投稿して二話でもう評価赤の自分に驚きが隠せない。
最初「ブルアカのこの描写、どうすれば良い?」「ブルアカ作品作るの初めてだから受け入れてくれる人いるかな?」なんて考え悩んでいたり、テクスト変じゃないかな、って不安に思ってましたが、愛読して下さる方、楽しみにして下さる方、面白いと評価して下さる方、誠に感謝致します。
久し振りに自分の小説を作る楽しさを感じることが出来ました。これからも楽しんで下さる方も、喜べる様な、楽しんで頂けるような、素敵な作品にしていけたら幸いです。
#JHP弾#簀巻き#キヴォトス民強い#板#無能警察
『D.U外郭地区』――シャーレの部室付近。
何処を見渡してもビルの建物がズラりと並び、ゲームセンターやショッピングモール、喫茶店。道路や住宅街など、人が普通に嗜み生活するには十分過ぎる都市区――ノエルは勿論のこと、知恵を授ける大悪魔カロンも近代的な都市には不慣れなのか、どれも真新しいものばかりだ。
だがそんな街を汚すように、破壊するように、それこそまるで爆発テロでも、爆弾魔が暴れてるかのように……。
この都市区は既に紛争地帯となっており、止まぬ爆音と射撃、爆煙が空気を汚していく。
「……本っっ当に、まるで戦争でもしてるみたい、ですわね……」
「……警察は何をしてる?」
武装した不良達の違法流通によって手にした武器、弾薬、戦車、無法地帯と化しやりたい放題の不良集団を観察する中、ふと思う。
警察は当てにしていない――大事なのはその場にすらいないという現状が問題だ。
撤収でもしたか?
この地区にまだ間に合ってない…?いや、リンの通信相手であるモモカという小娘が情報を把握していた限りはその可能性は低い……。
又は別の問題解決に精一杯と言った所か?
「警備局はまだ到着できてないみたいですね…」
「オイオイ…これだけの紛争でどれだけの被害者が続出すると思ってるんだ…!!ジーノがいたラプラス警察は相当優秀だったワケだな」
ハスミの言葉にう〜む…と唸るカロン。
警察が少しでも不良達を抑えている間、此方が不意を突き、一人一人の生徒達に指示を出し、完璧な勝利と計算を叩き込もうと考えていたが…。
そもそも既に好き勝手やってる不良達に、連邦生徒会に苦情を申し出てる生徒達……考えてみれば警察など当てにならんか。
「はぁ……けど、やるしかないのよね、これ」
ユウカは溜息混じりに愚痴をこぼしながら、SMGの弾倉を装填する。以前のままなら『何でよりによって私たちが不良達と戦わなければいけないのよ――!!』と苦言を申し出ていただろう。
だがノエルの言葉に、何処か自分の見苦しさを披露していたこと、責任ばかりを全て押し付けて当然だという考え、ノエルの想いのこもった生徒に対する姿勢に、考え直したのだろう。
生徒会だろうと、キヴォトスに住まう生徒は平等――という言葉に、皆んなで解決しようという心構えは、ユウカだけでなく他の三人の生徒の心を固めるには充分だった。
そんなユウカに流れ弾が来たのか、身体に数弾…銃弾を食らってしまう。
「って、痛っったぁ!?!痛い!アイツら何使ってんのよ!?てかこれ、違法JHP弾使ってるじゃない!!」
「えぇっ!?え!?」
「ッてお前ェ!銃撃食らって何故平然と生きている!?」
深刻なダメージを受けておらず、仏頂面で不良達を睨む彼女。事の重大さが全く感じ取れない雰囲気から、正にサバゲー感覚だ。
ホローポイント弾を食らったにも関わらず、平然としている彼女に、あのカロンでさえも動揺している。
「へ?あ、あぁ…私たちは身体の作りが違うので…かなり頑丈なので…」
「ほ、本当に痛くありませんの…!?大丈夫ですの…?か、身体に傷痕とか残ってしまったら…」
「あっ、ちょ…っ、そんな……先生…っ」
ノエルの慌ただしくも心配の眼差しを向けながら、撃たれたユウカの身体に手を伸ばす。
頬、額、首、肩、銃弾を諸に受けた箇所に傷跡がないか、安否を取る。
キヴォトスの住民は身体の構造が違う為、外の世界の人間とは比較にならない。ノエルもカロンも人間ではないので、構造の違いに関しても比較するのは推奨しないが…。
とはいえ、外と此方の世界が違い、ユウカ達が頑丈とはいえ心配されるというのは案外初めてで、ノエルの気遣いの嬉しさと、スキンシップに思わず頬を赤らめる。ぺたぺた触るノエルの柔らかな、優しくて細い手は、凡ゆるピアノを触れたその綺麗な指は、ユウカの身体に異常がないか心配する。
(……ユウカには、あんな大それた事言いましたけれど…彼女達が抱える悩みや、この現状に珍しさを感じない日常的な感覚…ちょっと、偉そうな感じでしたわね。こんだけ危険な問題を解決してほしい、って願いたくなるのも…ちょっとは分かるかもしれませんわね……生意気だと思われてるかもしれませんわ…)
(せ、先生に心配された…っ!!いや、悪くはないというか、凄く嬉しいとかいうか…って何言ってるの私!?そう、そうそう!先生はきっと私たちと先生の身体の作りが違うっていうのに知らなくて……あれ?でもさっき説明したし、にも関わらず真っ先に心配してくれたノエル先生……。……っっ!!)
