Persona~Alternative~ 作:ホワイト・ラム
フェス版やったこと有るから内容しってるけど、今回も泣いてしまった……
やはり、名作……
纏わりつく様な熱気と、どんよりと重い湿度。
ネオンで照らされた常夜、常雨に包まれた歓楽街に『ソレ』は現れた。
『なんダ、貴様ハ?』
『ナを名乗レ!!』
フードの下の赤い仮面でも隠せないほどの動揺を、シャドウたちが見せる。
地面に片膝を着いてしゃがむのは、白い軍服にも制服にも見える装いをした獣。
顔は白い鉄製のオオカミの様で淵は黒い金属。
頭に被る学生帽は鉄の顔と一体化しており、後ろに流す様に耳が出ている。
「オレの名前は鹿能 銀牙。
ここいらの町、仕切る番長様よ!!!!
行くぜ!!ガルム!!」
ガルムが黄金の眼を見開いた瞬間――
膝を着く地面に白く霜が走った。
銀牙に降り落ちる雨も空中で凍りつき、地面で割れて砕ける。
「さむッ――」
縁糸が寒さに気を取られた瞬間、ガルムが消える。
頬を冷気の流れが掠めたのが唯一分かっただけ。
『ぐぅああああああ!?』
シャドウの一体が悲鳴を上げる。
振り返るとガルムが両手を広げしゃがんでいた。
目の前のシャドウの胴体には深く刻まれたX字の傷。
ガルムの両の爪がネオンの光を反射してキラリと光る。
『ナメるな!!』
『うぅおお!!』
残る2体のシャドウが銀牙に殺到する。
「まだまだ、行くぜぇ!!ガルム!!!」
再度、銀牙の前にガルムが現れ両手を横にな薙ぐ。
両手に宿った冷気が瞬時の氷を形成し、シャドウ2体を打ち抜く。
冷気を浴びたシャドウが、体制を崩し倒れる。
「今こそチャンスだ!
攻め入るぞ!!」
ニノが声を張り上げる。
「オウよ!」
「わ、分かった!」
倒れる3体のシャドウに向かって、全員で攻め入った。
縁糸が攻撃する瞬間、右腕にいつの間にかベルベットルームのドッグタグが巻き付いている事に気が付く。
半場無意識に、縁糸はそのドッグタグを舞いた右手でシャドウに触れた。
『こ、これ……は……』
シャドウの姿が崩れると同時に、ドッグタグに帽子を被り長靴を履いてサーベルを掲げるネコの姿が一瞬だけ写り、消えた。
「おい、今の……」
ニノが驚くが縁糸は自然に受け入れていた。
あのシャドウを倒した事で、自身の中に新しいペルソナが生まれたのが分かる。
『ア嗚呼ああ!!ああ!!』
生き残ったボロボロのシャドウが縁糸に襲い掛かる。
「ケットシー!」
たった今、自分の一部に成ったネコの姿をしたペルソナを呼び出す。
「アギッ!」
長靴をはいたネコがサーベルを振ると、剣先から炎が現れシャドウを焼いた。
「どういう事だ?2人目のペルソナ使いかと思えば、2体目のペルソナを使う奴だって?」
ニノが目を白黒させる。
「コレが、ワイルドの力……」
縁糸が自身の右手のドッグタグを見る。
「うっし!このまま、九条を助けに行くぜ!」
銀牙がガッツポーズをして走ってくる。
その時、銀牙が膝から崩れ落ちる。
「オマエ、身体がボロボロだぞ……」
ニノがヘカトンケイルを呼び出し、治療をしようとした時、彼の動きが止まる。
カラン……コロン……カラン、コロン、カラコロ、カラコロ……
雨音に下駄の音が混じる。
「見つけた……この世界の異物だ!」
ニノの言葉に皆が音の聞こえて来た方へ視線を投げる。
カラン、コロン、カラン、コロン
降りしきる雨の中、一人の少女が歩いてくる。
金色で緩くウェーブの掛かった腰まである髪。
