Persona~Alternative~   作:ホワイト・ラム

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今年の初投稿です。
よろしくお願いしますね。


ユメとウツツの灯台

4月 17日 日曜日 昼

 

「ん、あ……」

太陽が高く上がる頃、ようやく縁糸がベットで目を覚ます。

寝ぼけ眼で確認するスマフォのディスプレイには、11時に近い時間が表示されていた。

 

「あー、スゴイ騒いだからな……」

九条の居たブックスを脱出した後、銀牙がニノの居るブックスで歓迎会を開き、更に1日たって回復し始めた九条の知らせを聞きもう1日間深夜まで銀牙が騒ぎ続けた。

今日は日曜で、学校もバイトも、何の予定も無いと油断していたせいか、こんな時間まで眠ってしまった様だ。

 

「……戦うよりも、2日連続の銀牙の祝勝会ラッシュの方がキツイかもしれない」

『相棒、ラーメン喰おうぜ!』の銀牙の言葉が耳にびっしりとこびり付いている。

いつぞや彼はラーメンを指して己のソールフードと呼んだが、その表現に間違いはないようで放っておくと無限にラーメンを食べ続けようとするのだ。

 

「しばらく、ラーメンだけは見たくない……」

全身の疲れを振り払う様に、寝転んだまま背伸びをする。

思いだすだけで、脳裏にラーメンの味と香りが浮かんでくる。

 

「九条さん、大丈夫かな……?」

ゴロンと天井を見ながら、ぼんやりと『あの世界』の事を考える。

人々のイメージが形になったイセカイ。それがブックス。

 

「学校のブックスには、学校をイメージさせる物が集まる、か」

動く二宮金次郎、ことニノの居るブックスは学校がイメージソースとなっている。

校舎があり、生徒と教師が居り、七不思議があり、結果動く二宮金次郎像も有る。

むちゃくちゃな理論だが、それがまかり通るのがあのイセカイだ。

 

「九条さんが居たのは……歓楽街のイメージかな?」

ゴロンと壁を向き考える。

ネオン看板に、派手なドレスに、付き従うボーイに、噎せ返るほどの酒とたばこの匂い。

 

「クラスメイトのあんな大胆な恰好初めて見たかも……」

青少年である縁糸の脳裏に、シャドウクジョウの姿が思い浮かぶ。

あんな恰好の人物を現実で(とは言っていいか怪しいところだが)初めて見た。

ぽわんとあの姿が浮かび上がってきて、縁糸は慌てて首を振って邪な考えを追い出す。

 

「さ、最後に見せた力はペルソナだったのか?

いずれにせよ、よくわかんないし、深く考えるのは後々!」

自らをごまかす様に立ち上がる。

 

「………………」

 

『え・に・し・ク~ン、私と楽しいコト、しましょ?』

再度脳裏に、派手な化粧と破廉恥なドレス姿の九条が浮かぶ。

しなを作り胸を押し当てて来る妄想が膨らむ――

 

「あああ!!俺はなんて、事を考えてるんだ!!」

自己嫌悪に陥った縁糸が部屋を後にした。

 

 

 

 

 

「フン、フン、ふん、ふん、フン、フン、フン!!」

自己嫌悪に陥った縁糸が始めたのは薪割りだった。

おおよそ3日分の薪を割り終わり、ようやく冷静さを取り戻す。

 

「んんー、さ、て、と……」

額の汗をぬぐい背伸びをする。

大量の薪を前に、達成感が湧いてくる。

根気と器用さも上がっている気がする。

 

「あ、そうだ」

せかっくなら料理も覚えよう。

縁糸思うや否や、バイト先の社に電話を掛ける。

 

「あ、店長、今日バイト――」

 

『バイトか?だが悪いな。

今日は小豆の買い付けに出ていて、町に居ないんだ。

明日には戻るから、その時にまた頼む』

短い言葉を残し、社の電話は切れてしまった。

後に残るのは、やろうとしたことが空回りした縁糸の無駄に余ったやる気だけ。

 

「はぁ~、どうするかな?」

急に暇になった縁糸の脳裏にふと疑問が浮かぶ。

 

「この島の灯台って、どうなってるんだ?」

叔母の響喜の話では電気が通っている訳ではないらしい。

だが、あのイセカイのブックスに入ったきっかけはあの、つかないはずの灯台の明かりだ。

自分と銀牙はあの日、あの明かりに導かれるようにしてブックスに迷い込んだ。

 

「探ってみるか……」

若干の不安さと好奇心に突き動かされて、縁糸は灯台を目指して島の藪の中へと歩みを進めた。

 

 

 

「ぷはっ!」

正に泳ぐと言っても良い藪の中をかき分け、ようやく小さな獣道の様な場所に出くわした。

休憩とばかりに、持ってきたペットボトルを開けて口を付ける。

 

(まさか、明希ちゃんが通って出来た獣道だったりしないよな?)

