Persona~Alternative~   作:ホワイト・ラム

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今回はちょっとした小休止となります。
日常回をお楽しみあれ。
次話は、もう一回6月中に出せると良いなぁ……


オッス!相棒!ラーメン喰いに行こうぜ!

4月6日 水 放課後

 

ピコーン、ピコーン、ピコーン……

 

レーダーの音に、青く暗い部屋。

僅かにピアノの様な音に、女性の歌声が聞こえる。

 

ヴェルヴェットの上等な作りの机の向うに長鼻の老人、イゴールが座っている。

 

「見事、ご友人を取り戻した様ですな」

 

「ズズ……ぐ、ぐごぉ……」

老人の横に直立不動で立つ女が小さくいびきをかいている。

薄灰色の長髪にシルバーの眼鏡、黄金の瞳は瞼の下に閉じ込められている。

 

「レイシア、起きなさい。

ご客人の前だぞ」

 

「ぐごっ――ハッ!?我が主、およびですか?」

 

「例の説明を」

イゴールがレイシアに促す。

 

「縁糸様のご活躍、お見事でした。

自身の友人を取り戻しましたね。

そして、異世界での新たな出会いも――ぐぐぅ……」

レイシアの声が小さくなる。

 

 

「――ハッ!?失礼したしました」

一瞬だけ、眠っていた様だ。

その事に気が付いたイゴールが厳しい目を向ける。

 

「貴方様の能力はワイルドの力。

空っぽで虚ろな無色透明な心、故にどんな色に染まる事もどんな形も変わる事が出来るのです。

しかし……その力を……眠らせると……いうのも、貴方の選択……です……」

レイシアは立ったまま、鼻提灯を膨らませ始めた。

 

「一応は内容を話せたから、良しとするか。

いや、失礼。ここからは私が話しを引き継ぎましょう」

こほんとイゴールが咳払いをする。

 

「先ほども言ったように、その力はワイルドと呼ばれる稀有なモノ。

他者と繋がり新たな力に目覚めて、ペルソナの姿を変えてゆくのです。

レイシアは眠らせるのもと、言っていましたがペルソナに目覚めた時点で貴方は運命に、呼ばれているのです。

最早、逃げる事など出来はしません」

 

「他者と関わり、その者たちと絆を重ねるのです。

重ねた絆が新たな力となるでしょう。

それこそが、唯一立ち向かう術……」

イゴールの言葉を再度目覚めたレイシアが引き継ぐ。

 

「貴方がペルソナに目覚めた時、背中に現れた翼の刺青は覚醒の証。

他者と関わりアルカナを手にし、育むのです。

既に貴方は『剛毅』の絆に目覚め、また新しいアルカナも目覚めつつあります……ぐぅ……

またの、ご来艦をお待ちしております」

レイシアが再度立ったまま、鼻提灯を膨らませ始める。

 

 

 

4月6日 水 放課後

 

「オゥ!どうした相棒、急にボーっとしてよ?」

 

「え、うぅあ!?」

気が付くと目の前には銀牙の顔のドアップ。

突然の出来事に、驚かないハズも無い。

 

「どうした?デケェ声だしてよ?」

目の前で大声を上げたと言うのに銀牙が一切動揺していない。

 

「い、いや、なんでもない。本当にぼんやりしてただけだから……」

縁糸がポケットの中の、ドッグタグを握る。

たった今見たあの、部屋は決して幻などでは無い。

 

(絆とアルカナか……)

 

「んでよ、ここのラーメンがスゲーウマいんだよ。

マジのマジでオススメだぜ」

再度、考えだした縁糸の思考を銀牙の言葉が遮った。

 

 

4月6日 水 午後

 

 

銀牙を助け出した翌日。

ニノは暫くは動けないと言っていたが、この男には関係ない様だった。

まるで本当に何も無かったかのように、普通に授業を受けていた。

 

「ふぅー!体育の後のメシはウメーな!」

高さ10センチ、縦20センチ、横15センチはあろうという巨大な金属製の弁当箱。

縁糸の脳裏に『ドカベン』とい単語が浮かんだがもはや弁当箱というより頂き物のお菓子などを入れる缶のサイズなのだが、それに銀牙が箸を突っ込んで中身を搔っ込んでいく。

 

「良く喰うでしょ、コイツ?」

銀牙の横、同じく机をくっつけて来た九条が親指で銀牙を指し示す。

巨大弁当は既に半分が銀牙の腹の中に消えていた。

 

「うわぁ……」

縁糸はその様子を茫然と見るしかなかった。

 

「まったく!散々心配させておいて、本人は平気な顔してるんだから!