ノエルは先程の発言は、実は彼女達の怒りや不評を買う為の導火線だったのではないか…?という被虐じみた思考回路とは別に、ユウカは完全に動揺していた。
「……いや、冷静に考えてみれば、お前達は私達の知る人間とは違う存在…。全員揃いも揃って銃を携帯してる身…。一発二発、喰らっても無傷なのは普通なの、か……?」
上手く現実を飲み込んで、冷静に分析するカロンは思考を働かせる。少し考えてみれば理解するのは難しくない――生徒達もやれボルトアクションライフルだの、サブマシンガンだの…身体が頑丈だからこそ、平気で危険な武器や銃など構えている。
更に不良達は戦車や火薬、数々の違法武器を多く手にしている。もしこれが生身の人間なら確実に死人が大量続出する阿鼻叫喚な地獄絵図になっていただろう。
(やれやれ…とんでもない世界に召喚されたものだ。もし生徒会長が此処に居たなら代償が大きすぎて魂一つじゃ払いきれない…が……)
契約には代償が必要だ。
例えるならユウカがもし『風力発電所を治してよ!』と言ったら、カロンは『ならばセミナーの部活を消す』という脅しにも似たようなモノがついてくる。チナツが『病人を治してください』と言ったら『ではお前が代わりにコイツの病気を与えよう』という、それは恐ろしい代償が、呪いの様に付いてくるのだ。
現にノエルも心の底から願ってもないスケープゴートによる契約でカロンに両手両足を失ったり、バロウズは市長になる為に、市長の破滅という代償を押し付けられた。それが嫌だからこそ、破滅から逃れる為に数々の汚職にまで手を染めたのだから。
(………いや、一旦生徒会のことも、契約に関しても考えるのは止そう。リンにも言われたじゃないか…シャーレの部室の地下にある『とある物』を保護すること――今後の考えはノエルと共に計画を練ってからでも遅くはない。今は目の前のバカどもの制圧だ)
ビアンコ・ロッソファミリー、ラプラス警察、OCT隊員、数々の修羅場を潜り抜けたカロンにとって、目の前の不良生徒達の暴走など今更に過ぎない。
尤も気が引けるのは、生まれ変わった為に大悪魔としての実力が一から始め直しということだが…。
――慧眼の私なら暴走した生徒達の鎮圧など、ユウカ達が出る幕でもないだろうが……。
「先生方を守ることが最優先事項――あの建物の奪還はその次です」
「ハスミさんの仰る通りです――先生方はキヴォトスの外部…私達とは違いますから…」
「私達が前線に立ちます。先生は戦場に出ないでください」
ほぉ…と、それを聞いたカロンは顎に手をやる。
外部からの存在を簡単に受け入れたり、戦闘慣れした雰囲気と使命感…。成る程、つまり私たちは銃弾を一つでも喰らったら致命傷を負って死んでしまう…という考えか。
……成る程成る程…これは生徒達にしては随分と頼もしい考えだ。
だが――そんな考えが通じるのは、人間くらいなんだよ。
「……私の話を聞いてなかったか?」
「はい?」
チナツは小首を傾げながら、カロンは呆れた口調で生徒達の前に立つ。
「私が前線に立つ――戦場の分析、及び援護射撃、通達、揺動、手段は問わない――この下らないガキどもの戦いごっこを終わらせるぞ」
バサリ――改めてタキシードの制服を整えながら、精々堂々と前に立つ。
「ちょっ!?先生!何言ってるんですか!?私達の話しこそ聞いてましたか?!」
「嗚呼、聞いてたとも――私とて銃弾を…最低でも数十発くらい喰らえばほぼ致命傷を負うだろうな」
それだけでも充分に凄い方なんだが…と思ったのは、外部からの先生にしては、だろう。
「言っただろう――
「カロン先生…ノエル先生のお言葉は、確かに納得させられた事がありました。仰る通りかもしれません…ですが、死なれたら本末転倒、元も子もありませ――」
「要するに銃弾如き喰らわなければ良いだけだろう。何をお前達は話を難しくしている?お前達の側にいるのは誰だ?大悪魔だぞ…?」
カロンのセリフに絶句する。