そんなことを冗談めかして考える。

件の彼女も今日は日曜で学校は休みらしいが、島に居るのかすら分かっていない。

明希は何というか、活発な男の子の様な子なのでじっとしているのを見たことすらないのだ。

 

ガサガサ

 

獣道の奥から何かが歩いてくる音がする。

 

「なん、だ?」

今考えてみれば、この島にどんな動物が居るのか知りはしない。

一応、人は住んでいるので熊などの危険な動物は居ない。

と信じたい。

 

「明希ちゃんか?」

そんなことを考えている内に、ガサガサとする音が近づいてくる。

緊張をごまかす様に、縁糸が再度ペットボトルの中身に口を付ける。

 

ガサ、ガサ、ガサガサ

 

薪を一本、武器代わりに持ってこれば良かったかと考えが過る。

音の主はすぐそばまで、近づいてくる。

 

「…………」

視線の先、ついに藪が揺れ始め、縁糸が視線を鋭く尖らせる。

そして――

 

ガサガサ

 

「くぷ?」

つぶらな瞳をした見たことも無い動物が姿を見せた。

黒と白のツートンカラーの身体。

象ほどではないが長い鼻に、尻尾の先が毛でふっくらと膨れている。

見れば見るほど、その姿は異様でまさに珍獣。

 

「は?」

 

「くぷぅ?」

呆然とする縁糸と同じく、珍獣が驚く。

一瞬の躊躇の後、その鼻を伸ばして縁糸のズボンに触れようとする。

 

「とと、と」

一歩、縁糸が下がると珍獣も一歩進み、縁糸に鼻を伸ばしてくる。

下がる縁糸、進む珍獣。

一歩、一歩と下がる中、もう一歩と後退した瞬間――

 

ぬるり

 

「うを!?」

ぬかるんだ泥で滑り、藪の上に背中から転んだ。

「あれ?」

 

「ぷっ、くくくくく!」

その様を珍獣がせせら笑う。

眼を歪ませ口をニヤリと釣り上げてイジワルな笑みを浮かべた。

 

「この……!」

明らかにこちらを馬鹿にした顔に、縁糸の頭に血が上る。

立ち上がろうとするが藪の枝が絡まったが、立ち上がる事が出来ない。

 

「あー!!くそ!!」

 

「くぷ、くぷぷぷぷ!」

その様を見て、珍獣が更に笑い声をあげる。

背中の枝はまだ取れない、謎の珍獣はなおもこちらを見てあざ笑う。

 

「こ、このぉ!!」

力を入れ、枝をへし折りながら再度、縁糸が立ち上がる事に成功する。

 

「ぷくー?」

 

「はぁ、はぁ……」

改めて、目の前の珍獣を見直す。

白と黒のツートンに分かれた4足歩行の身体に、ダランと長い鼻が取れ下がっている。

この動物全体の特徴なのか、何処か眠そうに見える瞳にニヤニヤとした笑みを口に浮かべている。

 

「……コレ、獏……か?」

縁糸の脳裏にようやく、目の前の珍獣の名前が思い浮かんだ。

そうだ、確か動物の番組か何かで見たマレーバクとかいう動物だ。

 

「なんで、獏がこの島に居るんだ?」

反射的に差し出した右手、その手首からベルベットルームで貰ったドッグタグが揺れる。

 

「くぷ?」

獏が興味を示したのか、鼻先でタグを触る。

 

「野生……はないか、どっかから逃げ出して来た?」

頭を捻るが結局答えなど出はしない。

理由は不明だが、居る物は居るんだろう。

 

「そういう、物か?」

 

「ぷくくー」

半場思考停止する縁糸を無視して、獏は獣道を進み始めた。

獣道は灯台に続いている様にも見えた。

 

「くぷ、ぷく、くぷ」

獏は時折立ち止まっては縁糸が付いて来ているか、確認する様に振り返る。

縁糸はその後をゆっくりと歩いていく。

 

 

 

「あ」

視界を覆う木々が掃けると、そこには巨大な塔が立っていた。

 

「灯台についたんだ」

改めて見上げると巨大な建造物だ。

雨風で汚れ、所々ひび割れ壊れているが未だしっかりとした作りをしている。

もともとは嵌っていたであろう、さび付いた入口のドアが地面に倒れていた。

ぽっかり開いた扉が有った穴から中が見える。

 

「くぷ!」

獏がその穴の中に入る、クルリと身を翻し縁糸を見つめる。

その瞳には付いてこいと言っている様に思えた。

 

「…………」

縁糸が左手を持ち上げ、右手の二の腕を掴もうとして辞める。

 

「よし、行く!」

意を決した縁糸が灯台の中に入っていく。

 

 

 

「灯台の中って初めてだな……

こうなってるのか」

前を行く獏の後を付いて行き、階段をどんどんと登っていく。

所々窓があり、光が差し込んでくるお陰で足元が見えないことは無い。

暗い灯台の中を歩いていくと、一つの扉に気が付いた。

 

「なんだ、この部屋?」

扉の向こうはこじんまりとした部屋。

窓から心地の良い風が吹いてきて、部屋の中央ではハンモックが揺れている。

 

