3th PVも含めて感想としては…ヒナ、まさかお前…ドレスコートで実装の上にピアノを弾くなんて…!!然もいっぱい練習したんだって?こーれ、ノエル先生との絆イベ待ったなし。
序章最後の東風、招待されたヒナがイベントのピアノに繋がると考えると…すげぇ、偶然とはいえ上手い具合に…と思いました。
然も今回、ヒナを操作してゲヘナ学園の色んな所を探ったり会話イベで調査したり、ミッション達成すると報酬がもらえる…然もブルアカは無料ゲーム(課金しなければ)…被虐のノエルかな????神アプデでびっくりしました。でもメチャクチャ楽しい!!
それはそうと、第一章が始まりました。サムネがあれば砂狼シロコ。
#ん、メインヒロイン#遭難#アビドス砂漠#フラグ建築士カロン#無様ですわ!
story1『砂の狼』
雲一つない蒼天の陽射し。
空を見上げると容赦のない光が眩しくて、直視することができずに目を瞑ってしまう。
ずらりとドミノのように並ぶ住宅街――一軒家が無限に立ち並ぶ建物から人の気配は不気味な程に一切ない。
一向に雨が降らない市街地はもぬけの殻となっている。こう言うのを廃村だとか、ゴーストタウンというのだろう。
都市伝説かと思っていたが、こう言う自治区に足を踏み入れるのは、前世でも今世でも初めてである。
「アロナの忠告通り、遭難したな……」
「ひぃぃ…!もうここ数日ずっと同じ景色と街並!私たち一体どうなってしまうんですの!?」
カロンの発言通り、現在この二人一組『シャーレの先生』は遭難中である。
面倒な事件に首を突っ込んだと、気苦労共に肩をすくめるカロンに、ノエルは半分情緒が不安定になっており、汗を掻きながらも数日間ずっとこの足を踏み入れたことのない、迷宮にでも閉じ込められた不思議な街に悲鳴をあげていた。
―――――――――――――――――――――――
事は数日前までに遡り。
事は遭難する数日前までに遡る。
演奏を終えてから生徒達の拍手と熱狂は大きかった。ワカモからは飛びつき抱きしめられたり、ユウカやハスミからは曲の感想など、チナツからは笑顔で賞賛されたりもした。唯一、ヒナは口数こそ少なかったものの何か想うことがあったらしい。それは言葉として表現するのが難しいからなのか、想いを伝える事なく敢えて言葉を言わないのか、どちらにせよ彼女の顔色からは不満のような色は見受けられなかった。
他にも逆光同盟や、End_of_The_Paranoidと…数個の曲を奏でたりもした。折角ご足労してまでお越し頂いたのに、一曲しか奏でないというのも物足りない。
ワカモが何故自分に此処まで好意的なのかは今でもよく分からない。ジリアンのような偏執にも似た異質さも感じなくもない。
「♪〜♪〜…」
ノエルはユウカから貰った電子キーボードを愛おしそうに鍵盤を指で押していく。
滑るように、自分の手足として奏でていく音色は、殺風景でオブジェのないシャーレオフィスを彩っていく。
「ご機嫌よく調子は良さそうだな、ユウカからの贈り物…相当気に入ってるようだ」
赤眼の大悪魔──カロン
感慨に耽っていると、シャーレの扉が開く音が鳴る。
スケジュールや書類仕事、決算処理、レポートなどを連邦生徒会のアユムに提出していたらしい。
彼女もまたハスミのように漆色を連想させる鴉の翼が生えている。因みにアユムからも初対面ではカロンのことを烏頭の不思議な人と言われ、見事に突っ込みを入れたらしい。
カロンの言葉にノエルは横髪を耳にかけて微笑んだ。
キヴォトスに訪れて、先生として初の贈り物――ノエルは本当に、それこそ叶うならピアノが欲しいと言う願いがあったのは事実である。大悪魔が望みや願いを込めるというのは、余りよく考えられないものでもあるのだが…いや、この際考えるのはよそう。野暮というものだ。
「良いではありませんの…キャロルさんが空けていたピアノに触れて以来、ずっとピアノにすら触れませんでしたもの。私にとって死が確定されていたにも関わらず、こうして新たな人生と夢を歩み、こうしてユウカがくれたプレゼント…気に入るに決まってるじゃないの」
被虐の大悪魔──ノエル・チェルクェッティ
ユウカから贈られた日以来、ずっと隙あれば電子キーボードに触れている。
グランドピアノのように脚を使う本格的な音楽器ではないにせよ、彼女にとってユウカの贈り物は寧ろ贅沢すぎるくらいで、感謝しても仕切れない。
あのまま死んでても可笑しくなかった。
生まれ変わって、新たな人生を謳歌することでさえ贅沢なのに、あの子が私の為に買ってくれた大切な想い出の贈り物…。
本当に、あの子はすっごく優しい子……。
セミナーでは一部の生徒からは冷酷な算術使いだの、審査が厳しい鬼の計算や、妖怪など陰口を叩かれているのは未だに知らない。
「ふん、ピアノばかり触れて仕事をサボってる訳じゃないだろうな」
