被虐と赤眼の教導者   作:トラソティス

14 / 19

待って、今回の更新で新しいゲマトリア出て来たけどこれ恐らく元ネタは地下労働者か…?
攻略法、ゲーム、ボードゲーム…六の目(賽と同じ)、そして命と死…追放……プレイヤー……

やばい、間違いなくアイツもノエルとカロンの敵対者になってるわこれ…。今後とも作者なりに考察を捗り、他の先生達の反応や考察を拝見しながらやっていきたいと思います。
敵キャラやゲマトリアが凄い好きなので、こういうの見ると昂って描きたくなるじゃん…!!
100話まで更新して下さい定期。

#ノエルちゃん先生#猫とカラス#カタカタヘルメット団#トンデモゴリラ#発育の暴力


story3『大人って凄い!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 こうしてヘルメット団を迎撃して数分後――跡形もなく、武器も兵器も、何もかも木っ端微塵に破壊され、撤退の余儀なく追い詰められたヘルメット団は、霧散するかのように郊外エリアへと逃げていった。

 最後に「覚えてやがれェ !」という負け犬のセリフを残して。

 

『カタカタヘルメット団、郊外エリアまでの撤退を確認致しました!私達の勝利です!』

 

 オペレーターのアヤネが通信で伝えると、緊迫とした戦場から一変し空気が緩む様に息を吐く。

 

「わあ!勝ちましたぁ!」

「あはは、どうよ!思い知ったかヘルメット団め!」

「いやぁ、まさかヘルメット団に勝っちゃうだなんて思わなかったなぁ」

 

 ノノミとセリカが歓喜とした勝利の声を張り上げる。

 ホシノは気の抜けた声こそ上げるものの、それでも被害を最小限に抑えた勝利というのは中々ないものだ。

 

「ん、ヘルメット団も追い払ったことだし…一旦教室に戻ろう」

 

 

 ―――――――――――――――――――――――――――

 

 ホシノ達が教室に戻ると、生徒達を出迎える様にノエルとカロン、アヤネは教室の中で待機していた。

 真っ先に、というより同時にアヤネとノエルが満面な笑みで全員の帰りを出向いてくれた。

 

「お帰りなさい皆さん!お疲れ様です!」

「皆んなの戦い、凄かったですわ!」

 

 真っ先に、というより同時にアヤネとノエルが満面な笑みで全員の帰りを出向いてくれた。

 

「全員とも己の役割分担を活かし、武器の性能や地の利を活かした戦法…全員が申し分ない戦いだった。被害も最小限に留まり、私達の指示の下よく戦ってくれた」

 

 大悪魔もお墨付きの戦績。

 カロンも武器の扱いによる知識は長けているからか、全員の手慣れた動作や、aim能力による的確な射撃と標準に賞賛を讃える。

 ユウカ達と言いヒナと言い、子供にしてこれほど凄まじい戦闘能力はキヴォトス外部…ラプラスや他の国でもそうはいない。

 それこそ軍人やOCTなどで厳しい訓練でも積まない限り、その領域には達しないだろう。

 

「ううん、ノエル先生とカロン先生の指示が凄く良かった。カロン先生は不思議な能力で敵の重火器を封じてくれるし、ノエル先生も隠れた伏兵や敵の数に、指示を送ってくれたから…私たちが普段戦う時とは違った」

 

「え、えへへ……そんな、照れますわよぉ…♪」

 

「わぁ、ノエルちゃん先生顔真っ赤になってますよ〜⭐︎とっても可愛いですぅ♪」

 

「の、ノエルちゃん先生!?」

 

 ノノミの愛称にビックリするノエル。

 ――ただでさえ他人からは「チェルクェッティさん」や「ノエル」などの呼び方はあった。パイソンからは「ノエル嬢」と呼ばれることはあったけども。今までちゃん付けで名前を呼ぶ方は誰もいな…

 

 

『あらァ、ノエルちゃん♡アタシちゃんと最後通告したわよね?それなのにな〜んでこんな所にいるのかしらァ?』

 

 いた、一人。

 オカマと言う天然記念物が――

 

(……いえ、忘れましょう。これ以上考えてしまうのは、よしましょう…)

 

 忌まわしき物を封印する様に、記憶をそっと蓋で閉めた。

 これ以上ノノミと話している最中にあのトンデモゴリラを思い出すのは絶対に嫌だ。

 

「これが大人の力…凄い」

 

「大人だからかどうかは不明だが、私は人間の観察を得意とする…なに、敵の配置に的確な処理、一人一人の動向を見極めるなど朝飯前さ」

 

「人間の観察が趣味って…ちょっと気持ち悪いわよ先生」

 

「ムォッふぉん!!直ぐに荒ぶり怒り出す猫娘に言われたくはないなッ!大体お前も指示があったから良かったものの、戦場で前にでしゃばり過ぎだ!感情的になる生娘が…ッ!」

 

「はぁ!?何ですってェ !?別に勝ったんだから良いじゃない!それに遮蔽物だってアイツら壊してくるし仕方ないじゃない…っ!」

 

 猫と烏が言い争っていた。

 そういえばカロンは猫に嫌われてると聞く。ひょっとしたらセリカとしては自然とカロンに対して嫌味というか、嫌悪感というか、露骨に喧嘩っぽい感情を向けやすくなるのかもしれないなとノエルは思った。

 

「は〜い、喧嘩はそこまでですっ⭐︎早くもセリカちゃんがカロン先生と仲良くなれて良かったですね♡」

 

「「何処が(だ)(よ)!!」」

 

 此処まで息が合うと、確かに喧嘩するほど仲が良いと捉えれるかもしれない。

 

