せっかく転生したんだからネコ嬢を一目見たい 作:ワザップシャガル
───────ああ、腹が立つ。腹が立つ。
───────「『この怒り、どうしてくれよう』」
「…おねーちゃん、大丈夫?」
瞳が自分の知っているモンスターの甲殻と同色に変わった上に、物騒なことを呟いている姉の様子を心配するようにミルシィが声をかける。
「……ん?ごめんね、ちょっとぼーっとしてた」
ここは竜人族の集落から離れた山中にある開けた土地。晴れとまでは行かないが、それでも嵐の中心近くにあった集落に比べれば雨も風も弱いこの土地に、仮の住まいを作ったカティ達竜人族は集落の男を数人、近くの村の窓口まで遣ってハンターズギルドに古龍出現の旨を伝えさせに行った。
「おねーちゃん、さっきからなんだか変だよ。怖いことばっか言うし」
「そ、そう?覚えてないんだけど……」
「絶対そう!彗星も帰ってきたと思ったら嵐に飛び込んじゃうしさ〜」
残った竜人族は嵐の中に向かって突き進む見慣れた青い彗星を発見してから、皆揃って嵐の中心を向いていた。
一方、件の嵐の渦中では二匹の龍が対峙していた。
片や、金色の角と白い羽衣のような飛膜が特徴的な嵐の現身─────嵐龍 アマツマガツチ
相対するは、他種には見られない独自の進化を遂げた翼を持つ銀色の彗星─────天彗龍 バルファルク
初手でバルファルクが残った龍気を余すことなく使い、地面から100m程上がったところに浮遊していたアマツマガツチを奇襲して、つい先日まで花畑があった場所に引きずり落としてからこの二頭の睨み合いは始まった。
まずは嵐龍について。
この個体はアマツマガツチとしては珍しく縄張り意識がそこまで強くない。しかし、その代わり各地をフラフラと巡ってはそのお眼鏡に適うモンスターに片っ端から喧嘩を売っては力と技を磨く…言ってしまえば武者修行をしてきた生粋のバトルジャンキーである。
そして天彗龍について。
こちらは言わずもがな中身は前世の記憶を持った人間である。モンスターとしては通常種と違い気嚢内の龍気を生成する機能が異常発達したことにより、放つ龍気の色が青へと変化した特殊な個体である。
そんな二頭は、片方は風をその身に纏い、もう片方は龍気を生成するために吸気口をフル稼働しながら睨み合っている。
「オオオオオオオオオン!!!」
「キィィィィィィィィン!!!」
互いに咆哮を上げたのを皮切りに戦闘が始まった。
先に動いたのは嵐龍。まずは小手調べとして高水圧で岩すら容易に斬り裂く水流ブレスを放つ。
それに対し、天彗龍が選択したのは、槍翼とも言われるその翼を自身の身体の前で構えて龍気の光線を放った。
両者の放った技は一瞬拮抗し、激しい音を立てて爆発する。
嵐龍が水弾ブレスを放てば天彗龍が龍気を放ち
天彗龍が翼で刺し貫こうとすれば嵐龍はサマーソルトで翼を弾き対抗する。
そんな一進一退の攻防を何度も繰り返し、互いの体表の鱗や甲殻、飛膜も所々剥がれ落ちたところで、天彗龍が勝負を決めに行った。
「『まだ、終わらない』…?」
再び碧の瞳が銀色に変わっていたカティが呟く。
「見て、あれ」
そして、カティの呟きに呼応するようにミルシィが空を指さす。最初に比べてかなり薄く規模も小さくなった灰色の雨雲を突き破ったその先には、紫の光が灯っていた。
元々長時間の飛行で翼の冷却を必要としていたところに戦闘による龍気の使用。
酷使に次ぐ酷使、耐熱性の限界を超えた槍翼が熱で赤く光る。
そんな翼から放たれる龍気は翼とは対照的に青い光を放つ。
龍気の青と超高熱になった甲殻の赤、二色が交わり地上からは紫の星のように見えていた。
そんなことも露知らず、天彗龍は嵐龍の真上を中心にして上空を旋回する。
天彗龍自身の質量に更に加速によるエネルギーを加算した最大威力の突進、即ち─────
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古龍観測隊より本部へ
先日確認された嵐龍アマツマガツチと未確認の古龍の戦闘の後、近隣の集落に住む竜人族と共に件の古龍に接触。各部の特徴より、我々はこれを長らく絶滅したと考えられていた天彗龍バルファルクと断定。
人に対する敵意、及び人里への被害は現状では見られないため、早急な討伐の必要性は無いと判断する。
また、ごく稀に見られる、共鳴と呼ばれる現象をこの個体との間に発現した竜人族の少女の助力を得てこの個体の観測を継続する。
カティの目の色の件はヒノエとミノトと風雷夫婦みたいな共鳴です。