Persona~Alternative~   作:ホワイト・ラム

11 / 12
11月中の投稿が出来なかった……
申し訳ございません。


天国に最も近い部屋

4人のシャドウたちが、一斉に人の形を捨てる。

有るものは車輪にライオンの頭を持つ獣に、またある者は蛇の半身と人の身体を併せ持つ怪物へ、ある者は身の丈程の剣を握る巨腕、あるものは黒い霧をまき散らす侍の様な姿へ。

狙うは目の前の2人と1体の侵入者。

 

車輪に轢かれ、毒に侵され、巨腕に潰され、剣の錆にしようと4種の怪物が迫る。

だが、侵入者たちは狼狽える事は決して無い。

 

()け!ヘカトンケイル!!」

ニノの言葉と同時にヘカトンケイルが半蛇の怪物に殴りかかる。

 

「吼えろ!!ガルム!!」

銀牙のガルムが冷気をまき散らし、侍の足を止める。

 

「イカロス!!」

縁糸のイカロスの翼から放たれる風が、巨腕とライオンをねじ伏せる。

その時、4体すべてのシャドウが体制を崩す。

 

「諸君!今こそ、攻め入る時!!」

ニノが号令を上げた瞬間、後の二人が頷く。

3人のペルソナ使いが一斉に、4体のシャドウに遅い掛かった。

これは彼らの必殺の技。

今まで多数のシャドウを葬って来た一撃。

だが――

 

「くッ!?」

縁糸の横を半身半蛇がするりと抜ける。

 

「わり、逃がした!」

銀牙の攻撃を搔い潜って侍が逃げる。

 

「コイツ、固い……!」

ニノの睨む先で、巨腕が落ちた剣を拾う。

その隣で、ライオンの様なシャドウが溶ける様に消えた。

仕留め切れなかった3体の怪物たちが体制を立て直す。

 

「全員、再度気を引き締め直せ!

一匹は仕留めたんだ、こちらの方が以前有利だ」

必殺の一撃を堪えられた動揺をニノが感じ取り、即座にサポートの言葉をかける。

その僅かな、意識の隙を見逃さなかったシャドウがいた。

ニノが言葉を発した瞬間、巨腕のシャドウがその剣を掲げた。

剣から雷が迸り、ニノの身体を貫いた。

 

「ぐぅああああ!?」

雷撃に堪えかたニノが倒れる。

 

「ニノ!あぶねーぞ!!」

銀牙の目の前、隙を付こうと侍が刀を振るった。

 

「行け!ガルム!!」

銀牙がガルムを呼び出し、氷の爪をもってソレを迎え撃つ。

侍の刀とガルムの氷の爪が一瞬だけ交わる。

 

「くっそ、痛てぇ……」

ガルムが消え、胸を押さえた銀牙が膝を付いた。

 

『シャラララララ~!』

そんな2人の前に、半蛇が口を開き紫の霧を吐き出す。

 

「なんだ?」

ニノはソレが何かわからなかった。

だが――

 

「ぐ、ぐぅうう!!?」

その隣で銀牙が激しく、せき込みだして直ぐに理解した。

 

「毒か!?」

幸いニノには効かなかったようだが、銀牙の身体には十分な威力だったようだ。

 

チャキ――

 

2人の目の前に、再度侍のシャドウが刀を持って迫る――!

 

「させない!」

その間に縁糸が入り込んだ。

 

「来い、タケミナカタ!」

縁糸が両手を切り落とされた牛の角をもつペルソナを呼び出す。

胴を縛られ、一目で罪人と分かる容姿をしてる。

侍の刀はそのペルソナの身体の表面をなぞり、受け流される。

縁糸の頬に一筋の血が流れた。

攻撃を受け流したことを確認すると、すぐさまペルソナを別のペルソナに変える。

 

「ケットシー!」

長靴を履いた猫が小さなサーベルを振るうと、銀牙の身体の毒が一瞬にして消える。

 

「ミドリ、おめー、そんなヤツだったか?」

銀牙が呆けながらペルソナが変わる様を見る。

 

「驚くべき事だが、彼は複数のペルソナを使える才能があるんだ。

まさか、こんな人物が居るとは思ってもみなかったが。

現実は小説より奇なりというヤツだな」

何とか立ち上がったニノが眼鏡を触る。

 

「先ほどの醜態は、行動で返上しよう!」

ニノのヘカトンケイルの腕の一撃で半蛇のシャドウが眼を見開き吹き飛ばされる。

すぐさま助太刀しようと、巨腕のシャドウが大剣を振りあげた。

 

