ダンジョンが発生した地球。その二大国家になったのはアメリカと日本だ。
アメリカは以前から有していた軍事力と広大な土地柄、多くのダンジョンを制覇し、力をつけてきた。
そして、日本はその変態的な技術力だけではなく、その凝り性から強大国へと至った。なにより、天職というギフトを徹底的に研究、進化させるために凝り性たちがいろいろと挑んでいった。
どうすればその天職に至れるか、最適化はどうすべきか。なにより、未知のファンタジー物体をどう利用するかを貪欲的に研究した結果。今現在でも【錬金術師】の多さは世界一であり、彼等が造るアイテムの恩恵を受けているのも日本という事もあって強大国家となっている。が、それをよく思わない近隣国があった。その中の一つの国は技術や知識を模倣、もしくは強奪しようと画策。彼等もまた多くの錬金術師を輩出した。
その中の一人。キム・レンという二十八歳の女性の錬金術師もその国の人間だったが、彼女はもっと見分を深めたいという名目で、アメリカに移住することを決めた。本音はアメリカンドリームを掴んで悠々自適に暮らしたいという物だった。が、未だに掴めておらず、都会から少し離れた田舎暮らしと言う状況。研究資材を買うと後は素寒貧になるという貧乏錬金術師。一緒に来てくれた妹。【役人】のレンがいなければ野垂れ死にしていただろう。
「…う、ううう。お、お腹空いた」
成人女性にしては細すぎる体。スリムボディと言えば、耳障りは良いが、胸も尻も腰も細すぎて鶏ガラと思われてもおかしくない。というか、女性らしさと言えば、その整った顔だけだろう。アジア人らしい艶のある黒髪。は、艶を失いぼさぼさに伸びきって手入れはされていない。その黒い瞳。を、象る目の下には深い隈。外に出ていないため、若干白寄り黄色の頬は食事を摂っていなかったからか痩せこけていた。二十八歳と言う年齢なのにその風貌は四十代にも見えた。ご飯を食べて、身だしなみを整えていれば年相応の美人だっただろうに。と、思わせる半分ミイラなレンは研究室から這いずって、居間に当たる部屋の冷蔵庫の中を漁るが中にあったのはミネラルウォーターのみ。卵も牛乳も野菜もお肉もない。お米もパスタもない。冷凍食品も無い。唯一あったのは氷とカビついた食パン。
レンはごくりと唾をのんだ。氷は食べてもカロリーを消費するだけ。カビパンは食べてもお腹を壊すだけ。何度もお腹を壊せば彼女も反省はする。研究に熱が入れば周りの事どころか自分の体調も気にしない彼女は三日間ぶっ通しで研究室にこもってダンジョン産の鉱物やモンスター素材をいじくりまわしていた。その中にはタカヒト個人に依頼した物もある。魔石もあって、これを人間が食べるとモンスターになるという与田話がある。実際は吐き出すか、お腹を下すかのどちらかだが。どちらにせよいい物ではないとはわかってはいても空腹には逆らえず。むしゃり。と、いった。
「ただいま。って。…姉さん。またやったな。お腹のお薬のおいておくからね」
三時間後。ベリーショートに切りそろえた黒髪のバリバリのキャリアウーマン。清潔感と言うよりも礼儀正しさ、厳格さを感じさせる眼鏡をかけた長身の女性。姉の研究所の家主である妹のリンが買い出しから帰ってきたらトイレから悲痛な叫びが聞こえた。悲鳴の主が自分の姉だとわかってしまうとため息をついて説いての前まで行くと、胃腸薬とミネラルウォーターのペットボトル。そしてベアリング弾を置く。と、買ってきた食料や生活用品を所定の位置に持っていくことにした。
ズルリズルリとトイレで何かが這いつくばっている音がしたが、いつもの凶行の結果なので無視して夕食の準備に入る。偶然、知人からお土産を貰った。今の時代では珍しくなってきた海の幸を使った地元料理を作っていると、トイレから這いずってやってくる音が響いた。か細いうめき声に混じって涙を流しているのか嗚咽も聞こえる。その姿、まさにゾンビ。
