Persona~Alternative~   作:ホワイト・ラム

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遂にペルソナ4Rの発表きましたね!
来年の2月……?今年は出ないの?


その名を知る

5月 1日 日曜日

 

 

 

 

五月に入った最初の日曜日。

縁糸は島の外、崩れたコンクリート橋の丘側に立っていた。

時間をつぶす様にスマフォを見ていた時、声が聞こえてくる。

 

「おーい、ミドリ!」

身長180を超える身長に、屈強な身体。

ニカッとした笑みを浮かべて手を振って来る。

 

今やすっかり縁糸の顔なじみに成ってしまった自称番長の銀牙、その人だった。

そしてその背後には――

 

「うぇ!?磯臭ッ!!服に匂い付いたらどーすんのよぉ!」

染めた金髪にピアスがる、身に纏うのは恐ろしく短いチェックのスカート。

大胆に胸元の開いたブラウスは恐ろしいことに腹の上までボタンが開かれ、ピアスの開いたヘソの穴が見えている。

半場服の役割を捨てている恰好をして、派手派手なギャルファッションの女、九条がカラフルなネイルの付いた指で鼻を摘み嫌そうな顔をしていた。

 

「九条さん!身体の方はもう良いの?」

 

「ん~、9級割方?まだ1割未満は完全じゃないって感じ……かな?」

背伸びをして腕を折ってグニグニと身体を捻り、ニヤッと笑って見せる。

いずれにせよ、最後に見せた憔悴しきった姿から大きく回復したのが分かる。

 

「九条さん、よかった……」

元気そうな姿に、縁糸がほっと胸をなでおろす。

 

「ちょっと、やめてよ!なんか、あの銀牙(バカ)以外に心配されるのって、なんかくすぐったいんだけど!」

 

「ゲンキに成って良かったぜ!オレすんげー、心配したんだぜ?」

九条の回復が嬉しいのか、銀牙が歯を見せてニヤリと笑う。

その笑い方が何処か、九条の笑い方に似ている――否、おそらくだが銀牙の笑い方に九条の方が似ているのだろう。

確証をもたらす証拠など無いが、そうなのだと確信めいた物があった。

 

「あのねぇ!アンタが、朝昼晩と毎日連絡入れて来るのが、無かったらもう少し早く回復した気がしたんだけど!

ほら、縁糸君見てよコレ!あの、おかしな世界から帰って来てから毎日よ?毎日!!」

九条がスマフォの画面を見せてくる。

そこには、彼女の言葉通り毎日毎日『元気か?』『体はどうだ?』『生きてるか?』などの短いメッセージが無数に並んでいる。

 

「これ、アンタじゃなかったら絶対ストーカー被害で警察に出してたから」

不服そうに九条が唇を尖らす。

 

「っと、自分の言葉で思い出した。

あの、おかしな世界の事。

説明してくれるんでしょうね?」

腰に手を当て、もう片手の指をピンと立たせる。

指を鼻先に突きつけられた銀牙が、渋い顔をする。

 

「あー、なぁ、九条。

先にラーメン食いに行かね?

カラアゲ奢ってやるぜ」

 

「誤魔化すな!アンタ、バカなんだから誤魔化せるワケ無いんだから!

あと、ラーメン屋に誘うな!匂い付く、堕肉付く、胃もたれするでペケ3!」

キンキンと文句を話す。

その様子には、しっかりと『あの時』の事を教えてもらうという、強い意志が見て取れた。

 

「銀牙、もう九条さんは関係者だし話しても良いんじゃないか?」

半ば諦めを含めて縁糸が銀牙を諭す。

縁糸の言葉で渋い顔をする銀牙、1秒、2秒、3秒と考える。

そして――

 

「オッシ!んじゃ、早速行こうぜ!」

再度ニヤリと笑みを浮かべる。

 

コンクリ橋(ココ)を集合場所にした時点で、半分くらいは話す気だったんだろ」

 

「お?いや、何時ものクセでここ選んだだけだぜ?」

 

「あ、本当に何にも考えてないのね」

銀牙の言葉に、縁糸ががっくりと脱力する。

 

「ま、とにかく、行こっか?」

 

「おう」

縁糸、銀牙の二人が先の崩れたコンクリート橋に向かって走りだす。

 

「ちょ、ちょっと!?」

そんな2人を九条が追いかける。

 

 

 

 

 

青い海と青い空が一瞬にして、白い霧に包まれる。

そして、次に気が付いた時は――

 