「それは心配無用ですわっ。パソコンも昔よりかは知識だって身につけてるんですのよ!これもユウカやチナツ、スズミがシャーレの当番で教えてもらった知恵の賜物…努力は結果を生むとはこのことですわ」
「それは頼もしい。そんなお前に丁度…私達シャーレの『先生』初の仕事依頼が来ているぞ」
するとシッテムの箱が青白く光だし、ブゥン…と電源が入った音が低く鳴る。
自動的に作用するシッテムの箱から、愛くるしい声と姿が液晶画面から伝わってくる。
『ノエル先生とカロン先生に手紙が一通来てますよっ!』
シッテムの箱──アロナ
連邦生徒会長が遺した不可思議な工芸品(オーパーツ)。
iPadと極似してるこの電子機器。リン曰く連邦生徒会の者達でも決して解明されてない正体不明の神秘の箱。
カロンからは別次元への移入可能な空間と呼んでおり、別の時空間を箱と言い換えている。相変わらずこういう解釈や命名を付けるのが好きな悪魔だと殊更感じさせられる。
そのシッテムの箱に存在するシステム管理者にして、ノエルとカロンの秘書を務めるアロナは、正体不明の小さな女の子だ。
容姿に似合わずスケジュールや書類仕事の進行状況、モモトークやシャーレ当番の報告、細かな範囲まで教えてくれる、本当に頼もしい子だ。
カロンもアロナの評価は高く買っており、お陰で仕事がスムーズに進みやすいだの、状況を把握できて視野が広められるだの、意外にも友好的だ。
因みにノエルは息抜きにシッテムの箱に入り、アロナと一緒に遊んだり憩いの会話などで戯れたりもしている。
ノエル自身にも母性が高いのか、猫と同じように可愛いものに対して目がないのか、アロナとノエルのやり取りは端からみれば微笑ましい光景でもある。
「手紙?となると…モモトークのように生徒からの連絡、という訳では無さそうですわね?」
『ああ、えっと…カロン先生には目を通して貰ったのですが、ノエル先生にも改めて…これを読んでもらった方が宜しいかとっ…』
するとアロナが勝手にメールフォルダのアプリを起動し、つい1時間前に入った一通の電子メールが開かれる。
宛先は『アビドス高等学校──奥空アヤネ』と記されていた。
――奥空アヤネ、アビドス学校…聞いたことがないですわね。と、ノエルは頭の中で出逢った生徒達を回想する。
とは言え、キヴォトスに訪れてからも生徒達と出逢った生徒達は多い訳ではない。特徴的な生徒達であるユウカ、ヒナ、ハスミ等…それくらいだ。
ノエルは再び手紙を黙読していく。
『連邦捜査部の先生へ――こんにちは、私はアビドス高等学校の奥空アヤネと申します。今回どうしても先生にお願いしたいことがありまして、こうしてお手紙を書きました。
単刀直入に言いますと、今、私たちの学校は追い詰められています。それも地域の暴力組織によってです。
こうなってしまった事情はかなり複雑ですが……どうやら、私たちの学校の校舎が狙われているようです。
今はどうにか買い溜めていますが、そろそろ弾薬などの補給は底をついてしまいます…。このままでは暴力組織に学校を占領されてしまいそうな状況です。
それで今回、先生にお願いできればと思いました。先生、どうか私たちの力になっていただけませんか?』
「こ、これは…」
手紙を読み終えたノエルは一息吐く。
キヴォトスの治安の悪さはゲヘナ学園といい、転生してからの初日といい、嫌という程味わってきた。
どこもかしこも見渡せば、銃を持ち歩く生徒達ばかりなのだから当然と言えば当然なのだが、とうとう暴力組織なるものが知らない学校を占拠しようと暴挙に出ていると言う事実…。
「アビドス…私達が住んでいた世界では、ある国にそういった名前の付いた砂漠があったそうだ。神話が多いあの地域…そこから取られた名前か…ククク、
アビドス――有名な砂漠の国に存在する名前だ。
古来より多くの文明を遺したあの地域は、古代文明や遺跡が多く印象的に遺されており、呪文や願い、儀式などが数多く存在する。
実際に小耳に挟んだ話だが、暑さと渇きに絶えのない絶望を持った民は、始まりの大悪魔創造の経由として、自然現象――名もなき神に生贄と儀式、願いを揃え、祈り続けた結果、砂漠の国に恵みの雨を降らせた白き大蛇の大悪魔が生まれただとか。
「私には神話や伝承とかは疎いので、そこら辺はカロンの考察はお任せ致しますわ」
「お前も大悪魔なんだから少しは興味を持ったらどうだ…」
「そんなこと言ったって…此処と向こうの世界では一定の常識も違うのでしょう?それなら伝承や文化なんて吸収できないんじゃありませんの」
「それはまあ……そうだな」
そもそもピアニストを目指してた彼女は、流行の漫画や娯楽にさえ手を付けていなかったのだ。座学による成績がどうなのかは不明だが、少なくとも悪魔や宗教、神話などの伝承に詳しい柄でもないのだから、ノエルにそれを期待するのは無理がある。
