慧楽書けたとこだけ   作:frozencookie/玲人

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本当に新規バグ見つけた

 

 最近なんだかサンラクの様子がおかしい。

 

 具体的にどう、というと難しいけど。便秘でもシャンフロでも、会えば会話もするし一緒に遊ぶ。誘えばGH:Cでの対戦もしてくれる。

 ただ、何というか……そう、今みたいに対戦が終わってダベる時とかに、視線が合わない。俺が視線を外してる時には見られてるような気はするんだけど、視線が合っても自然と逸らされてしまう。

 それに、なんとなく……ほんの少し、いつもの煽り合いにキレがない。ペンシルゴンと話してる時とかはいつも通りに見えるんだけど。

 出会って数年。現実(リアル)で会った回数はまだ数えられる程度だけど、チームの連中とはまた別の次元で仲間だと思ってるこいつからそういう態度を取られると、凄く気になる。

 

「ねぇ、なんか最近おかしくない? 言いたいことでもあるの?」

「あー……いやまぁあるっちゃあるかなぁ……」

 

 だからこそそう切り込めば、珍しくはっきりしない態度。いつもなら曇りなき目で嘘を吐き、息をするように煽ってくる癖に。

 

「何さ、珍しい。聞くだけは聞いてやるから言うだけ言えば?」

「その後殴りますってか? ははは」

 

 いつもの軽口もどこか上滑りして聞こえる。

 サンラクはガリガリと襟足を掻いて、大きく息を吐くとようやくこっちを真っ直ぐ見た。

 

「あー……好きだ、慧。……恋愛的な意味で」

 

「……は?」

 

「は、はは、悪い、男にんなこと言われても気持ち悪いよな。俺今日は落ちるわ。暫くはインしねぇから安心しろよ」

「え、や、ちょっ、待って」

「っ、引退、までは、しねぇから。ちゃんと頭冷やして切り替えてそしたらまたちゃんとダチとして──」

「いやいや待ってマジで違うからちょっと待ってマジで待てって話聞けよ!」

 

 突然落とされた爆弾に呆けている間にさっさと踵を返してログアウトしようとするのを慌てて腕を掴んで引き止める。

 待って、まだ俺も頭再起動してないんだけど? 爆弾ぶち込んで逃げるとかテロかよ。あ、ちょっと頭回復してきたわ。

 

「あー……ちょっとびっくりしただけだって。ていうか、え、マジで? エイプリルフールは2ヵ月前に終わったよ? ジョークにしちゃあ笑えないよ?」

「冗談で! 冗談でこんな事、言えるかよ……」

 

 掴んだ腕から力が抜け、サンラクはその場にしゃがみ込んでしまった。

 その震えた声にも丸めた背中にもいつもの覇気が感じられなくて、いつものノリで喋ってしまったことを後悔する。やっぱ全然頭回ってないや。

 

「あ、あー、ごめん、いやこれは違くて、茶化してごめんって意味で。ねぇ、とりあえず顔上げてよ」

「……そんなに俺を弄るネタが出来て嬉しいかよ」

「違うよ、嬉しいのは確かだけどさ。そうじゃなくて」

 

 のろのろと上げられた顔は、恨めしそうに睨み付けている割にここがシャンフロだったら涙を零していただろうと思えるほど暗く沈んでいた。そんな顔させたくないのにな。

 いやそれより、こっちから聞き出したんだ。ちゃんと答えてやらなきゃダメでしょ。

 

「ね、じゃあ付き合おっか。あ、いや順番が違うか、うん。俺も好きだよ楽朗。だから付き合おう」

 

 自分の顔がゆるゆるの笑顔になってる自覚はある。でも抑えるなんて無理だ。

 ずっと好きで、でも望みはないから諦めろと言い聞かせ続けて、それでも恋心を捨てきれなかった相手から告白されたんだから。

 

 いつもの脊髄反射並みの反応速度はどこへやったのか、ゆっくりと目を見開いて、ぽかりと口を開ける。

 何その顔。可愛いかよ。

 

「……は? いや嘘だろ。同情とかいらねぇから。落ち着いたらちゃんと戻るっつってんだろ、そんな嘘ついてまで引き留めなくても」

「いやいやいや、なんで? 流石に俺だってこんな嘘つかないって」

 

 さっきは俺が冗談扱いしちゃったけど、うん、これ言われるとなかなかキツいな。気持ちを信じて貰えないって、辛い。さっき酷いことしちゃったなぁ。でも今やり返されてるからお相子かな?

