いや、すみません。ある話を越さないと書けないんですよ・・・。ちさたき早く書きてぇ・・・
草津インターナショナルホテル最上階。
中央部のエレベーターホールでは銃撃戦が発生している。
「撃て撃て!
エレベーターホールに6人、非常階段は4人のリコリス達が集結し、俺とみずほは拳銃、俺たち以外の全員はサブマシンガンで敵を牽制する。
襲撃対象の居ない方の非常階段は既に我々リコリスが確保している。
え?サブマシンガンは用意できなかったんじゃないのかって?俺を舐めるなよ?北押上駅で使用したサブマシンガン8丁全部を借りパクしてスーツケースの中に詰めてきたんだよ!
本部や楠木さんからの返却の催促は無いからヨシ!
コレで敵の注意をこちらに引き付け、もう1つの非常階段から対象を避難させようと誘導しようとする。
無線で警備室にいるエージェントから対象が制圧してない方の非常階段に向かって移動し始めようと準備を始めたと連絡が入る。
ドア前の護衛が部屋の中に入ったらしい。コレはチャンスだ。今しかない。
俺はサッチェルバッグからスタングレネードを取り出すと、廊下の角の死角に向かって投げる。
一瞬の閃光が見えてから角から顔を出し、先程投げたスタングレネードで廊下で銃撃していた護衛が、同時に非常階段から投げられたスタングレネードで非常階段の護衛が無力化されているのが確認できた。
「GOGO!護衛は死んでも構わん!」
「了解!」
廊下の護衛2人と非常階段の1人はすぐに無力化できたが、もう1人はすぐに復活し、こちらにサブマシンガンを向けてきた。
俺はすかさず男に向けて拳銃を撃ちながら走って近づく。ポスポスと防弾チョッキに弾があたる。効果は無い。
男はフラフラしながらサブマシンガンを乱射。それでも俺は走るのをやめない。
─────っ
何かが頬を掠った。多分銃弾。痛みは無いが多分、血は出てるだろう。
血を拭うこともせずそのまま走り続け、男に全体重をかけてよろけさせる。
その隙をついてサブマシンガンを持つ両手を吹き飛ばすと、男は苦痛で呻き声をあげながらサブマシンガンを落とした。
ほぼ満身創痍状態になった男の下顎にマズルをあてた。男は憎悪の顔で俺を睨んでくる。
これは俺たちの仕事なんだ。
「────悪く思うなよ」
俺は引き金を引いた。
これにて外部にいる護衛は全員片付け終わった。あとは部屋に押し入るだけだ。
全員でこくりと頷き、スタングレネード片手に半開きのドアのドアノブに手をかけようとする。その時だ。
───コトン。
「ん?」
何かが落ちる音がした。下を見ると、そこにはスタングレネードが1つ。
コレはリコリスのものでは無い。
「スタングレネードだ!」
俺がすかさず指示を出すが、全員が無力化されるのは決定事項。その後の運命は一瞬で蜂の巣だ。
────コレはまずい。
「貸せっ!」
「キャッ!?」
俺はちょうど横にいた2人のサードリコリスからサブマシンガンを2丁強引に奪い取り、スタングレネードが炸裂すると同時にドアを力いっぱい開け、ドアの死角とドアの2箇所にサブマシンガンを撃ち込んだ。
さすがの護衛もスタングレネードを投げ込んできてすぐ反撃が来るとは思っていなかったのか、ドアの死角やドアの裏に隠れたまま俺の銃弾に倒れた。
「動くな。ここはもう包囲されている」
俺は部屋に残るメガネのひょろ長男性にサブマシンガンの照準を向ける。
「ふふ、ははっ!お前らか!頭達を殺した殺し屋達は!」
男は、自身の銃を頭に向けている。捕まったら基本拷問。そして最後には殺される。そんなことになるならここで死んだ方がマシ、という判断だろう。
俺も同じ環境になったら同じことしそうだけどな!