「なに、ここ?」

九条が呆然とし、口を開く。

そこは、異様な雰囲気を纏う異形の学校。

常にグルグルと回る時計を見て、声を無くす。

 

「やぁ、諸君。よく来たな」

石製の下駄を鳴らしながら、ニノが姿を見せる。

 

「ぴッ!?」

ニノの顔を見た瞬間、九条の動きが止まる。

縁糸と銀牙の二人は既に見慣れたが、ニノの姿は全身が赤青黄のカラフルなトリコロールカラーで全身が彩られており、非常に眼に悪いカラーリングをしている。

 

「う、うわぁあああああああ!!!ナニこれ!?ナニコレ!!なにこれ!!」

一瞬遅れて、九条の悲鳴がニノの居る中庭に響き渡る。

 

「チッ、無礼な女だ」

 

「いやぁあああ!!舌打ちしたああああ!!」

ぼそりと呟いたニノの言葉に、九条が再度悲鳴を上げる。

 

「前にも一度、会った事があったはずだが――あの状況では覚えていないもの無理はない、か」

眼鏡を指先で触って、中庭の椅子に腰かけた。

 

「な、ななななな、なに、なんなのアレ!?」

突如始まったホラーに、腰の抜けた九条が近くに立っていた銀牙に縋りついた。

 

「ニノだぜ、動くナントカジローだ」

 

「動く二宮金次郎像……らしい……

実は、俺も詳しくは知らない……」

銀牙の言葉では明らかに足りない、説明を縁糸が補足する。

 

「動く金次郎?学校の七不思議の?」

 

「おおむね、それで間違いは無い。

そうだな、説明も兼ねてもう一度説明しようか。

掛けたまえ」

ニノが椅子を引き、テーブルにお茶の準備を始める。

熱湯が湧かされて鉄瓶、茶葉が入れられているティーポッド、ソーサーとティーカップ。

それらが手際よく準備されていく。

 

「おう、オレも良くわかんねーから、説明してくれよ」

 

「君には、前に説明をしたんだが……」

目頭を押さえながら、ニノがため息を吐く。

 

 

 

「まず、この場所は君たちの居る世界ではない」

 

「そうなのか!?」

説明は始めた瞬間、銀牙が驚愕する。

 

「え、そこから分かってなかったの?」

縁糸が呆れる様な表情で言葉を返した。

 

「銀牙、アンタは少し黙ってて、逆に意味わかんなくなるから」

ニノが九条の前に紅茶の入ったカップを置く。

 

「オウ!わかったぜ!」

無駄にいい顔で、銀牙が親指を立てて見せる。

 

「ニノ!オレにも湯をくれ、ラーメン喰うからよ」

背負ったリュックからカップ麺を取りだし、勝手にポッドから湯を注ぐ。

 

「「「……」」」

その様子を見た、3人がなんとも言えない感情をたたえた顔をして固まった。

ニノがその空気を払う様に、咳払いをし再度、話を始める。

 

「この世界の正確な名前は分かりはしないが、私は『ブックス』と呼んでいる。

君たちの世界の特定のイメージが固まった物が、この世界だと推測される」

 

「特定のイメージ?」

九条がニノの言葉に、首を傾げる。

 

 

「ここは()()のイメージが集まった『ブックス』だ。

校舎に、学生に、先生。

そしてそっちの世界に実際に存在しない物も、学校のイメージ上にあるなら存在している。

例えば、誰でも気軽に入れる屋上、鬱陶しい位の熱血教師、不良たちを纏める番長に――

学校の七不思議の一つである、動く二宮金次郎像などさ」

 

「じゃあ、アンタもこの世界の一部ってワケね」

紅茶を口に着けて、美味しいと九条が漏らした。

 

「ここまでは、俺も分かるんだけどシャドウとはどういう関係なんだ?」

 

「『ブックス』は自分の登場人物を欲しがってるのさ、だからシャドウをその役に宛がう。

シャドウの方もその役を全うすれば、そのブックス内で力が上がる。

どちらから近づいたのかは知らないが、互いに目的はマッチしているだから、ブックスにはその役割を果たすシャドウが大量に居る」

縁糸の疑問に答えるニノ。

 

「そのシャドウ?っていうのは、ここには居ないの?」

 

「居る。このブックスにも当然。

だが、中庭と図書館は私の領地だからな、他のシャドウは立ち入れない」

ニノが指を立てて、校舎内の教室を指さす、

その中には、真っ黒なのっぺりした学生の形をしたシャドウが授業を受けていた。

 