迷惑かけた自覚あるの?

私や委員長だって、必死に探したんだからね?」

 

「おー、そりゃ悪かったな。

詫びに今日、ラーメン奢ってやるよ。

来るだろ?」

 

「うっげ!?また、ラーメン?

そんな脂ぎったモン食べる訳ないでしょ!」

九条が嫌そうな顔をする。

彼女の主張どおり、彼女の弁当箱は小さく、ブロッコリーやキャベツの野菜中心の物ばかりで、鳥のささみ肉らしい物が唯一の肉類だった。

 

「おい、相棒。テキトーに焼いた肉喰うか?」

銀牙が自らの弁当箱から、何かのタレに付けて焼いたであろう鶏肉を一切れ差し出してくる。

 

「はぁ!?

あの食べ物にがめつい銀牙が自分の弁当を誰かにあげるなんて、初めて見た……」

九条が酷くショックを受ける。

 

「というより、なに?『相棒』?

ちょっと、見ない間にずいぶん仲良くなったじゃない?」

九条は今度は縁糸にじっとりとした視線を投げてくる。

 

「あ、あはは……」

あの場所で起きた事など話せる訳もなく、縁糸は愛想笑いで誤魔化すしかなかった。

そこに委員長が歩いてくる。

 

「あの、鹿野君。

昨日お休みした分のノートなんだけど要る?」

委員長が数枚のルーズリーフを差し出してくる。

自身のノートに書いた物を、わざわざ見せやすく清書し書き出してくれた様だった。

 

「お、委員長もサンキューな!

九条と手分けして俺を探してくれたんだってな」

ノートを受け取りながら銀牙が礼を言う。

 

「ううん、私結局見つけられなかったし、私なんかより九条さんの方が必死に探してたんだよ?」

 

「委員長!余計な事言わなくて良いの!」

九条が必死になって委員長の声を遮る。

 

「九条、お前良い奴だな!やっぱラーメン――」

 

「要らないって言ってるでしょ!?」

今度は銀牙の言葉を九条が遮った。

 

(心配、要らないな)

縁糸がなんて思っていたら、あっという間に放課後に成った。

 

「おう、ミドリ!おめーに借りが出来たな。

昨日の約束通りラーメン奢ってやるよ。

俺は不良だからよ、男同士の約束にはうるせーんだ」

 

「え、ちょ、外で食べるなら、連絡入れて――」

 

「んじゃ、早速いこーぜ!」

有無を言わせず、銀牙の腕が縁糸を捕まえる。

ズルズルと引っ張られながら、スマフォで夕飯が要らない旨を伝える。

 

 

――再び4月6日 夕方

 

ワイワイ ガヤガヤ ワイワイ

 

銀牙の連れて来たラーメン屋は、決してキレイな店では無いが活気が有った。

油でベタベタする床を歩き、心なしか粘つく机の上には端の捲れたメニューが立てかけてあった。

壁には複数のメニューの名がある。

ラーメン屋というよりは、ラーメンがメインの中華料理屋と言った趣だ。

 

「うっし、んじゃ早速注文するか。

とりあえず、食べ放題コースで良いか?」

 

「え、え、え!?」

縁糸の言葉も聞かずに、銀牙が食べ放題のコースを2つ注文する。

 

「ラーメン全部の味2つと、唐揚げ、ぎょうざ、大盛のチャーハンと天津飯な!

