Persona~Alternative~ 作:ホワイト・ラム
今回からは、日付と曜日をプラスしました。
これで少しは分かりやすくなる、ハズ……
4月3日 日曜日
さんさんと降り注ぐ太陽の光!
何処までも広がる青い空!
緑豊かな大自然と動物達!
精いっぱいの美化を含んだ言い方をすれば、
「うっし、着いたぞお疲れー」
バイクから降りてヘルメットを外した響喜がにかっと笑う。
目の前にあるのは半場自然へと帰りつつある廃屋。
「どーだ、豪邸だろ?こっから、一年ここがお前の住処だぞ?」
「えっと……はい……」
ちらりと横を見ると、四つ足の獣が木々の間へ隠れた。
周囲から絶えず、生き物の声が聞こえる。
「ここ、本当に日本……?」
縁糸が思わずつぶやいた。
「いいだろ?東京には田んぼもねーもんな!
都会っ子にゃ、なじみが無いだろうがすぐになれるさ!!」
ガハハと響喜が笑って縁糸の背中を叩く。
「おら、部屋案内してやる。荷物持ってついてこい」
「あ、はい……」
家とその住人の圧に押されて縁糸が家の中へ入っていく。
「ほい、お前の部屋」
「…………へぇ」
縁糸が小さく声を漏らす。
家の中は外観ほど野性味が無く、電気も水道も通っている様だった。
そんな中、縁糸に宛がわれた部屋は2階の一室、窓の外からは遠くに件の灯台が見える。
「海だ……」
先ほどまで、干上がっていた海水が戻って来ていた。
向う側と繋がっていたハズなのにすっかり、分断されてしまっている。
「夜は窓、開けんなよ。虫が入ってくる」
「うぉっと!?」
突如背後から聞こえた響喜の声に縁糸が驚く。
さっき出て行ったハズだが、プライバシーという物は無いのだろうか?
「荷物の整理が終わったら、裏庭に行ってくれ。
今日の分の薪を作るのを忘れた。
1巻き分も割れば良いから、頼むぜ、男手!」
「あ、はい……」
返事を終えてから、改めて「薪?」と脳内で言い返す。
「は、はひ、はひぃ……」
すかっ!すかっ……カァン!
数回の空振りの後、ようやく刃が薪を捉える。
「あ、あと、一個……」
家の裏に有ったのはまさかの、焚火式の風呂とその為の薪。
初めての
「い痛っ……!」
気が付くと、手のひらに豆が出来ていた。
「くそっ!なんで、俺が――」
悪態が口を突いて出た時、脳裏に両親の姿が浮かぶ。
「――――っ」
縁糸は必死になって、その後の言葉を飲み込んだ。
「…………灯台、灯かり着かないのか」
気が付くと、既に夕日が海に沈みつつある。
さっきも言ったように、ここは海で陸から離された島の様な場所。
この家と沈黙した灯台以外人工物など、有りはしない様だった。
「コンビニ……無いよな」
ちょっと疲れた時に飲む栄養ドリンクなどを買いに行けるコンビニなど在りそうにも無かった。
この、暗い島の中で縁糸は叔母の響喜と二人きりなのだ。
「なーんも、無く成っちまったな……」
縁糸が一人つぶやく。
その言葉は、この島に対してかそれとも自らに対してか……
「さて、部屋に……」
がさっ、がさっ!
「!?」
背後の茂みの揺れる音に縁糸が驚く。
この島は鬱蒼とした自然が覆い茂っている。
何らかの野生動物が居ても不思議はない。
ネズミやネコならまだ良い、イノシシやまさかと思うがクマなど居ないだろうか?
そう思う間も音は大きく成ってくる。
揺れの大きさも同じく。
そしてこちらに近づいてくる。
(ネコとかの大きさじゃない……イノシシ……、いや、もっと――!?)
一度は冗談めかして言ったクマという可能性が現実味を帯びてくる。
縁糸の両足は縫い付けられた様に動かない。
「ッ――!」
縁糸が手に持つ鉞に力を籠める。
緊張と恐怖、頬を嫌な汗が伝うのが分かる。
そして――
がさっ!!
「ふぅーい……ようやく出れたぜ!」
一人の少年が姿を見せる。
浅黒く日焼けした肌、眼と鼻の間、右頬、タンクトップと短パンから露出した肌には細かい切り傷が付いている。
そして、何かのマンガのキャラの真似なのか、右手には持ち手の部分に包帯を巻いた角材を握りしめている。
「んお!?誰だお前ぇー!!さては変態不審者だな!!
