転生後はリコリコの常連になりました   作:しがみの

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パンツ

7月も下旬。どんどん暑さも上がっているが、夏本番とはまだまだ言えない時期。

 

喫茶リコリコはいつも通りガラガラで常連さんが数人のみ。

 

「だから、こう」

 

「こう・・・ですか・・・?」

 

「いやいや、こうやってーチンアナゴ〜」

 

私はたきなにチンアナゴのポーズのやり方を教えている。やりたい放題なのがリコリコの良いところ。

 

チンアナゴのポーズを何回かやっているが、なかなか上達しない。来た時と比べてノリは良くなったのにね。あ、ノリは関係ないか。

 

「ち、チンアナゴー・・・」

 

たきなのチンアナゴのポーズが割と形になった時、ドアが開いてベルがカランカランと鳴った。私とたきなが同時に振り向くとそこには───

 

「こんにちはー・・・

 

 

君たち何やってんの?」

 

2週間ぶりに姿を見るユイちゃんがいつもの私服と呆れ顔で立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「チンアナゴの真似だよ」

 

「なるほど・・・」

 

両腕を上に挙げてユラユラと動かす私の姿を見て納得する。

 

・・・納得するんかい。

 

ユイちゃんはいつものスペースにいつものパンパンになっているリュックサックを置く。そして───

 

「こうだな

 

チンアナゴ〜」

 

チンアナゴの真似を始めた。しかもたきなのよりもキレがいい。

 

「たきな、ユイちゃんを見習いな」

 

「は、はい!チンアナゴ!」

 

私が促すとたきなもまたチンアナゴのポーズをとる。いや、貴女ノリ良くなりすぎじゃない?

 

「違う、違う!もっとこう!

 

 

 

・・・じゃなくて、2週間も来なかったけど、何かやってたの?」

 

危うく、チンアナゴポーズの指導会になりそうになった。それよりも、だ。いつも病気の時以外は定休日を除いてほぼ毎日来る。なぜ来なかったのか純粋に気になったのだ。

 

「ああ、あの後期末考査期間に入ったのと、化学基礎でヤバい点数採っちゃったから来れなかったんだよ」

 

「なるほど・・・」

 

笑いながら言うユイちゃん。いや、ヤバい点数って何点よ。

 

「あの・・・、やっぱり高校生って大変なんですか・・・?」

 

ちょうどお店にいた常連客の1人、女子中学生のカナちゃんがユイちゃんに問いかける。やっぱり気になるらしい。私も高校生になりきるための題材として気になるのだが。

 

「まあ、中学生からするとそうだね。教科数が増えるから・・・」

 

「ヒェッ・・・」

 

国語は現代文、古文、漢文でー、社会は地理、日本史、世界史、政治経済、現代社会───と後に続けるユイちゃんの言葉を聞いて将来が不安になったカナちゃんの顔が青くなる。

 

「化学基礎で1桁とった時は〝留年するんじゃないか〟ってビクビクしてたわ!」

 

今回は大丈夫だったわ、ガハハ!と笑いながら言うが、カナちゃんは卒倒しそうになっている。もうやめてあげて・・・。

 

「じゃあ、お姉さんが勉強見てあげようか?」

 

「え!?良いんですか!?」

 

「良いよ良いよ!」

 

ユイちゃんの申し出にカナちゃんが快く応じてくれたお陰で、この喫茶店で勉強会が始まることになった。

 

「よし・・・」

 

「っ・・・!」

 

髪が邪魔になるのか、シュシュで纏められている髪を一度解いてから後ろでポニーテールに縛り直した。

 

────やっぱり似ている。北押上駅で見たマスクのファーストに。

 

正直言ってユイちゃんは怪しい。

 

たきな曰く、私達リコリスは犯罪者達を秘密裏に消すエージェント。聞いて確認できるはずがない。

 

もし聞いてリコリスだったら良いが、もしただの一般人だったらとんでもない事になることは想像にかたくない。

 

そもそも、気になっているのが私だけだからくるみにDA本部をハッキングさせて情報を抜くのは気が引ける。

 

だから勉強会後にトイレで席を外した瞬間を狙い、彼女のリュックの中を探るのが1番良い。

 

中に何が入っているのか探ろうとする。

 

「何やってるんですか・・・」

 

たきなが呆れながら聞いてくる。

 

「ユイちゃんの正体探し」

 

「だからといってリュック荒らさなくても良いでしょう・・・」

 

確かにそうだ。だが、証拠がなくふにゃふにゃの今ではこれが1番手っ取り早いし確証がある。

 

しかし、トイレに行くという短時間の行為のため、直ぐにトイレから水の流れる音が聞こえてくる。

 

「あっ!トイレ出てきちゃうじゃん!」

 

意外とトイレが短くて驚く。もう少しこう何というか、手心というか・・・

 

「知りませんよ・・・」

 

その間、たきなはずっと呆れ顔だった。

 

 

 

 

 

 

 

「そういや、パンツはどうなった?」

 

カナちゃんがユイちゃんと入れ違いでトイレに向かい、この場にいるのが私とたきなだけの時に、ふとユイちゃんが言った。

 

事の発端はユイちゃんだっただけあってか、やっぱり気になるらしい。

 

「買ったよ!ちゃんと!」

 

「おお、それは良かった」

 

私がふふん、と胸を張って答えると彼女は嬉しそうにしている。たきなは呆れ顔からすっかり元の顔に戻っていた。

 

 

 

 

「それではパンツチェックのお時間です!」

 

じゃあ、まずパンツ教えてくれるかな?

 

「え?」

「は?」

 

2人がフリーズしているうちに、2人のスカートを捲る。いやあ、ユイちゃん今日はロングスカートの日で良かったわ!

 

「ワオ!2人とも大胆!」

 

ユイちゃんは薄ピンク色、たきなは昨日買った薄い青色のパンツだった。

 

2人とも直ぐにフリーズから回復すると顔を真っ赤にし始めた。トマトみたい。

 

ユイちゃんは顔を真っ赤にしたま私に抱きついて胸に顔を埋めてくる。何だァ?恥ずかしいのか?

 

「・・・吊るすか。逆さで」

 

「はい」

 

え?まさか、まさか抱きついたのは私を逃がさないためか!?

 

気づけばユイちゃんだけじゃなくたきなも抱きついて私を逃がさないようにするためだろう。2人でガッチリとしがみついている。

 

 

 

 

 

────詰みだな。

 

私は大人しく吊るされることにした。

なおその後、カナちゃんの「千束さんが結衣さんのリュックの中見ようとしてました」と暴露し、ユイちゃんがキレて私を逆さに吊るしそうにして逆にたきなに止められていたというのは別のお話。

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