悪魔になったところで、興味が湧くかと説いて首を縦に頷く姿も想像できやしない。
「けど、私達が先生として踏み出す最初のお仕事っ!私とカロン、アロナの三すくみなら、解けない問題なんて御座いませんわ!」
「そう…だな。私達はラプラスで願いを…いや、夢を叶えることが出来たのだ。なぁに、相手がラッセルでもない以上、それを越した怖いものなどないだろう。どれ、生徒の悩みの一つや二つ、簡単に解決してやろうじゃないか」
腕を組みながら、強者の笑みを浮かべるカロンに、ノエルはやる気満々の意気込みでフンスと鼻息を荒げる。
ラプラスの時とは違い、今は環境や立場も良い。
ユウカを始めとした心強い生徒達が味方になってくれている。
まだまだ知らない生徒達のことばかりだけど、数々の困難を前に打ち果たした自分達なら、今更此処で臆するような弱腰ではない。
『あ、あの〜…ノエル先生とカロン先生。やる気があるのはアロナも凄く感心してるんですけれど…少し問題がありまして…』
二人の空気に若干入りづらそうに、アロナは申し訳なさそうに手を挙げる。
「あら、どうしましたのアロナ?」
「問題…?」
『はい、アビドス高等学校に関して小耳に挟んだ情報なのですが、何やら街のど真ん中で道に迷って遭難した人が出たなんてことがあったそうです。流石に誇張しすぎだとは思うんですけれどね…あはは』
街中での遭難とはこれまた奇妙な噂だ。
まるで砂漠の迷宮に閉ざされ、途方に悩み暮れる遭難者。そんな古風めいた想像が掻き立てられる。
「街中で遭難か……。ふむ、森林ある山中ではなく人の住まう街の真ん中…というのに引っ掛かるな…」
「小さな子供が行方不明になった…とか、そういう迷子みたいな話ではないんですの?なんだか気味が悪いようにも思えますけれど…」
端から見れば都市伝説にも似た奇妙な怪談話。
アビドスの街がどういった全貌なのかも不明な以上、下手な考察は却って時間の無駄だろう。
況してや神秘に溢れた箱庭こそ、このキヴォトスという学園都市を指す。常に自分達の常識を覆すこの都市に、自分達の普通を照らすのは無駄なことなのかもしれないという思考に行き着いたカロンは、数秒黙り込んだ後……。
「……幸い、秘書のアロナもいる。ノエルだけならまだしも、大悪魔である私も着いてるのだ。怪しい場所にさえ触れなければ、余程のことでもない限り遭難でもしないだろう」
何気なく口に出すカロンの言葉は却ってフラグが立ってしまうことになるなど、本人どころかノエルでさえも気付かない。
『遭難もですけれども、学校が暴力組織に攻撃されてるなんて…ただ事ではなさそうですが…』
「それも…そう、ですわよね…」
アビドス学園の知名度がどのくらい高いかはキヴォトスの常識に照らさないと分からないが、転生異世界来訪の初日と言い、ゲヘナ学園の日常茶飯事なやり取りと言い、日常という行為がさも過激なテロリストや暴力沙汰だなと思ってしまう。こればかりは何百回そう言った場面に遭遇しても慣れないものだろう。
「……どの時代でも、人間は暴力や略奪という欲には抗えん生き物だ。武力や暴力を以てして、人は他者から略奪し搾取する。そうして多くの犠牲を経て手に入れた景色というのは、どんなものなのだろうな…?」
嘗て相棒として契約を交わし、用心棒として付き添っていた自分は、ラッセル・バロウズに武力と護身、そして殺すための力を授けた。市長になる為に、何度も手を汚した彼が悪魔の力に頼らずとも、目的のために凡ゆる障壁をねじ伏せ、略奪と搾取をしたあの男が微かに頭によぎる。
アイツが見た景色というのは、一体どんなものが映っていたのだろうと、ふと思い出してしまう。
「でも、遭難だなんて要するに気を付けていれば問題ないんですわよね?仮にそうだとしても、私達がどうにかする対処方法なんて現状ないですし…」
「………まあ、言われてみればそうだな。それにアビドス学校には生徒達も普通に過ごしているのだろう?なら深く心配するには値しないと思いたいが…念には念を込めて、注意して進んだ方が良いかもしれんのは確実だな」
どちらにしろ行ってみなければわからない。
なに、自分達はあのラッセル・バロウズを倒した二人一組の大悪魔でありながら、一人の慧眼の大悪魔と一人の被虐の魔女が世界に敵を回したのだ。
それに比べて、遭難するかもしれないという可能性の危惧は、ノエルには実感など湧かないのだろう。
然し、幾らか修羅場を潜り抜けた二人。
生徒の依頼など、一つや二つお茶の子さいさいだ――
「それでは善は急げですわ――明日、身をもって行きましょう!」
「私達にとって初めて先生と名乗る第一歩か…大悪魔の名に賭けて、失敗はしないさ」
――――――――――――――――――――――――
「幾ら何でもここ広すぎですわよ!!然も市民の方々も誰もいないだなんて、都市伝説どころか異世界迷宮ですわ!神隠しに遭ったのですわ!!」