要するに、銃弾さえもカロンは簡単に捌けるというのか…と。この大悪魔と名乗る先生は、この紛争地帯さえもどうという問題ではないのかと。
「そしてお前達の願いは私達の願いにもなる――それにな、生徒ばかり全て問題を押し付ける先生が何処にいる?ユウカ、言っただろう…足並みは揃えて貰おうかと。大悪魔を前に驕るな。お前達ばかりに危険な仕事を押し付けるのも、一方的に仕事を任せるのも、契約者として、先生として、大悪魔として私がそれを許さない――」
正に傲慢。
だがそれは決して不愉快ではない。まるで大人に頼れと言わんばかりの…然しお互い背中同士をカバーし合おうと、大人と子供が協力して手を取り合おうと言わんばかりの…。
「私は大悪魔だが戦闘向きでないのもまた事実…況してやキヴォトスに住むお前達は身体の構造が違うのも理解した。だからこそ、我々は自分たちの役割を、私は私の仕事を…お前らはお前らの出来る仕事を確りこなす。なに、私一人で全て物事を解決する程の力がないこと位、私がよく知っている」
クックック――と笑うカロンは悪魔の笑みを浮かべる。
傲慢?そうだとも、悪魔とは傲慢で在るべきだ。
ノエルの言葉とカロンの言葉…この二つが合わされば、生徒達も嫌とは言えないだろう。
何より、契約者と対等な関係――という立場は、今も昔も変わらない。
それが、大悪魔カロンなのだ。
「…ん?待って下さいまし!それなら私も…!というか、そうですわ!!私も大悪魔になったのですから、ひょっとしたらカロンみたいに蹴りだの殴るだので対抗を…」
「いや、その…何だ。キヴォトスで目が覚めてから薄々と感じてはいたが……この感じ、大悪魔の中でもお前は一番最下位だ――実力としてはゴミ同然だぞ……」
「え゛っ……」
期待から失望という上げてから落とされた感覚に、ノエルは思わず変な声が出た。
大悪魔なのだから、生前よりも実力が付いたのかと思っていたが……仲間達の思想、非力で戦えないお嬢様という共通認識、生前の関係もあってかどうやら大悪魔になっても戦えるわけではないらしい。
「ノエル、お前は後方指揮を任せる。私たちは生まれ変わった身…以前のようにモータルリンカーや堕天の鎖は現状使えないだろう。だからこそ、お前にはお前の仕事を任せる――これを使っておけ」
カロンは懐から伝達イヤホンを彼女に渡す。
「これ…」
「出発する前にリンから貰った――こうなることを見越した上でだ。流石に大広間でドンパチやってる程、不良達が荒れていたのは想定外だったが…どの道戦闘は避けられないのは目に見えていた。ならば備えあれば憂いなしだろう。これで私とお前でお互い、目と耳の役割を担う――キヴォトスだろうとラプラスだろうと、やることは変わらんだろう?」
「…ふふっ、そうですわね!では確り頼みましたわよカロン!」
「任せろ――お前の耳と判断力は、大悪魔のお墨付きだからな」
ノエルの発達した聴覚と判断能力、カロンの動体視力と情報処理能力、お互いの不足や欠点を補い、最善の選択を――。
「そして次に、お前達の役割を聞いておこうか」
カロンはノエルからユウカ、ハスミ、チナツ、スズミに振り返る。
これぞ正に編成隊――先ずは彼女達の長所、短所、能力や戦闘力を知るべきだ。
それは契約者の本質を、心を聞くのと同じように、生徒達を知る必要がある。
「先ずはスズミ――お前からだ」
「わ、私からですか?」
「自警団をやっていたと先程の紹介で聞いた…自警団をやっているのなら、戦闘の立ち回り方、状況判断、射撃共に経験を積み、場数を踏んでると見た。今もお前は不良達の立ち回りやら狙撃手やら、警戒の目をしている。そういうのは癖という域を超えて最早個性、能力と呼べるほどに優れている」
「確かに自警団をやっていますが…これでも非公認で…そう、ですね。私は主に閃光弾を――敵の無力化と殲滅をメインに活動しています」
「ほぉ、敵の視力や意識を奪うわけか…」
(ならばスズミの連携に合わせてスタンスをシャドウに変えるのも悪くはない……閃光弾だけでなく、フーゴのように手榴弾も扱えれば良いのだが…)