「くぷ、ぷ」

獏が部屋の隅にあるクッションに座り、瞳を閉じる。

数秒もしないうちに、気持ちの良さそうな寝息が聞こえてくる。

 

「俺も、寝てみるか……」

あまりにも気持ちよさそうな獏の姿に、部屋の中で揺れるハンモックに寝てみてくなった。

普通ならこんなことはしない、しかし縁糸は部屋の中央で揺れるハンモックにひどく引かれたのだ。

若干苦戦しながらも、小さく軋むハンモックの上に寝転がる事に成功する。

 

「お、案外いいじゃん」

窓のそのから入って来る風が気持ちい。

ゆらゆらと揺れる感覚が心地よい。

時折聞こえる潮騒が緊張をほぐす。

 

「ぐ、ぐぅ……zzz」

縁糸は自分でも認識しない間に、眠りへと落ちていった。

 

「くぴッ!」

夢と現実が溶け合う瞬間、獏の笑い声を聞いたきがした。

 

 

 

 

 

「ここは……?」

縁糸が眼を覚ますと、そこは石造りの丸い台地。

周囲は空で円形の地面のみが有った。

円形の台地の外は、下が見えない程の高度だ。

その様は、巨大な石造りの塔の最上階を想起させた。

 

「どうして、ここに?」

そんなことを考えると、眼の前に霧が集まり人の形を作り始める。

 

「銀牙?」

その霧が縁糸の友人、銀牙の姿を取った。

ただし、全身が赤黒く瞳は金色。

その様はまるでシャドウの様だった。

 

パシン!

 

『…………!』

両手を打ち合わせ、何かを話すように口を開くが声は出てこない。

彼らしくない邪悪な表情をし、再度大きく口を開く。

 

『ペルソナ!』

その言葉と同時に、銀色の鉄仮面を纏った2足立ちの狼獣人の軍人のペルソナが姿を見せた。

 

「ガルム……!」

銀牙の持つペルソナ、ガルム。それが縁糸の前に爪を構えて立ちふさがる。

 

『…………!』

その後ろで、ガルムを呼び出した銀牙が人の姿を失う。

2つの犬の頭を持ち、メリケンサックと釘バットで武装したシャドウ。

以前、銀牙が取り込まれたブックスで見た姿だ。

 

「ガルムとシャドウギンガ!?」

呆然とする縁糸の前でガルムの姿が消えた。

そして、一瞬遅れて感じるのは自身を刺すような冷気――

 

「やばい!」

以前見たガルムの戦法を思い出し、縁糸が咄嗟にその場から逃げる。

一瞬、いや半瞬遅れて、氷の刃が地面から突き出し縁糸を狙った。

 

「痛っ!?」

刃の先端が、縁糸の手の甲を引っ搔いた。

相手の戦法を知らなければ、手の甲だけではなく、全身が貫かれていたであろう。

 

『…………!』

傷を気にした次の瞬間、眼の前にシャドウギンガが釘バットを振りあげてこちらに向かっていた。

 

「イカロス!!」

イカロスを呼び出し、その剣でシャドウギンガの攻撃を受け止める。

 

「よし!」

ひとまず回避に成功したことで、小さく声を漏らした次の瞬間。

 

キィン!

 

甲高い音と共に、イカロスが地面から生える刃に貫かれた。

 

「ぐっ!?」

不味いと思った時は、既に手遅れだった。

イカロスが消えた瞬間、縁糸の両肩にシャドウギンガの2つの頭が食らいついた。

呆然と視線を上げると氷の刃が縁糸の首目指して落ちてきていた。

 

 

 

ドン――!

 

「痛い!?」

身体に衝撃を受けて目を覚ますと、そこは灯台の部屋の中だった。

背後で主を失ったハンモックが揺れている。

 

「夢……だよな?随分リアルだったけど……」

自身の首や、手の甲を見るが傷などありはしない。

 

「くぷ……ぷぅ」

縁糸の前に、目覚めた獏が歩みより鼻先を縁糸の手に触れさせる。

 

「ぷっ」

そして、興味をなくした様に鼻先を放す。

その様はこちらを馬鹿にしている様にさえ思えた。

 

「おい、誰かいんのか!?」

その時、角材を構えた明希が階段を上って来る。

 

「お、もやしじゃねーか。

俺の秘密基地で何してんだ?」

 

「明希ちゃんの、秘密基地?」

 

「ここからの、景色が好きでよ。

偶に来るんだよ。

けど、よくココまで……ああ、バクバクの後について来たのか!」

足元にいた獏を撫で始めながら、明希が一人で納得する。

 

「バクバク?」

 

「コイツの名前、案外大食いでメシをバクバク食うから、バクバク」

獏を指さしながら明希が説明する。

 

「あ、動物の獏からとったんじゃないのね……」

 

「しかし、よくココまで来たな!ちょっぴり見直したぜもやし」

 

「ぷくく?」

ニカっと笑う明希に同調するように、バクバクもニヤリと笑った。




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