日曜日。恒例のそれぞれが趣味の事をそれぞれに語り、最近はそこにほんの少し受験の話題が含まれるようになった家族揃っての朝食を終え、満面の笑みの妹に見送られてやってきた待ち合わせの駅。
駅を出てすぐのでかいアーモンドみたいな謎の銅像の前でじりじりと太陽にHPを削られながら待っていると、駅からやってくる人の流れの中に見つけた。
キャップを被って伊達眼鏡までつけてるけど、間違いない。慧だ。
軽く辺りを見回していた視線がぶつかる。
嬉しそうに目を細めて小走りで近づいてくるのを見て、こっちも口角が上がるのを自覚する。
「ごめん、待たせた?」
「んや、まだ時間前だし。でも暑いからさっさと移動しようぜ」
「うん、あっち」
目的地は決まっているらしい、並んで歩きながら慧を見下ろす。
「なんか今日、服の感じ違くない?」
「あー……うん、鉛筆プロデュース。デートだけどバレたくないって言ったらこうなった」
「鉛筆に相談したのかよ。勇気あるな」
「第一案が女装だった時はマジで晒し上げようかと思ったけどね。でもまぁ服の雰囲気変えるだけでこんなに視線が減るんだってびっくりしてる。今日一度も話し掛けられてないし」
「マジか、すげーな。でもこういうのも似合ってるぞ」
「……ありがと。楽郎も服似合ってるよ。カッコイい」
「ん……サンキュ。俺も狂信者プロデュースだけどな」
「狂信者……あぁ、妹ちゃん? 読モだっけ、やっぱセンス良いね」
「やらんぞ」
「いやいらないって」
慧は大会とかだと細身のズボンにシャツとかジャケットとか、なんか綺麗目な服装が多い。
それが今日はゆるっとしたハーフパンツにゆるっとしたパーカー、明るいキャップで……なんかイカツイ奴が着てたら近寄りたくない感じの服装だけど、慧が着るとちょっと可愛い感じになってる。でも普段の慧とはパッと見では結び付かない感じ。流石少しのメイクと変装で人混みを出歩けるカリスマ外道モデルプロデュース。
俺は細身のジーパンにタンクトップ、チェックのシャツ。タンクトップだけで三十分くらい悩んでくれた瑠美も報われたことだろう。お兄ちゃんはそんな細かい違いはわからないよ……でも今度アイス買ってやろう。
「で、どこ向かってんの?」
「映画館。ほら、
「んー……聞いたことはあるな。どんなクソゲーだっけ?」
「クソゲーが映画化する訳ないでしょ。良ゲーだよ。FPS。ゲーム性は凡作だけどメインシナリオが評価されてそこそこヒットしたやつ」
「ほーん」
「興味なかったら後は戦隊ヒーローと女児向けアニメとべったべたの恋愛モノもあるけど」
「ここは恋愛モノいくべきでは?」
「余命三ヶ月の花嫁が死ぬまでの物語を? 初デートで? 本当に見たい?」
「よし凡ゲーにしよう」
「うん、そうだね」
そんなくだらない話をしているうちに映画館のあるビルについた。
冷房は偉大な発明である。涼しい空気に汗を冷ましながらチケットを買い、ジュースとポップコーン片手に時間までだらだらと喋りながら過ごした。
ていうか
「クソじゃん! いや面白かった、面白かったけどさぁ! 原作は!? 原作ぶち壊すにも程があるじゃん!」
「原作知らんから何とも言えんが」
「そうだよね、俳優目当てとか前知識無しなら良い映画だと思うよ、でもあれはない!」
映画館を出て昼飯を食うべく入ったちょっと小洒落た店で俺はひたすら慧の愚痴を聞いていた。
で、まぁストーリーモードで仲間になる、AIロボットでありながら総括AIの判断に異を唱え自らをネットワークから切り離したキャラクターこそが人気に火を付けたんだとか。なんやかんやあって最終的にそのキャラクターもAIをリセットし、それでもかつてと同じセリフを言うのがエモいとかなんとか。
ところが映画ではそのキャラクターは端役に追い込まれ、映画オリジナルキャラがヒロイン扱い。その上中盤で総括AIが謎の細菌兵器を使い後半はゾンビパニックのホラーと化していた。確かにゲームでも細菌兵器の話は出てくるが、それを使わせないよう破壊するのが中盤のミッションであってゾンビパニックなど起きないらしい。そこからはもう映画オリジナルのオンパレードだとか。
いや普通に映画としては矛盾も破綻もなく面白かった、面白かったが原作ファンとしては許せないらしい。お前ファンだったのか。ゲーム原作だし話題作りに一応見ておこうかな、くらいのノリだったじゃねえか。
「ていうかゾンビ出てくるとか聞いてないし! なにあのホラー!? ホラーならホラーって言えよ、ていうか原作全然ホラーじゃないし!」
