Persona~Alternative~   作:ホワイト・ラム

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今回のタイトルは「かんらくがい ばたふらい」と呼びます。


乾楽街Bad‐Fly

4月8日 金 放課後

 

 

異形の学校の中庭で、サイケデリックなカラーリングの二宮金次郎、ニノが本を閉じる。

空も足元の影も同じく、異様な色合いだがニノ本人の気分は何処か、上向きに思えた。

 

「素晴らしい――見聞が広がってゆくのが分かる。

私の脳内に新しい知識が満ちて行く……

先駆者たちの残した偉大なる英知によって、私という存在が膨らみ拡張され進化してゆく――

これこそが、これこそが『生きる』という事」

ニノが一文字一文字を噛みしめる様に読書を堪能する。

 

その時――

 

「む、来客か?」

ニノがパタンと本を閉じて立ち上がる。

それとほぼ同時に、五月蝿い足音が聞こえて来た。

 

初めに見えたのは180センチを超えんばかりの巨漢。

必死の形相で走ってくる。

その後を、さっきとは別の意味で必死になって走ってくる気弱そうな、大人しそうな顔をした少年がもう一人。

 

「おう、ニノ!九条がきてねーか!?」

巨漢の男、銀河がニノを肩を掴んで尋ねる。

ニノの知識を味わう読書の時間は、あっさりと奪われた。

 

「クジョウ、誰だそれは?」

 

「オレの幼馴染だよ!

昨日から帰ってねーんだよ!」

ガクガクと肩を揺らしながら銀河が尚も訪ね続ける。

 

「情報が、断片的すぎる、お、落ち着いて、話せ」

揺らされながらもなんとか応えるニノ。

 

「はぁ、はぁ、はぁ……俺と銀牙の……はぁ、はぁ……うっ!

クラスメイトの女子……うぇ、はぁ、はぁ……銀牙が帰ってきた昨日から、行方不明なんだ……

はぁ、はぁ、はぁ、ひょっとしたらまたこの世界に紛れ込んで、無いかって思たんだ……」

おそらく暴走したであろう銀牙の後ろを、必死になって付いてきたであろう縁糸が肩で息をする。

 

「この学校に誰かが入って来た事実は、君たちを除いて無いハズだが……

調べてみよう。

成りゆきの結果とは言え、君たちのお陰で私は充実した読書を楽しむことが出来る様になった。

紳士たるもの、恩義は返すモノ、だ」

ニノが手で2人を制し、すこし距離を置く。

 

「出でよ、ヘカトンケイル!」

ニノの持つ石の本に一瞬だけ赤い線が走ると同時に、背後に岩とレンガと金属で構成された6本腕のペルソナが召喚される。

 

岩に茂るツタの腕、野太いレンガの腕、背後を飛び回る金属性の腕が同時に地面に張り付く。

円の形に水色の光の波が6つの腕からそれぞれ広がっていく。

 

「…………」

数秒の後、ニノがヘカトンケイルを消す。

 

「九条は居たか!?」

 

「まて、順を追って話す」

再度近づく銀牙を腕でニノが制す。

 

「ンだよ!じれってーな!!」

 

「ッ~~~…………」

ニノが目がしらを押える。

 

「まず第一に、この学校に君たち以外の人間は居ない」

 

「よし!九条はここにいねーんだな!?」

ニノの言葉にぱぁっと銀牙の顔が明るくなる。

そして後ろを向き、帰ろうとする。

 

「待て!なぜ君はそう早計なんだ。

話はまだ終わってないぞ」

ニノが銀牙を制する。

 

「この世界、君たち風に言うのなら『こっち側』の世界には居る。

だがこの『エリア』には居ない」

 

「あ?どういう事だ」

 

「ゴメン、今度は俺にも分かんない」

銀牙に続き、縁糸も同じ様な言葉を繋ぐ。

 

「整理して話す必要があるか」

ニノがため息を吐く。

 

「この世界は君たちにとってはいわば『異界』だ。

最も私からすると、君たちの存在こそ『異物』だが。

何れにせよ、君たちは『異界』に入って来た『異物』。

だからその存在は酷く『異質』」

ニノの言葉に次第に銀牙の表情が険しくなる。

急いでいるのだ、ニノの丁寧、言い換えれば回りくどい説明に焦っているのだろう。

 

「ヘカトンケイルは察知する能力にも秀でたペルソナだ。

『異物』である君たちを探すのは容易だ。

この学校には居ない。

だが『異界』の『別の場所』に『異物』が居るのは分かる」

 

「こっち側の『異界』って『別の場所』があるって事!?」

縁糸が驚く。

頷きながらニノが一冊の本をテーブルの上から拾い上げる。

 

「この『異界』は本棚の様な物。

そしてこの学校はそこに収められた一冊の本の様な物」

学習指導要領と書かれた本を見せる。

 

「そして――恐らくだが、彼女は別の本に居る」

ニノは机の上に積まれた別の本を指でトントンと触る。

 

「んで、その別の本に行くにはどーすんだ?」

銀牙が苦い顔をしながら尋ねる。

どうやらこの時点でかなりギリギリの理解の様だ。

 

「分からない」

 

「おおぉい!?わかんねーのかよ!!」

銀牙が声を荒げる。

 

「君たちがこの世界を知らない様に、私も君たちの存在を詳しくは知らない。

生まれた時からの知識で君たちの世界を知って入る。

自力で調べた事でこの学校の事も知っている。

ヘカトンケイルの力で、別の世界が有るのも何となくだが、知っている」

 

「じゃあ、どうして俺達は此処に居るんだ?」

 

「世界をまたいで移動する方が異質なんだぞ?

