Persona~Alternative~   作:ホワイト・ラム

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ペルソナと言いつつも、既存作品は違う舞台です。
ブランクのある作者ですがそれでもお気に召したら、幸いです。


我は汝 汝は我

真っ暗な暗闇の中、遠い遠い場所で一人の少年が椅子に腰かける。

癖のついた傷んだ髪に、不健康そうに見える目。

そんな、少年に話しかける存在が一人。

 

 

 

今の君は、すべての自分を認知できてるかな?

 

 

 

「自分の背中は、自分では見えないって事か?」

 

 

 

ん~?確かに、自分の後ろ姿を直接目視した人間はいないかも……

けど、違う。俺が本当に言いたいことは、お前の持つ『自分』はもう、お前の物ではないって事さ。

いつの間にか、君から抜け出した、君が知りもしない君がいるのさ。

 

まるでこちらを煙に巻くような物言いで、ソレが笑った気がした。

 

 

 

 

キィィィィ…………!

 

「ん?ついた、のか?」

不定期に揺れる揺れが止まり、無粋ともとれるブレーキ音を目覚ましに一人の少年が意識を覚醒させる。

 

『終点――奥嶺縁(おくみねぶち)――奥嶺縁――』

駅のアナウンスを聞いて、少し時代の過ぎ去ったような駅に一人の少年が降り立った。

潮の香りが僅かに鼻をくすぐる。

知らない場所の香りは、否が応でも『知らない場所』感じさせた。

 

「ん、んー!」

荷物を抱えて、電車に揺られて4時間。

ずいぶん遠くに来てしまったと思う。

おかしな夢まで見ていた気がする。

 

「行かなきゃ……迎え、来てるだろうし」

眠たい頭に、やることを無理やり叩き込んで足を走らせる。

 

まばらに出ている人を見ながら、きょろきょろと迎えを探すがそれらしい車は無い。

時間を確認しようと思って、携帯を見ると一件のメールが来ている。

 

「叔母さんからだ……」

その相手は迎えに来ると言っていたはずの相手からだった。

 

『我がかわいい甥っ子の霧崎(きりさき) 縁糸(えにし)君へ。

甥っ子向けのお土産買おうと思って店に居たらすっかり、居ついちゃって~

悪いけど、こっちまで歩いて着てくんない?地図添付するからさ~』

 

「うわぁ……」

軽い文面から繰り出される、地味にえげつない要望ならぬ命令。

残念なことに、一年厄介になる家の主たる相手の言葉に、縁糸は逆らう術を持っていなかった。

メールに添付された簡易な手書きの地図を手に、縁糸は一人初めて来た町へと足を進めるのだった。

「いや、どこ行けば良いんだよ」

 

 

 

 

 

「えっと……この地図の住所だと、この通りを真っ直ぐだね。

時間は掛かるけど、兎に角真っ直ぐで付けるよ。

この時間なら歩いていけるだろうしね。

灯台が目印、兎に角灯台を目指して」

寂れた交番のくたびれた若い警察官が、一応対応していくかといった具合で反応してくれた。

 

「ありがとうございました」

縁糸がポケットにスマフォを仕舞い、指さされた方へと歩き出す。

 

 

 

「何も無いな……」

歩いていくのは寂れた商店街。

潮風で赤黒く変色し、風化し所々穴の開いたトタンの壁の商店たち。

開いている店と閉まっている店ではおそらく閉まっている店の方が多いだろう。

 

「あ、どれくらいで着くか聞いて無かった」

額の僅かに汗を感じながら縁糸がつぶやいた。

すぐに着くさ。と小さく呟き自身に言い聞かせ歩を進めて行く。

 

 

一時間後……

 

 

「灯台……灯台……くそ……なんで俺が……!」

慣れない町に大量の荷物、鼻を突く不快な潮風。

そしてトドメと言わんばかりの――

 

「クソッ!」

スマフォのニュースに流れたこの地方の、季節外れの猛暑のニュース。

縁糸が苛立たしげに、額の汗を服の袖で拭った。

 