「今まで寂しかったんだねシロコちゃんにセリカちゃん。カロンパパが帰ってきてくれたお陰で、ママはぐっすり眠れまちゅ」

 

「ぶふッ!」

 

「おいノエル、何故笑った?というか何だカロンパパって!巫山戯るな!」

 

「いえ、つい…ッ。さっきのお返し、ですわよ…ッ。…ぶふッ。カロンパパっ」

 

「こいつ……ッ」

 

 ホシノの揶揄いに、ツボに入ったノエルは腹を抱えながら笑いを堪えるのに必死な様子だ。

 

「何言ってんのよ!変な冗談辞めてってば!てか委員長はその辺しょっちゅう寝てるでしょ!?」

 

「あはは…まあ冗談はそこまでにして…。遅くなりましたがあらためて、ご挨拶と自己紹介をさせて頂きますねッ」

 

 セリカの突っ込みに苦笑を浮かべるアヤネは、流れる様に場を仕切り纏めていく。

 真面目且つまともな生徒にオペレーター担当…だからこそ、情報の整理や場を仕切ることに長けているのが安易に窺える。

 

「私たちはアビドス対策委員会です。そして私は委員会の書記とオペレーターを担当している一年、奥空アヤネです」

 

(何だか結構親しみやすそうですわね…。ユウカやチナツとはまた違った、真面目さというか……オペレーターっていうのも、凄いですけれども…)

 

 学校の生徒でありながら、委員会でオペレーター担当というのはキヴォトスでしか聞かない用語だろう。端から見れば優等生にして模範とも呼べるべき、独特な癖のない優しい生徒だと見解する。

 

「同じくアビドス対策委員会の一年、黒見セリカ――彼女は会計担当を務めています」

 

「どうも」

 

(……セリカ。この子は…間違いなく猫ちゃんですわよね?猫っぽいというか…猫耳、ぴょこぴょこしてる…とっても可愛いですわね。猫じゃらしとかあげたら戯れるのかしら…?)

 

 シロコに続く二人目の獣耳少女。

 ツンケンな部分が色濃く出てる素直になれない子…カロンも話していた様に感情的な起伏が激しいため、言い争いに発展し易い子なのだろう。

 

「そして二年の十六夜ノノミ先輩は一般委員、砂狼シロコ先輩は行動班長です」

 

「改めてノエル先生とカロン先生、宜しくお願いしますね!」

 

「ん、ノエル先生とカロン先生は私が導いた」

 

(………でっかい、ですわ……)

 

 ノノミのとある部分を数秒釘付けになった後、もう敢えてなにも振り返らなかった。

 十六夜ノノミと砂狼シロコ。

 てっきりノノミが三年生でホシノが一年生かと想像していたのだが、どうやら違ったようだ。

 人は見かけによらずとは正にこの事だろう。自分もこんな身なりで大悪魔なのだから、人の事は言えないのだが…。

 

「そして最後に三年生の副生徒会長――小鳥遊ホシノ先輩です」

 

「うへェ〜っ。まぁ宜しくね〜?」

 

 掴みどころのないホシノの適当な挨拶。

 一見怠け者の様に見える彼女も、カロンからの視点では「常に本心を隠している」と踏み込んでいる。

 それもその筈――幾ら戦力が高くても弾薬が無ければ相手がカタカタヘルメット団とはいえど、銃を持った相手に対抗するのは無傷では済まないだろう。

 だから彼女達も弾薬が尽きてない、寧ろ万全フルスロットルで挑んできたアビドスの生徒達に手も足も出なかったのだから。

 だからこそ、支援物資の依頼を出したアヤネは勿論、ノノミもセリカも嬉しかったんだろう。

 シロコも顔には出してないものの、台詞的には嬉しそうに感じていたし、恩義も感じている。

 

(小鳥遊ホシノ――お前は、何を隠しているのだ?)

 

 小鳥遊ホシノだけは違った。

 彼女と邂逅してから理解したのは、彼女があり得る人物像は二種に限る。

 一つはノエルの様に本当の意味で頭お花畑のゆとり世代に生きる、危機感も全くないおどけた生徒。

 もう一つは本心や能力を隠し掴みどころのない生徒…これが濃厚な説である。

 カロンがそれを感じ取ったのは、ホシノと出会った瞬間だ。

 

 何故支援物資を届けにきたにも関わらず、彼女は何の反応も示さなかったのか。

 願いを叶えた多くの人間は、一時的に感情が昂る。

 況してやシャーレの先生というのは絶対的で高位的な地位を持ち、多くの生徒からも親しまれている。

 当然ホシノとして「どうでも良いし興味ない」で済む、好奇心のない生徒という考え方も可能だ。

 

 だが先ほどの戦闘ではまだまだ余裕があるからか、戦闘としては砂狼シロコより立ち位置も振る舞いも優れていた。

 カロンが指示を出す前に既に己のやるべき行動を理解していた。

 本当に頼りのない副生徒会長が、戦闘であそこまでの鬼才を発揮する事ができるか?

 

 それほどのポテンシャルと才能が有るにも関わらず、弾薬や補充を手にすることができるのに、彼女の反応だけ明らかに違った。

 

 考え過ぎかもしれない。

 キヴォトスに訪れてからは、生徒達の友好的な立ち位置に、差し向ける感情に、感覚が麻痺していたのかもしれない。

 だが「助けてください」というアヤネの依頼…それは暴力団組織の脅迫に、学校存亡の危機を物語っていた。

 そんな状況下で大きかれ小さかれど、先生に対して何の感情を差し向けないというのは可笑しい。

 恩を何も感じないのか?とは言わない――然し人間の多くが感情で動いている。

 逆に何の感情もないと言えば、隠している可能性もあるとカロンは踏まえた。

 況してや人間の観察に得意とする大悪魔の眼は誤魔化せるはずもなく…。

 寧ろ此方に警戒心さえ抱いていた気もする。

 そんな彼女が警戒心を抱き、本心を隠す…ならばそれは一体、何のために???