大胆に胸元の開いたピンク着物の袖には、金色の蜘蛛の巣の上に黒い蝶が捕まっている柄。
裾も短く、白い太ももが大胆に露出し、薄い素材の網で僅かに隠すのみ。
下駄を履く足の爪先には真っ赤なルージュが躍る。
その女の顔は紫の和傘で隠されて見えない。
「こんばんは」
女が傘を閉じ、顔を見せる。
「九条!!」
銀牙が声を上げた。
その顔は派手な化粧に彩られているが、間違いなく九条本人だった。
「やっぱり取り込まれたか……」
前にニノの言っていた事を思いだす。
この世界は言わば本の物語の中の様な物だと。
シャドウは登場人物を演じる存在、そしてこの物語の主役となる存在は『外から』取り込み作られる。
今の九条は九条で会って九条で無い。
役割を被せられた『シャドウ九条』だ。
『うふふ、血気盛んな殿方――素敵』
縁糸の目の前に、シャドウ九条が現れる。
音もなくスッと現れた印象だ。
「ッ~~~!?」
近くで見て、視線を合わせ、声を聴き、身体に身に纏う香水の香りを嗅いだ瞬間。
本能がこの女を欲しているのが分かる。
今すぐ押し倒し全身を貪り、自らの子を孕ませろと体の最も奥の本能が主張している。
『けど、今夜は忙しいの。
また今度、遊びに来てね?』
下がる直前、頬を撫でられた。
それだけで縁糸は腰の力が抜けて、へたり込んでしまう。
「九条……?」
銀牙がすっかり雰囲気の変わった九条に困惑する。
『あはっ!貴方、私の好みよ。
今夜のアフターは貴方にしましょうか』
困惑する銀牙を他所にシャドウ九条が手を伸ばす瞬間――
「風向きが悪い!撤退する!」
ニノが何かを地面に投げつけた瞬間、周囲が煙に包まれる。
「来い!」
縁糸、銀牙が何者かに腕を引っ張られる。
『うふふ、またいらっしゃい。
ここ、乾楽街
煙の向うから聞こえた声がやけに印象に強く残っていた。
白い煙が晴れた瞬間、そこは見覚えのある場所だった。
「ここは……学校?」
「私の領地へ強制帰還したのだ」
帰って来たのは、ニノの居た異様な学校の中庭。
白い鉄製のおしゃれなテーブルと、同じく素材の椅子が並んでいる。
「オイ!なんで、帰った!?九条が――」
銀牙が憤り立ち上がる瞬間、膝から崩れ落ちた。
「銀牙!」
その様を見て、慌てて縁糸が介抱する。
「先日のシャドウに取り込まれた一件、そして今回のペルソナの覚醒。
君の身体はとっくの昔に限界を超えている。
まともに立てないほどに、ね」
なんとか立ち上がろうとする銀牙の額を、指で突くとバランスを崩し再度、銀牙が転ぶ。
「ニノ、オメェ……」
怒りに満ちた目でニノを睨む銀牙。
「ふん、脅している積りか?
まともに立てない様な状況で?」
ニノがため息を吐く。
「前回のキミの状況とは訳が違う。
あの娘はかなり深くまで、あの世界に取り込まれた様だ。
もはや世界の《核》と言っても良い」
「じゃあ、助けられないのか?」
縁糸の口を心配が付いて出た。
「その逆だな。
核となっているから、あの世界でも無茶な事はしないだろ。
家で言うと柱だからな、彼女の寿命を縮める様な事は避けるハズだ」
ニノが銀牙に言い聞かせるように話す。
「けど、よぉ!」
「君、死にたいのか?」
打って変わって冷酷とも取れる声色でニノが口を開く。
「その体であの世界に行って、彼女を救いだせる可能性はほぼゼロだ。
私と縁糸の2人でとも思うだろうが、戦力は僅かでも多い方が良い。
良いか、誇張でも比喩でも冗談でも無く、本当に死ぬぞ?