そもそも約束通り迎えさえ来ていれば、既に厄介になる家で荷物を広げていたハズだ。

苛立ち悪態を零す縁糸だが、事態は好転する事はない。

目的の灯台は影も形も見えはしない。

 

『最悪』縁糸を囲むすべての状況がその一言だった。

 

「うぉ!?」

何かを踏み、縁糸が転ぶ。

足元には中途半端に湿ったワカメが落ちていた。

 

「この――っ!」

怒りに任せスマフォを投げつけようとした時――

 

「よー、縁糸!!青春してるか?」

バイクの音と共に背後から声が掛かる。

およそ10年ぶりに聴くこの声、そして何よりこのテンションが忘れられない。

第一一声でこんな事を言う人は一人しか縁糸は知りえない。

 

「よ、すっかり遅く成ったな!ってか、なんどか入違ってたわ。

10年ぶりだけど、覚えてるか?アンタの親父の妹の嵐島(あらじま) 響喜(ヒビキ)様だぞ」

ガハハと豪快に笑い、バイクに跨ったままの女がゴーグルを外す。

長い髪が風に揺れる。喋らなければ美人なだけに非常に惜しい所である。

 

「響喜叔母さん!」

 

「おっと甥っ子、オバさんはねーんじゃねーの?

まだまだ、ナウでヤングな積りなんだぞ?」

すっかり死語となった言葉を使い響喜が笑う。

 

「叔母さんアラフォーでしょ?」

 

「んなぁわけ有るか!こちとらまだまだ30代前半よ!

かぁ~、生意気に育ったなぁ、オイ」

響喜はバシバシと縁糸の背中を叩きながら笑う。

 

「とりあえず、乗れ。

話はそっからだ」

響喜がヘルメットを縁糸に投げ渡し、バイクのサイドカーを親指で指さす。

口にタバコを加えた響喜がバイクのエンジンを吹かす。

 

 

 

 

 

「いやー、オマエも大変だよなぁ!!親の都合でコーンな田舎町によぉ!!」

 

「えっと、何ですって?」

響喜が何かを言っているのだろうがバイクの排気音にかき消され、縁糸には殆ど聞き取れはし無い。

それどころか、ヘルメットの上から両耳に手を当てて必死に爆音を我慢している状況だった。

 

「けど、ダイジョーブだぁ!一年間アタシがしっかり世話してやっからな!!

丁度男手も欲しかった所でよぉ!!」

 

「ダイジョーブってトコだけ聞き取れましたー」

耳元で鳴り響く爆音で、必然と縁糸の声が大きくなる。

その時、縁糸が遥か正面にある灯台の姿を捉える。

 

「しゃ行くぞオラァ!!歯ぁ食いしばれ!!」

 

「今、物騒な事言いませんでした!?ってか、叔母さん前々!!!」

響喜がギアを上げアクセルを更に吹かす、スピードが上がっていく。

目の前には港の防波堤。

そこに向けて響喜がバイクを走らせる。

 

「何考えてるの!?何考えてるのー!?ノー!!ノー!!」

縁糸の静止も空しく、バイクは防波堤をジャンプ台にし海へとダイブする。

ハズだった――

 

「よーし、ギリギリセーフってトコだな」

防波堤の向うは、地面が露出した砂浜だった。

さっきのワカメ見たいなのが、地面に大量に落ちている。

水を含んだ砂地をサイドカー付きのバイクが進んでいく。

 

「アタシらの家は()()()()()だ。

ついこの間、島と丘を繋ぐ橋がぶっこわれてな。

今じゃ小さな船で行き来してる。

けど、月に2~3日は干潮で海が干上がるから、バイクで走っていけるんだよ。

この島で暮らすんなら覚えときな!!」

響喜が水を跳ねながら笑った。

 

「あ、そーだ、もう一個。

家には当然アタシの娘も居るから。

ちゃんと仲良くするんだぞ?