然し彼女は其れを良しとしない。
カロンも出逢ってばかりの者とはいえ、直ぐに何故?とは聞かなかった。少なくとも今は戦闘に支障がなければ良いと思っている。
「同じトリニティの羽川ハスミ…お前は?」
「主に戦車やヘリ、ドローンなど、重装甲の銃器や武装に対して私の火力を活かせるかと。遠距離射撃など造作もなく――」
「素晴らしい、優秀だな――」
(ヘリコプターや強化ドローン…戦車や軍事兵器をボルトアクションライフルで破壊。狙撃の腕はほぼ洗練されているだろう。武器の手入れが良い…一日も怠らず…と言った所か。なんだ、キヴォトスの人間も大悪魔と対等になれるじゃないか。アメリアと名乗るOCT隊員と同じように、出方によっては強力な敵に一矢報いる可能性もあるわけだ)
暗殺射撃、対重火器や軍事兵器などに対して優力な彼女の腕を内心褒めるカロン。先生に褒められたことで、ハスミも内心嬉しく思ったりする。
ゲヘナ学園は粗暴の悪さ、口の悪さ共に目立ち嫌悪しているが、カロンは何故かこう…憎めないのだ。
傲慢で、ゲヘナ学園に似た口の悪さと言い、高圧的…だがそれは大悪魔カロンが自らを誇りに思っての口の影響。そして…一人一人の生徒をちゃんと知ろうと知り、深く理解し、寄り添おうとしている。
先生という特別な枠もあるのだが、その傲慢さが逆に自分達の為だと、言葉と観察で理解した。
カロンもハスミも、人間観察を得意とする類…翼のない鴉の化身カロン――鴉の翼が生えても、神聖たるトリニティの生徒であるハスミ。
「ユウカ、お前は…って何だその…板」
「カロン先生、これはですね…ミレニアム産端末形式の関数電卓です…板じゃないです」
早速電子型や最新技術、タブレットやパソコンの知識に疎いカロンのボロが出ていてユウカは呆れて溜息を吐く。まだスマホとかの言い方ならさておき板と言われた。
どうやらノエル先生の言う通り、本当に知識が疎いらしい。実はキヴォトスの外から来たカロン先生は古い時代に此処へ来たタイムスリーパーなのでは?という有りもしない新たな疑問さえ浮かび上がった。
「で、何故関数電卓とサブマシンガン?奇抜過ぎて最初に質問しなかった自分に疑問が湧いてきた」
「えっと、私の場合は電磁シールドで身の守りを硬めながら前線に出るタイプ…カロン先生に分かりやすく言えばタンク…と言ったところでしょうか。計算処理による電磁シールドを貼りながら射撃を…。計算で作られた電磁膜…暗算は得意なのですが、一応念には念をと…特に戦闘中は計算しながら闘うっていうのは万が一のこともありますし…誤算してしまう危険性を考慮して…」
「シビラ・ベッカーと何処となく似ているな。其れに計算処理による電磁シールド…ふぅむ、私から見れば特殊能力にしか見えないな……が、要するに単独では二丁銃、前線に立つならば関数電卓使用による電磁シールド…矛にも盾にもなれるのか。
…自分の力に過信せず、自惚れずに万が一に備えてと……自分の最善策を練り、自分と向き合い戦いを有利にするやり方は嫌いじゃない――」
シビラ・ベッカー。バロウズ市長の秘書であり、ノエルに悪魔の契約を囁き、両手足を失わせ、自分達の都合の良いように利用した雷の魔女。ドローンや戦車ヘリを雷を放つ事で無理矢理使役させていた。彼女は攻撃と機械の使役しか使っていなかったのだが、ユウカのようなやり方を見ていれば、防御面にも適していた可能性もあったのだろうと頭が過ぎる。
………アクエリアス社以来、私達に敗北してから姿も音沙汰もない限り、あの後殺されたんだろう。
「後その…生娘と言ったことはちゃんと謝って下さいね!!」
「根に持つタイプだなこの女……はいはい分かりました。申し訳ありません早瀬ユウカお嬢様――貴女は生娘ではなく、ミレニアムが誇る立派な優等生で御座います…よっと」
やれやれ、このユウカとやら…何となく当初のノエルに似てる気がしないでもない。女というのは案外面倒な生き物なのかもしれない。
「最後にチナツ――お前は?」