体調を万全にして、最も可能性の高い方法で挑む。
分かったな?」
コンコンとなんどもニノが銀牙に言い聞かせる様に念を押す。
「お、おう……」
「分かったのなら、返事をしろ!」
「わ、分かった……よ……すまねぇ……」
バツが悪そうに銀牙がそっぽを向く。
「今日は此処までだ。
縁糸、銀牙を連れて帰ってくれ。
体調が回復し次第、再度あの場所に向かう」
「わ、分かった」
「オウよ」
縁糸は銀牙に肩を貸しながら、異世界を後にした。
ミャウ、ミャウ
ウミネコの声と潮の香に、縁糸が現実世界に戻って来たことを実感する。
「……すまねぇ、相棒……オレ、先走っちまったみたいだ……九条を助けたくてよ……」
「銀牙……」
「俺に何かあったら、カーチャンも九条も悲しむよな……
身体の調子、治ったら3人で助けに行こうぜ。
んで、ラーメン喰いに行こうぜ、九条も誘ってよ」
銀牙の不器用な優しさに、触れて僅かにだが彼との絆が深まった気がした。
縁糸の中で、『戦車』のタロットが輝きを増した。
「ああ、そうだな」
彼を肯定し、銀牙を家まで送った。
「絆、絆かぁ……」
島に戻った縁糸がぼんやりとイゴールの言葉を考える。
チラリと見る右腕には、何も書かれていないドッグタグ。
「絆が新しい力に成る、か。
ニノは戦力を整えたいっていってた……」
事実、自分の中でほんの僅かだが力が育ってきているのを感じる。
ニノと銀牙の2人分。
ならば、もっと多くの絆を結べば――
「よし、なら関わる事から始めれば!」
己を心の中で鼓舞する。
ヒュン――
「あい、ったー!?」
突然頭に何かがぶつかり、縁糸は思わず声を上げる。
地面の落ちたソレは半分に成った薪だった。
「おーおーおー、良く飛んだな……新記録」
明稀が鉞を手に姿を見せる。
「明稀ちゃん?」
「あー、ワリィ、薪割りしてたら飛んでっちまってよ。
鉞の方じゃなくて良かったぜ」
落ちた薪を拾って明稀が元居た場所に帰っていく。
その背中を見て、さっきの決意が蘇る。
「明稀ちゃん、俺もやるよ。薪割り。
伯母さんにもこれから頼まれること有るだろうし」
「あー?もうほぼ終わっちまったよ。
それにモヤシもお前じゃ、日が沈むどころか、日が昇っちまうよ」
明稀はそう言って、一人薪割りを再開した。
(いきなりは、難しいか……)
縁糸は心の中で一人つぶやく。
次は負けじと、家の中の響喜に声をかける。
「叔母さーん、なんか手伝う事ある?」
「オバサンじゃねぇ!こちとらまだ30代じゃ!!
やる事もねぇ!散れ!散れ!!宿題やっとけ!」
「は、はーい……」
かけるべき第一声を間違えた様で、縁糸はすごすごと自身の部屋へと逃げ帰っていった。
「うーん……人間的なモノが足りていない?
器用さとか魅力とか……あと、学力も足りてない、かも?」
部屋で今日の反省をしながらせっせと部屋で、学力を上げる事にした。
翌日
4月 8日 金曜日
教室に入ると、九条も銀牙の姿も無かった。
『すまねぇ、みどり。俺、すっげぇ体だるくてよ。学校今日休むわ。
委員長に言っといてくれ』
スマフォの画面に、銀牙からのメッセージが届いている。
(それもそうか……)
銀牙がシャドウからの解放と覚醒を連続してやってのけた。
ニノ曰く、しばらく動く事など出来ないらしい。
すこし、寂しく思いながらも空っぽになった左右の机を眺める。
「今日は2ともお休みかな?