現状の情報だけでは仮設を立てる事、自体絵空事と何ら変わりない」

 

「ああもう!!うっせーな!!どうすりゃ良いんだよ!!」

遂に銀牙が我慢の限界を迎え、声を荒げる。

 

「ヘカトンケイルでそのクジョウを調べた時、分かった。

この異界同士は案外近くに有る。

隣り合わせ、または裏側に有るといってもいいかもしれない。

着いて来い。望み薄だが可能性が無くは無い」

ニノが立ち上がり、2を伴って校舎内へ入っていく。

 

「お、おい、校舎の中は危ないんじゃ……」

縁糸の脳内には以前、校舎内で襲ってきた教師型シャドウたちの事を思い出していた。

 

「安心しろ、私の後を着いてこれば安全だ。

ここは学校の『役割』を与えられたエリア――

そうだな、さっきの本棚の例を取って『ブックス』とでも名付けるか。

教室、音楽室、理科室、トイレ、校長室等細かく複数の場所を取り合う激戦区だった。

私の縄張りは学校の中庭だったが、先日のシャドウ銀牙の一件でシャドウの縄張りに変化が有った。

具体的に言うとシャドウ銀牙を倒した事で、彼らの縄張りとしていた学校の一部と図書館が私の縄張りとなった」

 

「じゃあ、ここは『スクールブックス』?」

 

「便宜上、そう呼ぼうか」

ニノが無言で授業を受ける教室の横を通り過ぎて、2階から3階への階段を進んでいく。

 

「ここは『学校』のイメージが固まった『ブックス』だ。

だから学校に有る物は大体、()()

まずは授業を受ける生徒と教師」

さっき通り過ぎた教室が縁糸の脳裏に過る。

 

「そして、二宮金次郎像?」

 

「そこがポイントだ」

ニノが手をパチンと叩いて振り返る。

 

「君達の世界の二宮金次郎は動くだろ?」

 

「動くワケねーだろ!」

声を荒げたのはやはり銀牙。

 

「いや、動くさ。学校の七不思議の一つに存在する。

七不思議も学校の一部、ならば当然、動く二宮金次郎像は存在する。

現実に存在しなくても、この『ブックス』になら存在する」

ニノが3階から4階への階段の踊り場で足を止める。

そこには巨大な姿見が備え付けられていた。

 

「鏡、コッチにも有ったんだ」

縁糸が鏡を覗き込む。ニノが初めてペルソナを見せた時を思い出す。

僅かに鏡面が歪んでいるのか、自分の顔なのに違和感がある。

 

「昭和44年4月寄贈の鏡だ。

古くて不吉な数字が、良くない噂を呼び寄せる。

良くない噂が固まれば、それは七不思議と成る」

 

『ヒヒヒヒヒヒヒヒ』

突如、鏡面の縁糸が笑い始める。

 

「うわッ!?」

縁糸が驚き跳び上がる。

 

「やろぉ!!来んのか!!」

銀牙が拳を握りしめる。

 

『フッ』

鏡の中の縁糸が冷笑を浮かべ拳を握り、こちらの方へ振りぬいてきた。

 

「危ねーぞ!!」

銀牙が縁糸を突き飛ばすと同時に、鏡が割れその破片が突き刺さって来た。

 

「銀牙!!」

 

「痛ってぇ、な!!」

銀牙が腕を振るうと、何かに当たるのが分かった。

だが、再度目を開けるとそこには、鏡の中に居たハズの縁糸は居なかった。

 

「あー?んだ、誰も居ねーぞ!

九条は?他の、えっと、ぶっこす?に行く方法はどうした!!」

 

「有るさ、ここにな。見ろ」

ニノが指さす先、大きく穴が開いた姿見は黒い渦が揺れていた。

 

「鏡の七不思議は、基本的に誰かの写し身。

又は、ここじゃない何処かへ繋がってると相場が決まっている」

 

「じゃあ、この先に――」

 

「九条、今、行くぜ!!」

銀牙が2人を押しのけ、渦の中へと飛び込んだ。

 

「愚か者!!何が有るか分かったモノじゃないんだぞ!?」

ニノが声をかけるが、渦の向うに消えてしまった銀牙には聞こえるハズも無い。

 

「正直、ペルソナ使いでもない奴は帰す積りだった。

最初に言っても聞かないだろうから、ここまで案内したが、先走るとは」

苦々しい表情をニノが浮かべる。

 

「直ぐに追う!」

 

「だろうな、君もアイツも馬鹿だ。

そして――私もな」

縁糸が先に、すぐ後にニノも飛び込んだ。

 

 

 

ザァ――

 

渦の向うは夜の闇、厚い雲からはシトシトと雨が降りしきっていた。

縁糸を見下ろすのは派手なネオンの看板たち。

足元の水たまりに、ネオンの歪んだ光が反射している。

吐く息が白く濁って行く。

 

「ここが別の『ブックス』か」

学校に続き、2回目の異世界だが慣れはしない。

 

「なんの、世界なんだ?