ウチにくるたぁ、運の無い奴だぁ!!」
その少年は縁糸の姿を見た瞬間、右手の角材を構え臨戦態勢を取る。
「え、ちょっと!?」
「刃物ごときで、ビビると思ったら大間違いだぜ!!」
鉞と角材。
堅さでいえばこちらが上だが、リーチは圧倒的に向うの方が上。
「待て、俺は――」
縁糸は敵意が無い事を示すため、鉞を捨て両手を上げて見せる。
だが、少年はそんな事一切関係ない!!
「言い訳はあの世で、閻魔にでも聞いてもらえ!!
チェストぉーーーー!!!」
角材を思いっきり振り上げた!!
「ひぃえええええ!!!」
「そこまでだ、ゴラァ!!」
振り下ろされた角材にバイクのヘルメットが当たる。
「カーチャン!!」
「かぁちゃん!?」
少年の言葉に縁糸が混乱する。
「
誰彼構わず、獲物を構えるんじゃねーよ!!」
「いでぇ!?」
響喜が少年の頭にげんこつを落とす。
少年が涙目になって抗議する。
「ひっでーぞ!いってーぞ!!児童虐待だぁー!!」
「ああん?もう一発言っとくか?」
響喜が再度拳を構える。
「ひぃぃぃ!!もう勘弁!!」
明稀と呼ばれた少年が、自身の頭を守る。
「縁糸、コイツはアタシの娘の明稀だ。
一緒に暮らす事に成るから、よろしくな。
ほら、返事しるアキぃ!」
「うぉ……オレは明稀だ……
えっと、中学1年……好物はハンバーグと唐揚げ……
よろしく……」
涙目で頭を押えながら、明輝が言った。
「ああ、親子ね」
たった今現れた、明輝という少年の言動を聴いて何となく縁糸は悟った。
「ふっふ~!!やりぃ!!ふっふ~う!」
家の居間の食卓で、明稀が大皿の唐揚げを前に小躍りする。
むしゃむしゃと凄まじい勢いで消えていく。
「縁糸、明日起きたら学校行くぞ。
初めてで場所分かんねーだろうから、明稀についてけ。
話は大方通して有るから」
「あ、はい……」
任せて大丈夫かな?と不安になりながら、縁糸は隣で唐揚げを前にはしゃぐ明稀を横目で見た。
「もう一発いくか?」
「ひぃ勘弁!?」
明稀は再度、頭を押さえて涙目になる。
「ふぅ……疲れた……本当に……」
湯舟の中で、縁糸が手で掬ったお湯を顔にかける。
自らの薪で沸かしたという風呂はなかなかに、良い物に感じれた。
「疲れてるってのも、有るか……」
両親の都合で、こんな田舎(それもその中でもかなりの僻地)に住む事となるとは思いもしなかった。
深夜のコンビニ、どころか島には児童販売機すらも無さそうだし、当然友人と呼べる人間も居ない、学校すら変わってしまった、そして世話になる二人のテンションも縁糸にはついていくのは難しそうだった。
そんな中で、今から一年。
「一年か……」
その現実の重さを受け止める様に縁糸が呟いた。
考えるだけで、ますます憂鬱だった。
「耐えろ……ただ、じっと耐えるんだ……」
右手で自身の左肩を掴む。
これは縁糸の癖だった。
不安な事、嫌な事をじっと我慢する時に、右手で左の肩を掴む。
「……よし、とりあえず明日の学校の事を考え――」
「はぁ~風呂風呂ー、おっ?」
縁糸が湯舟から上がると同時に、風呂場の扉が開いた。
その向うに居たのは明稀だった。
突如の出来事に縁糸が慌てる。
「うわわわわ!?」
「あー、先風呂入ってたのか。
服も脱いじまったし、ついでに一緒に入れてくれよな」
そう言って明稀が慌てる縁糸を他所に、湯舟の中に滑り込む。
「痛ぅ~傷口に湯が染みるぜ~」
「あ、あああああああああああきちゃん!?」
縁糸が驚き明稀を指さす。
「んだよー?どした?」
縁糸は見た、風呂に侵入してきた明稀の裸体を。
そして、少年だとばかり思っていた相手の胸にある僅かな膨らみを――
「明稀
「んだよ、カーチャンも娘って言ってたろ?
シツレーなヤツだなー
オレの呼び方はアキでいいぜ」
そう言って明稀が自身の顔を親指で指さす。
その仕草はどう見ても少年、だが体を見てしまった縁糸は否応にもそうではない事を知っている。
「そういえばさー」
「な、なに?」
明稀の言葉に固まっていた縁糸が反応する。
「モヤシすぎて、本当に男か分かんなかったけど、
明稀の視線が縁糸の下の方に向けられる。
「も、もう出るから!!」
「あ、背中くらい流してくれよ~」
背後に投げかけられる明稀の言葉を無視して、縁糸は自身の部屋に逃げ帰った。
なんだか、大切なモノを喪てしまった気がする日だった。
4月4日 月曜日
「ふっ……ふぅ……ひぃ……」
「おらー、漕げー、漕げー、モヤシー」
翌日、縁糸は手漕ぎのボートを必死になって漕いでいた。
目の前の明稀がヤル気無さそうに声を投げかける。
「登校前に、放課後に成っちまうぞー」
「アキちゃんも、手伝って……よ……はぁ、はぁ……」
「船のオールはオマエの持ってる2本しかねーよ。
しかもオレにオマエの分も漕げってのか?
