Persona~Alternative~   作:ホワイト・ラム

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今更、アイギス編買いました。
戦闘難しくてあの頃投げた、アレをもう一度……
賞味内容知ってるし、蛇足派だけどやっておこう……


超神VIPエリア

???月 ???日

 

濃紺一色の潜水艦の中で、レイシアが鼻提灯を膨らませている。

その鼻提灯が音も無く弾けると、眼鏡の奥の金色の瞳が静かに開かれる。

 

「縁糸様、いらしゃいませ」

スカートのポケットからハンカチを取り出し、口元の涎を拭った。

金色の瞳に、銀の長髪。レイシアは見た目だけならば文句なしの美女だ。

ただ、平然と立って眠ったり、会話中に眠ったり、寝ぐせがついていたり涎を垂らしていたり、鼻提灯を膨らませていたりするだけだが――それすら、小さな事に思えてしまうほどの美女である。

 

「新しい絆を見つけたのですね」

レイシアが小さく手を上げると、戦車と剛毅2枚のカードが浮かび上がる。

そしてソコに新たに、もう2枚のカードが加わる。

委員長との絆のアルカナの刑死者。

料理屋の店長との絆のアルカナ太陽。

 

その様を見て、机の向こうの長鼻の老人が笑う。

「ふふふふ、ワイルドは新たなペルソナを生み出すことも出来る能力。

貴方が身に着けたアルカナのペルソナを生み出すとき、力を与えましょう」

 

「それでは新たな力を、目覚めさせ……て……行き……ぐぅ……ま……ぐう……すー…………すー…………」

レイシアが立ったまま、再度鼻提灯を膨らませ始める。

 

「……レイシアにしては、頑張った方ですかな……」

老人、イゴールはヤレヤレといった声音で話す。

 

 

 

 

 

4月13日 水曜 夜

 

 

 

「あー…疲れた……」

島の自室のベッドで、縁糸がゴロンとベッドに横になる。

響喜に紹介された、料理屋のバイトは基本自由な時に来れば良いという、非常に自由な物だったが、初めてするバイトという事で未だに縁糸は慣れる事が出来ていない。

 

「あの人、静かだけど厳しいんだよ……」

(やしろ)店長は、物静かな若者といた感じだが強い芯の様な物を持っており、未だに食材一つ触らせては貰えていない。

仕事はもっぱら、皿洗いばかりだ。

 

『おい、小さな汚れが残っているぞ。

どんなに料理が良くても、皿が汚くちゃその料理は台無しになってしまう。

自覚をしろ。お前は金を貰って幸せな時間を過ごす一助をしているんだぞ?』

目を瞑ると、静かながら厳しいダメ出しの声が聞こえてくるようだ。

 

「けど、なんか、楽しい……」

明かりに手をかざすと、水仕事で洗剤のにおいが染みついてしまっている。

だがその分、仕事をし誰かを喜ばせたのだと思うと、誇らしい気になる。

 

ピロリん♪

 

その時、ズボンの携帯が着信を知らせる。

内容を確認した瞬間、縁糸のさっきまでの空気は一気に霧散した。

 

「……よし!」

気合を入れる様に、自分の頬を叩き、気合を入れて目を瞑った。

 

 

 

4月14日 木曜日 朝

 

学校の校門前にて――

 

「オウ!ミドリ!俺さまの復活だぜ!!」

180を超える身長を揺らしながら、銀牙がにやりと笑う。

僅かに時間の空いた銀牙も久々の登校に、周りの学生がわずかにざわつく。

 

「チっ、五月蠅いのが、帰って来たか。

もっと休んでいる方が良かった物の……」

 

「センパイ、デカい不良の先輩登校してきてますよ!!」

保住とその後ろを千草がちょろちょろと付いて行く。

どうやら、一緒に登校してきた様だ。

 

「チ~ク?俺が今、言っただろ?なんで同じ事を繰り返すんだよ!」

 

「あ、そうッスね!センパイは私の思考と発言より、ワンテンポ早いんスよ!

