喫茶リコリコがこの地に開店してから早10年。最初は私とミカ先生、中原ミズキの計3人で切り盛りしていたお店だった。
今ではこの3人に加え、たきな、くるみ、常連のみんなで仲良くワイワイしているお店になっている。
さてさて、このリコリコには常連さんが何人もいる。その中でもユイちゃんは私と同い年の高校生だ。
ユイちゃんは、高校に進学した時に名古屋から引っ越してきて、その時からリコリコに通い続けている常連さんだ。
喫茶店の本場、名古屋ということで何か知ってないか聞いてみたところ、名古屋にいた時はあまり頻繁に喫茶店には行かなかったらしい。残念・・・。
さてさて、私がユイちゃんと呼んでいる、近藤結衣はたきなに似た黒髪。その黒髪をセミロングまで伸ばし、シュシュでまとめて左肩から前に下ろしている。
1番特徴的なのは、年がら年中マスクをつけていることだろう。暑い日も関係なく、だ。
1回彼女に理由を聞いたことがある。その時のユイちゃんの答えは〝風邪をひきやすいから〟だった。
確かに、ユイちゃんは季節の変わり目や冬場は風邪をひいていたような記憶があるし、その時期はリコリコに来ない日が多かったような気がするし、咳をよくしていたように思う。
そして次に特徴なのは、とても荷物が多く入っていてパンパンになっているリュックサックを毎日欠かさず持参しているということだ。
そんな荷物を抱えてどこに行くのかと思う。私もたきなも過去に理由を問いかけてみたことがあった。その時の答えは、〝学校で使うものが入ってる〟だった。
〝そんな訳あるかい〟
これが私とたきなの共通認識だった。というのも、彼女のようにかなり容量の大きく、登山用のリュックサックを満杯にして歩いている学生なんて、少なくともここら辺では見ないからだ。
さらに、彼女のリュックサックからはガチャガチャという金属音がなっており、おそらく拳銃やそういった類のものが入っていると推察できる。
ただ、もしそうだとしたら
「どうしたんです、千束。そんなに考え込んで」
珍しく座りながら腕を組んで考え込んでいた私の姿を見たたきながおっかなびっくりと聞いてきた。何やら重要な作戦とかでも考えていたと思ったらしい。
「んー、ユイちゃんのこと考えてた」
「結衣さんですか・・・」
作戦ではないと気づいたたきなは、興味無なそうに席を立とうとしたが、ふと、ある事を思い出して再び私の前に座った。
「そういえば結衣さん、何か口にする時以外はずっとマスクしてますよね。何でですか?」
何故か?リコリスからしたらこの疑問が出ることは普通らしい。まあ、確かにそうだ。私は直接聞いたから知っているとはいえ、マスクをするのは普通、病院の時か流行病がある時くらいだ。
この時、私たちは伊達マスクというものを知っていなかった。
「実は昔クラス全員を無意識にインフル感染させたらしいよぉ〜。だからマスクしてるんだって」
もちろん冗談だ。ニヤニヤしながらたきなにそう言うと、たきなはピクっと何かを感じ、すぐにスマホで何か調べ始めた。
「ん?何してんの?」
この時私は直感的に嫌な予感がした。
「防護服買ってます」
たきなのスマホの画面を覗き込むと、通販サイトで本当に防護服を買おうとしていた。マジか・・・。
「ちょいちょいちょい!」
防護服を買おうとするたきなを必死に止める。ここを隔離施設チックにするつもりか。
「インフルで
「冗談、冗談だから!」
まさかDAがインフルの集団感染対策などしていないはずがないと、どうにかたきなをなだめ、防護服購入はキャンセルした。
後日、たきながユイに集団感染の発端になったかどうか聞いてしまった。しかも、その返答が何も無くただただ気まずそうに苦い顔をしただけだったため、その後防護服購入阻止ミッションラウンド2が開催されたのはまた別のお話である。