人の心とかねーのかよー?」
「ひっ、ひぃ……」
1時間近くかかって、ボートはようやく陸地に降り立った。
「船の縄、しっかり縛っておかねーと帰れなくなるからなー?」
明稀がテキパキとボートを港の杭に縛り付ける。
「んじゃ、この先のバス停から行くぞー、ついてこい」
「はぁ、はぁ……はぁ……」
体力をごっそり削られて、膝に手を突きながら縁糸が明稀に連れられバスに乗る。
「ここのバス、一応朝は4本出てるからどれかにのりゃオーケーだから。
んで、
帰りもバスな、時刻表見とけ」
非情に雑ながらも説明はしてくれる、昨日母親に頼まれた事なのでやっておこうという訳なのだろう。
「アキちゃんは……その……」
なんらかのコミュニケーションを取ろうと縁糸が口を開くが次の言葉が浮かばない。
いや、思い出すのは昨日の風呂場での気まずい空気(あ)
その時、バスが緩やかに止まった。
『鳴奏高校前ー、鳴奏高校前ー』
「うっし、着いたぞ。じゃお勤め行ってらー」
明稀が縁糸の肩をバシンと叩く。
気が付くと、自身が身に纏う制服と同じ物を来た生徒がちらほら見えた。
転校生が珍しいのか、ちらちらとこちらに視線を投げかけてくる。
その様が縁糸には居心地が悪かった。
「サボんなよー」
明稀に追い立てられ、バスから降りた縁糸が目の前にある校舎を見る。
薄汚れたコンクリートに、生徒たちが疎らに吸い込まれていく。
「此処が鳴奏高校……」
嘗て自身が通っていた学校とは大違いだった。
汚くて、古臭くて、人が少ない――
そこまで考えて、縁糸は首を横に振った。
(悪い事ばっかり考えるな、きっと良い部分もあるハズだ)
「おお”?おめー、見ねー顔だな。転校生か?」
「でっか!?」
後ろからかけられる声に縁糸が振り返り、驚きの声を上げた。
「まぁな、俺190有るからよ!」
にっと笑ったその男の言葉は嘘ではないらしい。
だがその体の大きさか、顔の厳つさからか縁糸は恐怖を感じた。
「えっと……」
「あ、来た来た。君、霧崎 縁糸君だろ?」
学校の中から赤いジャージを着た先生が縁糸に気づく。
「は、はい……!
じゃ、また」
天の助けとばかりに先生に縋りつく縁糸
「おう、じゃーな」
大柄な男はぼーっとしながら縁糸を見送った。
「えっと、東京の秀尽高校から来ました、霧崎 縁糸です」
もろもろの説明を職員室で、終えた縁糸が黒板に名前を書く。
この鳴奏高校は児童数が少ない。
となれば当然、クラス数も1つだけ……
「ぐぅお……スピ―、すぴー……」
さっきの大柄な男も同じ学年なら当然同じクラスに居る。
「霧崎君の席は、
あの、寝てるデカい奴だ。
おーい、鹿頭ー、起きろー、一限前だぞー」
「んご!?先生!!弁当の時間か!?」
「違うぞ、鹿能……」
先生が頭を押さえた。
「お、朝の転校生じゃねーか!名前はえっと……霧崎 みどりいとか?
変な名前だなー
俺の名前は
俺はよ、この学校の番長なんだぜ?」
鹿能は自慢げに笑って見せる。
「そう、なんだ……あと緑じゃなくて縁です……」
「お!?疑ってんな?その証拠見せてやるよ」
そう言って鹿能はドラゴンの描かれた裁縫箱を取り出した。
「不良のマストアイテム、ドラゴン裁縫箱だぜ」
「あ、すごいね……」
自信満々に笑う鹿能に縁糸は引きつった笑みを浮かべた。
「ちょっとー、馬鹿脳いきなり絡まないでよ?転校生困ってるじゃん」
今度は反対の席の女が、口を開いた。
「い!?」
バリバリの化粧に、金色に染めた髪、指には派手なネイルでスカートも短く、制服のボタンも3つも空けているバリバリのギャルファッションの女がいた。
東京でも滅多に見ない恰好に縁糸は面くらう。
デカいバカに、けばいギャルとかなり濃いメンツが両脇を固めたいた。
「ミドリと俺は親友なんだぜ?横から入ってくるんじゃねーよ!」
「はぁ?始めて会ったヤツなのに、親友とか訳わかんないから!」
「ふっ、友情は時間じゃねーんだよ、深さなんだよ……
な!親友!帰りにラーメン喰いに行こぜ!」
「ラーメンとかダッサ!東京から来た人が食べる訳無いじゃん!