「私は救護、救援をメインに――風紀委員として活動してるのもあり、後方指揮もしたりなど…特に私達の学園は自由奔放は方々が多いので…バカに薬は効かないというのは正にこのことだと思います」
(こいつ……人畜無害の小娘かと思ったが、この女の本心が垣間見えた気がするぞ…)
冷や汗を垂らしながらチナツの僅かな心の隙を見抜き、心の中で吐露をする。だがゲヘナ学園でも意外と優等生且つ良心的な生徒であるのも確かだ。
「つまりヒーラーの役割…携帯してる武器は護身用か?」
「サイレンの役割も担ってます。時には栄養剤の投擲にも――ですが、そうですね…他の三人方とは違い、私は戦闘には向いてないので…」
「そうだな、武器を持っていることが必ずしも相手を傷付ける為のものではない――寧ろ救助要員はかなり必須だ。後方指揮、サポートに回る救援…よしっ」
四人を聞き終えたカロンは、ほんの数秒考え込んだ後、真っ赤な眼孔を三日月に歪ませる。
「編成部隊を整えた――ユウカは私と共に最前線に立ち陽動を、ハスミは中距離で物陰に隠れながら確実に脅威を仕留め、スズミは後方支援で敵の撹乱と無力化、チナツはノエルの保護と共に指揮の共有を」
「私がですか…?」
「チナツ――ノエルは大悪魔とはいえ私と一連托生をしている身…万が一のことがあれば私の存在もどうなるかは不明。ノエルの耳、チナツの風紀委員で磨き上げた指揮能力と救護。意外にも重要な役割だ。できるか?無理ならノエルには…」
「いえ、大丈夫です…!私に、任せて下さるなら…!」
「よしっ、良い返事だ――」
カロンは傲慢ではあるが、自分の仕事を全うするもの、嫌だと言わずに自分の努力と持つ力で目の前の問題解決をしようとする生徒を、見下ろしはしない。
寧ろそう言う生徒は賞賛するべきだと考えている。
「私はいつも通り…で、宜しいんですのよね」
「言っただろう――私とお前は変わらない。それが、二人一組の大悪魔なのだからな」
さて、此処から――D.U外郭地区で大暴れしている哀れな暴力不良生徒達に…散々迷惑を被っている生徒達の…復讐を始めようじゃないか。
ユウカは関数電卓で予め計算処理をしており、隣でカロンはゴキッ!ボキッ!身体の骨を鳴らす。
久々に腕が鳴る…いつ以来だ?バロウズとの決戦では、仲間の想いを込めた鎖で、バロウズの願いを打ち消してきた。
然し慧眼の大悪魔としての資格を失い、生まれ変わった自分は文字通り下級大悪魔――だが、戦えない訳ではない。
久々の肉弾戦は、嘗て暴虐で残忍だった自分を彷彿とさせる。
「ラッセルと共にロッソ・ビアンコのマフィアを全滅させたあの残虐ショーが懐かしい…」
袖の隙間からジャララ…赤黒い鎖が見える。嗚呼、矢張り能力までは失ってないらしい。それは大変好都合――肉弾戦でも問題はないが、悪魔の鎖が使えるなら更に容易い。
「では行こう――ユウカ」
「はい!あの、本当に大丈夫なんですか?此処まで来て心配してしまうのもあれですが…」
「言っただろう、銃弾さえ当たらなければどうと言う事はない――寧ろ慣れてる。それに逆に聞くが…心の準備は良いか?」
「えっ?」
早瀬ユウカはこの日、生まれて初めて体験することになる。
「召喚――」
紅黒いアケローンの魔法陣が浮かび上がり、突如として現れたのは悪魔の鎖。ジャラララ――!!金属音と擦れる不快感な音が鼓膜を揺らす。彼女は一瞬理解できなかった――自分が鎖に巻かれていることに。
「へッ――」
「私とお前がいればあの程度の不良レベル、造作もない――ド派手に行こうじゃないか」
クックック――悪魔らしい笑みが浮かび上がる瞬間、ユウカの身体が浮遊する。カロンは彼女を腋で抱え、跳躍する。
「ええぇぇぇえ!!?むがっ!!?」
余りに唐突すぎる、予想外過ぎた破天荒な行動に絶叫する。相手に悟られないように叫ぶユウカの口を強引に手で押さえつける。
もう片方の鎖を発動させ、爆破によって故障した廃車を簀巻きにし、騒いでる不良生徒達の頭上を――
「んぇ?」
ドゴオオォォン――!!