 

 何より小鳥遊ホシノに抱くこの既視感は――嘗ての相棒を沸騰とさせていた。

 

(やれやれ…清算はしたつもりでも、つい思い出してしまうのは私の悪い癖か…)

 

 嘗て苦楽を共にした相棒も、市長の座についてから掴みどころがなかった。

 当時は悪魔の様な人間に育ったと、感情論で解釈していたが…今思えばバロウズもあの頃から既に隠していたのだ。

 己の野望と、そして本心を――ラプラスの深淵を。

 だから嘗て相棒としてラプラスを奔走した自分を、秘書として支えてきたシビラも、対等な立ち位置として渡り合っていたジーノも、他にも会の者達も、全員消してきた。

 

 だからこそ理解できる――小鳥遊ホシノは何かを隠しているのだと。

 

(それとも……こいつ自身、何かが起きたか…やれやれ、人間の観察というものは飽きない。我々の想像を超え、理解も難しい神秘とも呼べる概念…だからこそ、面白い)

 

 もしこれが悪い方向に傾く場合であればそうも言ってはいられない。

 然し敵意もなく、況してや此方に支障が出ないのであれば、観察して彼女の動向を探り安全を確認することも悪い話ではない。

 

「ご覧になった通り、我が校は現在危険に晒されています。その為『シャーレ』に支援を要請し、先生がいらしてくれたことでその危機を乗り越えました。改めて、本当に感謝しても仕切れません…!もし先生達が来なかったら、さっきの人達に学校を乗っ取られてしまってたかもしれませんし…」

 

「その…ちょっと質問宜しくて?アヤネ――その、私たちも貴方の手紙を読んでから直ぐに向かったものですし、アビドスの情報も詳しく記載されてなかったので何とも言えないんですけれど…対策委員会ってなんですの?」

 

「そうですよね、ご説明します。対策委員会とは、このアビドスを蘇らせる為に有志が集った部活です――」

 

 新規住民や生徒の呼び込み、砂嵐による砂漠化対策、地域活性活動、ボランティア等、数々の事業を下にアビドスを復興させようとしていた。

 確かに生徒が少なすぎる上に、問題視されている砂漠化現象、住民不在は学校存亡に携わる無視できない問題だろう。

 

「ふと思ったのだが…副生徒会長が存在するのなら、この部活の権利を担う生徒会長が居てもおかしくないだろう。五人…というのは、本当にこのメンバーだけで全てなのか?」

 

 その言葉に、全員は「あっ…」と言葉を詰まらせる。

 確かにそれはノエルも思ったことだ――然しそれが雰囲気を悪くしたということにカロンも予想外だ。

 

「…すまん。忘れろ」

 

「ううん、へいき〜。そうだね、カロン先生とノエル先生は分からなかったもんね。大丈夫、生徒会長は…」

「その点については後でお話ししますね先生⭐︎」

 

 ホシノの前にノノミが立つ。するとノノミはカロン以外誰にも聞こえない声の量で囁いた。

 

「すみませんカロン先生…このことは私から後で説明しても宜しいでしょうか?」

 

「いや済まない。此方こそ無知とはいえ、気分を害したのなら謝罪しよう…」

 

「そんなぁ〜気にしなくて良いのにノノミちゃ〜んっ」

 

「でも私やアヤネちゃんもその事に関しては詳しくないのよねェ…」

 

 ノノミは普段は能天気というか、常に笑顔が絶えなくふわりとした性格だが、今回生徒会長の名前が出てきた途端に雰囲気が少しだけ変わった辺り、余り良い話ではないのだろう。

 かと言いながらもセリカもアヤネも知らないのだから、触れるべき話題ではないのか?と思考が過る。

 

「ま、まあ!それよりも…弾薬や補充品も充分になりましたし!これで一件落着って感じかしら…」

 

「あっ!そうですね…!支援物資も補給品も申し分ない量を手に入れましたし、後は部活に専念ができ…」

 

「いや待て――まだ解決には至ってないだろう」

 

 ノエルが話題を振り替えると、アヤネも彼女の意図を汲み取り話を変える。

 補給品も支援物資も手に入れた以上、後は自分達で何とかできる。

 そう思った矢先にカロンが横槍を入れる様に口を開く。

 

「カロン先生?」

 

 首を傾げるノノミに、カロンは机に手を置きながら語り出す。

 

「ここ一週間、カタカタヘルメット団はどの位の頻度で襲撃を企てた?」

 

「へ?あっ、えっと待ってくださいね…一週間に2、多くて3、4回は攻めてきてますね…。依頼を出してからは一日目で済みましたし、その時は終わりかと思ってましたけど…」

 

 だからこそシロコが遭難から導いてくれたお陰で、何とか補給品や弾薬も手に入り、活動することが出来るのだと安心した。

 

「ふむ…ではカタカタヘルメット団が初めて襲撃してきたからどれ位経つ?」

 

「確か…連邦生徒会長が失踪する前から…二ヶ月以上かしら?」

 

「ん、他にも有象無象の半グレ集団からも狙われてたりもした」

 

「では何故この学校を狙っている?」

 

「え?それは私達が廃校寸前なのを良いことに…」

 