なんだか、最近お休みの人、多いね……」
委員長が眼鏡の位置を調節しながら、学級日誌にペンを走らせる。
「九条さんは知らないけど、銀牙は体調不良だって」
そう言って、委員長にさっきのスマフォの画面を見せる。
「鹿能君って、携帯で文字打てたんだ……」
「委員長!?」
まさかの言葉に、縁糸が小さく驚く。
「あ、え、ちがうよ?馬鹿にしたとか、そう言うんじゃなくて……鹿能くんって、なんか不器用だから文字打てるのかなって……
あ、これも、馬鹿にしてるみたいかな?そんな、積りないんだよ?!」
あわあわと委員長が慌てる。
誤魔化すように学級日誌に、2人が休みだと書き込む。
「なんだ、あの不良2人組。今日も休みか?」
一人の男子生徒が、委員長の肩を掴み日誌の内容を覗き見る。
「
眼鏡をかけた、やせ型の男子生徒が目を細める。
「保住?」
同じクラスメイトだが、話をするのは初めてかもしれない。
「んん?転校生は、もうこの2人と仲良くなったのか?
悪い事は言わないから、関わるのは止めときな」
保住が自身の眼鏡を触る。
その声は何処かキンキンと不快なモノを感じさせる。
「保住君、九条さんたちにそんな事……
クラスメイトなんだよ?」
委員長が小さく諫める。
「オイオイ、クラスメイトだって?
それはこの学校の人数が少ないから、一緒のクラスに成っただけだろ?
あんな馬鹿と男をひっかける事しか頭に無いような女、クラスから隔離すべきだったんだよ。
転校生。オマエ、東京の学校から来たんだろ?
進学校は成績でクラス分けしてるよな、普通。
勉強の出来るエリート組と、それ以外の組でさ」
「いや、それは一部の学校だけじゃないのかな?」
保住はキンキンとした声も、話しの内容もいちいち癪に障る男だった。
「俺の様なエリートの権利は尊重されるべきだよ。
委員長は勉強できるから、俺のクラスにいても良いが、アイツらはお断りだな」
ケタケタと保住が笑う。
「あ、えっと……」
無意識に縁糸が右腕で、左手を押える。
「転校生、今度の中間テスト楽しみにしてるぞ!
あのバカ2人に感化されてオマエもダメになったのか、もともとダメだったのか……
まぁ、エリートの俺には関係ないね!」
「保住君!」
委員長が声を荒げる。
「んん~?なんだよ、委員長。
俺に意見するのかよ?
ダメだぜ、あんなクズども庇っちゃ、気にかけてやってもどーせ直ぐに増長するだけさ。
それに委員長、女だよな?
将来結婚して子供産むってなっても、この辺のデカい病院は俺の親の病院しかないんだぜ?
俺の機嫌、損ねるのは賢くないだろ?」
保住が嫌な笑みを浮かべる。
「…………」
縁糸は未だ、腕を掴んだままだ。
「うわー、保住荒れてるなぁ。
何時もは鹿能だけしか、バカにしないのに」
「アー、噂だけど九条に告白して、フられたらしいぞ」
「ああ、だからか」
ひそひそと噂を誰かがしている。
「オイ!!今の誰だ!!お、俺が九条に告白なんて、する訳ないだろ!!
誰だ!!出てこい!!
俺は医者の息子だぞ!!将来お前ら絶対世話になるハズだろ!!
そんな口きいて良い訳ないだろ!!」
保住が唾を飛ばしながら、声の聞こえて来た方に突っかかっていく。
(度胸も足りない、か……)
縁糸はようやく腕から手を放して、己の掌を見る。
自らに足りないモノの多さを痛感した。
ペルソナ紹介 ガルム
軍服にも学生服にも見える服を纏った2足歩行のオオカミの様なペルソナ。
鉄製の白いオオカミの顔に、黒い縁取りをした仮面。
瞳は生物的で金色。
下半身はオオカミの物で尻尾も生物に近い。
本体 鹿能 銀河
戦車アルカナのペルソナ
凍結に耐性、火炎弱点。
素早さが高く、魔の値が低い。
高速でのインファイトを得意とし、懐に突っ込み氷属性魔法で自らを武装して攻撃する。