「アラミタマ!!」

縁糸が次に呼び出したのは怒りに顔を歪めた真っ赤な勾玉。

小さな体躯で巨腕の大剣を簡単に受け止める。

縁糸は新たにペルソナを付け替え、巨腕のシャドウを攻撃する。

 

「すげぇぜ!ミドリ!」

複数のペルソナを使い分ける手腕に、銀牙が興奮する。

 

「君が休んでいる間、私たちは2人で学校のシャドウと戦い、ペルソナを鍛えた。

今の縁糸には火、氷、風、雷に加え打撃、斬撃、そして回復が可能となっている。

全ては、クジョウとかいうヤツを助ける為に、な」

 

「おめぇら……良いヤツだな!」

ニヤリと銀牙が親指を立てて見せる。

 

「ニノ!銀牙!今度こそ、トドメだ!」

 

「了承した」

 

「オウよ!」

3つの影が3体のシャドウに襲い掛かる。

イカロスの剣が、ヘカトンケイルの拳が、ガルムの爪が振りあげられた。

その様を見たシャドウたちは己が生の終わりを本能的に理解した。

 

「片付いた、よな?」

縁糸が振り返ると当時に、3体のシャドウが小さく音を立てて消えた。

ドッグタグを巻き付けた右腕に、カードが一枚握られる。

 

「新しい、ヤツか」

一瞬の後、そのカードは透明に成って消えた。

縁糸の中に新しいペルソナが生まれた。

 

 

 

チーン……

 

その時、部屋の真ん中のエレベーターが開いた。

エレベーターの上に有る画面に、知らない名前が表示される。

 

リーン、リーン、リーン

 

電話の音が1番の部屋から響く。

この部屋のシャドウはもう居ない。

数分鳴った後、今度は2番の部屋の電話が鳴りだす。

次は3番、さらに次は4番と順番に電話のコールが鳴っていく。

そして、最後に銀牙が待つように言われた5番の電話が鳴る。

 

「おう、俺さまだぜ」

 

『カノ ギンガ様、お待たせしました。最上階のクイーンのお部屋へどうぞ』

さっき聞いたボーイシャドウの声が響き、中央のエレベーターの扉が開く。

 

「この先に行ったら、簡単には戻ってこれないぞ。

準備は良いか?」

 

「よしっ!行くか」

ニノの言葉を聞き流し、銀牙が肩を回しながらエレベーターに乗ろうとする。

 

「止まる気は無いみたいだぞ?銀牙は」

縁糸が笑みを浮かべ、ニノは呆れたように自身の額に手を当てる。

 

「だろうなぁ……だが、彼の向こう見ずのお陰でここまで来れた。

ああ良いさ、こうなればとことん彼の流儀に付き合うさ」

諦めた様にニノがため息を吐いて、エレベーターに乗った。

 

 

 

 

 

チーン……

 

小さな音がして、エレベーターの扉が開く。

その先は、蝋燭の明かりが照らす赤い絨毯を敷きつめた廊下だった。

突き当りの螺旋階段を上っていけば、そのはこの街の建物の最上階。

無限に振り続ける雨の中、壁と天井が全てガラスで出来た部屋だった。

赤い豪奢なベッド、部屋の端にはバーカウンター、ムーディな音楽がどこからか聞こえて来る。

そして部屋の中には噎せ返る様な甘い香りがしてくる。

 

『あら、いらっしゃい。3人なんて聞いては無かったけど――そういうのが好きなら、付き合うわよ?』

豪奢なソファ、透ける黒いナイトドレスに身にまとった九条がキセルをふかしていた。

艶めかしい動きでソファーから立ち上がる九条の姿は、薄い黒い布と白い肌のコントラストが淫靡な美しさが有った。

 

「うっ……」

その色香に充てられ、鼻の奥が熱くなってくる。

 

「九条!ついに見つけたぜ!こんなトコ、さっさと帰るぞ」

 

「銀牙、彼女はシャドウに取り込まれてる。

呼びかけは無意味だ」

焦る銀牙をニノが止める。

縁糸たちの様子など一切気にせず、こちらに歩いてくる。

 

『ようこそ、私の支配する世界へ』

 

「ぐっ!?」

九条の言葉を聞いた瞬間、身体の芯が揺れる様な感じがした。

 

「ヘカトンケイル」

縁糸の隣でニノがペルソナを召喚する。

ヘカトンケイルは機械の腕を振りあげ――

 

パシンッ!