「それだけが理由だとは限らんだろう。まあ、奴らが浅はか故に本当に思い立った行動をしていたのなら、目を瞑りたくなるが……逆に言えば暴力組織にはある程度の人員が所属し、その数だけ弾薬等を所持している訳だ――となれば、だ。奴らを迎撃したところで数日もすれば攻めに

 来る可能性もある。下手すれば増員を呼んで総攻撃を仕掛けてくる可能性も否定できないだろう。それに一週間多くて4回も此方に攻めに来る頻度だ、向こうの弾薬もまだまだ余裕があると見て間違い無いだろう。此方がただ待機していれば、奴らは数日を以てして再び攻めに来る可能性は高いな。奴らが企てた兵糧攻めも我々が来たことで破綻した以上、より一層厳しく手荒い手段を用いてもおかしくは無い」

 

「………」

 

 全員が息を呑んだ。

 指示も抜群で、人間観察を得意とするカロンが、カタカタヘルメット団を退けただけでこうも考察を捗ってくれている。

 ノエルはこの感覚に懐かしささえ思い出し、頼りになる相棒につい頬が緩む。

 そうだ…この感覚…スラム街に続き記念式典襲撃と言い、この感覚と雰囲気…。

 

「このまま黙ってやられてるだけでは悔しく無いか?お前達も散々、自分の学校を攻められた上に、一歩遅ければ学校を占領されていたのだからな」

 

 カロンの瞳は三日月の様に歪み、ニヤリと笑みを浮かべる。

 

「カロン先生…それって…」

 

「復讐だよアヤネ――お前達を襲ったカタカタヘルメット団。ソイツらは再び攻めに来る。支援物資を提供した所でそれは何の問題解決にもならん…正確には『現状の困難を一時的に脱退した』状態に過ぎないのだ。

 根本的な解決をするには、その元凶たる根元を断ち切るに限る。そもそも弾薬も補給品も無限にある訳でもなければ、そこそこ価値がある。貴重な資源を消費するのはお前達にとっても望ましく無い結果だと思わんか?」

 

 連邦捜査部シャーレの倉庫に頼まれた支援と補給品を提供し、かと言い生徒達の弾薬などもクラフトチェンバーで製造可能とは言えど、必ず代償は存在する。

 可能な限り無駄な費用は払いたく無い…。それはもし此処にユウカが居たらカロンの思考に大きく賛成するだろう。

 

「うへぇ……カロン先生ってば、そこまで考えてたなんて凄いなぁ〜…」

 

(おじさんが密かに計画していたことを、此処にきて直ぐ思いつくなんて…やっぱりシャーレの先生としての噂も、その実力も申し分ない訳だねぇ)

 

 小鳥遊ホシノは悟った。

 口に出した言葉は表面上取り繕っているが、内心は尚カロンの存在を大きく駆り立てる。

 全貌を見据え、盤上を見渡し、根本的な原因を深く見ている。

 これだけ頭が回る先生が味方であれば頼もしい…尤も、敵に回すと厄介この上ない。

 

「確かに……アイツらが先に仕掛けたんだもの…そう考えるとスっごく腹が立ってきた…ッ!!」

 

 セリカは義憤を燃やし、これまで仕打ちを受けたカタカタヘルメット団に憎悪を燃やす。

 

「ん、改めて思ったけどカロン先生頼もしい。確かに、アイツら予想外って反応だったし…今まで守りを固めてた分、攻めた時の反動も大きいと思う。カロン先生って何者なの?明らかに慣れてる様な感じだけど…こういうのが得意だったりするの?」

 

「ビアンコ、ロッソファミリーを全滅させたことがある」

 

「ビア…なにそれ?」

 

「マフィアだよ――暴力組織。契約ながらの都合でな…」

 

「いやいや、どういう都合でマフィアを全滅させれるのよ…」

 

 契約、ね。

 カロンの台詞に一瞬だけ耳をピクッと反応させたホシノは、再び脳裏に浮かぶアイツを思い出した。

 キヴォトス外部からやってきた先生に、キヴォトス外部からやってきた正体不明の男……その点、この二人は共通点もある。

 特に大きいのが『契約』だ。

 あの男といいカロン先生と言い…ヤケに契約に拘ってるように見える。

 

「そこで問題なのはカタカタヘルメット団の拠点だな。奴らも必ず装備や部品を整えて攻めに来るだろう。20人以上も居たんだ。人の出入りもあると考えれば奴らも目立つ。大きな動きがあれば尚のこと勘付き易い――いや、広大なアビドス自治区では難しいか?どっちにしろまずは奴の拠点を探し出すのが有効だが…アヤネ、奴らの位置情報は把握しているか?」

 

「え?あ、はい!郊外エリアに逃げてから……情報確認として位置情報は此処から30km離れた地区に拠点があります!」

 

「遠いな…今からでもいけるか?お前達の戦闘も申し分ない上に、今此処で反撃を喰らうのは、奴らにとっても体勢を整える現状、相当な痛手になるはずだ」

 

「此処から30km…ん、問題ない。それにカロン先生のお墨付きなら尚のこと」

 

「……そうか」

 

 頼もしさはあるものの、30kmという長距離を余裕のように感じるこの世界の住民の感覚には矢張り慣れない。

 

「わ、私にはやるべきことってあるかしら…?」

 

「そうだな…弾薬はまだ余裕はあるか?在庫の確認を頼みたい。それが終わればお前はゆっくり休め――足の方もまだ疲れが取れないんだろう?」

 

「でもさぁ、良いのぉ〜?カロン先生」

 

「?何がだ?」

 