いや、それよりもアイツ(銀牙)との合流が優先か――」

 

ガッシャーン!!

 

2人の背後、何かがぶつかる音が頭上からした。

 

「ニノ、銀牙が居た…………」

縁糸が震える指を差し出す。

頭上のネオンに叩きつけられたのはたった今、話に出て来た銀牙その人だった。

銀牙の飛んできた方角から3つの(シャドウ)が現れる。

 

『お連れサマですか?困りますよ、ココは大人たちの社交バ。

マナーの成って居ない方ハお断りさせて頂いておりマス』

 

『オヤ、まだお子サマのようですネ。

しかしご安心ヲ、我々は誰にでモ、サービスを提供いたしまス』

 

『お題を頂戴出来るのナらば、ね。

無いのなら、タダ働キでバ車馬の様に、ヒヒヒヒ』

黒いフードつきマントから覗く赤い仮面。

マントの下の胴体はカンテラが炎を灯し、手足は黒く長い棒の様だった。

 

「シャドウか!?」

 

「やはり、ココにも居たか!」

2人が同時にペルソナを構える。

 

「コイツ等は俺が、ニノは銀牙を!」

 

「分かっている!おい、生きているか!」

ヘカトンケイルが銀牙を下ろし、回復術をかける。

 

「う、うう……」

銀牙が顔を歪めて声を漏らす。

まだ生きている様だ。

 

「派手にやられたな。

第一、ペルソナも無しにシャドウに挑む方が無謀なんだ」

 

「ああ……ジッと、してらんなくてよぉ……

九条は俺の幼馴染なんだよ……

バカなオレの傍に、ずっと居てくれた、優しいヤツなんだ。

だから!!俺は!!俺は!!」

傷だらけのまま、銀牙が立ち上がる。

 

『イルルルルっルる!!』

 

「ぐぅ!?」

シャドウが両手を祈る様に合わせた瞬間、炎が湧き上がり縁糸を襲う。

幸いイカロスには炎に対する耐性がある。

だが――

 

「ッゥ……ぐぅあ!?」

2体目のシャドウの炎が追撃、更に3体目のシャドウが追い撃ちをかける。

1、2、3体の3体のシャドウの波状攻撃に縁糸は確実に追い詰められていく。

 

「縁糸、今、回復を――」

銀牙の無事を確認したニノが縁糸の援護に回ろうとする。

 

「ニノ、待ってくれ……」

銀牙がニノを止め、その横を通り過ぎる。

 

「ぐぅあ!?」

縁糸が炎に焼かれ倒れる。

3体のシャドウが縁糸にトドメを刺そうと炎を構える。

 

「ミドリ、ワリィな……オレのワガママに付き合って貰ってよ」

縁糸を守る様に、シャドウの前に立ちふさがる。

 

ペッ!

 

口から血の痰を吐き出し、息を深く吸う。

吐きだす息は濁るほど白く。

吸い込む息はぞっとするほど冷たくその体をかけて行く。

 

『我は汝、汝は我』

銀牙の中に何処からか、声が聞こえてくる。

 

「ああ?ンだ?オレァ、頭ワリィんだ。

もっと分かりやすく言えよ」

 

『我が名を呼べ。さすれば我が力は汝の物』

 

「んだ、カンタンじゃねーか」

銀牙が口元の血を拭う。

 

「アレは!?」

ニノの目の前で、赤いラインが顔に引かれて行く。

銀牙がの左頬、口を囲む様にケダモノの牙を模した赤いライン。

ニノの本の文字、縁糸の背中の翼と同じく、それは()()()()()使()()()()()()

 

「来いよぉ!!ガルム!!」

銀牙を中心に、冷気が走る。

雨に濡れた地面は凍りつき、降りしきる雨はつららとなって地面に落ちて砕ける。

銀牙の後ろ、学ランにも軍服にも見える黒い制服を身に纏った、鋭い目つきをした白い犬が片膝と手を着いていた。

制服にはハーネスの様な形で鎖が巻かれている。

牙の見える口を開くと、冷気が漏れるのが分かる。

 

『ガルム、只今着任』

しゃがんでいたガルムが2足で立ち上がる。

その途端、周囲に冷気が再度走った。




ペルソナ紹介 銀牙編!
と言いたい所ですが、ネタバレになるのでまた次回に。
うーん、主人公のワイルドが見せれて居ない……
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