そして現在に至るのである。
最初は長距離による問題かと考えていたのだが、却ってそれが甘かった。まさかアビドス自治区が広すぎる余り、遭難してしまうとは。
ラプラスという片田舎の小さな市からは考えられないほどの大規模な広さには、流石のカロンも誤算ではあったようだ。
「ゴーストシティ…アビドス学校が在ると聞き、自治区に足を踏み入れた迄は良いが…人が一人もいない、間抜けの空になっているとはな…」
「砂も所々被ってるようにも見えますし…やはり、カロンの言う私たちの世界に居た国をモチーフにしてるのかしら…砂の影響で、住民たちが何処かへ行ってしまったとか…」
「その線はあり得るかもな。自治区が広いのと、学校の自治区への通路に砂埃が溜まっている…。砂嵐に巻き込まれたのか、或いは元々砂漠地帯に住宅街を建築したのが間違いで、人にとっては住みにくい環境地域になったのか…」
矢張り、キヴォトスという神秘の箱は知的好奇心を唆られる。こういう時でさえも『何故』という疑問を追求したくなるのは、大悪魔カロンという知恵を司る悪魔の性なのだろう。
然し今は考察するにしても、現状の打開――つまりアビドス高等学校を探す所が大事なのである。
「まさかシャーレの先生を始めて最初に起きた事件が遭難だなんて…チェルクェッティとして…シャーレの先生を担う者としてあるまじき無様さですわ!!」
「黙れッ!今のお前の方がよっぽど無様だぞ!その哀れな醜態をユウカやワカモにも見せつけてやりたい位だ。良いからこんな所で駄々を捏ねずに起きろ!」
「もう歩くのも立つのも疲れてヘトヘトですもの…!!ここのところずっと歩きっぱなしですのよ!?私たちは此処で途方に暮れずに、アビドス学校や生徒達に逢えずに白骨化してしまうんですわぁぁ!」
「だったらお前を鎖で縛ってでも探し出してやる。お前はその無様さを晒しながらぎゃーぎゃー喚いてろッ…!」
「嫌ですわっ!嫌ですわっ!あ゛あぁぁぁ〜〜〜っ!!まさか両手足が戻ってからも鎖でグルグル巻きにされて引き摺られるなんて…!離して下さいましィ〜〜……!!ドレスコードが汚れてしまいますわよ!」
アビドス無人の住宅街、此処までギャーギャー騒いでるのはキヴォトスの中では初めての存在なのかもしれない。
ずるずる…と音を立てながらノエルを鎖で簀巻きにして地面に引き摺りながらせっせと足を進めるカロン。
両手足がなかった、まだ新たな契約を交わしてない頃のノエルはこうしてカロンの鎖に巻かれながら移動させられていたものだ。
やっとの思いで両手足が戻ってきたのに、再びこんな雑に荷物を引きずるような扱いをする日が来るなど誰が予想付くだろうか。
「はっ…そうですわ…!こうなったら、私がシッテムの箱に入って休息すれば良いんじゃないですの。カロンが持ち手であれば、なんてことありませんわ!」
「お前よく本人の目の前でいけしゃあしゃあと言えたな……」
自分だけ楽をしようと思考に至ったノエルの悪魔的な発想に、眉間に血管を浮かばせるカロン。
「然し参ったな…仮にコイツを箱の中に閉じ込めたとしても、現状打破をするには余りにも、何もかもが足りなさ過ぎる」
これもアロナの情報提供による不足があるのだが、元々アビドス学校に関してはマイナーな部分が多い。数多く存在する有名な学園と比べて、偶々アビドス自治区の情報が少なかったのかもしれない、という解釈をカロンは勝手にしている。でなければ、アロナに対して責め立ててしまうだろう。そしてそんな場面をノエルが見逃すはずもなく、余計にややこしくなってしまうのは目に見えている。
カロンも幾ら知恵を司る大悪魔とはいえど、土地勘がある訳ではない。ラプラス外から逃げ出し、嘗てリッパーとして立ち憚ったオスカーとの戦いでも、ラプラス市の外では土地に詳しくないからなるべく外に出たくないと言っていた程だ。
顎に指を当てながら、悩みもどかしそうに考えるも、中々良いアイディアが思い浮かばない。はてさて、どうすれば良いのやら…これ以上は三日も四日もと引き続き彷徨い遭難してしまうかもしれない。
連邦生徒会長が行方不明だと言うのに、引き続きシャーレの先生二名も行方不明となれば笑い話にもならないのだから。
――――――――――――――――――――――――
「ん…?」
ゴーストタウンのライディングロードに、喧騒とした声が聞こえてきた。
いつもは人気のない所なのに、この日だけは人の気配も見知らぬ声や人影が遠くから見解できる。
「あれは…?」
遠くからでも騒ぎを起こしてる人物が見えるのは、単純に視力が良いからだろう。仮に遠くて分からなくても、リュックの中に滞納している双眼鏡を使えば良いのだから、遠方確認は問題ない。
「ひょっとして…SNSで噂の…?でも、何でアビドス自治区に…?」