せめてクレープとかでしょ?」
馬鹿とギャルに挟まれて縁糸がやんややんやと巻き込まれる。
「えっと……えっと……?」
来て早々縁糸が目を回した。
放課後
「え、どこ……ここ?」
バスから降りた縁糸が茫然とする。
気が付けば知らない場所。
寂れたバス停で終点だと降ろされた。
「あー!!!帰り方、聞いて無かった!!!」
今朝の登校するまでは聞いていたが、帰り方を明稀は教えてくれてはいなかった。
「あああ、どうしよ……」
縁糸は奥嶺ヶ淵という場所を舐めていた。
すこし、ほんの少しでも人の居る場所を外れると、そこは全くの知らない未知の場所だったのだ。
「よ、ミドリじゃねーか!なんで、俺のお気にのラーメン屋の最寄り知ってんだ?」
巨大な影、鹿能がその姿を見せた。
「ほーん、お前灯台に住んでるのか」
「いや、灯台っていうか……島?」
夕焼けの中を鹿能が自身の自転車の押しながら縁糸と話す。
「来たばっかりじゃ、迷うよなぁ。
安心しろ、俺がしっかり送り届けてやるからよ!」
初見はデカいだけの馬鹿というイメージだったが、困っているときは頼りに感じる。
「おっ……今夜は満月か?」
鹿能が空を見上げる。
バス亭からそこそこの距離を歩いてきたのだ、夕焼けが海に沈みつつある。
「このよ、コンクリ橋、渡りゃあ島まで行けるハズだぜ?
ちょっと、ボロいけどよ」
「橋?」
鹿能が指さす先、古いコンクリートの橋が海に向かってかかっている。
夕闇に晒され、その先は見えはしない。
「いっしょに、渡ってやるよ。
ラーメン喰ったから、夜飯いらねーって伝えたからよ」
「あ、ああ……」
鹿能の言葉を一瞬、断ろうと思ったが暗闇の中に続く橋という不気味なシチュに縁糸が自身の意見を変える。
「んだぁ?霧が出てきたな?」
「ただでさえ、暗いのに霧まで……」
未知の場所、暗さ、霧その全てが縁糸を不安にさせている気がする。
その時――
ピカァ!
端の先、暗闇と濃霧をかき分け、一陣の光が差し込む。
「灯かり?灯台の明かりだ!」
「マジか?俺、初めて見たぜ」
二人はその光に誘われる様に、歩く速度を少しだけ早くする。
そして――
「ここ、どこだよ?」
「島、じゃないのか?」
光の先、橋を渡り切った後、二人の前に姿を見せたのは学校だった。
だが、昼に行った学校ではない。
あちらは一応はコンクリートの近代的な学校。
だが、こちらはボロボロの多分白かったと思われる木製の校舎、そして明らかに廃校と思われるほど手が入った様子は無い。
ツタの絡まった校舎に、なぜかぐるぐると針が回っている時計。
全てが不気味で、意味不明で、異質だった。
「あの島、寂れた学校まであったのか……」
「あー、噂程度ならあるけどよ、本当にアッタんだな。
なーんか、ヘンじゃね?
んお!ナントカ次郎あるぜ!!ナントカ次郎!!」
鹿能が今ではすっかり見なくなった、二宮金次郎の銅像を指さす。
最近は歩きスマフォをイメージさせるとかで、座っている形が多くなったらしいが、この異様な学校の金次郎はまだ立っているらしい。
「しっかし、カラフルだなー。
誰か塗ったのか?」
落ちてた棒で鹿能、金次郎をつつく。
「ミドリもやれよー、なんか変に柔らかいぜ」
鹿能がゲラゲラ笑う。
「柔らかい?銅像が?そんな馬鹿な……」
「君たち、ずいぶん失礼じゃないかな?
初めて会った相手を指さすどころか、棒でつつくなんて……
はぁ、嘆かわしい……」
「え!?」
突如聞こえる声、縁糸がその声の主を探し、金次郎像の顔に視線を送る。
すると、銅像がパチリと目を開いた。
「始めまして、諸君。私は二宮 金次郎……愛嬌を込めて『ニノ』と呼んでくれたまえ」
自己紹介をした銅像が本を閉じ、紳士的にお辞儀をした。
キャラが一気にだしてしまった……
覚えきれるか、心配ですね……