兄貴分として頼りにしてるからな?」

響喜がそこで初めて縁糸のの方を見る。

 

「縁糸?おーい、縁糸君?あーあ、ダメだ気絶してるわ。

肝っ玉がちーせーな、それでも男かよ!!」

薄れる意識の中で縁糸は反論しようとしたが、不可能だと諦めた。

 

 

 

 

 

 

 

「っぶねーぞ!!ミドリッ!!ゴラァ!!」

横から投げつけられる怒声に縁糸の意識が()()()()()()()()()

目の前に襲い来るのは、自身の身長も有ろうかというサイズの巨大な剣。

だがその剣よりも先に縁糸は脇腹を蹴飛ばされ、その剣の軌道からはじき出される。

 

ガギィン!

 

鈍い音と共に教室の木材の床に剣がめり込んだ。

あのままなら、縁は床のシミに成っていただろう。

 

「今の、走馬灯か?走馬灯見かける走馬灯とか有るのかよ……」

縁糸があまりにも酷い思い出に、悪態をついた。

 

「うっし!一つ借りな?今度ジュース奢れよな!」

 

()ぅ……」

 

蹴られた脇腹の痛み、転がった教室の床の痛みを耐えがなら少年(バカ)の勝手な言葉を耳にする。

状況は好転していない。

先ほどの剣を振り下ろした存在。馬にまたがる鎧の騎士に縁糸が対峙する。

 

「おーい、聞いてんのかー?ミドリー」

 

――(ワレ)(ナンジ)――汝は――我――

 

先ほどの少年とは違う声が響く。

 

胸の奥か、頭の中か、何処からか声がしてくる。

 

「ああ、聞いてるよ……こっから、生きて帰えれたら幾らでも奢ってやるよ!!」

 

何処?そんな物は決まっている。≪≪自分の中≫≫からだ。

 

ヒヒィン!!

 

馬が嘶き、鎧騎士が剣を構える。

狙いは未だ縁糸にある。

 

「こんな、トコじゃ終われない!!!!」

 

――我の名を呼べ――我の名は――

 

そんな物(名前)なんて、とっくに知っている。

他の誰でも無い自分自身、その一部。

今まで気が付いていなかっただけの存在。

 

だが、今は違う。

 

その名を縁は知っている。今こそ、自身の奥からその存在を呼び起こす時――!!

 

「ペルソナ――――!!来い!!イカロス!!」

縁糸の影が色を得る。

本体の鏡映しの様に、服に、髪に、顔に色が混じる。

『影』は地面を抜け出すと、縁糸を守る様に鎧騎士に立ちふさがった。

そして『影』の服が音もなく破れ、露出した背中に赤い翼の刺青が現れる。

背中の翼の刺青が輝くと『影』は人の姿を失い新たな姿を手にした。

 

ギリシャの彫刻の様な無機質な体、両手は剣を地面に突き立て不動の体制を構えている。

しかしその背には赤い生き生きとした雄大な翼が広がる。

 

『我はイカロス、太陽を求めし自由への挑戦者。

我が翼はこれより汝の物。

共に羽ばたき、共に堕ちるその刻まで我は汝と共に在り』

 

イカロスがその赤い翼を翻す。

その瞬間、緑の風が鎧武者を取り囲む。

 

「ガルーラ!」

風が竜巻となって鎧の騎士を打ち据えた。

その時、鎧騎士が力なく項垂れた。

 

「ッシャぁ!!アイツ体制を崩したぜ!!」

 

「今こそ、畳みかけ時だ!!」

縁に二つの声が掛かる。

 

「ああ、そうだな!」

縁の声に待っていたとばかりに、二つの影は鎧騎士に飛びかかった。

ついこの間、島に来た時まで縁糸は自身がこんな事に成るまで思いもしていなかった。

ほんのついこの間まで……

 

だが、物語は始まってしまった。

 

ならば、ショーが終わるまでは呆れめる事など出来ない。




久々に書くと難しい物ですねぇ……
完結させる事をまずは目指します。
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