転生後はリコリコの常連になりました   作:しがみの

7 / 23
本部での俺

あの爆破テロ後に俺は本部に招集され、みずほは本部付属の医療棟に入院していた。

 

リコリスやってると自他関係なく人の死が軽くなってしまう自分が嫌になってしまう。

 

爆破テロと逃げ出したテロリストの報告を楠木司令にした後に死亡したリコリスの事務手続きを行った。こういったこともファーストの仕事だ。

 

みずほは担ぎ込まれてから約半日で目を覚ましたこともあっただけでなく、目立った外傷も無いためにすぐ退院かと思われたが、大事をとって約1週間入院となった。

 

1週間。たかが7日間だが、その期間だけでも訓練を怠ると、あっという間に実力は落ちてしまう。

 

みずほはセカンドだ。最低限の実力を持って復帰しなければ直ぐに医療棟送りか死ぬだろう。退院後はみっちり訓練を行った。作戦を成功させられる可能性を、そして、みずほが生き残れる可能性を1%でも上げるために───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最終日の昼食休憩の時だった。DA内の食堂で昼食の日替わりA定食〝豚肉の生姜焼き〟を受け取ろうとした時、周りからコソコソ話が聞こえてきた。

 

〝ねえ、あの人ってまさかマスクのファースト?〟

 

〝え?・・・マジだ。本当に居るんだ〟

 

俺の噂だ。ファースト昇格と同時に愛知支部から東京支部に移動した俺だったが、籍はあるのにリコリス寮には住んでいないという謎な状況になっている。

 

そのためか、今の俺は〝マスクのファースト〟という東京支部内の噂と化している。いや、マスク取りたくないし、何でリコリスってほとんどマスクしないんだろう。俺めちゃくちゃ浮いてるじゃん。

 

〝口裂け女って話は本当なのかな・・・?〟

 

〝私、サイボーグだって噂聞いたんだけど〟

 

〝何それターミネーターかよ。ご飯持ってるから違くね?〟

 

〝じゃあ強化人間とか?〟

 

〝それ実質人間辞めてね?〟

 

作戦や本部内ではたまに見るのに寮に居ない。噂が広がり、それに尾ひれがついてしまうのは当然だった。

 

ただ、事実無根な噂しかないのだが・・・。俺、普通の人間だぞ?ターミネーターとか強化人間とかではないぞ?

 

「どうしたの?」

 

しばらくカウンターで料理を受け取るフリをして噂話を聞いていると、みずほが声をかけてきた。みずほが手に持っているトレーの上には日替わりB定食の鮭の西京焼き定食が載っていた。

 

「ん?いや・・・?」

 

「噂なんて気にしなくて良いのに・・・」

 

「うん・・・」

 

誤魔化したはずだったが、みずほは俺の内心に気づいていた。やっぱり愛知支部時代からの長い付き合いである彼女には敵わない。

 

改めてそう感じた瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

「あのっ!マスクのファーストさんですよね!」

 

みずほとの昼食が食べ終わり、食器を返却口に置いた時、ある1人のサードに話しかけられた。

 

だけど、彼女の顔は見たことがない。いや、DA内でチラッと見たことならあったかもしれない・・・。まあ、そんな程度の認識の少女だった。

 

「え?あ、うん。そうだけど・・・」

 

「えっと・・・、その・・・ありがとうございます!」

 

「え?」

 

急にお礼を言われたため、困惑する。誰だって出会って直ぐにお礼を言われたらそうなる。

 

何かお礼されることでもやったかな?と疑問に思った。

 

「地下鉄事故の時に任務についてた白河香織のルームメイトです」

 

白河香織───確か地下鉄テロ時の所属はD班だったか。死亡者の手続きは今日行ったが、その名は無かった。地下鉄テロの生存者なのだろう。

 

「カオリが生きているのは貴女のお陰なんです・・・だからお礼を言いたくて・・・」

 

泣きそうな目で訴えてくる茶髪のショートヘアの少女は頭を下げる。

 

「本当にありがとうございます!」

 

「あ、いや───」

 

お礼だけ言い、少女はさっさと頭を上げると駆け足で食堂から出て行ってしまった。

 

「嵐の様な子だったね」

 

唖然としている俺の姿を見たみずほは微笑した。

 

 

 

 

 

 

 

 

ようやくみずほのリハビリも終わり、DA本部から解放された俺たち2人はDAの最寄り駅から特急で新宿まで出る事になった。

 

中央本線を走る白色に紫色のラインが入った9両編成の特急電車。指定席の1番後ろに座っているが、速達タイプでは無いため、少々混んでいるが空席がそこそこみられる。

 

「長かった・・・」

 

「やっと解放されたね」

 

俺とみずほは互いに伸びをして軽く身体を整える。

 

「やっとリコリコに行ける・・・」

 

「いつもそればっかり・・・」

 

俺がポロッとこぼした言葉にみずほは不満を顕にする。他の女と一緒に居るのが嫌なのか?お?そうなのか?

 

嫌そうに腕に抱きついてくるみずほの頭を何回かゆっくりと撫でると、気持ちよさそうに目を細めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後は新宿駅で特急を降り、制服と同じ色の地下鉄に揺られる。新宿から5駅。

 

その駅から数分歩いたところにあるタワーまでとはいかないが、高層の部類に入るマンションの中に入った。

 

オートロックのあるこのマンションは、セキュリティ万全だという謳い文句で売り出されている。

 

実際、襲撃される可能性がある俺達リコリスが住むのには充分な物件だ。

 

え?オートロックだけだと不安?誰がこの物件のセキュリティがオートロックだけだと言った?

 

 

 

 

自宅の玄関扉を開けると、自宅内はもぬけの殻。だが、安心して欲しい。これが普通だ。

 

部屋の奥に行き、中にあるウォークインクローゼット。そこに入ると、下に降りるハシゴがある。

 

ハシゴを降りると、そこにはさっきのもぬけの殻の部屋とは違う、生活感のある部屋が現れたではありませんか!

 

そう、コレがリコリス達が支部外で生活する場所、セーフハウスだ。余程のことがない限り隠れ部屋は見つからない。

 

ここはセーフハウスでもあり、都内で活動するリコリス達を支援する俺達2人だけの実質的な支部である。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。