「…うう、酷いじゃないかリン。食べ物と見せかけて金属球を置いておくなんて。…なんて、ひどい妹なんだ」
「トイレの前に食べ物を置くわけないでしょ。というか、姉さん、手を洗ってから薬を飲んだんだよね?」
泣き言を言いながら顔をあげたレン。その顔には苦痛と悲壮と飢えの色が混然一体となって、妹のリンを睨んだが、その様子はどう見ても未練を残した亡者。
「も、もちろんだとも。そんなはしたない真似なんかするわけないじゃないか」
狼狽える姿は怪しい。犯行暴かれる容疑者にも見える。もし、そうだとしたら姉として、というか女として駄目だろう。お願いだからちゃんと水で手を洗った後に薬を飲んだと信じさせて欲しい。サスペンスドラマに出てくる犯人の身内のような心境だ。
「モンスターの排泄物を鷲掴みした事があるから仕方ないだろう」
依頼されたとはいえ、バーサーク・カウの糞が欲しいと言われた時は、こいつ、ついに狂ったのかと思ったわ。
その実情は新作の肥料の開発であり、その実験で作られた肥料で去年の倍以上の収穫が取れたのだが、栄養を使い切ったのか収穫後に残ったのは干からびた大地だった。前の状態に戻すには同等の費用と時間がかかる結果になった。
「おや、タカヒト君じゃないか。とうとう我が軍門に下る決心がついたんだねっ」
「馬鹿な事をぬかす」
下っているのはお前の腹だろう。あと、お前の下につくと絶対に苦労する未来しか見えないから絶対ヤダ。
夕飯の準備をしていたリンの隣で魚をさばいていたタカヒトに気が付いたレンはタカヒトの姿を見て顔を輝かした。タカヒトはレンの家に行く途中でリンと合流した。リンには来訪の時間帯を知らせていたので、彼女の帰宅時間に合わせて合流。買い出しにも付き合い、そのままお邪魔する事になった。
レンの交友関係で一番親しい異性がタカヒト。レンは自分が一般の人とは感性がずれていることを自覚している。時折、医療関係の人間から依頼されるポーション作成以外で彼女は他人との交流がほぼない。若干人見知りでコミュニケーションが苦手な彼女にとって、【呪い】を受けたタカヒトには同じ感性を持った人間だと思い、交流を深めた。
そのきっかけは冒険者ギルドにポーションの納品と言う独立したての新米【錬金術師】の仕事中に、他の冒険者と殴り合ったタカヒトが彼女のポーションを使うことになった際、「効くな、このポーション」と、一言発したことだ。正直言って、レンが造るアイテムは何かとピーキー。極振り。副作用がある代わりに主作用は絶大と言う使い勝手の悪さはこの頃からすでにあった。
タカヒトが使った彼女のポーションが、悪臭ポーション。お手頃価格のポーションの値段でお得感を感じさせるポーションだった。ただ、ひたすらに臭く、飲みごたえもギトギトして気持ち悪い。傷口に振りかけてもその悪臭は周囲の人の鼻を曲げる。下手すれば服用しても吐き出してしまうポーションは悪評が尽きなかったが、タカヒトはこれを愛用した。【呪い】のせいで無茶しがちで怪我をよくする彼にとってこのお値段と効果はデメリットに目をつぶってでも欲しいものだ。【呪い】の強がりのお陰でまだ人前で二回しか吐き出したことが無いポーションはエリーの作るホーリーボトルの次によく使うアイテムでもある。
そこからお得様になったタカヒトをどうにか自分の傍に置こうと策を弄するレン。自分の作ったアイテムをここまで使ってくれるのはタカヒトくらいであり、彼自身はまだ伸びしろのある冒険者。いずれ大成した彼が世話になったアイテムとその製作者として自分も世界から評価されると考えている。あわよくば、彼に養ってもらおうと思っている。そうすればもっと研究も出来るし、収入も落ち着けばもっと都会に引っ越して、「研究素材を獲得しやすくなり、自作のアイテムの精度も上がり収入も得られる。そして、更なる乗客を掴むことが出来れば、タカヒトからそちらに乗り換えて理想の暮らしに近づける。あくまでキープ君なのさ、君は、あばばばばばばっ!なんで唐突にアイアンクローをかますんだい?!痛い!生臭い!」