「カロン先生にとっての仕事内容は物資の援助…それだけでも充分助けられてるのに、こんなのわざわざ面倒な仕事を受けにきてる様なもんだよ〜?」

 

 そう、本来なら支援物資の援助だけでこの話は終わりのはずだ。

 態々遠路遥々やって来て、シャーレには溜まった仕事もあるかもしれないし、まだ見ぬ事件を解決しなくてはならない。

 だから弾薬と補給品さえ補充すれば、これ以上介入する必要性はないはずだ。

 

「ククク…なんだ?私達が手を貸すことに不満か?」

 

「うへぇ〜〜嫌だなぁ、そんなんじゃないよぉ?ただこれ以上出ても先生に迷惑かけるんじゃないのかなぁって。変なふうに聞こえたのなら謝るよ?」

 

「フン…簡単だ。私は大悪魔(先生)でありお前達は契約者(生徒)だ。それに引き受けた願いをどう解釈し、どう引き受けて、どう叶えるかは私とノエルが決める。それが先生と生徒達が紡ぐ契約という鎖――大悪魔は傲慢なものでな、そういうものだと理解してくれ」

 

 カロンのスタンスは昔から変わらない。

 二人で話し合った様に、生徒達の願いをどう叶えるかは自分達で判断して決めるのだと。

 ホシノは暫し黙り込む。

 ――なるほどね、似てる大人でも本質は違うんだ。

 何処かしら、カロンに対する価値観が少しだけ変わった気がする。

 

「それに支援物資を提供した所で奴らが邪魔をするならば、私達が繋ぐ契約を邪魔する敵でもある。『支援物資の提供』が願いであり契約である以上、それを邪魔されては願いを叶えたとも言えん。ならば物資の提供を外部から邪魔されない様、ケアをするのもまた悪魔としての務めだな」

 

『カタカタヘルメット団の組織を壊滅させる』こともまた、『支援物資の提供』による願いの本質として作用される。

 

「ああ、確かに!そういえば契約にはオプションとかも付け加えれますものね」

 

「お前に至ってはこれまでにないほどだぞ……その分コイツらの願いは可愛いものだ。それに代償はあくまで連邦生徒会長による契約を則った上での契約だからな」

 

 これでも充分に優しい方だろう。

 大悪魔の契約は大かれ小さかれ融通は効く――契約をキャンセルさせることも、オプションを付け加えることも可能だ。

 それに支援物資の提供も、仮に連邦生徒会長に則った契約ではなくとも、大した代償にもならなさそうだが…。

 

「お前達、異論はあるか?もし何かしら都合が悪ければ日時を改める事も可能だが……」

 

「うへぇ、おじさんは元より賛成だよぉ〜?お昼寝の邪魔ばかりされちゃおちおち安心してぐっすり眠れないもんね〜……」

 

「どんだけ寝たいのよホシノ先輩は!?私もカロン先生に賛成ッ!アイツらの目に物を見せてやるわ!」

 

「わあ〜いっ!今度は私達が攻める番ですね⭐︎お掃除しちゃいますよぉ〜⭐︎」

 

「ん、的確な近道ルート確保。準備も弾薬も手入れも問題なし。此方は準備OKだよ」

 

「私も全力で皆様のサポートを致します!それに、カタカタヘルメット団の拠点が分かれば、何か情報が掴めるかもしれませんし…」

 

 それに掘り出し物もある可能性もある。

 盗品であればシャーレやヴァルキューレ学校に正式な届け物として提出すればお金も稼げるし、弾薬や補給品もあれば更に補充可能。

 どうやら全員とも、異論はなさそうだ。

 

「クックック…頼もしい限りだ。それでは出動しよう、反撃開始だ――!!」

 

 

 

 

 ―――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「アイツら、弾薬の補充は尽きてたと思ってたのに…痛い目に遭ったもんだ…!!」

「返り討ちに逢うなんてザマァないったらありゃしない…どうする?このままじゃ仕事の報酬が手に入らないよ…?」

「もうこの一週間で解決させるって言っちゃったし…」

 

 カタカタヘルメット団拠点――廃墟となったアビドス自治区の使われてない郊外エリアで息を潜めている数人が、座り込んだまま駄弁っていた。

 幸いこの郊外エリアには対して脅威となる生徒は存在しないし、ヴァルキューレ警察もこんな広大な自治区に足を踏み入れてるとは思えない。

 

「取り敢えず増援の確保と、この前廃墟や違う自治区から奪った戦車投入する?」

「いいなそれ!問題はいつ攻めようか?」

「万全な状態で行かないとまた返り討ちに逢うし、弾薬と補給品…見た感じ余裕がありそうな気もしたけど…」

 

 問題は何故、アビドスの連中が戦えたのか。

 然も今回に関してはいつもと違った戦法で、自分達に的確な急所や弱点を突かれたり、相手の連携が読め込めない程だった。

 相手が今まで本気を出していなかったからか?

 いや、そんな筈はない。

 アビドスは最早連邦捜査部から見捨てられた存在の自治区であり、あんな所に手を貸す者などが存在するはずもなく――……

 

 

 ボガアァアァンッッ――!!