あ、乾杯用のコーラも2つ!」

ドンドンと銀牙が注文をしていく。

 

「ちょ、頼みすぎなんじゃ……」

 

「へっ!食おうぜ、相棒」

銀牙の良い顔を見ていると、文句の一つも言えなくなる。

数分後、目の前に大量に並ばれた料理を見て後悔をするのは別の話。

 

 

 

2時間後

 

「ふぅ、喰った喰った……」

 

「う、もう、入らない……」

銀河は満足気に、縁糸は這う這うの体で店の暖簾をくぐる。

あの後、無邪気に注文し続ける銀牙に付き合い続け、望まないフードファイトをする事に成った。

なんだか、忍耐力と寛容さが上がった気がする。

 

「お、やべー、忘れてた。

てんちょー!追加だー!」

たった今出て来たばかりだと言うのに、再度銀牙が店の中に入っていく。

 

「まだ、食べるの?」

扉を開けた瞬間、香ってくる油の匂いだけで気分が悪くなる。

 

「すまねー、少し待っててくれ。

唐揚げ追加で喰うか?」

扉から首だけ出して、銀牙が尋ねる。

 

「要らない!」

 

「んじゃ、1人分減らすわ」

不穏な言葉を残して、銀牙が三度店の中へ戻っていく。

 

その時、縁糸の脳裏にヴィジョンが浮かぶ。

真っ黒な空間の中、何処かから一枚のカードが降ってくる。

そのカードの表面にはタロットの大アルカナの『戦車』のイラストが描かれていた。

縁糸は自身が新たな、絆に目覚めた事を自覚した。

 

(これが、絆ってやつか……?)

 

「よっしゃ、行くぜ!

ハラ一杯みたいだな、腹ごなしに歩いて帰るか」

そんな事を考えていると、店から銀牙が顔を出した。

 

 

 

 

 

ラーメン屋の帰り、海岸沿いを2人で歩いて帰っていく。

 

「あー、喰った喰った、もう入らねー」

 

「おいしかったよ、ちょっと食べすぎたけど……」

満足気に先を征く銀牙に縁糸が続く。

夕焼けがゆっくりと、沈み始める。

視線の先に、縁糸の家のある島が見えてくる。

 

(青春っぽいな……)

何となくだが、縁糸がぼうっと考える。

 

(一時はどうなるかと思ったけど、俺、コッチでもなんとかなりそうだな)

小さく微笑んで顔を上げる。

 

「んじゃ、もう一か所行くか!」

 

「え?」

銀牙がぐいっと縁糸の腕を掴む。

その先は、先の崩れたコンクリート橋だった。

橋を進んでいくと、一気に2人の視界がぼやけて行く。

 

「お、煙が出て来たな」

 

「霧じゃないかな?いや、急に出てくるのは確かにおかしいけど」

不自然な霧、そしてもうすでに、途切れているハズの橋を進んでいくと――

 

「うっし、着いたな!」

銀牙が見上げる場所は、以前の異様な学校の校舎。

そしてその視界の先には――

 

「よぉ、ニノ!遊びに来たぜ!」

銀牙が右手の袋を掲げて、ニカッと笑う。

それに対して、ニノが茫然とする。

 

「き、君たちはまた来たのか!?

此処は人間の来る場所では無いと、何度言えば良いんだ!?」

現れた2人に対して声を荒げる。

 

「おう、ワリィワリィ。

けどよ、お前ラーメン喰った事ねーみたいだからよ。

ラーメン喰った事ねーとか、人生の損失だからよ、もって来たぜ」

銀牙が右手のビニール袋を突き出す。

 

「ラーメン、だと?

持って来たのか?わざわざ、私に食べさせる為に?」

理解出来ないと言わんばかりの声色が伝わってくる。

 

「喰うだろ?お前の為に買ってきたんだぜ」

 

「…………その厚意に甘えよう」

ニノがビニール袋を受け取る。

 

「……これは?」

ニノが受け取ったプラスチックの器を見て、しげしげと眺める。

数秒の思考の後、蓋をずらしスープの中に麺を入れて食べ始めた。

 

「――――――ほう」

一言小さく、呟いて再度ラーメンを食べ始める。

 

「美味だ」

 