その結果、私が同じ事を言う事になるッス……電光石火のハヤザワ!ッスね!」

2人が校門を潜っていく。

 

「相棒、今日行くだろ?」

さっきまでの、楽しさそうな空気が一瞬で霧散する。

肉食動物の様な鋭い、眼光を縁糸に飛ばす。

 

「……ああ」

銀牙の気持ちを理解して、縁糸も同じく静かに頷いた。

 

 

 

午前――教室

 

「おはよう、霧崎君!あ、鹿能君も」

なんだか機嫌の良さそうな委員長が挨拶をしてくる。

先日、委員長の仕事を偶に手伝う様になってから、前よりも気さくに話してくれる様になった気がする。

 

「おう、委員長!俺さまの復活だぜ。

記念してラーメンでも食いに行きたいんだけど、また今度な!

九条のヤツが復活したら、一緒に行こうぜ!」

いつもの様に、にかっと笑うがすぐにその作り笑いは消えて元の厳しい顔に戻る。

 

「あ、鹿能君……九条さんはまだ……」

さっきまでの明るい委員長の姿は消えて、気まずそうに九条の事を説明する。

 

「大丈夫だよ、委員長。きっと、そのうちひょっこり帰って来るって」

縁糸が委員長の気持ちを読み取って、瞬時にフォローに回った。

ここ数日、時間を共にしたから分かる。

だが――

 

「そうだ、今日悪いけど放課後手伝えないんだ。ごめんね」

 

「え、そう、なんだ……」

縁糸の言葉を聞いた委員長が落ち込んだような顔をする。

その時、チャイムと共に担任が現れる。

 

「よぉーし、お前ら席に就けー、出席を取る……お!鹿能、復活か!

これで九条も帰ってこれば全員集合なんだがなぁ。

もう、一週間か……」

担任が日誌にサラサラと何かを書き込んで、閉じた。

もはやそれだけ、九条の居ない『異常』はこうしてゆっくりゆっくりと『日常』へと変わっていく。

 

「……」

縁糸がチラリと横目で見た銀牙は何かを決めた鋭い目をしていた。

 

 

 

 

 

4月14日 放課後

 

縁糸と銀牙の両名が、霧の中に続く橋を通って異世界の学校へと向かう。

出口は学校の中庭。

鉄製の椅子に腰かけ、ニノが読書をしていた。

 

「復帰したか」

パタンと本を閉じ、立ち上がり何も言わず歩きだす。

向かうは、学校内の階段の鏡の踊り場。

 

「行くぜ!相棒!」

 

「ああ」

銀牙と縁糸が、一瞬遅れてニノがその後に続く。

 

 

 

 

 

シト、シト、パラ、パラ

 

雨の夜の闇にネオンの看板が、その『街』を怪しく照らし出している。

右も左も、派手な色合いの店の看板と、呼子をする背広の男たち。

 

すこし、さむいな。

 

と誰かが口に出した。

 

「ニノ、九条さんの居場所は分かる?」

 

「今、調べてる」

ヘカトンケイルをニノが呼び出す前に、銀牙が口をはさむ。

 

「あの、デッケートコじゃねーの?」

銀牙が指を刺す先には、巨大な城風の建物が有った。

 

「ああ、反応はあっちからだ」

ヘカトンケイルで調べたニノが頷く。

 

『お客様、のぞき見は推奨される行為では在りません』

背広姿のシャドウ、ボーイシャドウが3人の前に、姿を見せる。

 

「丁度良かった。あの城で穣を一人指名したい。

それもナンバーワンの彼女をだ」

ニノが指さす先、九条を取り込んだシャドウの姿が壁の巨大な画面に映し出されていた。

ド派手な文字と共に『№1クイーン』の文字が流れていく。

 

『我らが、クイーンを指名?失礼ですが、お名前と役職を伺っても?

上客リストに記載されているとは思えませんので』

ボーイシャドウが、胡散臭げな眼をこちらに向けてくる。

懐から分厚い紙の束を取り出しめくる。

 

(どうする、ニノ?せっかくのチャンスだけど、名前なんて載ってる訳ないよね?)