衝撃な破壊音と共に叩きつける。
相手が仮に生徒だとしても、死なない程度に済ませている。キヴォトスの人間は耐久値がバカに高い。どうやったら死ぬのかさえ一瞬だけ考え込んでしまうほどに。
下敷きになった不良は現に白目を剥いて気絶しており、一瞬の不覚を取られ、気が動転した周囲の不良生徒達。
ズスゥン…!と叩きつけた廃車の上で佇むは、まるでキヴォトスに波乱を巻き起こす大悪魔が召喚されましたと言わんばかりに。
抱え込んだユウカの鎖を解かして、下す――
「な、何だコイツ!?!って、なんだこれ!?」
「ていうか隣のやつ…ミレニアムの生徒だぞ!?」
理不尽とも呼ぶべき突然の乱入により、不良生徒達は混乱している。
先ず大悪魔カロンの見た目は完全にキヴォトスならざる者――機械や動物などの住民もいるこの世界、明らかに画風も迫力も気配も違う、未知なる存在は、キヴォトス七不思議を超える怪異と言っても良いだろう。
「この大悪魔カロン――契約によりお前達の暴走を鎮圧する。この下敷きになってる御手本になりたくなければ武器を捨て、両手を頭に置くんだなァ」
「ちょっと先生!!!な、何ですか今の!?!」
「悪魔の鎖ってやつだ。両手足のなかったノエルをよく一本釣りしていたぞ」
「はいィ!?」
鎖でギッチギチに縛られ、浮遊されたユウカは、まさか自分が悪魔の鎖に巻かれて空中浮遊しました――だなんて、普通の日常や戦闘を送っていては体験できない場面だろう。
抑もユウカにとって、キヴォトス外部の人間…ではなく、大悪魔と出逢って間もない二人と出逢ってから知らないことばかりだが、ノエルの言う両手足の損失というのは非現実的過ぎるというか…信憑性がないというか、何処まで本気なのか分からない。
何より流石と呼ぶべきか…大悪魔と名乗るだけのことはあり、神秘に似た能力を扱っている。
「何だこの烏野郎!!こっちは連邦生徒会に不満持ってるんだ!!」
「武器ならたんまりある!戦車で吹き飛ばせ!」
「こっちは数多くの人員が居るんだよ!相手はたったの二人!蜂の巣にしてやろうじゃねえか!!」
完全に陽動成功。
ユウカはすぐ様関数電卓で電磁シールドを張り、カロンは呆れた眼差しを向ける。まあ、言葉で言うことを聞いてもらえるとは思ってもいなかった…だが先生としての立場である以上、救済処置を与えたのだが、こいつらは無慈悲にも蹴ったのだ。
悪魔がこれでも大サービスしてやったというのに…。
「ならば精々、痛い目を見るんだなァ!言っておくが私は先生と言えど、暴力行使をする輩は肉体的指導をするスパルタでな…若造だった頃のラッセルが泣き出した肉弾戦を叩き込んでやろう」
銃だの兵器だの、道具頼りに敵意を向ける三流は山の数ほど見た。
昔のカロンならば、容赦なく殺していた。
救済処置?気に入らない奴は地獄の底に突き落とす意気込みだった。
容赦のない悪魔の鉄槌で、骨の髄まで恐怖を植え付けていた。
悪魔の鉤爪、喰らえば致命傷は避けられない蹴り、肉を抉り、時に縛りつける悪魔の鎖。其れらを使用して二度と逆らえない様に虐げてきた。
然し、ノエルと共に出逢ってから、不毛な戦闘を避けていたのもあってか……それは、決して誇り高き悪魔ではないということを知った。
とはいえ、相手はキヴォトス…自分達の世界で常識が通用しない異世界の住民。ユウカでさえホローポイント弾を喰らっても擦り傷程度…だからこそ、全力の意気込みでやらねば鎮圧は不可能なのだ。
下手に遠慮していれば、最悪死は免れない可能性も捨てきれない。自分で誇りを語りながら、前に出て呆気なく死にましたでは示しがつかないうえに、誇りどころか大悪魔最大の汚点となってしまう。
それだけは絶対に避けなければならない――。
それに…手を汚すのは、最悪私だけで良い。
ノエルは、これ以上手を汚さず……これが終わってからでも良い。
――もう一度、叶うなら…お前のピアノの音を聞かせてくれ。
陽動として視線誘導されたユウカとカロン――電磁シールドを貼りながら、片手でサブマシンガンで前線の敵を狙い撃ち、ヘッドショットを決めていく。電磁シールドもまた永遠に長く続く訳ではなく、不良達の全方角からの乱射により、徐々に削られていくのは確か。
カロンは廃車のドアを強引に外し、それを鎖に巻き付け周囲の敵を薙ぎ払う。チリッ…と火花が散り、廃車のドアを武器にしたカロンは、縦横無尽に叩きつける。
吹き飛ぶ不良生徒達――キヴォトス内でこういう奇抜な戦闘方法を取るのはカロンしか存在しない。
危険物や違法武器を手にしたところで所詮ガキはガキ――凡ゆる死地を潜り抜けたカロンからすれば、当たらなければ何の意味もない。寧ろ訓練されていたラプラス警察やOCT隊員の方がまだマシだ。
カロン目掛けて射撃を試みた不良生徒も、カロンは軽く頭を横に傾けて銃弾を避ける。凡ゆる方面からの射撃の嵐を、アクロバティックな動きで回避していく。
単純に動体視力が優れているだけでない…100人や200人の射撃や動きを同時に見ながら処理を行うのは朝飯前だ。
知恵を司る大悪魔の名は伊達ではないのだ。
(とはいえ、死角からの援護射撃は流石に捌ききれん…)