「だろぉう?唐揚げも有るぞ!」

そう言って、さっきのビニール袋からアルミホイルに包まれた唐揚げを取りだす。

 

「なんと」

ニノが再度小さく声を漏らす。

そして、箸を伸ばした。

決して大きなリアクションしないが、確かな感動を見せたいた。

 

 

 

「なんか、ふいんき変わったか?」

銀牙が言葉を漏らす。

言われてみれば、以前の様な誰かに見れている様なひり付く感覚が無い。

 

「ああ、君たちがシャドウとして仕切っていた部分が、無くなったなら私の領地として吸収されたんだ。

この世界はあくまで、争い合う勢力図に過ぎない。

不良グループの仕切る一角が、私の物に成ったから前より余裕が出来たのさ。

もっとも、校舎の中にはまだまだシャドウも居るハズだが、中に入りしなければここは安全、と言えるかな?」

唐揚げをかじりながらニノが説明する。

 

「ふーん、そうか」

縁糸は校舎を見上げた。

 

 

 

 

 

「ったく、ドコ行ったのよ!

せっかく私が探してあげてるのに、一声かければ喜んで飛んでくるモンでしょ!」

九条が苛立たし気に海岸で石を蹴っ飛ばし、不機嫌そうにが唇を尖らせる。

しかし、そんな尖った態度も一瞬で自身なさげに萎む。

 

「あのバカ、休んで復活したら転校生と仲良く成ってるなんて一体どうなってるのよ?

私が10年かけてここまで来たのに……

はぁ、男同士の友情ってこんな簡単に出来るモノなの?」

腕を組んで歩くがその答えは誰も教えてくれない。

小中高と同じ学校だった銀牙の事は誰よりもしてっている積りだったが、あの転校生はそんな積み重ねをあっさり追い抜き、今や銀牙が『相棒』と呼ぶほどの間柄だ。

 

「はぁー……もやもや、する……

適当に金持ってるオジ様でも捕まえて、お寿司でも奢らせるか!」

気を変えて、クルリと町の方へつま先を向ける。

その時、丁度太陽が海の向うへ沈む。

 

日没が訪れ、夜がやってくるまでの狭間の時――

 

ピカァ――!

 

「え?」

 

眼前に見える島の廃灯台に灯かりがともった。

 

「あの灯台、灯かりつくんだ」

九条の瞳の先、ぼぉっと灯かりが怪しく揺れる。

 

クルリ、クルリ

 

自らの位置を知らせる様に光が明滅する。

 

クル、クル、クルリ

 

「よん、で、る……」

九条が壊れたコンクリート橋に立つ。

先の切れた橋に立った瞬間、霧が現れ九条の視界を遮る。

濃い霧の先、こちらを呼ぶ様にクルリクルリと灯台の明かりが見える。

 

「…………」

九条は無言で、橋を渡り始めた。

 

霧の向うの灯台に導かれる様に、一歩一歩進んでいく。

 

 

 

「ほら、銀牙!早く帰らないと夜に成っちゃうぞ」

縁糸と銀牙が霧の向うから、橋へと戻ってくる。

 

「おう、分かってるよ――お?」

銀牙が動きを止め、背後を振り返る。

 

「どうした?」

 

「今よ、九条の奴が居た気がするんだが、あー、気のせいだろ」

銀牙は再度、縁糸に向き直り走り出した。

 

 

 

その日、九条は霧の中へと姿を消した。




ペルソナ紹介

イカロス

霧崎 縁糸の愚者アルカナのペルソナ。
大剣を地面に突き立てた白亜の青年の像の形をしたペルソナ。
背中の緑の翼のみが唯一生物的なデザイン。

像の姿の通り本体は一切動けない。
翼で風を操り攻撃、または本体を移動させる。
剣を使う時すら、風で浮かせて切りつける。

耐久力に優れ、魔法、物理の両方をバランス良く使える。
逆に言えば多少堅い程度で、攻撃面でも防御面でも特徴と言える物は無い。

ガル マハガル ガルーラ スラッシュ 突撃 等 

風属性に耐性 氷に弱点

何時の日か、その殻を突き破り空へ羽ばたく日は来るのか?
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