転生後はリコリコの常連になりました   作:しがみの

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挿絵描いてみました。下手ですが、そこは許してください・・・。


救出

川沿いの道を私とファーストの少女が小走りで走りながら辺りを確認する。

 

しかし、辺りは人っ子一人見当たらない。本当にこちらの方向に逃げたのか?私は名乗らなかったファーストリコリスを不審に思う。

 

『見つけた!位置を送る!やられてるぞ!』

 

「ありがとうございます!」

 

「サンキュークルミ!」

 

私たちのスマホにクルミからの位置情報の入ったファイルが送信され、開けるとマップに赤印がついていた。

 

ここから近い。走っていけば10分足らずで着ける。

 

「行きましょう!」

 

「ああ!」

 

私とファーストで走り出して土手を登る。

 

暗くなっている河川敷だが、遠くの方では車のライトで照らされているのか明るい箇所が1箇所だけあった。

 

マップを見ると、千束がいるところと完全に一致する。

 

間違いない、あそこだ。あそこしかない。

 

「二手に別れよう!」

 

「はい!攻撃は私が行います!ファーストさんは行き詰まった時に補助をお願いします!」

 

ファーストの提案に私が意見した。

 

通常、リコリスなら敵は皆殺し。だからそうなるのを防ぐために私だけが攻撃し、詰んだ時だけ攻撃してもらうということだ。普通のファーストリコリスなら受け入れてくれないだろうか───

 

彼女はグッとサムズアップをしてきた。了解、の意味だろう。

 

さて、私が敵を殺さなかったらどうなってしまうのか───

 

 

そう思いながら私は彼女と別れ、河川敷の藪の中に隠れる。

 

藪の中から千束の様子を確認すると、千束の目の周りは赤く血塗られており、目潰しされた状態と同じだった。あの状態では能力を発揮できないらしく、緑髪の男にボコボコにされていた。

 

「ゴム弾じゃなく、実弾にしとけば良かったなぁ!」

 

完全に流れは敵側になっており、千束は押されていた。

 

「いーぞ!やっちまってください!」

 

「流石だぜー!」

 

真島(まーじま)さーん!」

 

男に何回か殴られ、周りでは手下たちが野次を飛ばす。いや、アンタらは参加しないんかい。ま、その方が楽になるから良いのだが。

 

「なあ、お前の使命はなんだ?ソレ」

 

男の言葉で千束がフクロウのキーホルダーを握りしめた。ここからは男が何を言っているのかはわからないが、おそらく胸元についてるキーホルダーについてだろう。

 

「アランのリコリスか・・・。面白いなぁお前」

 

男は千束に銃を向けた。

 

あっ、マズイ。殺されてしまう。

 

私は、千束に拳銃を向けている男の拳銃に弾を当て、銃を吹き飛ばした。

 

「うわっ!」

 

「がァ!」

 

「足がぁ!」

 

「どこからだ!」

 

手下たちに準備する暇すら与えないようにすぐに手下たちの腕や太ももなどを狙撃し、動きを止める。

 

ただ、何人かは私の銃撃に気づき、車の陰に隠れ始めた。

 

・・・マズイ。千束を回収するのに手下たちが邪魔になってしまうし、ここから狙撃は車の影でできない。

 

・・・移動するしかない。

 

そう思い、移動しようとすると、車の陰に隠れた手下たちが急に声を出して倒れ始めた。

 

あのファーストリコリスが狙撃したのか?だとすると彼らはもう・・・。

 

そう考えながら移動しようとすると、手下たちが呻き声をあげながら少しずつ動き始める。彼らを確認すると、弾が当たっているのは足や手、腕、太ももなど、すぐには影響のない部位だった。

 

・・・全て急所ではない。

 

まさか私に合わせてくれている?

