転生後はリコリコの常連になりました   作:しがみの

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襲撃

銃撃で2箇所に傷を作られた俺は咄嗟に走り出し、ジグザグに動きながら建物の物陰に隠れた。

 

急な襲撃、リコリスは普通は世間一般に公表されていない。もしかすると、DAで対処できなかった事案が発生し、それに巻き込まれたのかもしれない。

 

そんなことを考えながらも追っ手が来ないことを確認し、サッチェルバッグの中に入っている応急処置キットを出そうとする。

 

しかし、応急処置をすることはできなかった。

 

「よお」

 

俺の後ろに、真島が拳銃片手に立っていたからだ。

 

・・・いつの間に。

 

夏にも関わらず、真島は赤いアロハシャツの上に黒のロングコートを羽織っている。見ているだけで暑苦しくなってくる。

 

「白髪のリコリス探している時にまさかマスクのリコリスが見つかるとはな」

 

思いがけない出会いに真島はニタリと笑う。それに対して俺は不快そうに真島を見つめる。

 

ペアのくせにこんな肝心な時にはみずほの姿はない。いつだってそうだ。前の台場でサードリコリスを救った時だってそうだし、その次の品川で襲われていた時、どちらもみずほは過去に楠木司令に文句を言っていたせいで任務に無理矢理連れ出されていた。ペア解消した方が良くね?

 

あークソ。

 

「チッ・・・」

 

準備不足な状態に現れた、予想外な来客に俺はわざと相手に聞こえるように大きく舌打ちをする。

 

「おいおい、敵の親玉に会えたのにそれは無いんじゃないじゃないか?リコリス」

 

真島はニヤニヤしながら俺を見つめてくる。

 

「なあ、よくも俺たちの計画を台無しにした挙句手下を大量に殺しやがったな・・・」

 

「テロリストに言われてもちっとも心に響かねぇよ」

 

そのニヤニヤには怒りと狂気、どちらも混じっていたが所詮相手はテロリスト。全く心にある良心には響かなかった。

 

「お前、どこで俺たちの計画を知ったんだ?」

 

「説明書を読んだのよ」

 

某動画サイトで大人気の映画のセリフで応えると、真島は通じなかったのか最初〝あ?〟と言っていたが、途中勝手に閃いてうんうん首を縦に振り始めた。

 

「お前、洋画通じる系か?」

 

「一部はな」

 

まあいい。そう言うと真島は銃をコートの中に仕舞った。どう転んでも情報を引き出せないと察したからだろう。

 

「なあ、その赤い服。お前は強いんだろ?」

 

サマーパーカーの間からチラチラと覗かせていた赤いファーストリコリスの制服。それを見た真島はそう答えた。

 

多分、真島側についているハッカー、ロボ太の入れ知恵だろう。全く余計な事しやがる。

 

「だったら俺を楽しませてみろよ!」

 

突然、真島が右ストレートを出してきた。情緒不安定かよ。

 

もちろん真正面から繰り出されたパンチは完全に俺に見えているため、避ける。

 

右ストレートが来たのなら、次は左。それも避ける。キックも来るが、訓練されているリコリスに比べたら屁でもない。

 

「ふっ!はあっ!」

 

真島は何度も何度もキックとパンチを俺に向けて繰り出してくる。しかし、普通に避けられるし、その気になれば銃で殺すこともできるほど隙だらけだった。

 

「おいお前、何で俺を殺さない。この距離ならすぐに殺せるぞ。殺すのがお前の仕事だろ?」

 

真島がそう言ってくるが、俺には真島を殺せない。

 

いや、殺すことができない。

 

本当は殺したい。今すぐにでもバッグから拳銃を出して眉間を撃ち抜きたい。コイツのせいで何人の罪なき人々が殺されたか。

 

しかし、真島はリコリス・リコイルにおける超がつくほどの重要人物。ここで殺してしまうとこの先の原作ストーリーに悪影響を及ぼしてしまうことがほぼ確定だ。

 

これ俺が殺されるか逃げるかしないとこの先の原作ストーリー的に詰んでないか?