 

「だって、お前ノーマルじゃん。ゲイ嫌いだろ」

「え、別に考えたことないけど……」

「前に言い寄ってくる男マジウザいって言ってたじゃん」

 

 んー? あぁ、そう言えば前にそんなこと愚痴ったかもしれない。

 とある大会に出場した時、ねちょねちょ言い寄ってくる自称敏腕大会プロデューサーがいた。あれはほんとマジで気持ち悪かった。あいつの大会には二度と出ないと決めた。

 馬鹿が、全米一(ゼンイチ)に初黒星つけた魚臣慧のネームバリュー舐めすぎなんだよ。魚臣慧と爆薬分隊が出場しなくなった格ゲー大会に何かを察した他の有力チームもそれ以降出場を取り止め、ただの雑魚の頂上決戦になり視聴数はガタ落ち、打ち切りが決まった。ハッ。

 

「や、それはさぁ、こっちはそんな気全っ然ないのに当然イケるだろうみたいに言い寄られてもキモいだけじゃん。男だからとかじゃなくてさ」

「それは……それに女の心弄んでんじゃん」

「いや何それ」

「ほら……シルヴィアとか……」

 

 あぁ、まぁ楽朗もシルヴィアとメグのことは知ってるもんね。メグの名前を出さなかったのは気遣いかな。とは言え流石に気付いてるよ。鈍感系主人公じゃあるまいし。

 

「あー……あれはさぁ、まぁ好かれてるんだろうなぁとは思うけど。でも向こうから告白もしてこないのにフるのもおかしいじゃん」

「……それもそう、か?」

「でしょ? 俺だって楽朗はノーマルだと思ってたから言うつもりなかったんだけど、ていうかそっちこそサイガの0さんとはどうなってんのさ」

「レイ氏? いやあの人はシャンフロ廃人なの隠してるからリアルでゲームの話題出せる人が少なくて、たまたま知った俺と仲良くしてくれてるだけだぞ?」

「……あぁ、そうなんだ」

 

 いやアレ絶対向こうはお前のこと好きじゃん。お前こそ無自覚かよ。まぁわざわざ気付かせてやる程優しくはないけどさ。それで向こうに流れても嫌だし。

 

「で、信じてくれた?」

「……信じる」

「じゃあ、付き合ってくれる?」

「ヨロシク、オネガイシマス……」

 

 改めて差し出した手を、そっと握り返してくれた。

 あぁ、ヤバい、幸せ過ぎてにやける。

 俺って前世でどれだけ徳積んでたんだろう。

 高ぶる気持ちのままに抱き寄せようと腕に力を──

 

「おめでとう!」

「やぁやぁ、青春だねぇ」

「喧嘩かと思って心配したけど、ただのリア充だった爆発しろ」

「やー、こんな過疎ゲーでカップルが誕生するとはなぁ」

「仲良くやれよ。相談なら乗ってやるからよ」

 

 突然大勢のプレイヤーに囲まれ、背中を肩をバシバシ叩かれる。

 すっかり頭から抜けていたがここは便秘のマルチエリアであり、少し前まで俺とサンラクが対戦していたので周囲には観戦勢が集まっていて、その観客が解散する前に大声で言い合ってた訳で、つまり…………全部見られてた?

 

「フレに呼ばれたんで落ちますね^^」

「おいおい逃げんなよサンラクゥ!」

「せっかくだし対戦しようぜ!」

「いやどうせなら新しいバグ見つけてカップル爆誕拳とかつけようぜ!」

「おいやめろテメーらネタにすんじゃねぇ引退すんぞ!」

「「「それは困る」」」

 

 まぁ、同じゲームを好む同志(仲間)に祝われて、嬉しくない訳ではない。

 それはそれとしてしばらくインしたくないなぁ……。

 

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