この距離なら銃だけを確実に吹き飛ばせる。吹き飛ばせるのだが・・・
先程の護衛を倒した時に弾を全て使い果たしてしまっていた。本来だったら弾数を数えるべきなのだが、いかんせん他のリコリスが使ってたのを半ば奪い取ったのを使っていたため数えられなかった。
ワイヤー銃や拳銃もあるのだが、どちらもサッチェルバッグの中。変えようと動いた瞬間自決されそうなのでなかなか動けない。
「何だ、弾切れか。残念だったな!」
男は狂気に満ちた目で笑う。後ろにいるリコリスたちを見るが、全員ぐったりとしている。
男の指が引き金の方に向かっていく。万事休すか───
ッターン
発砲音。男の拳銃がすっ飛んだ。
こんな好機はないとすぐに感じとった俺はすかさずバッグから取り出したワイヤー銃で男の動きを封じる。
コレで驚異が無くなった俺は一息深呼吸すると誰が撃ったのか気になり、後ろを向いた。
撃ったのはみずほだった。
グレネードの影響で、フラフラしながらであったが確実に拳銃だけを撃ち抜くことができていた。さすが俺のセカンドなだけある。
「みずほ・・・」
「私・・・、頑張ったでしょ・・・?」
フラフラと立ち上がりながらニコリと笑った。
「ああ。今回のMVPだ」
俺は、みずほの頭をゆっくりと、そして何度も何度も撫でた。
DA本部、司令室。
そこにはいつも通り、楠木司令と司令秘書が話し合っていた。司令の机には、ファーストリコリス近藤結衣についての書類が何枚か転がっている。
「近藤結衣の特異性ですか・・・?」
司令から〝近藤結衣の特異性は知っているか〟と問いかけられ、秘書は首を傾げた。
「ああ。彼女に音や光の兵器は効かないんだ」
「そんなのどうやってるんですか・・・?」
訓練された兵士でも動きが止まってしまうグレネード。それが効かないというのは、戦場でのかなりのアドバンテージになり得ることであった。
「彼女の場合、炸裂する一瞬のみ目や耳の機能を無にすることで効果を無効にできる」
「錦木千束とはまた違った能力ですね」
「だが、同じところもある」
感心する秘書に、楠木はそう告げた。
「どちらもDAの外で生活している特殊なリコリス。そして───」
錦木千束はリコリコ支部に、近藤結衣は本部所属ながらも本部外で生活するというリコリスとしては異常な存在である。
そこまで言われたら秘書は何か重要な事を言われるのでは、と身構えてしまう。
そんな様子を見たのか、それとも、ファーストリコリスの2人を考えていたのか楠木はフッ、と笑った。
「どっちも生意気なクソガキだ」
「ちなみに酒井みずほは?」
「アイツはクソ尼だ」
先程までの笑みは消え、言い切った司令だった。
ホテルでの戦いから2日後、俺たちは上野行きの特急に揺られていた。通路側の席に座る俺の横でみずほは美味しそうに草津で買った弁当を頬張っている。
あの後、ホテルは一時閉鎖された。カバーストーリーとして水道管の破裂という異常事態でホテルに宿泊していた俺達は別のホテルに移動することになった。
移動後も普通以上のグレードの部屋、さらに和室というみずほがウッキウキになること間違いなしの部屋だった。
「いやぁー、まさか任務後2日間も草津に居させてくれるとは思わなかったよ!」
結局、司令は任務後2日間も草津に滞在する許可をくれた。成功したからかな?
ともかく、みずほが元気そうなのは良かった。それとくらべて俺は何弾か顔を掠っていたためもう顔中、絆創膏まみれや・・・。あぁ^〜殺してえぜ、あのクソ商人の部下。
「楠木司令さまさまだな。司令に感謝しろよ?」
「はーい」
みずほは感謝しているのかしていないのかよくわからない返事をした。多分口だけだから絶対司令に感謝してねーだろコイツ。
俺はため息をつきながらリクライニングシートに深く腰かけた。
しばらくみずほとたわいのない話をしていると、スカートのポケットに入っているスマートフォンがバイブレーションを出した。
シートから立ち上がり、デッキへと向かう。着信者は、何度か任務で一緒に行動していたぽにーてーのサードリコリスだった。
用がないのに珍しいな、と思いながら通話のボタンをタップした。
「はい、近藤結衣」
「結衣さん、助けてください!」
電話口から、ポニテの必死そうな声が聞こえてきたのだった────