「自重してください。姉さん」
研究者の性なのか、人とのコミュニケーションが少なすぎるせいか。レンの思考は独り言のようにいつの間にか零れだしており、それを聞きとったタカヒト。魚をさばくのを一時中断して、彼女にアイアンクローで締め上げるという状況に陥った。タカヒトだって人の子だ。自分をここまでコケにした輩を放っておくつもりもない。その上、自分はスポンサー様だ。それを怒らせたらどうなるかをこの錬金術師様に教え込むのも悪くはない。その光景をあきれた様子で眺めているリン。もはや身内の情は尽きたと言わんばかりに冷たい目つきで姉が折檻を受ける光景を見ていた。
「わ、悪かった!私が悪かったから解放しておくれっ!カルシウム不足の私の骨はスライムよりも耐久力がないんだ!このまま冒険者の握力で締め上げられたら私の優秀な頭脳が粉々になってしまうよ!」
「………」
タカヒトの拘束は解けない。締め上げをキープしている。リンの頭蓋はミシミシと嫌な音を立てている。
「…嘘でしょ!?本当にこのまま砕く気?!心から反省しするよ!だから勘弁しておくれ!」
タカヒトがこのまま締め続けると悟り、泣きが入ったリンは顔じゅうからいろんな水分を放出しながら彼に慈悲を乞う。このままでは命の危機を悟った彼女の最大限の謝罪だ。それを受けたタカヒトはようやく彼女を開放した。貧弱過ぎた彼女の顔にはタカヒトの手形がくっきりと残っていた。
「うう、酷い目に遭った。…はっ!これをネタに強請ることが出来るのでは!…嘘ですっ。反省していますから許してください!非戦闘員でもわかるくらいに力を込めたデコピンを向けないでくださいお願いしま、あーーー!!」
折檻の追い打ちを受けたレンは一般人越えの威力を持ったデコピンを受け、悲鳴を上げる。自業自得。口は禍の元とはよく言った物。骨に異常をきたさないぎりぎりを見極められたデコピンを受けた。タカヒトとリンが食事の準備をしている間に、レンは自作したポーションを染み込ませたガーゼを当てることになる。
「タカヒトさん。姉が申し訳ございません。よく言って聞かせているのですが、反省はしても、何度も新しく欲が出て失礼を働きますが、どうか見捨てないでください。貴方に見捨てられたら、私はともかく姉さんが野垂れ死にしてしまいます」
「大変だな、お前も」
いや、本当。俺の【呪い】レベルで厄介なんじゃないの、お前の姉。
リンが深々と頭を下げて謝罪を入れる。それは役人らしいというか、型にはまったようなきれいなお辞儀だ。身内の非礼を詫びることが出来る妹に比べて、目の前の姉。もしや、反面教師としてしっかり者に成長したのだろうか。
食事が完成し、机の上に並べていると、レンはお腹をすかせた子どものように箸を進めた。空腹状態が長く続いた非常識な人間だが、マナーをぎりぎり守って食事を行う。ダンジョン発生のお陰で肉や新たな野菜を入手する事が出来るようになった現在、他の食材に比べて入手機会が少なくなった魚介類が割高になっている。
そのありがたみを知ってか知らずか、男性のタカヒトよりもたくさん食べるレン。彼女も一応料理は出来る。というか、錬金術師だけあって、手先は器用だし、分量はきっちり守ることも出来る。はっきり言って家事を行えばリンよりも家庭的に出来る能力はある。が、それは将来雇うだろうまだ見ぬお手伝いさんがやるべきだと研究に勤しむ。その熱心すぎる姿勢は見習うべきなのだろうが、それ以外が駄目すぎる姉は再び研究室に戻っていった。せめて、研究室のところにある洗面台で歯磨きをして欲しい。お願いだから女を捨てないで欲しい。あのままでは伴侶になる人は余程の奇人変人でないと無理だ。