「じゃあ、ペルソナってのは?銀牙が連れてた狼みたいなヤツ」

チラリと銀牙の方を見ると、一心不乱にカップ麺を啜っている。

 

「アレはペルソナだな。心の力の発露だ」

 

「へぇー、アレが……来て!!ペルソナッ!!」

突如、九条が全身に力を籠める。

勢いよく叫ぶが、何も出てこない。

 

「あー、ラーメンうっめ……おじやも、すっか……」

九条を横目にコンビニの塩むすびを取り出し、残ったラーメンの汁に入れてかき混ぜる。

 

「ふむ、まだ覚醒しきれてないんだな」

若干の残念さを醸しながらニノが口を開く。

 

「つかえねーんらな、それでいーんじゃねーの?

無理して戦う必要なんてねーよ」

ラーメンおじやを流し込みながら話す銀牙。

 

「いやよ!」

机をバンと叩いて、九条が立ち上がる。

突如見せた激しい態度に縁糸が驚き、ニノですらチラリと視線を投げる。

だが、銀牙だけは違う。咀嚼音を立てながら尚もカップ麵の器を傾ける。

 

「…………」

ジロリと銀牙が視線を投げる。

 

「ナニよ?」

それを受けて、九条が僅かにたじろぐ。

 

「あぶねーからよ、九条は()()()に来させたくねーんだ。

それに、今は誰もこっちに来てねーんだろ?じゃあ、戦う必要するねーだろ?

これ以上は俺たちにカンケーねーしよ」

 

「ま、待って!それは今だけだ、これからも九条さんみたいに、誰かがこっちに迷い込むかもしれない……

だから、その、だから……」

声を上げたのは縁糸だった。

だが、縁糸本人もなぜ、自分がこんな事を言ったのかわからなかった。

反射的に出た言葉、だがだんだんとその言葉尻は弱弱しくなっていく。

 

「ミドリ、オメェ――」

 

「らしくないな。2人とも」

銀牙の言葉を、ニノが制する。

 

「銀牙、君の言う番長なる存在は関係ない他人を見捨てる存在なのか?

君の名乗る存在は、そんな薄っぺらで薄情な存在なのか?」

 

「ちげぇ!番長は困ってるヤツをぜってー見捨てねー!

この町の番長のオレ様も勿論そうよ!」

バッと立ち上がり、己の顔を親指で指し示し見栄を切る。

 

「見栄を切るのは結構だが、ならば相手の内面も多少は理解したまえ。

彼女は君が心配なのだろう。

君が彼女を救う為に、なりふり構わず必死だったように」

ニノの言葉に九条が眼を見開く。

 

「アンタ、アタシの事を心配したの?」

 

「あ?オレが九条を心配しない訳ねーだろ!

シャドウと戦うのはあぶねーからよ、お前には関わってほしくねーんだよ……」

珍しく銀牙が視線を逸らす。

 

「彼女も関わった以上、君が関わっている以上、放ってはおけないだろうな。

既に彼女も当事者だ。ならば、君が守ってやれ()()殿()

 

「オウ!そうだな、オレ様が九条を守れば良いだけか。

頭ワリィーのに、考えて損しちまったぜ!」

はッはッはと銀牙が豪快に笑いだす。

 

「よっしゃ!俺たち4人がブックスの謎を解いたり、迷い込んだりした奴らを助けるぜ!!

番長愚連隊の結成だ!!!」

 

「ダッサ!?助けたりするのはいいけど、その名前はアリエナイ!!」

 

「却下だ、上品さの欠片も無い」

九条、ニノが同時に否定の言葉を上げる。

 

「ああん!?カッコいいだろ、愚連隊!ミドリもそう思うだろ?」

 

「うーん、カッコよくは無いかな?」

 

「へっ!おめー等、センスがねーな」

銀牙が鼻で笑う。

 

「せめて、クイーンズナイトとか?アタシ、お姫様ポジで」

片手を上げながら九条がぴょんぴょんとアピールする。

 

「ダセェし、弱そうじゃね?」

 

「知性が感じられない、却下だ」

銀牙とニノが否定する。

 

「っ~!!この二宮金次郎像、案外うるさいわね。じゃあ、アンタの意見は?」

九条がニノに言葉を投げつける。

 

「ならば――これは、どうだ?」

ニノが近くの辞書に書かれた英単語を指さす。

 

「オルタナティブ?」

 

「Alternativeとは、代替品、他の選択肢、新しい物という意味だ」

紅茶を飲みながらニノが提案する。

 

「みんな、意見が分かれたな。

ミドリ、オマエはどれが良いんだ?多数決で決めようぜ」

 