 

 

「――ッ!?」

 

 衝撃と振動で空間が震える爆発音。

 アジト正面からの激しい衝撃が伝わり、扉は吹き飛ばされる。

 

「何だ!?ま、まさか…ッ!?」

 

「ん、そのまさか――」

 

 土煙と硝煙の香りが鼻腔をつんざく。

 胡坐を掻いてたヘルメット団の一員も、装備の点検や補充品の確認を行っていた者、盗品をトラックから下ろしてた連中も、全員が音のした方角に集中する。

 銃口を構えるヘルメット団は、正面出口に釘付けになるも、煙で標準が合わない。そんな困惑として抵抗しない連中に、再び手榴弾が数個投げられる。

 

 爆音と爆発が衝撃を生み、破壊の赴くままに吹き飛ばされるヘルメット団達。

 

「何が…ッ」

 

「は〜いダメだよ余所見しちゃあ」

 

「へっ…?!」

 

 死角から声が投げられたと同時に、鼓膜が揺らぐ発砲音が木霊する。

 正面出口とは程遠い場所から、殺気も気配も完全に押し殺してたホシノが、既に敵の陣地に入っていた。

 

「なぁ!?こいつ、まさか避難口に…ってことは!?」

 

「全弾発射ぁ〜っ⭐︎」

 

 激しい連射撃、火花散る銃弾が、次々とヘルメット団達を成すすべなく薙ぎ倒していく。

 まだ意識のあるものが抵抗を試みるも、今度は別の狙撃場所から弾かれる。

 

「さあ覚悟なさい!全員とも此処でお終いにしてやるんだから!!」

 

 怒気を孕んだ声が廃墟のアジトに響き渡る。

 怒りのボルテージを攻撃に、リロードの速度を上げるセリカは、次から次へとノノミ、ホシノの援護射撃に入る。

 

「避難口を最初っから戦力投入…正面入り口からの襲撃は目眩しと派手な爆発で威嚇……全て計画通りだな」

 

 正面入り口から、口角を釣り上げるカロンは自分の計画が上手く成就したことに満面な笑みを浮かべる。悪魔的な笑みだ。

 正面はカロンとシロコが抑え、避難口はホシノを前線としてミドル的ポジションのノノミが敵の全滅、そして生き残りの兵士はセリカの援護射撃で敵陣には抵抗の隙もなく徹底的に懲らしめる。

 

「凄いですわね、本当に上手く行くなんて…記念式典の時とは全然違いますわ…」

 

「相手が市長でもなければ、教導者のいない三流以下のチンピラ達だ。予想外なことが起きれば奴らは混乱する…」

 

「ん、先生のさっきの作戦面白かった。今度こう言った作戦会議、カロン先生に教わりたい。それにカロン先生と一緒なら、5分で一億も夢じゃない」

 

「5分で一億??なんの話だ?」

 

「ごめん、なんでもない」

 

 

 

 

 今回この襲撃時、各自生徒達とはお浚いがてらを行っていた。

 教室では普段使われているホワイトボードとは別の、空いてた教室から拝借したブラックボードでヘルメット団の襲撃を企てていたのだ。

 担当はアヤネとカロン――建物の外観的な特徴をアヤネと共有し、建物内の構図や配置に関して話し合った結果として…。

 

『まずシロコは私と共に正面玄関での襲撃だ。数は少なめ、此処に最低限の要素を置いておく』

 

『ん?カロン先生…こういう時はホシノ先輩とノノミの方が適任だと思うけど…いきなり襲撃をするなら、タンクとして立てる人の方が…』

 

『いいや、これで良い――何故なら正面玄関は基本的に奴らが出入りをする場所であり、下手すれば戦車や他の銃火器に、移動用自動車を使われる可能性もある。だから先ずは此処を制圧対象と考えた。然しその制圧的行動が必ずしもホシノのように最前線に立つ者でなくても良い』

 

 ホワイトボードに黒いペンでシロコ、カロンとネームを記し、丸を描く。

 

『何故ならこの構造内、扉の大きさも脱出点として使われる可能性も高いからだ。だから虚を突くと同時に、派手な攻撃と視界を奪える威嚇的戦術で奴らを混乱させる』

 

『だから私なんだ…カロン先生はどうするの?』

 

『私は闇雲に突っ込む生徒を逃すことなく捉える。ノエルはシッテムの箱を通じて、私の耳となって欲しい』

 

『ええ、了解しましたわっ』

 

『次にホシノはシロコが手榴弾を投げたタイミングで奴らの真ん中に突っ込んで欲しい。手榴弾の音、爆発、奴らの意識は必ずシロコの威嚇に集中する。そうすれば多少気配を隠していればお前の行動は勘付かれない』

 

『うへぇ〜…先生いいねっ!大胆な発想するなんて、おじさんのような小柄な身体でも役に立てるなんて、ママしあわせでちゅ』

 

『それやめろ…』

 

 ホシノの巫山戯た発言に冷や汗を流すカロンは冷静ながらの突っ込みを入れる。

 

『ノノミはホシノの存在を奴らに悟られた途端にマシンガンで敵を一網打尽にする。幸い逃走ルートは此処で限られてる。奴らにとっても逃走経路を潰されるのは痛いだろう』

 

『そうですね〜!あっ、だからシロコちゃんとカロン先生が敢えて正面入り口を選んだという訳ですね!大人の力って凄い…っ!先生はボードゲームが得意そうですね〜⭐︎』

 

『ど、どういうこと?』

 

 ノノミもシロコも、点と点が線になったように合点する。そんな彼女達の理解に追いつけないセリカはあたふたとしている。

 

『ん、セリカ。もし襲撃や災害を受けた時、避難するならどうする?』

 

『えっと、非常口とか逃走経路を使う?』

 