 

そう思いながら射撃を継続していると、千束自身に余裕が出てきたのか、落とされてしまった拳銃を拾い、手下たちに攻撃し始める。

 

流れは敵側からこちら(リコリコ)側に変わり始めていた。

 

そんな中、赤いSUVが河川敷に現れる。リコリコの車だ。

 

SUVは河川敷を走ると、千束にほど近い場所に止まり、後部座席のドアが開く。

 

「千束、乗れ!」

 

店長が後部座席から千束を手招きしており、千束もそこに向かって走っていく。私やファーストも遅れをとらないように走り出す。

 

千束が駆け込み、それに続いて私も後部座席に飛び込む。

 

「狭い・・・」

 

「詰めてください・・・!」

 

2人で後部座席に押し込まれたため、2人で呻き声をだす。真ん中に大柄の店長が座っている形だからキツイのは仕方がない。

 

「どうする!?出す!?」

 

『乗ります!待ってください!』

 

ミズキが車を出そうとするが、すぐにインカムにファーストの声が聞こえてくる。窓の外を確認すると、銃弾の雨の中、1人のファーストリコリスがこちらに向かって走ってくる。

 

間違いない、彼女だ。

 

「早く!」

 

銃撃が酷くなる前に、ファーストリコリスは助手席に滑り込むことが出来た。

 

「よし、出せ!」

 

「ばっちこい!」

 

ファーストがドアを閉める前にミズキがギアを動かして車を急発進させる。少し彼女が驚いていたが、すぐにシートに座りシートベルトを締めていた。

 

後部座席と助手席から銃撃を行いながら車は大通りに向けて走る。

 

が、そんなに私たちを逃がしたくないのだろう。ピンク色の軽自動車が私たちの乗る車に向かって走ってきた。

 

弾を撃ちこもうにも、無人運転車であるため効果は見込めない。

 

「おいおいおいおいおい・・・!」

 

ミズキがどうにか避けようとしたが、リコリコのSUVと軽自動車は側面同士で衝突した。が、ミズキが上手く当ててくれたおかげでこちら側の被害は軽微、相手側の軽はバランスを崩して東屋に突っ込んで止まった。

 

「おい!RPGあるぞ!しかも2人!」

 

「ムリムリムリ!」

 

「弾切れです!」

 

「俺もだよ!」

 

ファーストが敵のRPGに気づいたようだが、私とファーストは弾切れ、千束は弾からして当てられない。ファーストのところは、窓を開けるとミズキに当たってしまう可能性があるため、あまり開けたくはなかった。

 

『1つはボクが何とかできるが、もう1つは無理だ!』

 

1つは、クルミがドローンを当てることにより、ロケランが軽自動車に突っ込んで行ったのだが、もう1人はこの段階では倒せない。

 

どうしようか・・・。

 

 

 

 

 

 

 

「俺がやる!これ貰いますよ!」

 

「え?ええ・・・」

 

ファーストがそう言うと、困惑するミズキを無視して車の中にあったボールペンをポケットの中に入っていたシュシュと合体させて即席のパチンコを作りだし、ボールペンを発射した。

 

そんなん当たるわけ・・・

 

「ギャッ・・・!」

 

当たった!?嘘やろ!?

 

ボールペンは男の顔に当たり、照準が大幅にズレたのかRPGを発射するのをやめた。

 

「よし!」

 

いや、いやいやいや。こんなんありえへん・・・。ファーストってこんなんばっかりなんか・・・?

 

『よし!やったな結衣!凄いなお前!』

 

「おい、クルミ!」

 

「「「ん?」」」

 

クルミの嬉しそうにファーストを呼ぶ声が聞こえてくるが、ファーストは慌て始め、名前を聞いた私たちの頭に一瞬だがははてなマークが浮かび上がる。

 

「結衣・・・さん・・・?」

 

結衣さん。言われてみればそうだ。髪型を除けば見た目も声も結衣さんそのもの。まさか、まさか常連がリコリスなんてことは無いだろう。

 

「まさか、常連の近藤結衣ちゃん!?」

 

「クルミ・・・」

 

そう思っていたのだが、千束がすぐに気づいたのか大きな声で彼女に問いかけると、ファーストはハァ、とため息をついた。

 

『ゴメン・・・』

 