 

「いっ!?」

ヘカトンケイルが縁糸の頬にビンタをする。

 

「何をするんだ!?」

 

「気が(しっか)りしたか?飲まれていたぞ」

反論する縁糸が、気が付くとさっきまでの頭の靄が消えている事に気づく。

 

「魅了の術だ、直接攻撃だけがヤツの手じゃないという訳だ。

気を付けろ。ここは既にヤツのテリトリーだ」

ニノが九条を睨む。

 

『あら、意外と釣れないのね。

ねぇ?ギンガぁ、アンタはどう?

私と一つに成りたくない?

たぁっぷりサービスしてあげるわよ?』

九条が大きく胸の開いたドレスから、自らの胸を片方こぼす。

人差し指で唇のグロスを掬い取り、今こぼした乳房にハートのマークを描く。

 

『上から下まで、ワタシの全部を好きにさせてあげる。

ほら、言って?ワタシが欲しいって、ワタシの欲望を吐き出したいって』

 

「おい、九条。さみーだろ、雨降ってるから風邪ひくぞ」

彼女の誘惑など全く意に介していない様子で銀牙が言い放つ。

 

「どうやら、銀牙には魅了は効かないみたいだな」

ニノの言葉に、九条の動きが止まる。

ぎこちない笑顔のままなのが、なおさら異様だ。

 

『あんたは……アンタは、いっつもワタシの気持ちなんて無視して!!

どんなに、どんなにアピールしてもぉ!!』

九条の力が膨れ上がる。

人間の姿が、すさまじい勢いで膨れ上がる。

ガラスの部屋に蜘蛛の巣の様なヒビが走る。

 

『ワタシの、ワタシの美しさにひれ伏しなさい!!』

顔は人間のまま、複眼の様なサングラスをかけたような姿。

身体は昆虫の頭、腹、胸の構成で、手足は細くカマキリの様。

そして、背中から6本の脚が生えて、互いに蜘蛛の糸が張り巡らされ蝶の羽の様に色が付く。

その様は、巣に捕まった蝶を食らおうとする蜘蛛にも、巨大なクッションで寛ぐ優雅な蝶にも見えた。

 

『ワタシは優雅な、夜の蝶……

この街のニンゲンは皆、ワタシの魅力の虜。

この街のニンゲンは皆、ワタシの餌に過ぎない!!

ワタシに靡かない男は存在してはならないのよ!!』

羽を大きく広げると、ガラスの部屋はひび割れ吹き飛んだ。

 

「オメェら!来るぞ!!」

そう叫ぶ銀牙の上をシャドウクジョウが舞った。

 

「行けッ!ガルム!!」

軍服を来た狼が両手に氷の刃を作り出し、空飛ぶシャドウクジョウに投擲する。

しかし、その攻撃はあっさりと回避される。

 

「当たらねぇ!」

 

「諦めるな!こっちは数がある、各々得意とする属性で攻撃を続けるんだ!

縁糸、お前は風か雷だアレが一番、攻撃速度が速い!」

ニノが縁糸と銀牙に言葉を投げかける。

 

「わ、分かった!タケミカヅチ!」

タケミカヅチが頭の角から電気が放たれる。

 

『ウッ!?何をするの――よ!!』

僅かに腕に攻撃が当たり、上空から襲撃してくる。

縁糸を狙うシャドウクジョウの間にニノが入り込む。

 

「ヘカトンケイル……!」

ヘカトンケイルを召喚して、計6本の腕でシャドウクジョウの身体を捕縛する。

 

『この……!女に触れる力加減を分かって、無いんだから!!』

 

「燃えろ!!アギラオ!!」

暴れるシャドウクジョウに0距離で火炎魔法を叩きこむ。

 

『あ、ああああ!!!熱い!!熱いぃいいい!!!ワタシの美貌になんて、事を!!』

 

「よし、行ける!」

ニノがシャドウクジョウの様を見て、自分たちの勝利を確信する。

 

『トでも、思っタ?』

ぐにゃりと醜悪な笑みを浮かべたその時、蜘蛛の8本の脚を大きく広げた。

その足の先端から、白い糸が発射される。

 

「な、んだ!?」

 

「蜘蛛の糸、なぜ足からなんだ!?」

最も近くにいたニノがぐるぐる巻きにされる。

 

「ネバネバするじゃねーか!!」

3人の身体に糸が粘着した。

その瞬間――!

 

バチ、バチバチ!!