落ち着いた物静かな少女の台詞から察すると、アビドス自治区に足を踏み入れた人間は滅多にいないことが伺える。
疑問と共に頭上にクエスチョンマークを浮かべ、少し戸惑いはあったものの、再び自転車で漕ぎながら二人の方へと近づいて行く。
「大体カロンは私よりもずっと身体能力も高いんですし良いんじゃないですの!!私なんか疲れすぎてもうまともに足が動きませんのよ!?」
「往生際の悪い娘だ…!言っておくが、これでも前世と比べて結構弱くなった方なんだぞ…!SNSとやらで我々の存在が認知してる分、着実に強さも…」
「あの……」
「「ん?」」
カロンの胸柄を掴み捲したてるノエルと、眉間を歪ませて異論を唱えていたカロン二人の仲裁に立ち入るかのように、静まった声が耳を打つ。
春の季節だというのに首元にマフラーを巻きながら、此方を物珍しそうに自転車越しで見下ろす獣耳の少女が其処に居た。
青空を背景に、汗を流しながら神妙そうに此方を見続ける少女は見たことはない……が、ゴーストタウンと化したこの廃れた街で自転車に乗りながら人がいるということは、救いの一手となるのか、将又砂漠に迷いし者に、オアシスへ導く狼か――何にせよ、急死に一生を得たというのはこの事だ。
そして当然、この世界でいう生徒にはヘイローが存在しており、彼女にも矢張りと言った通り神秘的なヘイローが浮かび上がっている。
「えっと……その、何て言えば良いか分からないけれど…大丈夫?」
獣耳少女の生徒は、困惑と戸惑いを絵の具のように混ぜた表情を浮かべながら尋ねてきた。
端から見れば喧嘩とも読み取らる喧騒的な光景と、アビドス自治区では滅多に見ない外部の者、そしてSNSでの情報が確かなら、この二人は間違いなくシャーレの『先生』であることは間違い無いだろう。
放っておく訳にも行かなかったが、かと言ってこんなシチュエーションに遭遇する機会など滅多にないのだから何て声を掛ければ良いかも分からない。精一杯捻り出した結果、何とか声を振り絞り声を投げた結果である。
「わわっ!人ですわ!然も今度は猫耳の生徒…?猫ちゃんですの…?」
「ッ!!此処に人が…それも生徒、という事はお前はひょっとして…」
喧嘩していたからか、少女の存在に全く気が付かなかった二人組は、目を丸くする。
ノエルは救いとも読み取れる希望の眼差しを輝かせ、カロンは数日間人が居なかったこの自治区に初めて生徒と遭遇したことに早くも察する。
「んん…?猫…じゃないけど……取り敢えず二人共、シャーレの先生だよね?こんな誰も来ないアビドス自治区に足を踏み入れるなんて…珍しいこともあるんだね」
一年生後輩に一人、確かに猫を主張とした生徒ならいるけれど…と心の内に呟きながら、自転車から降りた少女はブレーキを掛ける。
「あら、本当にSNSの情報って凄いですわね…ユウカも仰ってましたけど、殆どの生徒達が私たちのことを知ってるんですもの」
「外の世界では悪い意味で目立っていたがな…」
ラプラスでは大悪魔と共にテロ行為を厭わない魔人として、キヴォトスでは二人の大悪魔が先生として数々の仕事を熟す。正反対的な立場に何処か笑いが込み上げてくるカロンは、先生という立場に今でも不思議にさえ感じてしまう。
「えっと、その口振りから察して…貴女はひょっとして、アビドス学校の生徒なんですの?」
「ん、自己紹介がまだだったね先生…私はアビドス対策委員会『砂狼シロコ』――シャーレの先生とこんな形で逢えるなんて思ってもなかったけど…これも運が良かったのかも」
アビドス対策委員会──砂狼シロコ(16)
「狼!?じゃあその獣耳も実は犬耳だったという訳ですのね…」
「お前猫に固執し過ぎてるだろ…私からすれば猫も犬も大して変わらん」
「何を言ってるんですの!全っっ然違いますわ!これだから動物の心も知れない悪魔は…」
「お前も忘れがちだが私と同じ一心を背負う悪魔だからな」
カロンは動物に対する執着を持ち合わせていない。
自分自身が動物の頭部をしているから、という曖昧な理由も含まれてるのかもしれないし、悪魔の視点からして犬や猫などは人間と大差のない生き物だと解釈しているのかもしれない。
どちらにせよ人間とほぼ同じ思考を持ち合わせてるノエルからすれば、カロンを始めた悪魔は動物に対する対応が冷酷だとみられても何ら可笑しくはないだろう。
「ん…?先生はカラスだから動物へのニュアンスが違うのかな…」
「私はカラスではない!!大悪魔だ!!」
カァーッ!烏の鳴き声が何処かで木霊した。
シロコからすればカロンも犬や猫と変わらない動物的な特徴を持った大人に見える。
というより、一般市民にチワワやブルドッグの顔をした市民もいるので、大して驚く印象はないのだが…。
「それより先生はどうして此処に…?ここはアビドス自治区で、滅多に人も訪れないのに…」