 

(来た事自体2度目、いや最悪前回のアレでブラックリストの方に名前が載ってる可能性だってあるぞ)

ひそひそと小声で縁糸とニノが相談する。

その様を見て、ボーイシャドウはますます目を鋭く尖らせる。

 

「お名前を頂けないのでしたら――」

 

「俺さまの名前は鹿能 銀河よ!番長様だぜ!!」

 

「「あ”」」

自信満々に自分を親指で指し示す銀河に、縁糸とニノが固まった。

バレた。たった今、このバカの言葉で取っ掛かりの出来かけたこの場所への侵入方法が潰えたと、2人が同時に思った。

それを示す様に、ボーイシャドウがピタリと止まる。

戦闘開始に備える様に、ニノが本を手にする。

 

『ようこそ、おいで下さいました。「カノウ ギンガ」様』

 

「え?」

急に畏まった態度を取るボーイシャドウに、縁糸が間の抜けた声を出す。

 

『我らがクイーンから聞いております。

役職「番長」の「ギンガ」様なら、何時でもお通しするように伺っております』

さっきまでのこちらを怪しむ態度は一瞬で霧散して、最敬礼の態度でこちらに接してくる。

それどころか――

 

『最上VIPランク「キング」のお客様がいらっしゃいました。

手すきの者、全てで「キング」の部屋の準備を、詳しいことはチーフに対応を伺ってください』

トランシーバーでほかのシャドウに連絡を入れてゆく。

 

(なんで、銀牙の名前がリストに?しかも最上VIPだなんて……)

 

(あくまで私の推察になるんだが、銀牙とクジョウとやらは知り合いなんだろう?

それがシャドウに取り込まれた今でも、残ってて作用しているのではないか?)

ボーイシャドウの後ろを付いて行きながら2人が話す。

 

 

 

ネオンで照らされたドギツいピンクの城の扉が3人の前で、自動で開いた。

先を行くボーイシャドウが声をかける。

 

『VIPランク「キング」のお客様がいらっしゃいました』

 

「「「「「いらしゃいませ!ギンガ様!!」」」」」

スーツをキメたシャドウたちが一斉に礼をする。

そして、長い廊下の奥のもう一枚の扉が開かれる。

 

「おっ、なんだ、この場所!」

そこは、薄暗い部屋。

赤、青、黄様々なカラーの光がランダムに降り注ぎ、派手な音楽が鳴り響く。

部屋にはいくつものお立ち台があり、身体に僅かに布を巻いた踊り子たちがポールで踊っている。

両壁にはバーが常設されて、杯を傾けながら男たちが踊り子たちを眺めている。

部屋の奥には巨大な金網が設置されているが、何に使うものわからない。

噎せ返るような、背徳と女の臭気にニノが顔を顰める。

 

『ここは待合室でございます。

この城自体VIPしか入れませんが、その中でも一般VIPのお客様がメインでお使いになられます』

ボーイシャドウを一回り大きくし、服装を豪華にしたシャドウが現れる。

 

『申し遅れました、私は「ギンガ」様をお連れするようにクイーンより仰せつかっておりますチーフです』

チーフシャドウが頭を下げる。

 

『ギンガ様、まことに申し訳ありませんが、只今クイーンは先約の接待の最中でして。

上の階にお部屋を準備していますので、そこでお待ち頂くことになります』

チーフが深々と頭を下げる。

 

「おう、待てば良いんだな?」

 

『はい、ではエレベーターまでお越しください』

 

「意外と簡単に会える、かな?」

 

「待つだけ、なら」

縁糸とニノが付いて行こうとするが――

チーフシャドウが立ちふさがる。

 

『お待ちください。

ギンガ様の向かう最上エリアは、最上VIPのカードまたはキングの方のみが入れるエリアでございます。

お連れの方々はこの一般VIPエリアでしばしお持ちください』

 

「入れないって、事?」

 

「俺、一人だけか?」

縁糸と銀牙がが困惑する。

ここは、形は違えどシャドウの巣窟。

そこでバラバラになるのは、不安が付きまとう。

 

「まてまて、別に女の部屋に入れろという訳ではない。

上の階にも待合室はあるのだろう?