 

糸を伝わって電流が3人に流れる。

 

「がああああああ!!!」

電流に弱いニノが悲鳴を上げる。

 

「ニノ!!」

縁糸は咄嗟に、イカロスの剣でシャドウクジョウを追い払う。

急いで糸を引きちぎろうとするが、その瞬間痛みに顔を顰める。

どうやら、離れても糸は帯電しているようだ。

 

「くそっ!まずい」

電撃に弱いニノに、この状況は非常に不味い。

気を付けながらイカロスで糸を切る。

その時――

 

『ほぉらぁ!!』

 

「タケミカヅチ!!」

再度上空から、電流を纏った糸の塊を吐き出してくる。

縁糸は瞬時、タケミカヅチに変えてニノの盾になる。

 

「っ……!」

タケミカヅチは電撃に耐性はある。

だが飽くまでそれは『耐性』止まり、完全に無効に成らないし、糸の塊という物理面の攻撃もある。

じわじわと縁糸の体力が削られていく。

 

「このままじゃ、じり貧だ。私の事は放っておいて攻撃に転じろ」

 

「見捨てるなんて、出来る訳ないだろ!?」

そう恰好つけるが実際このままでは――

 

「ニノ、ミドリぃ!オレに、オレ様に賭けてくれ!」

ガルムの氷の刃でシャドウクジョウを狙うも、回避される。

 

「賭ける?」

 

「すっげー、ダメージ負いそうだからよ。

オメェらにはその後の回復を任せるぜ」

銀牙が深呼吸をして、息を整える。

それと同時に、シャドウに向かってって走り出した。 

 

「これが、これが、今、オレ様の出来る全力だ!!行くぜ、九条ぉおおお!!」

 

『無ダよ!!』

シャドウクジョウが電流の流れる糸を発射する。

その糸は一直線に銀牙へと向かっていく。

 

「来い!ガルム!」

瞬時に2足歩行の狼が現れ冷気を発して糸を凍らせる。

 

「だらぁ!!」

うっとおしいと言わんばかりに、腕で凍った糸を払い除ける。

凍った糸には粘性が無くなる。

バラバラに砕けて地面に落ちる。

それを踏みつけて、銀牙はなおも走る。

 

「糸を凍らせて回避してる……けど」

無茶苦茶な理論でなおもシャドウクジョウに走る銀牙を見て、縁糸が絶句する。

凍ってしまえば粘性は無くなる。()()()

 

「無茶だ……だ、弱点ではないとは言え、電流が流れてるハズだ」

ニノが息を切らせながら言葉を絞り出す。

その言葉を示す様に、銀牙の腕や顔にミミズ腫れが出来、更に皮膚が裂け、血が流れ始めている。

 

『このぉ!!』

シャドウクジョウが更に糸を吐き出す。

今までよりも、ずっと太く強靭。

両手、両足、更に首に巻き付きその身を拘束する。

 

『死になサい!!』

糸を辿って電流が走る。

 

「ぐぁあああああ!!!!!ああああああ!!!

こんな、こんなモンで!!!

オレ様が!!番長様が止まる訳、ねーだろが!!!

だぁああああああああれゃああああああ!!」

ガルムの氷の爪が糸に振り下ろされる。

1度2度と振り下ろされる度に、糸は凍り、毛羽立ち、解れていく。

腕の糸が切れる。足の糸を引きちぎる、最後に自らの首の糸に手をかけた。

 

プツン

 

小さく音がして、最後の糸が切れる。

銀牙はその糸を捨てない。

逆に逃がしはしないと言いたげに、腕にその電流が流れる糸を巻き付けた。

 

「馬鹿か!?そんなことをしたら――!」

 

「オウ、ニノ。良く知ってるじゃねーか」

ニヤリと笑いながら馬鹿(銀牙)が再度走る。

 

『こいツ!?』

 

「逃がさねーよ!!」

蝶の羽を広げたシャドウクジョウを糸を引っ張り、その場に押しとどめる。

体制を崩し、地面に落ちる。

 

『つ、冷タい!?』

シャドウクジョウは赤い氷で縫い付けられた。

これはペルソナの冷気だけではない。

 

『この、色……血カ!?』

 

「そーよ、正解。んで……終わり、だ」

 

『アォォオオオン!!』

ガルムが咆哮する。

その声に、ゾッとする程の冷たさが周囲を襲う。

 

『ヒっ!?』

地面の赤い氷が突き出し、シャドウクジョウの身体を貫く。

 

『ま、まだ、ヨぉ!』

 

「ちげーよ、『終わった』んだよ」

銀牙が上を見る。

そこには無数の氷柱が待ち構えていた。

無限に降りしきる雨を銀牙には集め、氷柱にしていた。

すさまじい重量を持った氷が落下を始める。

 

『ああ、あ……あ……』

己が終わりを悟った、シャドウクジョウが恐怖の声を漏らす。

 

「嚙み砕け、ガルム」

空中の氷柱がシャドウクジョウに振り下ろされた。

地面からの赤い氷柱、上空から襲い来る無数の氷柱。

その様はまるで、氷で出来た狼の牙で噛み砕かれる様だった。

 

 

 

パキィン……!

