美浦寮には一つの噂があったりなかったりする。それは『学園一いい匂いがしそうな部屋がある。』というものだ。その室内で一人のウマ娘が意気消沈し、もう一人が励まそうと必死になっていた。
「チヨノオーさん…私って重い女なんでしょうか?」
「え、えっと…それはですね…」
目から光が消えているのはメジロアルダンであり、励まそうとアタフタと踊っているのはサクラチヨノオーだ。
「いいんです…トレーナーさんもイヤイヤだったのに無理に付き合わせてしまっていたんです…」
「ア…アルダンさん…」
これは重賞…重症だとチヨノオーは混乱しながらアルダンが持っている雑誌に目をやる。ウマ娘に人気の雑誌で特集に「アナタは大丈夫?重い彼女診断!」とある。ああ、なんて特集を…よりによってこの人が読んでしまったのかと思うチヨノオーであった。
「えっと…アルダンさん?この手の雑誌はジョークみたいなものですから…」
「でもトレーナーさん…トレーナーさんに聞いたら『え、うん』と即答だったんです…今まで隠してたのについに漏れてしまったんですね…うう…優しい人…好き…」
何を言ってくれてるんですかあの朴念仁は…とチヨノオーは脳内でアルダンのトレーナーを後ろ脚で蹴り飛ばした。後ろ脚ってなんでしょうか?ともかく
「きっと何か聞き間違えたんじゃないですか?アルダンさんのトレーナーさんがそんなこと言うはずありません…」
「いいえ!チヨノオーさん!私がトレーナーさんの言うことを一言一句聞き違えるはずありません!ええそうです!トレーナーさんの言葉を聞き間違うなんてことがあったら…」
「あったら…?」
「この耳は飾りです!切り落としてトレーナーさんに謝罪しないといけません!!」
「わかりました!分かりました!!アルダンさんはトレーナーさんの言葉を聞き間違ってません!大丈夫です!」
何一つ大丈夫ではないがそうでも言わなければ部屋が血の海になりそうだ。まさにファインプレーと言うべきだろう。
「ということは…やっぱり重い女で嫌われてしまったんだわ…」
さめざめと泣くアルダンに打つ手無しのチヨノオー。部屋のワンコオーも湿気を吸い取ってしまっているようだ。クラスメイトに話を合わせるためにたまたま買った雑誌の特集がこんな事態を引き起こすなんて誰が想像できようか。ともかく学友を慰めたいチヨノオーはなにかアイデアをひねり出そうとする。重い女…重い…
「そうだ!アルダンさん!重くなければいいんですよ!軽くなればいいんです!」
「軽くなる…?」
「そうです!重いニンジンも食べれば軽くなるといいます!そうすればトレーナーさんも喜んでくれますよ!ええ!」
「なるほど…そうですね!」
今の例えで何がなるほどなのかはともかく流石は学園内随一の前向きさの二人。これはいいことをひらめいたと納得したのであった。
「でもどうすれば軽くなるのかしら?」
「そうですね…アルダンさん普段早起きしてお弁当作ってあげてますよね?それを止め…」
「ダメです!そんなことをしたらトレーナーさんの健康に良くありません!それに私を食べてもらわないといけないし…」
「そ…そうですね…」
後半は聞かなかったことにするチヨノオー。だがアルダンの指が絆創膏まみれなことは目についてしまうのだった。ともかく…
「じゃあ毎日じゃなくて、一日おきにするとか?毎日だとアルダンさんも大変じゃないですか?レースも近いですし」
「そうですね…それならトレーナーさんの健康にも影響が少なそうですし…そうしてみましょう」
良かった…とりあえず落ち着いてくれたと一安心するチヨノオーであった。
翌日
「ア…アルダンさん…?それはなんですか…?」
「おはようございますチヨノオーさん。これはトレーナーさんのお弁当ですよ?」
「まあそうなんでしょうけど…なんでお重が並んでるんですか?」
