Persona~Alternative~   作:ホワイト・ラム

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よし、なんとか9月中にもう一本いけましたね。
ふぅー、良かった良かった。


斜陽

4月 8日 金曜日  放課後

 

キーンコンカンコーン

 

ホームルームも終わり、クラスメイト達が思い思いに自らの時間過ごす。

今日のお勤めから解放されて、解放感に皆が浸っている中、縁糸の気分は重い。

 

体調の治らない銀牙の事、未だブックスの中に居る九条。

そして今日、新たに出来た厄介ごと――

 

(保住か、厄介そうなのに眼をつけられたなぁ……)

 

縁糸がチラリと、クラスの端に居る保住に視線を投げる。

あちらもこちらに気が付いたのか、露骨に嫌な顔をして教室を出て行く。

 

半場向うから因縁をつけられ、今度のテストで点数の勝負をする事に成ってしまった。

 

(俺、勉強苦手じゃないけど、得意ってほどでもないんだけど……)

行ってしまえば平々凡々な学力。

特段誇れるものなど、縁糸は持っていない。

 

数秒、迷った後に縁糸が立ち上がる。

 

「委員長、ちょっと良いかな?」

 

「あ、霧崎君。どうしたの?」

黒板の端に溜まっている、チョークの粉をミニ箒で集めながら委員長が振り向く。

キチッとセーラー服を着こなし、キチンと肩で切りそろえられた黒髪を靡かせる。

 

「委員長って勉強得意だったり……しない?」

 

「苦手、では無い、積り、かな?」

誤魔化すように笑いながら、委員長が声を絞り出す。

自信を持って、得意と言えないのが何となく「らしい」と縁糸は思った。

 

「お願い!勉強教えて!」

縁糸が頭を下げ、両手を合わせる。

 

「……さっきの保住君の言った事、気にしてるの?」

 

「それも、そうだけど、実際勉強もしなきゃって思ってるのは本当」

 

「分かった。私も復習したかったし、丁度良かったよ。

けど、ちょっと待って、教室の掃除済ませちゃうから」

そう言って、委員長が要らない紙にチョークの粉を入れて丸める。

 

「俺も手伝う。何すれば良い?」

 

「え、けどこれ、私がしたくてやってる事だから……」

手伝うと言われたのが、予想外だったのか委員長は酷く狼狽した。

 

「勉強教えてもらう為に委員長を手伝うってのが俺のしたい事だから」

 

「じゃあ、机の向き整えてくれる?

終わったら、机の上を水ぶきもお願い出来る?」

ゴミ箱にチョークの粉を入れた物を入れる。

 

「分かった」

 

「私は掃き掃除ね」

委員長が手早く床を箒で掃き、塵取りでゴミを集める。

 

「それと、コッチ」

委員長が教卓の花瓶の水を入れ替える。

 

「終わり?」

 

「うん、霧崎君が手伝ってくれたお陰で早く終わったよ」

教壇から眺める教室は、何処かキラキラしている様な気がして誇らしい気分に成った。

 

「ゴメン、霧崎君もう少しだけ付き合ってくれる?」

 

「いいけど」

今度は委員長が、目の前で両手を合わせて頼み込んでくる。

 

「さっき、ゴミを捨てたらいっぱいに成ってるの、気が付いて……」

教室備え付けのゴミ箱から、ゴミ袋を取り出す。

埃や破れた紙などの燃えるゴミ。

 

「こっち、お願い出来る?」

委員長がもう一つのゴミ箱から取り出すのは、飲んだペットボトルの入ったゴミ袋。

 

「校舎の裏に、ゴミの集積場所があるから」

 

「分かった、持ってく」

2人で話しながら、校舎の裏にゴミを持って行く。

 

 

 

「これで、良いかな?」

縁糸が学園裏の、ゴミを集める場所にゴミを持って行く。

 

「うん、ありがとう」

委員長が小さく笑みを零す。

 

「これで終わり?」

 

「教室戻る前に、花壇にお水あげて良い?

何時もはもう一人先輩が居るんだけど、部活の遠征で忙しいらしくて、先に教室に戻ってて貰って――」

 

「やり方、教えてくれる?