『そう…我々が馬鹿正直に攻めた所で奴らはある程度囮を使って逃げ延びる可能性も高い。だから、二つの出入り口を封じることで、奴らを袋の鼠にする――するとどうだ?正面出口は手榴弾と煙幕で視界を遮られ、逃走経路はホシノ、ノノミ、セリカが既に制圧し潰された。最高の戦力を敢えて逃走用に置いておくことで、奴らは必ず闘いを強いられる…ククク、正に悪魔的戦術――!!カタカタヘルメット団も最初は動揺し対応が遅れる。そして対処に遅れを取れて仕舞えば、歴戦の猛者達の餌食になる……。たった一秒の油断が命取り。畳み掛けるように制圧すれば、敵の数なんて大したことはないんだよ』

 

 悪魔のような笑みを浮かべるカロンは、正にこれまでの大人とは比較にならない程頼れる存在だった。

 生徒達の強みと個性を理解し、如何にどう生かすか…この手の作戦は、記念式典の時を沸騰とさせる。

 ノエルからして自分が人間だった頃、ピアニストとしての目標だった式典奏者の記念式典コンサート――それをテロリスト行為に及ぼすのは、どれほどの覚悟だったか。

 

『それに、出入り口付近であればアヤネの救援ドローンも取れやすいだろう。……それにしても、ふーむ…不思議なものだ。これだけ遠く離れた場所でもアヤネのドローンは機能するものなのか?』

 

『はい!最新技術を取り扱ってるドローンですし…カロン先生は知らないんですか?』

 

『ふむ…範囲内による通信電力…シビラの電気で操る絡繰構図とは違い、圏外でも扱えるドローン…ラプラスのセキリュティドローンとは比較にならないほど優れてるものだな…』

 

 もしこんなものがあればアクエリアス社どころか、OCTもアヤネのドローンを欲しがるだろう。

 

『セリカは射撃援護を頼めるか?幸い避難口なら死角でヘルメット団の抵抗や、残党を可能な限り的確に処理してほしい。お前程の手腕が狙撃手なら此方としても申し分ない。何よりリロードの素早さは目を張るものがある――それこそパイソンとも勝るとも劣らず…と言ったところか』

 

『そ、そぉ?そう言われたら…まあ、しょうがないわね!やってやろうじゃない!』

 

 セリカも素直になれない部分が多いが、能力の評価や役割分担には素直に賞賛を受け取る彼女。案外ノエルのようにちょろいのかもしれない。

 

『よし、ならば問題はないな?』

 

『ん、先生…もし戦車やドローンが用意されていた場合はどうするの?』

 

『ドローンは私が処理をしよう。セリカも余裕があれば援護してくれると助かる。戦車の場合はノノミの貫通型のマシンガンでヘルメット団の一掃がてら、シロコの火力支援によるドローンで対抗して欲しい。これで良いかアヤネ?』

 

『はい!その解答で在ってますよカロン先生!』

 

 ドローンや戦車など知識に疎いカロンも、アヤネと話し合って解決策に至ったらしい。アヤネも久々に本格的な作戦会議らしいことができて、満更でもなさそうだ。

 

『他に聞きたいことや質問があれば受け付ける。今が復讐のチャンスとはいえど、念には念を込めて、入念に手入れと整理を行ってからでも遅くはないからな』

 

 カロンの言葉に皆は反論しない。

 皆の意思は固まっているようだ。

 

『よし、それでは実行に移すとしよう。多少計画がズレた場合、私とアヤネが全力でサポートに回る。では、武運を祈ろう…いや、勝利を掴むまでだな』

 

 

 

 ―――――――――――――――――――――――――

 

 

(一度目といい、二度目と言い…カロン先生の指揮は的確に、そして的を得ている。どれもこれも、先生の指示のお陰か怪我も負うこともなければ、相手が反抗の余地さえもない……本当、凄いなぁ)

 

 ショットガンを何度も射撃しながら、呆然と心の中で呟くホシノは周囲を見渡す。

 幸いドローンや戦車はアジトにはなく、あったとしても既にアジトの範囲外だ。当然アジトにも見張りがいたので、一時はどうなるかと思ってたけど、それもカロン先生が全部解決した。

 

 それは暴力とは呼ばず――相手の意識を刈り取る不意を突いたアサシン。

 あれは間違いない…カロン先生は、殺しに慣れている。

 嘗ての私のような粗暴さはないけれど、きっと…もしその気になれば、人をどうやったら殺せるのかが安易に理解できている。

 ヘルメット団には傷一つ残ってないという不思議なこともあったが、手刀により最大限に最小限で事を済ませた。

 カロン先生曰く『シャドウスタイル』だのなんだの言ってたけども…こればかりはサッパリだ。

 シロコちゃんに関しては目を輝かせて「ん、私もあれやってみたい」なんて言っちゃう後始末だし…カロン先生って何となくだけどシロコちゃんに悪影響与えそうだなぁ。

 

「な、何なんだよォお前らぁ!?弾薬も補給品も尽きたかと思ってたのに…!反撃までしてくるなんて…っ!こんなの…」

 

 こんなの話が違う――折角あのカイザー理事からの直々の依頼なのに…!いや、それにこの貴重な弾薬の無料提供も、()()()()()()()から貰った資源も、アビドスの前で全て水の泡となった。

 縄に縛られ、辛うじて意識のあるカタカタヘルメット団のリーダー格は、泣きっ面を浮かべながら負け犬の遠吠えを吐き捨てる。

 アヤネはヴァルキューレ警察に連絡を入れ、盗品やらをトラックに入れ換金させようと目論むシロコ。

 セリカやカロンも片っ端から資源を調達している。

 

「こんなに沢山の弾薬に補給品まで…私達は底をついてたってのに!!」

 

「これは…本当にコイツらの基地なのか?それにしては壮大な量だぞ。私達が提供した分量と同じ…何故、コイツらがここまで?」

 

 セリカは豊富な資源を目の前に、コイツらが独占しながら自分達を攻めていたことに腹を立てつつ、カロンはヘルメット団の異常な弾薬、補給品、食料に固唾を飲む。

 ある程度は予測していた。

 然しこればかりは…いや、団員の数を考えれば妥当なのだろうか?