「カロン!後方ビルから三人のリロード音を聞きましたわ!廃屋ビル、12階の右から四つ目!」
「ハスミ!やれるか!?」
「了解です――」
流れる様な連携は、ノエルの聴覚とカロンの的確な指示により、ハスミは隠れている援護射撃部隊の頭部を、外すことなくヘッドショットを決める。
三発の発砲音は、凄まじいリロード速度と早撃ち…。反撃も攻撃の隙も与えない一流スナイパー。
「やりましたわ!ハスミ、凄いですわ!的確に命中…あんな距離を外すことなく…」
「有難う御座いますノエル先生――先生の指示がなければ気付きませんでしたから…」
「視線や意識など気付くことはあっても、あの距離で銃弾飛び交う嵐の中聞き分けるなんて…」
ハスミの一流の射撃腕に、ノエルは興奮気味で賞賛を送る。M17を片手に持って射撃するだけでも、振動が身体の芯を揺らがす程なのに…これだけ大きなボルトアクションライフルを構えながら、誤射することなく的確に命中させれる彼女の腕は、カロンの見込み通りだ。
「…音、私…先程も言いましたようにピアニストをやってましたの。だから、音を聞き分けるのは、得意ですわ――」
えへん!と自信満々に応える彼女は、腐ってもピアノの名門令嬢――アクエリアスの海底迷宮を脱出する活躍を担っていた位だ。それでもこれだけの騒ぎと騒音の真中、音を鮮明に区別して把握するのは、流石だろう。
「凄い…カロン先生も、ノエル先生も…」
チナツは息を呑む。
大悪魔カロンは、破天荒さと常識外と予想外の戦闘に、ユウカとコンビネーションを決めながら、悪魔の鎖で敵を縛り、時に敵の銃弾を弾き、更には肉弾戦方で敵を悉く意識を刈り取っていく。
悪魔の鉤爪で不良生徒一人を八つ裂きにするように、強烈な蹴りを入れて敵の意識を吹き飛ばし、鎖を打ち付けて翻弄する。
ノエルは影に隠れながらも、的確に指示を出していた。隠れながら銃弾を補填している生徒にハスミとスズミに指示を出し、反撃に遭ったユウカやスズミの傷を治す様にチナツに指示を出したりと…。
「カロン先生って、本当に戦えたんですね…」
「あれでも戦闘不向きなんですから…マフィアを撲滅させた、なんて伝説を作っただけはありますわ」
戦闘向きの大悪魔はこんなものではない。
告死の大悪魔スピカなら、一瞬で敵味方問わず雷で殲滅させ、更には仲間同士を殺し合わせることで血の海に。悠久の大悪魔シーザーなら…敵は手も足も出ず、数分もしない内に外郭地区を制圧していただろう。完全拘束状態でさえ、カロンはシーザーに手も足も出ず虫の息にさせられたのだから。拘束が外れた本来の姿なら、まず近づくことさえ不可能という理不尽さ。
滅多に見かけないだけで他にも、カロンと同等…それ以下もそれ以上の悪魔も存在していたのだろう。深淵のラプラス…国が抱えていた悪魔の保管庫には数多の悪魔召喚方法が厳重に保管されていたのだから。
「先生、閃光弾を投擲します!」
「よしッ――ユウカ、目を瞑れ」
「電磁シールド強化しました!」
己の役割を担い、それを指導することで連携として流れる様に勝利の波を此方へ…
焼けるような激しい光が、視界を奪う。
不良達が無防備に晒される中…――「眠れ」の一言で、何十人かの不良生徒を、視界が晴れると共に無傷で無力化に成功させたカロン。
カジノ・ミスティの裏、バックヤードの占領と監視カメラのハッキング潜入の際に発揮した、アサシン向けのシャドウスタンス。スズミの閃光弾はとてつもなく相性が良い。
「次はドローンか……向こうでもこっちでも戦闘用の…」
当然、ハスミなら簡単に撃ち落とせるが……
「……いや、丁度いい」
カロンはユウカに指示を出す。
「ユウカ、一体だけでも良い…ドローンに攻撃しろ」
「えっ!?それはハスミの方が適任…」
「だからこそだよ、アイツは腕が優秀だ――だが今はノエルや私たちの身を守るために周囲の狙撃手や戦車の破壊に慎んでる。というか、戦車三台って…違法流通され過ぎだろ。オマケにヘリまでやってきたぞ」
残る不良生徒は僅かな時間で半分は削れた。
ほぼ生徒達は傷を負うことなく、被害も最小限…ユウカに対して狙われていた狙撃もカロンが鎖で弾いてたのだから、タンクの役割を担うユウカも珍しく傷跡一つ残っていない。
「来るぞ!!」
対空軍事用兵器のドローンが15台、一斉にユウカ達に射撃が向けられる。流石のユウカも電磁シールドでは直ぐに崩されてしまう…
「流石にこの数は…!」
「ユウカ!ドローンを一体弱らすだけで良い!そうすれば一気に形成逆転だ!」
カロンの指示――本来なら滅茶苦茶だ。
あり得ない指示…だが、だからこそ…カロン先生の言葉は信頼性がある。これだけ戦闘に対して立ち回りも良く、銃弾の軌道さえ読み取るのだから…きっと、先生にも何か秘策がある。
「次で、一気に終わらす――ハスミ、最後だ。あの上空で私たちを見下ろしてるヘリの乗車諸共、吹っ飛ばせ。自分達の愚行を思い知らせてやろう」
「ええ、カロン先生の意見に同意見…了解です――」
ハスミは一呼吸整えて、冷静に戦闘機ヘリコプターの弱点を見抜く。
隠れてる狙撃手もいないことを伝えるノエル、救護も支援もほぼ何もなく、情報通達も終えたチナツ。残る不良生徒の相手はスズミが――
ズドドドドドド――!!