「嗚呼、その件について何ですけども…数日前にシロコと同じアビドス対策委員会の生徒からメッセージを送られたんですわ。えっと確か、アヤネっていう子から、物資の補給を……」
「そう言えば、アヤネがそんな事を言ってパソコンで依頼を頼んでたような……ん、そっか。それじゃあ久しぶりのお客様だね」
数日前――連邦生徒会長が失踪したという代行として、突如シャーレの先生がサンクトゥムタワーの権限を復活させたという話を小耳に挟んだことがある。
とは言っても、SNSで拡散された情報なので正確には知ったという表現が正しいだろう。
「えっと…一応確認したいんですけれど、ここってどうして人が誰もいないんですの?街が砂で覆われてますし…やっぱり環境的に暮らしにくいからとか…自然による災害が…とか?」
「ん、それもあるけど…ここは元々そういう所だったみたい。私がアビドス学校に編入した時からこうなってたよ――それに此処らへんは食べ物のある店さえとっくに無くなってるみたいだし…」
「そういう所だった……?」
アビドスの地理に詳しいシロコでさえ、遥か昔だと言わんばかりの台詞に、何処となくトリエラの村を思い出す。
恐らくこの砂埃に覆われた街は、嘗て栄えていた住宅街…人々も生活を営んでいたが、自然災害によってそれは叶わなくなり、軈て住みやすい環境を求めた先住民達は故郷を捨てた――それが形として留まっているのがアビドス自治区における現時点でのゴーストタウンと化した住宅街なのだろう。
「あ、食べ物といえば…先生達はお腹の方は大丈夫?此処は遭難するって噂も流れてるし、他の自治区から来た外部の人達は殆ど迷っちゃうから…」
「大悪魔である我々には飲み食いは必要ないからな。人間は適度な水分と食事が必要だと聞くが…貧相な身体になったとはいえ、大悪魔の身体で助かったぞ……」
「確かに必要ないですけれど…せめて喉は潤いたいですわね…何というか、此処のところ何も口に入れてないですし、魔人とはいえ昔のように生活していた名残りとして、何か口に入れないと気持ち悪いですわ…」
オマケに口の中に砂も入る始末。
足も疲れてクタクタで、心身共にボロボロなノエルにとっては我慢なんてしてる余裕もないのだろう。
「あっ、それなら…ちょっと待って」
ノエルの喉が渇いた子犬のような彼女の振る舞いに、シロコは学校の鞄から水筒を取り出す。
「はいこれ、エナジードリンク――ライディング用だけど、学校に戻るだけだし…余ったやつだから飲んでいいよ」
天の恵みでもするかのように、シロコはライディング用エナジードリンクをノエルに手渡す。
「エナジードリンク?って、何ですの?」
「んんん…ッ?ノエル先生、エナジードリンク知らないの…?」
きょとん、としたノエルの顔色に対して表情こそ変わらないものの、シロコは動揺している。
どうやらキヴォトス外部の人間…いや、大悪魔と名乗る先生は、自分たちの常識とは異なるようだ。
そしてシロコは知らない――目の前にいるノエル先生と呼ばれる彼女は、前世では脳内お花畑お嬢様にして、一般市民の知ってる世間の常識さえ知らないことを。
「私は人間の文化にある程度触れてるが…エナジードリンクなんて聞いたこともないな。こう、アレだろう。どうせジュースか何かの飲み物を指してるんじゃないか?」
知らないなりにも割と的を得ているカロンは流石と言ったところだ。シロコは軽く頷く。
「ん、とっても甘い飲み物。だけどエナジードリンクを知らないなんて…先生達がキヴォトス外部からやって来たという話は聞いていたけど、こうも私達の世界とじゃ違いがあるんだね…」
「初めて飲んでみますけれど…ひょっとしたら私達がいた世界でも、実は存在したの飲み物なのかもしれませんわね」
ジリアンと一緒にアイスクリームを買い食いするまで、チョコミントという存在を知らなかったのだから。
逆に自分が家で食べてたものを、ジリアンやスラッグも「???」と言葉を喉に詰まらせる程無知だったのだから、同じ世界で暮らす人間でも知識のずれがこうも生じるものがあるのかと、此処に来て殊更思い知らされる。
「では早速頂きますわねッ」
「あっ、待ってノエル先生…コップに移して…」
シロコの制止の言葉を聞いた時にはもう既に水筒に口を触れていたノエル。柔らかで薄いピンク色の唇が、口を付けていたであろうシロコの水筒に触れ、嗅いだことのない甘い香りのする液体を、喉に流していくように飲んでいく。
(…ッ。ま、まあ…ノエル先生なら、いっか……)
これが異性であれば間違いなく恋愛物語にある王道なシチュエーションなのだが、相手は自分と同性だ。羞恥心はあるものの、ノエル先生ならと何かしら納得した。
少し頬を赤らめるシロコ…その束の間ノエルに異変が起きた。
「ぶッ…!?げほっ!ごほっ!!」
「!?おい、どうしたノエル?!」
「ッ!?ノエル先生!大丈夫…?」