 

『お疲れ様です皆様!先程の迎撃と言い、襲撃と言い…負傷者も犠牲も出ず、問題なさそうですね!唯一不明な点は…』

 

「ふむ、これ程の資源を何処で調達したのだろうか…。ルートさえ絞れれば良いのだが…盗品が戦車にドローン、食糧というのは…コイツらにしては中々のやり手と見えるが?」

 

 これは単にアビドスが強すぎるから感覚が麻痺してるのか、それとも裏で暗躍してる何者かがいるか…でなければ、説明が付かない。

 

(……まあ、警察にさえ引き渡せば、芋蔓式で情報くらいは掴めるだろう)

 

「それにしても…幾らヘルメット団とはいえど、何だか申し訳ない気がしますわね…」

 

 善良な言葉を掛けたのはノエルだった。

 シッテムの箱で指示を出していたノエルは、箱庭から飛び出しており、アジトの拠点に戻っていた。

 

「何言ってんのよノエル先生!コイツらは私達の学校を占領しようとした奴らよ!?カロン先生の言う通り、根元を断ち切らないとまた攻めてくるんだし…」

 

「ノエル――お前の言い分は分からなくもないが、奴らは充分に罪を重ねた。これ以上コイツらを野放しにしてしまえば、他の市民や他の自治区にも迷惑を被る危険性もある。ならば警察に引き届けるのがまだマシではないか?」

 

「確かにそうなんですけれども…その、ヘルメット団の方達を見てると、何となく…廃製鉄所にいた彼らを思い出して…」

 

 ラプラスにいた街で、フーゴに惹かれて付いてきたゴロツキ達。

 彼らも最初は敵対関係として自分達を殺すつもりでいた。結果、カロンに返り討ちに遭い、中には歯を抜けた者が「覚えてる?」なんて声を投げてきたくらいだ。そんな彼等もフーゴ救出をキッカケに、自分達の味方として力を貸してくれた。大悪魔の存在であるカロンも受け入れてくれた。メロイ地下街でもフーゴを助ける為に尽力してくれた程でもある――それなのに、ヘルメット団を捕まえてしまうというのは、なんだか少々申し訳なさが優ってしまう。

 

「……フッ、アイツらも懐かしいな。メロイ地下街に続き、市長選挙で派手にフーゴ達と共に街に緑を刻み付けた…。コイツらも一歩違えば、我々の仲間になっていたのかもしれんな――だが、今は立場も違えば更生させるべきだと考えてる。間違った選択肢を正す、それは必ずしも形だけが全てではない」

 

「…そう、でしたわね。ごめんなさい、ちょっと感情的になってましたわ」

 

「まあ、それがお前らしい所ではあるものだがな」

 

 ノエルの頭を優しく撫でながら、カロンは優しく呟いた。

 何だかこうして貰えるのも懐かしい気分だ。

 

「ん、ノエル先生は優しい。だから私も皆んなも信頼できる。それがノエル先生のいい所」

 

 シロコもすっかりノエルとカロンに心の距離を詰めており、信頼を寄せるに値する人物となっている。

 カロンに続いてシロコもノエルの頭を撫でる。

 

「ちょ、ちょっとぉ!!は、恥ずかしいですわ!」

 

「わあ〜いっ!じゃあ私もなでなでしてあげますねノエルちゃん先生ぇ〜!」

 

「うぼああぁぁ〜〜っ!!?は、発育の暴力ですわぁ〜〜!!」

 

 ノノミも面白そうにノエルを抱きしめては、頭を撫でていく。ノエルの身長も、小柄な体格もホシノと似ているからか、ついホシノと同じ接し方をした結果、ノノミのふっくらしてる柔らかな胸部が、ノエルの顔に当たる。

 

「うへぇ〜いいなぁノエル先生。じゃあおじさんもノエル先生に混ざって……」

 

「アンタら真面目にやれ!!!!!」

 

 段々とおふざけ且つ、どんどんノエルに集まる皆んなにセリカは顔を真っ赤に染め上げながら怒号を飛ばす。

 セリカは支給品や補給物資をバッグに詰め込んでいるにも関わらず、怠けている者達に猫耳を立てて憤怒する。

 

 こうしてカタカタヘルメット団の問題を根本的に解決させたカロンとノエル一同、アビドス対策委員会の問題は一件解決したかのように見えた。

 然し、カロンとノエルが真に解決するべきアビドスの問題は、まだ残っていたのだ。

 

 








セリカ「先生は信用できない…。ノエル先生も全然頼りなさそうだし、カロン先生もきっと契約だのなんだのと言って、私達に不利なことを強要させるに違いないわ。じゃなきゃなんでもっと早く来ないのよ……だから私達は絶対に借金を返済させる!大人の力なんて借りなくたって!!」

カロン「いやどう考えても9億返済は無理だろ。それでも利息返済してるだけ大それたものだが…」

何気なく的を得てるセリカ。当時のノエルが本当に頭お花畑でスケープゴートに適任過ぎてた件。
でもセリカもマルチで騙されてる。

セリカのブチ切れ顔好き。

次回は今度こそセリカちゃんパートです。
ヘルメット団攻めてたの忘れてたぁ!!いや、無しにしようかなと思ってたけどカロン先生が賢すぎたので無理でした。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。