「タカヒトさん。姉を養ってもらえませんか」
「断る」
え、無理。
【呪い】のせいで、奇人変人の部類に属するタカヒトはリンの申し出をノータイムで断る。先ほど金づる扱いした女を養うつもりは毛頭ない。それはリンも承知のうえで姉を売り込む。タカヒトを逃せば姉は一生独り身だ。誰かが彼女の生活を補助しなければ姉がミイラになるのは確実だ。
「同じアジア系のよしみで」
「断る」
お前達の戸籍はアメリカだろうが。
「最終手段です。私もつけますから」
「断る」
リンさんはいい女だけど、レンが女として駄目すぎる。
二手目で最終手段という、姉のアピールポイントがなくなったリン。いや、本当にこれくらいしかないのだ。レンの作るポーションがピーキーなのは彼女も知っている。だが、それはあくまでも売り手と買い手の関係であり、売り込むポイントではない。他に何かないかと模索する。
「姉さん、ああ見えても処女ですよ。最初の男になってみませんか」
「だろうな。だが断る」
ああ見えるから処女だろう。あいつの細すぎる体。抱きしめたらぽっきり折れそうだ。劣情よりも先にその貧相さで憐れみを感じるわ。
「ちなみに私もです」
「そうか」
以外。リンさんは美人だからそういう経験もあると思っていた。
「ポーションも融通しますよ」
「当然だ。だが、身請けは断る」
個人での出荷先は俺しかないから融通も何もないんじゃないか?というか、スポンサーよ、俺。
「日本人は姉さん女房が趣味だと聞いていますよ」
「断る」
たとえそうだとしてもあいつを女房にするのはちょっと。
「…やはり、日本人はロリコンなんですね」
「趣味は人それぞれ」
俺は俺の事が好きな子が好きだよ。それならば±五歳は許容できるよ。
「…ハーレムに興味は?」
「無い」
お金がね?可能なら夢見るけど、お金が無いのよ。冒険者やっていると出入りが激しいの。特に個人事業主は国からの補助もないから大変なの。
タカヒトにつけ入る隙が無いか探すレンと一緒に食事の片づけを終えたあと、共に姉のいる研究汁へと足を運ぶ。そこに、彼が受け取りに来た悪臭ポーションがある。
研究室の中はレンの性格に反して整頓され、清潔感が保たれたものであった。ここに入るたびに彼女がちゃんと錬金術師なのだと思い知らされる。世間一般的に想像される研究室の隅っこには納品予定とラベル付けされた木箱。その中には百を超える試験管があり、その一つ一つが悪臭ポーションである。見た目は綺麗で効果も抜群なのに、極端に飲みづらいそのポーション。ちゃんとタカヒト用に置いてあるポーションもある。それを懐に収めながらタカヒトはレンに声をかけて出ていこうとした。
「ポーションはもらっていく」
お代は前払いしているから。
「あー、好きなだけ持って行ってくれたまえ。効果は保証するよ~。うう、顔じゅうが痛いよ。アイアンクローにデコピンだけじゃなく、硬い金属球まで嚙まされたんだからね」
研究室に入ってきたタカヒト達に目もくれずレンは手を振りながら研究に没頭するが、まだ痛む口元をペタペタと撫でる。
「予告はした」
ベアリング弾を噛むとか渡しといてなんだけど硬かったろうな。
「…予告?ああ、あの時の電話か。という事は、あれは武器商人の戦乙女(ワルキューレ)の案かっ。生意気な事をする」
「戦乙女だと?」
武器商人の娘と言えばイブが思い浮かぶが【戦乙女】は思い浮かばない。
なぜならば【戦乙女】は主に軍務についている女性か、有力な冒険者チームの中にいる女性が成れると言われている天職だ。だが、その数は聖女と同じくらいに希少な存在である。彼女達がいるだけでそのチームや部隊には様々身体強化(バフ)が起こる。倍率はまちまちだが、1.2~2.0倍とあり、その恩恵は計り知れない。それだけに彼女達を取り込もうと他の冒険者チームや国の軍隊は力を注ぐ。イブがそうであるのならアメリカ政府が全力で囲ってくるだろう。しかし、タカヒトの目にその様子は全くと言い程見られなかった。