急に咳き込むノエルに、カロンは勿論シロコも身体をビクッと震えながら、ノエルの安否を確認する。
てっきりエナジードリンクが変な方向に喉に流れていったのではないか、そのむせこみかとシロコは考えたが…
「甘っっっま!!甘すぎですわ!!こ、これがエナジードリンク…??歯が溶けそうになりましたわよ…?!それにこれ、砂糖ドパドパに入ってませんこと!?血糖値大丈夫なんですのこれ!?」
というよりも、ノエルの口には絶妙的に合わなかったようだ。
多くの生徒が口にする栄養ドリンクも、ノエルからすればふんだんに砂糖を使ったジュースであり、何処か薬品的な味まで染み込むノエルにとって、ある種刺激的な味わいだろう。
「し、然も舌がビリビリしましたわ…!」
「エナジードリンクって炭酸が入ってるから…って、ノエル先生ひょっとして炭酸に弱かったりする?だとしたらなんか、ごめん…」
「炭酸は余り好んで飲みませんけれど…嗚呼、いえ…此方こそ御免なさい。折角頂いた飲み物なのにそんな反応して…た、確かに知らない飲み物とはいえ、申し訳ないですわ…」
とはいえ折角厚意として渡してくれた飲み物。それをこんな風に反応をしてしまうのは、チェルクェッティ家で育ったノエルからして相手に対する無礼であったと猛省し、頭を下げる。
出された飲み物や食事は、決して下品な対応をしてはならないと食事のマナーまで両親にこっぴどく、幼少期から叩きつけられたのに…此処に来てこんな無様な醜態を晒すとは…。
「ククク…ッ。流石の元お嬢様、大悪魔も飲み物にさえ敵わないと来たか。いやはや全くもって面白い光景だ」
人の不幸は蜜の味と言わんばかりに、高笑いするカロン。「じゃあ貴方も飲んでみなさいな」と言いたかったが、相手に貰った飲み物を他の者に試しに飲んでみろなんてのは失礼極まりないので、なんとか我慢して堪えた。
口内に濃厚な甘い味が広がる感触に陥りながらも、ノエルは丁寧に水筒をシロコに返却した。
「けど不思議だね。ノエル先生は私と殆ど変わらなさそうな見た目をしてるのに…シャーレの先生をやってるなんて」
「まあ…元々15歳という年齢でしたもの…大悪魔に寿命というものがないらしいですけど…」
「ん?じゃあノエル先生は100年先生きても、ノエルお婆ちゃんにはならないってこと?」
「ブッ…!」
「……カロン、貴方今なんで笑ったんですの?」
「ククク…ッ。すまん、つい……」
シロコの純粋な問いに何かしらツボったカロンは、何とか笑いを堪えてるようで、ノエルは軽蔑するように一瞥する。
「まあと言っても、大悪魔になったのは至極最近のことですし…」
「ゲヘナ学園や他の自治区にも角が生えてたり、尻尾や羽が生えてたりするけど、二人ともそう言った特徴がないから、しっくりこないけど…そうなんだ…」
「所でシロコ――話は変わるが…お前こそどうして此処に…?此処は元々誰もいない廃村的な場所なのだろう?お前が此処にいるということは…」
「アビドス学校の近くだから、登校する為にこの道を通ってただけだよ。学校に行こうとしたら、ノエル先生とカロン先生が取っ組み合うように喧嘩してたから」
「ちょっと、シロコ…そんな言い方すると誤解招きますわよ…」
「いや、コイツが疲れたというから鎖で身体を縛りながら探索しようと…」
「だからその発想自体可笑しいんですのよ!!幾ら悪魔になったからと言って痛みがないわけではないんですのよ!?もっとレディーを大切に敬って、丁寧にしてくれません!?なんで両手足取り戻したのに再び鎖で簀巻きにされながら、引きずられないといけませんの!?」
ムキーッ!!と怒号を飛ばす彼女に、呆れて思わず手を額に当てるカロン。二人のやり取りを見てシロコは内心「喧嘩するほど仲が良い」という考えに至った。
「そっか…二人共遭難者で、ずっと歩きっぱなしだったんだね…此処、公共交通機関もないし…辛うじて自転車やバイクでなら通行は可能だけど…二人共、乗り物では来なかったの?」
「乗ったことがないですわ。無免許ですし」
「自転車やバイクを使う必要性が私にはない。そしてバイクや自動車など私には理解し難い構造だ」
ゆとり世代の箱入り娘に、機械音痴のカロンにバイクや自動車など無理がある。
なるほど、それなら仕方がない。
「じゃあ案内するね。けどどうしよう…ノエル先生は動かないんだっけ…オマケにこれ、一人用だし…」
ロードバイクを止めて悩み考えるシロコ。
矢張り此処はシッテムの箱に入り、カロンがシロコと付き添いで移動した方が賢明だと思うのだが…とノエルは思考に至る。
だが何故かカロンがそれを余り良しとしない。
「ねぇカロン、どうしてそこまでシッテムの箱を使うことを躊躇うんですの?」
「…一応、念の為だ。もしもという重大な事態が起こり得ない限り、使用はしたくないんだ。これほど高次元的な技術力を誇るオーパーツ…無償でその力が働いてるというのも考え難い」