 

「俺の仲間はバカスカ殺してるのに俺を殺せないのはバランスが悪いよなぁ?」

 

はいはいバランスバランス。好きだなぁ、その言葉。

 

俺は真島の攻撃を避け続ける。真島の体力が尽きるまで逃げの一手の作戦に打って出た。

 

 

 

しばらく避け続け、もう少しで真島の体力も尽きるだろうと思っていた。

 

思っていたのだが───

 

「!?」

 

避ける際に足が絡まり、よろけてしまう。

 

「ラッキーィ!」

 

そのような好機を真島が見逃すわけがなかった。すぐに右ストレートを喰らい、吹き飛ぶ。

 

吹き飛んだ身体がアスファルトに打ちつけられ、何回かバウンドする。

 

「あっ───、ガァ・・・」

 

痛みで何とも言えないような声を出してしまう。

 

ヨロヨロとしながら立ち上がろうとすると、すぐ真島に頭を掴まれた。

 

「なァ、何で俺を殺さない?その銃はオモチャか、よっ!」

 

「カハッ・・・!」

 

みぞおちにパンチを喰らい、その場に座り込む。

 

「ゴホッゴホッ、ゲホッ・・・。ハア・・・、ハア・・・」

 

「休ませる時間があると思っているのか??」

 

俺が座り込んだのを利用し、真島は思いっきり右足で俺の頭を蹴った。

 

頭がクラクラする。しかし、間髪入れずにみぞおちに再びキック。

 

呼吸が過呼吸になる。マスクが口に張り付き、呼吸が苦しくなる。

 

今は自分の身体の健康よりも安全だ。俺はマスクを剥ぎ取り、地面に投げ捨てる。

 

「おいおい、チャームポイント捨てちまうのか?お前の死体にはなくちゃならないものだろ?」

 

真島は笑いながら俺の首根っこを掴んで持ち上げ、眉間に拳銃を突きつける。

 

「残念だったなぁ。お前、敗因は何だかわかるか?」

 

「殺せるのに・・・、お前を・・・、殺さなかったからだ・・・」

 

俺の答えに、当たり前だと言わんばかりに真島は笑う。いい加減黙らないとその頭吹き飛ばしてやるぞ?

 

「ああ、そうだ。何か最期に言い残したいことはあるか?」

 

真島は油断しきっている。その隙をついて俺は懐に忍ばせておいたスタングレネードを手に取る。

 

「・・・ある」

 

「何だ。言ってみろ」

 

余裕なさそうに言葉を発する俺を見る真島はまだまだニタニタとしている。いつまで余裕そうにいられるかな?

 

「・・・ファーストリコリスへの襲撃を採点してやる」

 

「あ?採点・・・?」

 

最期の言葉にふさわしくなかったのか、真島は一瞬ポカンとする。

 

「100点だよ」

 

俺は後ろでスタングレネードのピンを抜き、手から離す。

 

「まさか・・・!」

 

洋画で殺される時のセリフだと気づいた真島はすぐに引き金を引こうとする。しかし、それよりも先にスタングレネードが落下し、炸裂。

 

「ぐァァァ・・・!」

 

耳の良い真島にとっては音系の兵器はやっぱり弱点だったらしく、銃を落として頭を抱えながらしゃがみこんだ。

 

俺はこれを好機と見て逃げ出した。

 

「逃げるぞ!」

 

「追え追え!」

 

真島から離れて様子を伺っていた手下たちが異変に気づいて逃げ出す俺に気づき、拳銃片手に追いかけようとする。

 

めんどくさいなァ・・・。

 

殺すのも面倒くさくなった俺は走りながら適当にグレネードを何個か投げつける。

 

効いてるかどうかなんて見る余裕もなく、とにかく全力疾走でこの場を逃げ出す。

 

残りの体力なんて考えていなかった。ただ、この場からすぐに離れたかった。

 

10分程疾走し、もう少しで東西に走る大通りに出られるところまで来た時、はっ、と気づいた。

 

〝この姿では出られないのでは・・・?〟

 

今の俺の顔は真島に殴られたせいでところどころ腫れており、顔や腕には弾が掠ったことによる傷から出血している。さらにサマーパーカーも少し破けており、大通りなんて出たら即人目について一発職質コースだろう。

 

バッグの中身を見られたら真島と出会った時とは別の意味で人生が終わってしまう。

 

俺は大通りに向かう道を引き返し、近くの公園に向かうことにした。

 

住宅地に挟まれた、アスファルトで舗装された小さな公園には、街灯とベンチが2つずつ設置されており、数本の観葉植物が植えられていた。

 

「痛てて・・・」

 

俺はその公園のベンチに座り、真島によって負わされた傷の手当をし始めた。

 

もしかしたら真島たちに見つかるかもしれなかったが、傷を手当する前に大通りに出るのは流石に避けたかったため、俺はこの場で手当をするしかなかった。

 

 

「凄いケガみたいだけど、だいじょーぶ?」

 

しばらく経ち、治療も真島たちに見つからないまま終えようとしていた時、声をかけられた。女性の声、しかも聞いたことがある。

 

「お、リコリスじゃん」

 

顔を上げると目の前には赤いファーストリコリスの制服の上に黄色いポンチョを着ている錦木千束が。

 

「マジか・・・」

 

今1番会いたくない人物に出会ってしまったのだった・・・。

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