 

小さな音が鳴り、周囲の氷が一瞬にして砕けて消えた。

それと同時にさっきまで、下がっていた温度が一気に元に戻り始める。

まるでここで戦いが有ったことなど、忘れようとする様に。

 

部屋の奥で倒れるシャドウの身体が霧散して、元の九条の姿に戻る

 

「……オレ様の……勝ち……だ……ぜ」

ニヤリと笑い、そのまま銀牙が膝から崩れ落ちた。

 

「銀牙!!」

縁糸が慌てて走り寄る。

 

「シルキー!」

赤いスカートのペルソナを呼び出し、銀牙に回復の魔法を使う。

 

「ミドリ、俺より、九条を頼む……」

銀牙が倒れる九条を指さす。

 

「今、ニノが行ってる!」

縁糸の言葉に安堵したのか、僅かに笑みを浮かべ銀牙の身体から力が抜ける。

 

「え、おい、嘘だろ?シルキー!シルキー!」

連続してペルソナを召喚し、銀牙に回復を続ける。

縁糸の様子に、異様な物を察したのかニノが駆けよって来る。

 

「ニノ!早く!」

 

「今、やってる。急かすな!」

ニノもヘカトンケイルを呼び出し、ディアをかける。

 

「起きろ、銀牙。クジョウとやらは一命をとりとめたぞ。

帰るんだろ?お前達の世界に、待ってる奴らが居るのだろう?」

縁糸が、ニノが必死になってディアをかけ続けるが――

 

「お、あ……」

銀牙がゆっくりと眼を閉じた。

 

「おい、おい!?起きろ、起きろよ!!

ふざけるんじゃねーよ!俺たち、まだ会ったばっかりだろ!?おい!!」

その様に、縁糸からもサーっと血の気が引いていく。

 

銀牙が起きない。顔が段々と土気色に変わっていく。

その身から、ゆっくりと熱が消えて行くのが分かる。

 

「シルキー!」

 

「やめろ!!」

再度シルキーを呼び出そうとする縁糸をニノが止める。

 

「もう、終わったんだ……」

銅像の顔だが、その言葉には沈痛な面持ちが宿っていた。

 

「おわ、らせない、から……」

 

「!?」

 

「!!」

背後から聞こえる、ひどくか細い声に2人が同時に振りむいた。

 

「九条さん?」

さっきまで倒れていた九条がフラフラと立ち上がり、近づいてきた。

 

「なんで、私がここに居るか……わかんないし、アンタらが何をしてるか、わかんないし……

けど、この馬鹿がまた馬鹿をやったのは分かる……から……」

銀牙がの隣に九条が倒れる様に、膝を付く。

そして、両手を倒れた銀牙の胸に当てる。

 

「お礼とか、説教とか、まだまだしなくちゃいけないから、死ぬな馬鹿能!!」

九条の背後にビジョンが一瞬だけ姿を見せた。

彼女の手から、光が迸った。

 

「ん、お?九条?」

その瞬間、パチリと眼を開けた。

 

「ここ、どこか分かんないけど、来てくれてありがと。

あと、やっぱりアンタ、馬鹿よね」

九条が笑みを浮かべたとき、縁糸が2人に抱き着いた。

ニノは噛みしめる様になんども、頷いていた。

雨雲は何時の間にか消え、空に月が登っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『クィーンの反応が消えた?このブックスの主が討伐されたか』

ブックスの何処かで、ボーイシャドウが何かを察知した。

 

『もうすこし、遊べる気がしたけど――

ここまでカナ?ざーんねん!』

ボーイシャドウが仮面を脱ぎ捨てる。

その顔の下は、シャドウなどではなかった。

仮面の下は美形と呼べる部類の人間の顔。

ただし、ひどく整った顔である種作り物染みた、違和感がすら有った。

 

『けど、面白いものは見つかったし、良っか!』

笑みを浮かべ、その少年はそのブックスから消え失せた。




シャドウクジョウ

昆虫 蝶と蜘蛛のイメージが強くでたシャドウ。
脚を広げその間に糸をはり、そこにカラフルな膜を張ることで飛行する。
電流を得意とし、脚の先から糸を出して相手を拘束する。
または糸を固めて、ぶつける技を持つ。
いずれも、電流を纏い副次的なダメージを与える。
電気と粘性の糸で、相手をじわじわと攻めていく。

魅了も得意とするが今回の戦闘での出番は無し。

イメージはキャバ嬢(夜の蝶)と男を絡め取る女(蜘蛛)の昆虫繋がり。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。