まさか、最上級のゲストの連れをこんな、何処の誰かもわからない輩と同じタコ部屋で待機させるなんて、言わないよな?

最低でも、私たちに個室の用意位すべきだろう?」

ふてぶてしい態度でニノが口を開く。

チーフシャドウの雰囲気が一瞬だけ、ピリ着いた。

 

「ご予約の無い、急なご来店でしたので……」

 

「では私たちは、このエリアで楽しませてもらう。

銀牙、残念ながらクイーンに会うのはまた今度にしよう」

ニノが何か言いたそうな顔をする銀牙の手を取る。

 

「お待ちください、しばし銀牙の様の部屋でお待ちいただければ……なんとか、ご用意できます……」

不承不承といった声色をチーフシャドウが上げる。

 

「良く言った。それでこそチーフだ」

 

「え、エレベーターと部屋の鍵を兼任するカードキーです、ごゆるりとお過ごしください」

苛立った様子のチーフシャドウからカードキーを受け取ると、エレベーターの扉が開いた。

 

 

 

「すげー、ガラス張りだぜ」

どんどん上昇していくエレベーター内で銀牙が興奮気味に話す。

 

「なんとか、うまく行ったね……一時はどうなるかと思った」

 

「ふっ、あいつらはこっちにサービスするのが仕事だからな。

しかも、銀牙が来た時点で通常VIPとやらは帰してる、その上で肝心の銀牙が帰ったんなら丸損だからな。

少し揺らしてやれば何とかなったさ」

 

「へぇ……」

相手の心理を読み取り利用するニノに、若干の恐ろしさを感じ、縁糸は苦笑いを浮かべた。

 

「どこまで、あんだココ?」

銀牙がエレベーターについている表示画面を見る。

VIPの文字が流れ、上級VIP、超上級VIP、最上VIP、超最上級VIP、神VIP、超神VIPの文字が表示され遂にエレベーターが止まる。

 

「恐ろしい話だ、順番に上る案の有ったがやめておいて正解だったな」

ニノの言葉に無言で縁糸も頷く。

開いた場所は赤を基調とした高級ホテルの様な場所だった。

 

廊下にある1~5までの5つの扉、そのうち4つが音も無く開く。

 

「おやおや、随分若い少年が来たね」

5番の扉からさわやかな青年実業家といった風の男が現れる。

 

「一体なぜ、呼ばれたのか、理解に苦しむ」

4番の扉から身長の高い、白衣を着た医者風の男が現れる。

 

「ふっふっふ、実家でも太いんじゃろな」

3番の扉からは杖を付いた、白髪の老人。

 

「クィーンのお気に入りか、権力こそが最上の存在だというのに」

2番の扉からは、上等そうなスーツを着た議員風の男が現れる。

 

「ンだぁ?オメェらは?」

 

「君を含めた私たち5人は、クィーンの認めた最高の客人という事さ。

だが、我らと比較して君たちがあまりにもみすぼらしい……

我らのクィーンにはふさわしく無い!!」

 

「へッ!うれしいぜ、丁度、俺さまもこれ以上待つのはガマン出来なかったんだ!!

ファミレスで、名前書いた奴が店員に呼ばれないと、次飛ばされるよな?

おめー等、ぶっ潰せばスグ、俺等の番だよなぁ!?」

銀牙が肉食獣の様な獰猛な顔を見せる。

 

「行くぞ!ミドリ!ニノ!」

 

「「ああ!!」」

この町で最も天国に近い場所で、もっとも地獄に思える戦いが始まった。




実はチクちゃんは書いてて楽しかったりします。
ぞんざいに扱われても、懐く犬っぽさが不憫かわいくて良い。
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