そうすれば、今度から俺も出来る様になるし」

 

「ふぇ、手伝ってくれるの?こっちも?」

きょとんとした顔で、委員長こちらを見る。

 

 

 

学園の花壇の花に委員長が水をやる。

「いつも、こんな事やってるの?」

 

「うん、そうだよ」

水をやるのを一旦止めて、縁糸に振り返る。

 

「委員長ってすごいんだな、なんていうか『ザ・委員長』って感じ」

 

「あはは、何それ?なにもすごくは無いよ?」

小さく笑いが零れる。

 

「教室掃除して、ゴミ捨てて、花に水やってって、毎日はなかなか出来ないよ。

正直メンドクサクなっちゃうし」

 

「面倒くさいと、止めちゃうの?霧崎君?」

水をやる体勢のまま、委員長の動きが止まる。

 

「あ、偶には、サボっちゃうかな?

なるべく、やる様にはするよ?」

地雷を踏んだか、と縁糸が焦り慌てて誤魔化す。

 

「この仕事って、本当は当番でやるハズだったの。

けど、いつからか他の人だんだんやらなくなって……

今は私以外、誰もやらなく成って……

結局は私一人しかやらなくなっちゃた」

諦めた様に委員長が笑う。

 

「じゃ、じゃあさ、俺も手伝う様にする。

1人じゃ大変でも、2人ならやる事半分だし。

委員長も、偶にはサボれるでしょ?」

 

「!?」

縁糸の言葉に、委員長が目を見開く。

まるで、そんな事考えた事すら無いという表情だ。

数秒のフリーズの後、委員長がはっとする。

 

「そうだ、勉強教える約束だったよね?

と、図書館行こ?そこなら、静かだし」

 

「あ、そうだった。掃除に夢中で半分忘れてた」

 

「霧崎君!?」

縁糸の言葉に委員長が小さく驚く。

 

 

 

図書室――

 

「チク、英語の辞書、持ってこいって言ったよな!?まだか?」

扉を開けた瞬間、キンキンと響く嫌な声が聞こえる。

この図書館に勉強しに来る理由の大本を作った男、保住が図書館の真ん中の机の上に教科書をばら撒きながら怒声を発する。

 

「は、はいっス!」

パタパタと若干茶色がかった髪をなびかせ、小柄な女子が辞書を持って走ってくる。

 

「チク、お前コレ、英和じてんじゃなねーか!和英が欲しいんだよ!!

やり直し!!」

 

「は、はいっス!申し訳ねーです!!すぐ取ってくるっス!!」

チクと呼ばれた女の子がたった今、自らの持って来た辞書を抱きかかえて再度走り出す。

 

「あ、あのー先輩?和英と英和、どっち持ってくるんでしたっけ?」

おずおずと本棚の影から、頭だけ出し様子を伺う。

 

「はぁー!?チクよぉ、チクよぉ、チクちゃんよぉ~。

良く考えろ?今、持ってる辞書が要らない方だったんだろ?」

 

「わ、わかったっス!コレ、じゃない方もってくるっス!!」

チクと呼ばれた子が再度走り出す。

保住の発する怒声、チクと呼ばれた子の走る姿。

どちらも、図書館ですべき行為ではないが、生徒は勿論、司書も注意などしない。

 

「今日は、無理そう……だね」

委員会が諦めた様に振り返る。

 

「そういう、日も有るさ」

委員会を励ます様に、誰も居ない廊下を歩く。

 

「なぁ、委員長、保住はどんな奴か、今日の朝自分で言ってた事と性格で何となく察せるんだけど、一緒にいたあの小さな子は誰か分かる?」

縁糸の言う様に、保住のキツイ性格は何となく分かるが、その保住に付き従うあの子は誰なんだろうと、縁糸は疑問に思った。

 

「あの子は、1年の駒井(こまい) 千草(ちくさ)さんだったかな?

なんだか、保住君と良く一緒に居るよ?」

 

「ああ、千草だからチクか」

納得が行ったように、縁糸が手を叩いた。

 

「……多分だけど、そろそろ完全下校の時間だね。

理由なく校舎に残ることは出来ないの」

帰る準備しなきゃ。と委員長が漏らし、残念そうに話す。

気が付くと、いつの間にか夕焼けが校舎に差し込んで来ていた。

 

「勉強は教えてくれなかったけど、今日は色々教えてくれてありがとう」

 

「いろいろ……たしかに、教えたかもね。

じゃあ、霧崎君に私から一つだけ、聞いて良いかな?」

 

「え、委員長から?逆に?」

 

「私の名前は?」

スカートを翻し、自分の顔を指さす。

 

「う、ぐ!?じ、実は、知らない……です」

本当の事を言うと縁糸は委員長の名前を知らなかった。

いや、転校してきたばかりで知っているのは自ら、名を名乗った『銀牙』鮮烈に記憶に残った『保住』位だった。

 