目の前には運動会でも開くのかというくらいに箱が並んでいる。とりあえず普通の人間が一食で食べ切れる量ではない。
「一日置きにしかお弁当を作って差し上げられないから一食を多くしようと思って…」
「それじゃあ軽くする意味が無いじゃないですか…相手はオグリさんじゃないんですよ?それにトレーナーさんは少食だって言ってたじゃないですか…」
「大丈夫です!」
「そのこころは?」
「トレーナーさんと食べさせあいっこすればすぐ無くなります!」
「もしかして…今まで毎日してたんですか?」
「ハイ!!あ、もうこんな時間!じゃあ行ってきますね!!」
もう何も言うまい…食器を洗うのは手伝おうと思うチヨノオーだった…
そして数刻後…
「チヨノオーさん…私って重い女なんでしょうか…」
真っ青な顔のアルダンと対面したチヨノオーはなんと声をかけるべきか悩んでいた…
「えっと…アルダンさん…何があったんでしょうか…?」
「トレーナーさんが…あのお弁当を見て…重いって…」
「ソ…ソウナンデスネ…ヒドイナー…」
「ウウッ…私どうしたら…」
これは困った…次の手を打たねば…ニンジンは熱いうちに食べないと美味しくないと言うし…チヨノオーは必死に案を考える。そういえばあの雑誌には連絡を入れすぎると重いと思われるというのもあったような…
「そうです!アルダンさん!少し連絡を絶って冷却期間を…」
「ダメです!もしトレーナーさんに何かあったら…心配で…それにトレーナーさんが愛想をつかせてしまったらと思うともう…」
青い顔がさらに青くなってしまった…今では大分良くなったがアルダンは床に伏せがちなのだ…そう言えば今はどれくらい連絡してるのだろう?
「ちなみに今はどれくらい連絡してるんですか?」
「ええと…最近は体調もいいですから…授業の休み時間に毎回と練習が終わって別れてからは30分に一回くらいかしら?これくらいは普通だと思うけれど…」
「それは多い……へ…ヘイキンクライジャナイデスカ?」
思ったより多かった…が、逆に言えば多少…相当減らしても問題なさそうだ。だいたい体調に問題あれば同室の自分が代わりに連絡してあげれば良いのだし。
「とりあえず寝る前に一回くらいでいいんじゃないですか?」
「そうかしら…ちょっと少なすぎるような…」
「いえいえ大丈夫です!私もそのくらいですから!」
「そ…それじゃあ試してみようかな…」
「はい!それがいいですよ!」
そしてその夜…
「あのう…アルダンさん…?もしかしてこの一時間以上トレーナーさんへのメッセージを入力してますか?」
「ええ…今日送れなかった分をまとめていますから…よし…これで大丈夫です」
絶対大丈夫じゃない分量だ…これは明日も…
翌日放課後の廊下で…
「チヨノオーさん…私って重い女なんでしょうか…」
「えっと…アルダンさん…何があったんでしょうか…?」
「トレーナーさんが…あのメッセージを見て…重いって…」
「ソ…ソウナンデスネ…ヒドイナー…」
「ウウッ…私どうしたら…」
これは困った…さすがに万策尽きたか…すみませんアルダンさん…とチヨノオーが心のなかでわびていたその時。
「あ…アルダン…どうしたんだって…チヨノオーも一緒か良かった…」
アルダンの後ろから件のトレーナーが走ってきた…
「あ!アルダンさんのトレーナーさん!ちょっとどういうことなんですか!?」
「おっといきなりどうしたんだチヨノオー?アルダンも急に走っていくし…」
「いいから!ちょっと来てください!」
チヨノオーはトレーナーを少し引っ張って小声で話す。
「アルダンさんになんてこと言うんですか!あんなに尽くしてくれているのに!」
「こっちも聞きたいことがあってな。最近アルダンの様子がおかしいんだ。何か知らないか?」
「フ…フフフ…そういうことだったんですか…」