インカムの先からはクルミの申し訳なさそうな声が聞こえてくる。

 

まさか、結衣さんがリコリスだったなんて・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私たちは、無事・・・、無事?リコリコに戻ってきた。1人増えたが。

 

そんなリコリコでは、クルミが私に土下座している。前にDAがハッキングされた際の犯人はクルミだったそうだ。

 

「たきな、ごめん・・・!」

 

クルミはそう言いながら額を床に押付けている。後ろではミズキさんが〝言ってやれ!〟と囃し立てる。確かに、私はDAがハッキングされ、指揮系統が混乱して結果的に作戦失敗したからここに左遷された。でも───

 

「アレは私が行った行為の結果であり、クルミのせいではありません。もちろん、最後まで手伝って貰いますが」

 

そう、あの後挽回などいくらでもできたはずなのに軽機関銃の引き金を引いて生け捕りにするつもりの目標も含めて皆殺しにしたのは私だったからクルミのせいではないと、考えていた。

 

だから、クルミはそんなに謝らなくていい。もちろん、犯人を探すのには手伝って貰うのだが。

 

「ああ、もちろんだ!」

 

クルミは嬉しそうに顔を上げたのだが、結衣さんの方を見るとまたすぐ額を床に押し付けた。

 

「結衣もごめん・・・。名前すぐにばらしちゃって・・・」

 

今度は結衣さんの正体をバラしてしまった罪だったらしい。というか、クルミはいつから結衣さんがリコリスだと知っていたのだろうか。

 

「いつかバレそうな気はしてたし、気にしてないよ」

 

「本当か!?」

 

私と結衣さん、2人に許されたクルミはぱあっと顔色を明るくして顔を上げる。

 

「ああ。それよりも・・・」

 

結衣さんにとってはそんなことよりももっと大切なことがあったらしい。それは───

 

「ごめん、ずっとリコリスだってこと黙ってた・・・。リコリスだったら常連と同じように対応してくれないと思って・・・」

 

私たちに謝ることだ。結衣さんは、自身がリコリスであることを隠していた私たちリコリコのメンバー全員に頭を下げている。

 

「そんな事ないよ。リコリスであってもなくても、結衣はリコリコの常連だよ。ねえ、たきな」

 

店長から治療を受けている千束がそう言いながら私の方を見てくる。私はそれに頷く。

 

「はい。それに結衣さんは、リコリコに無くてはならない存在ですから」

 

「それって常連として?それともリコリスとして?」

 

私の言葉を聞いた結衣さんは、そう言いながら首を傾げる。

 

「常連として、ですよ」

 

もう結衣さんは他の常連さんと同じくリコリコの一部になっている。このリコリコには無くてはならない存在だ。たとえリコリスであってもなくても、だ。

 

「制服で来ても良いのに」

 

「・・・頑張ってみる」

 

千束の言葉に、結衣さんは少し言葉を溜めて返す。すぐにじゃなくていいさ、と千束は言いながらクルミの方を向く。

 

「で、クルミはいつ頃から知ってたの?」

 

そう、クルミはいつからこれを知っていたか、ということだ。何ヶ月も前から知っていたらよくここまで隠し通せたな、と思うのだが・・・。

 

「今日の昼からだ」

 

え?今日の昼?き、今日・・・?

 

「え?バレるの早過ぎない?」

 

ミズキがそうツッコむと、深夜のリコリコの中に少し笑いが広がったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その次の日の午後。いつものように夕方現れた結衣さんは、いつもの髪型であるのだが、ファーストリコリスの制服で現れた。

 

「で、もう制服で来るの?早すぎじゃない?」

 

いつものように団子セットを持っていく千束が半ば呆れながら結衣さんに聞く。

 

「いや、なんか着替えるのとリュック持ってくるのめんどくなったから」

 

そう言いながら結衣さんは、千束から受け取った団子を頬張る。

 

やっぱりファーストリコリスは変わった人が多いのかもしれない。そう思いながら私は結衣さんを見たのだった。

 

 

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