍脈のエネルギーが底を突きかねない。

 

 

 少し調べてみるか。

 

 

 

 思い立ったが吉日、龍脈の流れを遡る形でおよそ一週間。

 

 

 砂漠を超え

 

 

 水没林を超え

 

 

 火山の上を通過している時に原因と思しき物を見つけた。

 

 立派な鬣と角を持ち王と妃と呼ぶに相応しい気品を携えた赤と青の一対の龍。炎王龍テオ・テスカトルと炎妃龍ナナ・テスカトリ、炎そのものと言っても過言では無い力を持つ古龍がそこにはいた。

 そして、青い片割れが自分の体を守るように卵を温めていた。

 

 繁殖と子育てのために龍脈の上に引っ越してきたのか。ここは大人しく引いて別の場所に引っ越そう。

 …バルファルクはクールに去るぜ。

 

 

 

 

と、そんなこんなで龍脈が痩せた原因を突き止め、いつもの花畑に戻る最中にあるものを目にした。

 

 

 あの集落の付近一帯を覆うように広がったとてつもなく発達した雨雲。

 試しに高度を落としてその雲の中に突っ込んでみれば中はとんでもない暴風、豪雨、稲光とまさに地獄絵図と言った様子だった。

 

 

 

 だが、その中でも雨雲の中心で確かに捉えた白い羽衣のような飛膜と金色の角。

 

 

 それはただこちらをじっと見つめており、動く様子は無い。

 しかし、そこには確かに嵐が在った。

 

 

(ああ、そういうことか)

 

 

 先日見た炎王龍と炎妃龍のようにそこにいるだけでは無い。確実にこちらの存在を認識してその上でここにいる。

 目の前の存在はただ俺に喧嘩を売りに来たのだ。しかし今の状況では分が悪すぎる。

 俺と入れ違いでこの地方に現れたのなら一週間近くここで俺の事を待っていたはず。ようやく姿を表した目的の相手を目の前にして翼の冷却を何時間も待ってくれるほど優しくはないだろうが、とりあえず嵐の外で龍気を補充してから─────

 

 

 

 

 

 次の瞬間、いつもならそこにあったはずの場所が無くなっていた事に気付いた。

 

 

 

 

 

 

──────竜人族の集落は?

 

 

──────あの暖かい春のような記憶を刻んだ花畑は?

 

 

──────こちらに手を振ってきた竜人族の民は?

 

 

──────何よりもカティとミルシィ(あの二人)は?

 

 

 

 分かっているとも、竜人族は何百年も生きるような種族だ。きっと天災に遭遇しても生き延びれるくらいの知恵はある。

 

 

──────それでも

 

 

 許せないものは許せない。

 

 

 

 そして俺は体内に残ったありったけの龍気を解き放った。

 

 

 

*1
雲の上を超高速で飛行中に水中を泳ぐルドロスを捕捉出来るくらいには凄い

*2
咆哮【大】

*3
竜人族感覚での生まれたばかりなので10年近く経ってる

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