「転校してきたばっかりだもんね。

ゴメン、ちょっとイジワルだったよね」

クスリと委員長が笑う。

 

「じゃあ、覚えて帰って。私の名前は 辺本(ほんもと) 紫織(しおり)だよ。

名前、分かんないからって委員長って言って誤魔化さないでね」

夕日に照らされた廊下で委員長は小さく笑って言った。

 

その時、縁糸の脳裏に声が聞こえる。

縁糸はたった今、自分が新たな絆の手にしたと理解する。

 

どこかから、刑死者のタロットが縁糸の中に飛来した。

 

「じゃ、霧崎君また、明日ね!」

委員長はカバンを手にすると、玄関へと歩き出した。

 

「新しい、絆……コレが、もっとあれば」

眼をつぶると、剛毅のカードと戦車のカード、そしてたった今加わった、刑死者のカードが見える気がした。

 

「そういえば、結局九条さんの下の名前も知らないな。

助け出せたら、聞けるよな。

一歩、たった一歩だけど、今日も進めた」

決意を強くし、縁糸も家路ついた。

 

 

 

 

 

島の中、家の裏手で縁糸が鉞を構える。

 

「よっ!」

スカっ!

 

「ハッ!」

スカ……

 

「とぉ!」

カパッ!

 

数回、鉞を振り下ろしようやく、今日の分の薪を切り終える。

まだまだ上手とは言えないが、器用さが上がってきている気がする。

 

「薪割り、薪割り……あれ?」

縁糸の背後に響喜が姿を見せる。

 

「あ、響喜さん、薪割りやっときました。

夕飯の手伝いとか、しますよ」

縁糸の言葉に響喜が何かを考えるそぶりをする。

 

「縁糸お前……さては、金が欲しいんだな?」

ジロリと響喜の眼が鋭くなる。

 

「え、いや、そういう訳じゃ……」

 

「分かる、分かるぞ?新しい友達を作るにしても、学校の帰りに寄り道するにも金は掛かる。

金は天下の回り物。金が動けば世界は動く。金が無いと世間の動きについていけないからな。

だが!高校生なんて、もう大人の一歩手前だ。

お手伝い程度でお前にやる金は無い!

だが、金は欲しいよな?よし、バイト解禁だ!

自分の遊ぶ分は自分で稼ぐ事、あと、学校をサボるのは許さないからな!

よし、なら行くべき場所は一つ!バイト先紹介してやる」

 

「いや、お金が欲しいとかじゃなくて……え、え?」

思わぬ方向に話が進んでいって、縁糸が混乱する。

縁糸はあれよあれよと、船に乗せられ町に連れられ、一件の店の前にやってくる。

 

 

 

「よー、潰れてないかー?」

店の扉を開くと、そこはすし屋の様だった。

すし屋特有の鮮魚の、置かれたガラスケースの付いたカウンターがあった。

 

「相変わらず、お前は五月蝿いヤツだな」

暖簾の奥から、若い男が包丁を持って出て来た。

 

「よー、(やしろ)。コイツがバイトをしたいらしいんだ、ちょっくら仕込んでやってくれないか?」

 

「ほぉ、ウチでバイトか。

ウチは厳しいぞ?今から、面接をする」

社と呼ばれた男が、縁糸の顔を覗き込む。

 

「オイ、お前。朝は米かパンか?シリアルだろうと麺だろうと構わない、何が好きだ?」

 

「え、朝は特に決めていない、です。

あと、あんまり食べないです……」

縁糸の言葉を聴いた瞬間、社が目を見開いた。

 

「不合格。帰れ」

 

「あ、はい……」

社の言葉に、後ろを振り向こうとした時――

 

「いや、響喜がわざわざ連れて来たんだ、返す訳にも行かないか……

まぁ、いいだろ。

使えるようになるか分からないが、俺が仕込んでやる。

おい、坊主。俺の事は『マスター』と呼べ、良いな?」

 

「おう、頼むぜ」

響喜がバンバンと縁糸の背中を叩く。

 

「え、え、え?」

目まぐるしく変わる状況に、縁糸は混乱する。

その時――

 

脳裏に一枚のタロットが現れる。

縁糸は自身の中に、新しく太陽のアルカナが発現した事を、確信した。

 

「なんで!?」

縁糸の疑問に答える者は誰も居ない。




アルカナの発現シーンって、なんだかちょっと苦手かも……
ランクや誰がどのアルカナに対応しているかって、表現難しいですね。
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