「あら、銀牙にしては良い意見じゃない」

 

「4人で多数決か、まぁ、良いだろう」

3人の視線が縁糸を射抜く。

 

「じゃあ、ニノの意見で」

 

「ふっ、当然だ」

唯一まともだと思えたニノの意見を縁糸が選ぶ。

その瞬間、他の2人が崩れ落ちた。

 

「名前は、不満だが仕方ねぇ!とりあえず、ブックスに迷い込んだ奴を助けるきゅーじょたい!オルタナ……あるたなて部?の旗揚げだぜ!!」

 

「お、おー!」

銀牙の音頭に皆が、右手を突き上げる。

 

その瞬間、縁糸の中に『愚者』のアルカナが現れる。

新しい絆が今、ここに誕生した。

 

「じゃ、帰るか」

 

「あ、私も!ニノ、紅茶ありがと!美味しかった」

 

「ああ、また来い」

 

「わわ、置いてかないで!!」

銀牙、九条が去っていく様を、縁糸が追いすがる。

霧に包まれて、再度視界が開けると夕焼けに染まる海岸だった。

縁糸の住む島の方に太陽が沈んでいく。

もうすぐ、灯台が夕焼けを隠しそうだ。

 

「わー、夕焼けキレー。

銀牙!アンタも見てかない?」

 

「まぶしい、俺は先に変えるぞ」

九条がその景色を見て黄色い声を上げるが、銀牙は興味なさげに先に帰っていった。

夕日の沈む海岸沿いに2人が残される。

 

「そういえば、なんだけど……」

縁糸が漏らした声をが掠れる。

 

「ん、ナニナニ?」

カラコンを入れたメヂカラばっちりの瞳に射すくめられ、縁糸が逃げる様に視線を下ろす。

相手の眼から視線を下げたら、その先は当然ボタンが開けられた谷間と下着の一部が見れる胸で――

 

「ッ!?」

縁糸は再度慌てて視線を逸らす。

 

「ん~?そういう事?いろいろ助けられたし、サービスしてあげても良いけど?

今夜時間ある?明日学校だから、オールは出来ないけど明け方までなら付き合うわよ?」

何かを勘違いした九条が、唇の端を舌先で濡らす。

 

「どこでも、好きなトコ、舐めさせてあげる」

こちらを挑発するように、十分に空いた胸元の布を更に指先で下げる。

 

「あー、違う違う!!」

真っ赤に成った顔をしながら、縁糸が否定する。

 

「ちがうの?こっちじゃないの?」

尚も胸の部分の生地を引っ張ろながら、意外そうな顔をする。

 

「その、まだ名前聞いてなくて、教えて欲しいなって」

 

「な、なまえ……ですか……?」

名前の単語を聞いた瞬間、九条の表情が固まる。

 

「なまえ、ね……私の名前……その……も……も」

さっきまでの快活なしゃべり方が一気になくなり、気まずそうに小さく何かをつぶやく。

 

「えっと?ごめん、聞こえなかった」

 

「……もも」

 

「もも?」

聞こえた単語を、縁糸がオウム返しする。

 

「小桃よ!!こもも!!小さい桃って書いて小桃!!

あー、言ちゃった!田舎臭いこの名前!!

小桃よ?小桃!!桃子じゃないだけマシだけど、古臭くって嫌なのよ!」

先ほどまでの余裕たっぷりの、誘惑する様な態度が無くなって必死な様子を見せた。

 

「お、俺は可愛いと思うよ?」

縁糸が庇う様に言うとピタリと止まる。

 

「ホント?ダサくない?おばあちゃんみたいじゃない!?

幼稚園の頃、銀牙に『近所のばーちゃんがモモコって名前だから覚えやすいな!』って言われて以来ずーっと気にしてるのよ!!」

 

「おれは、可愛いと思う……」

圧に押されて縁糸が再度、言葉を発する。

 

「……よし、信じるから。笑ったら許さないから」

唇を尖らせ九条がこちらを見つめて来る。

 

キィン

 

縁糸の心の中に、一枚のタロットが舞い降りる。

今、この時、縁糸と九条の間に、恋愛のアルカナの絆が生まれたのを感じた。

 

「じゃ、明日また学校でね!バイバイ!」

手を振って九条が走って去っていく。

その様は、彼女を確かに救えたのだという実感を縁糸にもたらした。

海に沈んでいく夕焼けを隠す灯台を再度、眺めていた。




ペルソナ6も来ましたね!
来年発売は、無理かなぁ?
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