「天職はあくまで自己申告だ。王や長達が見抜く以外には自身での自覚だけだ。タカヒト君、彼女の変化に気づかなかったのかい?共にダンジョンに挑んだのであれば何かしらの変化を感じ取れたはずだ」
そう言われてみればイブはショットガンを撃ちまくっていたが、その散弾が一発も自分には被弾しなかった。タカヒトがモンスターとの至近距離戦を繰り広げている時の援護。ダンジョンの地面はともかく壁や天井は硬く跳弾しやすい材質であるにもかかわらず、こちらに一度も被弾はしなかった。
「おそらくそれが戦乙女としての彼女の能力だろう。敵味方識別型の攻撃とか政府は放っておかないだろうよ」
大げさに言うのなら敵陣のど真ん中。タカヒトに向けて広範囲型爆撃をしても、彼には被害が出ないというもの。フレンドリーファイヤがなくなれば攻撃の幅は一気に広がる。どの勢力も彼女を欲するだろう。しかし、そうなればイブは何故、国や有力チームに報告しないのだろうと考えているタカヒトを見たレンが鼻で笑った。
「どうせ、君の興味を引くためだろうさ。『これだけ強力な能力はあなただけにしか使いません』てね。は、いじらしさを見せているようだが、錬金術師で女である私の目は誤魔化されないぞっ。そんな媚売り女より私の方がタカヒト君に好かれているのだからね!」
「それはない」
「何故だい?!」
「鏡を見て見ろ」
何を不思議がる?
「スレンダー美女が映っているね」
「脱ミイラ女だ。それに今までの事を考えてみろ」
一時間前の記憶を思い出せ。お前は俺に何をやらかした。
「心身を砕いて君を支えたじゃないか」
「俺の経済支援を忘れたか」
市販のポーションでもいいんだぞ俺は。量はかさばるがあれはあれで使えるからな。
「君から私への好感度はそんなにひどいのかい?」
「初期値だ」
ポーションの効果でややプラスだが、こうやって交流を持つとやべぇ女だとわかったので帳消し。せいぜい顔見知りの隣人くらいだ。
「ふ、そんなに好かれているとは私も捨てたもんじゃないな」
「お前の初期値は100しかないのか」
減点方式なんだな。俺は加点方式だけど。
「錬金術師。いや、学士たる者、それ以外は持ちえないのさ」
「良識と常識も持ってほしかったです。姉さん」
辛辣ぅ。でも、それが現実ぅ。
タカヒトと姉のやり取りを見て、この二人をくっつけるのは今は無理だと判断したリンはこれ以上好感度を下げないためにも会話を切り上げさせて、今日はお引き取りをしてもらうことにした。しかし、次回こそ好感度を稼いで、この70%喪女の婿をゲットしようと改めて決心した。
「タカヒトさん。今日はお土産と資金援助。ありがとうございます。あんなゲ〇ポーション。ではなく、失敗作を個人で買い取ってくれるのは貴方くらいですから」
「効果だけは抜群だからな」
味と喉越しと風味が〇ロなんだよな、あれ。
効果だけなら良質だから、病院や軍。冒険者チームで使われる時は意識不明の重傷者に使われることが多いレンのポーション。副作用さえなければもっと高名な錬金術師になれただろうに。最大効率こそが座右の銘。そんなレンに脚光や人生の春が来るのはまだ先にあるだろう。と、そこでタカヒトはもう一つお土産があった事を思い出し、リンにとある魚の缶詰を渡した。
それはダンジョンが発生する前から続いているとある文化に根付いた世界一臭い魚の缶詰。開ける時はくれぐれも外で開けるようにと言う注意書きが書かれた物。
そして、今日のようにレンが極度の空腹に陥るまで続いた研究の徹夜明けの日。コンディションで不注意にも室内で開封したことにより、彼女は泣きを見ることになる。