「うんうん、そうだなー、怖かったよなー。『ぴうっ』とか『きゅっ』とか……」
「違う! あれは怖かったんじゃなくてびっくりしただけ!」
「あーはいソウデスネー」
正直、隣からヘタレ兎みたいな声が聞こえてくるのめっちゃ楽しかった。まぁ俺も俺で肩が跳ねたりポップコーン落としたりしてたような気がしないでもないが、気のせいということにしておく。
そんなこんなで昼飯の季節の野菜となんちゃら豚のなんちゃらプレートみたいなのを食べ終わり、セットのプチケーキが出てきた頃、ようやく気が済んだらしく大きく息を吐いた。
「なんかごめん。凄い愚痴っちゃった」
「いや、楽しかったし。やっぱお前もゲームが好きなんだなって」
「あー……まぁ、ね。好きじゃなかったら仕事にしないし。でも勉強で忙しい中、せっかく時間とって貰ったのに……」
「んー、まぁ忙しいけど別に切羽詰まってる訳じゃねーし」
「そうなの? なんか夏期講習詰め込んでるとか言ってなかった?」
「あー、学校ないと思うとついゲームしちゃうからさ。それに武田さんにも『たまにならまだしも、毎日のように睡眠時間を削ってゲームするなぞ余りに愚か! そういう若さに任せた無茶な生活をして若さの消え始めた三十代で早死にした奴がどれほどいたことか!』ってめっちゃ怒られてな……生活改善中」
受験勉強について軽く相談するつもりがゲーム時間について滅茶苦茶説教されて、いや心配されてんのは分かるけど、流石にちょっと凹んだ。
でも武田さんは人生の師匠だからなぁ……健康に長生きして一本でも多くゲームをするために、って言われちゃあ素直に従うしかない。
「あぁ、それで最近深夜いないんだ?」
「そ。徹夜でゲームして学校で眠気と戦いながら授業受けて放課後に勉強するくらいなら、夜にきちんと寝て学校でしっかり授業聞いてれば自宅学習の時間を減らせてその分ゲームの時間を確保出来る、って言われてなー……実際そうし始めてもゲーム時間はそこそこ確保出来てるし」
「うっわー、正論過ぎて何も言えない」
「だから生活リズム変えないために予備校行ってるだけで、切羽詰まってはないかなぁ。まだB判定だからA判定まで持って行きたくはあるけど」
B判定って知ってるか? 合格率60~80%だって。一番信用出来ない確率じゃねーか、クソが。意地でもA判定になってやる。
そんな感じでダラダラ話しながら店を出てブラつく。
本屋の雑誌コーナーでファッション誌の表紙を飾る外道を見て笑ってしまい女子に睨まれたり、ゲーム誌の表紙を飾る外道が逃げ出したのを追いかけたり。
暑い暑いと文句を言いながら店を冷やかし歩くだけでも楽しいんだから重傷だ。
やってることは友達と変わらないはずなのに、隣にいるのが恋人だと思うだけで浮かれて口角が下がる暇もない。
「あっ、ねぇ休憩代わりにカラオケ行かない?」
「おー、ぼちぼち喉も渇いたしな。個室なら慧ものんびりできるか」
派手な看板に目を留めた慧に誘われるまま、ビルの中へ。日曜とはいえ微妙な時間帯のせいか待っている客もおらず、すぐに案内される。
ロビーは案内の声が聞き取りにくいほどガンガンに流行りの曲が流れていたが、個室のドアを閉めると一気に静かになる。液晶モニターではキラキラした女の子達がライブの宣伝をしている。
少しでも廊下から見えにくいように慧を奥へ押し込んで、硬いソファに座って涼しい室内に一息つく。
「せっかくだし何か歌うか?」
タッチパネルを渡して適当にランキングを眺める。そういえば慧って何歌うんだろ。
「好きだよ、楽郎」
「ん゛っ……う、ん、俺も、好きだ」
「ちゃんとリアルで顔を見て言いたかったんだ。」
こっから先が書けなくなった。
あとI:Ceちゃんと何の略か考えたのに忘れた。なぜメモしなかったのか。
このあと手繋いでチューして手繋いだままカラオケして解散!して欲しかった。
この先のエロ目指して書いてたけど筆が止まってしまった。お付き合いから順番に書かないと書けないタチなので…
慧は社会人だから楽が卒業するまでえっちなことはしません。クリスマスに楽が誘うけど、したいよ!?したいけどさぁ!万一の時に社会的に死ぬから無理!って断ってほしかった。
そんで楽には卒業したら即行で慧んとこ行って卒業したからヤるぞ!って男らしく仁王立ちしてほしかった。
楽には自分から誘った割に『自分でやった時と全然違う!』ってパニックになりながらトロトロになってほしかった。
いつか書ければいいな。たぶん無理。
アニメ化して慧楽が増えますように。