テストとして無理の範囲がない程度に、アロナとの接触を試みた。
単純なる移動方式、シッテムの箱によるシステム――オーパーツの異変は全く感じられないし、特にこれと言って問題が起きたことはなかった。カロンは安全だという考えに至ったが、長時間扱えるとも限らないという発想も考えた。
なるべく此処ぞという時に使うべきであり、目に見えないだけでアロナにも負担があるとも考えたカロンの推測はこの先のことを考慮しての発言だった。
「それに数日間この自治区で彷徨い遭難してたんだ。大体充電はあるのか?」
「………半分以上減ってますわね…」
結論、黙ってアビドス自治区まで外を運ぶしかない。
然し足が限界まで達してるノエル――こうなれば核なる上は…。
「どうしよっか…ロードバイクよりも自転車とかなら二人乗りでも良いんだけど…ううん、でもカロン先生もいるし…」
シロコからすれば、ノエルとカロンが何の話をしているのか不明ではあるものの、様子から察して現状的にノエルが足を運ぶのが難しいという解釈は間違いではないだろう。
それに仮にノエル先生を自転車に乗せることが出来たとしても、代わりにカロン先生はどうすれば良いのだろう。
「……ッ!いや、待てよ…方法はある――」
「「??」」
シッテムの箱を使わず、シロコのロードバイクにも乗らず、アビドス自治区に行ける究極の解を導き出したカロンに、シロコとノエルは首を傾げる。
――――――――――――――――――――――――
「カロン先生、凄い…まさかそんな事が出来るなんて…どんなトリックなのそれ?」
「この世界で言う神秘とでも考えてくれ…ッ!」
「ちょちょちょっ!!カロン!喋ってないでこれいつになったら着くんですのよおぉぉォ!!?」
シロコはロードバイクを漕ぎながら、思わず感想を口に溢す。
悠々と住宅街の屋根を転々と移りながらノエルを鎖で簀巻きに、片腕で抱きかかえている。
彼女の悲鳴に似た絶叫が、無人のアビドス自治区に轟く。
カロンが召喚した悪魔の鎖――ノエルを簀巻きにしながら、電柱やらアンテナ、鎖で捕まりながらシロコの移動速度にも負けない移動手段で互角に渡り合いながら、目的地へと赴いていく。
「仕方ないだろう…それに私達はシッテムの箱がない時でも、こうやって二人で苦難を脱してきたんだ…!これくらいで弱音を吐いてどうするッ!」
「その所為でとんでもないトラウマ植えつけられてることを忘れてるんですの!?!」
市長官邸侵入時、廃製鉄所でのクレーン、警察部隊から逃げる際など、数多くの死にかけと苦痛の思い出したくもないトラウマが甦ってくる。
「大体手を離さなければどうってことない。何ならシロコの体に鎖でリードとして巻きつけて、ロードバイクで引き摺られながら移動するよりかは断然マシだろ?」
「貴方、鬼畜って言葉をご存知かしら…?」
これじゃあ自分が首輪に繋がれた犬ではないか。
引廻しの死刑をブラックジョークで言うのだから、少しはシャーレの先生になってマトモになったかと思いきや、中身は悪魔のまま何も変わってないことにノエルは殺意と怒気の声を孕ませる。
「あっ、先生…そろそろ……」
「ッ!おお、アレがアビドス学校か…!!ほれ、見ろノエル。アレがシロコ達が通うアビドス自治区の本館らしいぞ」
「真後ろに捕まってるから見えませんわよ!!ううぅぅ〜〜…!どうして私がこんな目に…!そもそも私も悪魔なのに身体能力が生前と変わってないと言う点が何かしら悪意を感じますわよ!」
「ん、アレは本館とは違う別館。でもアソコが私たちが利用してる学校だから、私たちにとって本館という意味では間違ってはないかも…」
「そうなのか?私にはそもそもの話、学校自体よく分からん。結局、チナツが所属してたゲヘナの本校も何が何やら…だったしな」
「いつまで話してるんですの!?早く下ろして下さいましッ?!」
「此処で手を離したら頭をぶつけてお前も死ぬかもしれないんだが…」
「………」
「さて、遭難という窮地から何とか脱する事ができた…遅くなったが、シャーレの仕事…始めようじゃないか…」
砂漠の迷宮から現れた救いの狼に導かれたノエルとカロンは、望みの聖地
何かとアクシデントもあり、遭難してしまったものの、これ以上無様な醜態を晒すわけにもいかないだろう。
シロコに導かれたノエルとカロンはこうして、当初の予定では少々狂わされたものの、漸くを以ってシャーレの名に賭けて、連邦生徒会長の命に従い、大悪魔の威厳として、生徒達の願いを叶えようじゃないか。
被虐と赤眼の大悪魔
season1――
多くのブルアカ(漫画やイラスト)絵師さん観てたりすると、肉食系シロコがノエル先生を襲うこと考えると、冗談抜きで百合の世界になるかもしれない。
シロコ「ん、先生を導いたのは私」