うつむきながら突然笑い出すアルダンに振り向くチヨノオーとトレーナー。二人共すぐにアルダンの様子がおかしいことに気づく。
「アルダン?」
「どうしたんですか?」
「どうしたもこうしたも…トレーナーさんとチヨノオーさん…デキていたんですね…」
「「……え?」」
目に光のないアルダンは続ける。
「そうやって私を除け者にして…二人でこっそり付き合ってたわけですね…?だから私のことを重いって…」
「待てアルダン、相当誤解してるぞ。」
「そうですよ?どうしたんですか?」
「今だって息ピッタリじゃないですか…そうだったんですね…私はまんまと手のひらで踊らされていたと…」
「いや…その…違うんだ…」
「何が違うんですか?いいんですよ正直に仰ってくださいトレーナーさん…」
言いにくそうにしていたが覚悟を決めるトレーナーが口を開く。
「重いっていうのは…体重のことなんだ…」
「「……は?」」
今度はアルダンとチヨノオーの息が合う。そして言いにくそうにトレーナーは続ける。
「だから…次のレースに向けての体重調整のことを言っていたんだよ…なんて言おうか迷ってたけどまさかそんなふうに勘違いするとは思わなかったから…すまないアルダン」
「あの…お弁当を見て重いって言ったのは…?」
「あの量を食べたら調整しきれないと思ったから重いって言ったんだ。」
「寝る前のメッセージが重いって言うのは…?」
「体調管理のデータも送ってくれただろ?やっぱり減量が必要だから重いって言った。」
「ええと…一番最初に私が重いですか?って聞いたときは…?」
「もちろんレースに向けての話だと思ったから…その調整だと思ってな…すまない…」
場を沈黙が支配する。口火を切ったのはチヨノオーだ。
「よ…良かったですねアルダンさん!嫌われたとかそういうのじゃないですよ!」
「やっぱりそう誤解させてしまったか…様子がおかしかったから心配してたんだ。アルダンのことを嫌いになるわけないじゃないか。」
「あの…お弁当を毎日作ってもいいんですか?」
「もちろんアルダンが無理しなければ、量は少し減らしてくれると助かるけど。手の怪我には気をつけてな。」
「メッセージの頻度は…嫌じゃないですか?」
「アルダンが嫌じゃなければ送ってくれて構わないよ。」
「アルダンさん、良かったですね!」
こうしてアルダンの誤解は解けたのであった。
翌日早朝
「おはようございます。アルダンさん。今日もお弁当ですか?」
「おはようございます。ええ!量は少なめに、愛情はたっぷりと詰めました。」
なるほど絆創膏の数が多いなあとチヨノオーは気づくのだった。
実はアルダンさんが病んでたりするのが好きなんですよ。これは極秘情報なので友人のいとこのはとこのその隣の部屋の人くらいしか知らないと思います。はとこってなんですかね?その目の前にあるPCでYahooでググれとは言わないであげてください。
ともかく病みやすいアルダンさんです。アルダンさんとチヨちゃんさん好きなんですよね。ということで病んでるアルダンさんをチヨちゃん目線で書いてみました。いつもだとトレーナーさん目線にすることが多いんですけどなんかこういうのも書いてみてえなあと思ってたらやっぱり難しいですね。
ともかくアルダンさんです。昨日ローレルさん書いててローレルさんが独占欲ツヨツヨだったら保健委員組のアルダンさんはどうなるかなあと思って過去作のアンケート見直したら依存と崇拝が多く票が入ってたんですよね。少しはそれっぽくなってるといいんですけど崇拝系ヤンデレって難しいですよね。うちのシリーズだとスズカさん単体が崇拝スズカさんシリーズってなってますけど更新止まっちゃってますからね。ということでスズカさんに走らせたいネタがあれば募集してます。おやつシリーズもレシピ募集中です。
だから今回はアルダンさんの話なのになんで他の娘の話に脱線するんですかね悪い癖です。