無数の銃弾の嵐が、カロンとユウカを襲う。
咄嗟に眼を瞑りたくなる様な、威圧感ある乱射の暴力――だが、ユウカはカロンの真正面に浮いてるドローンに、二丁銃で集中射撃を試みた。
当然、中々撃ち落とされないドローン…だが、壊れなくて良い。ちょっと弱らすだけで良いのだ。
「良くやった――!!」
そして次の瞬間――地面から生える無数の悪魔の鎖が、荊棘の様に、壁を作るかのように防ぎ、銃弾の嵐を弾く、弾く、弾く、弾く。
金属音が火薬の銃弾で打ち付けられる音が空間を響かせ、ドローンは火薬弾の装填にリロード…僅かな時間が隙を生む。
「一斉射撃が仇となったな――終わりだよ、戦争ごっこは」
先程ユウカが狙って狙撃したドローン一台を鎖に激しく、強く巻きつける。すると対空ドローンは蠅や虫の様に荒々しく抵抗する様に動く。ギチギチ、ギチィ!!カロンは片手で暴れ抵抗するドローンを、武器とする。
それを14台のドローンを、滅多打ちにする。
乱暴に、大胆に、荒々しく、的確に、容赦無く、打ち付けていく。
残りのドローンも、縛りつけたドローンもほぼ故障に近い形で壊されており、バチバチ…ッ!と電気と黒煙が漏れる。
そしてドォン――!!という重々しい一つの発砲音…ハスミの引き金が最後を合図する様に、残りの機体諸共、銃弾を貫通したヘリは呆気なく撃ち抜けられ、最後に後方から迫り来る戦車を叩き込む様に、爆破する。
「ど、どうなってるんだよアレ!?」
「知らないよ!装備も無しにあの黒男…強すぎる!」
「銃弾防ぐって聞いてないっての!!」
「兵器が全く役に立ってない……うちら、詰み?」
「あの鎖で大半が無力化された!」
段々と戦意が失われていく不良生徒達…気が付けばアレだけ大勢いた不良生徒達は残り7人。
結論――無理である。
たった一人、矯正局から抜け出した『厄災の狐』を除き、太刀打ちできる生徒など、存在しない。
逃げろおぉぉぉーーーーっっ!!!
と、まるで本物の悪魔を見たかのように、一目散に逃げていく不良達の背中を、六人は見届ける。
「フン…バカが、数と武器だけで有頂天になりやがって…。だから言っただろう……痛い目に遭いたくなければ降伏しろと。悪魔の救済処置を自分で蹴ったんだ。自業自得というやつは正にこのことか――まあ、流石に戦意のないガキは追わなくていいだろう…」
「そう、ですわね…私達の目的はあくまでシャーレの地下にある『とある物』の確保…別に敵がいなくなれば、これ以上求めるのは贅沢ですわよね」
これ以上深追いする必要性を感じなくなったノエルとカロンは、一息吐く。やれやれ、転生して早々に戦闘開始とは……カロンに至っては余り宜しくない記憶が蘇り、ノエルに至ってはあの夕焼けの記憶の後にこんな展開になってるのだから、人生本当に何が起きるか分からない。
「ですが…先生がいたお陰で凄く戦いやすかったです…」
「そう、ですね…先生の力添えもあってか、普段では絶対ない戦闘方法を仕掛けてくる場面といい、ノエル先生の的確なサポート指示…それもあってか、ですね」
「流石は、キヴォトス外部から連邦生徒会長が選んだ先生方…ですね」
「鎖で巻き付かれたのはびっくりしましたし、カロン先生の特殊な能力も結構凄かったですけど…やっぱり、普段より何倍も戦いやすかったわ」
スズミ、チナツ、ハスミ、ユウカの言葉が紡ぐ様に並ぶ。
正直、大悪魔と魔女としていつも警察や軍隊に追いかけ回され、罵声と敵意を向けられていた日々を送っていたので、褒められ慣れていない。
寧ろ、今にして思えば大悪魔であるカロンも、この四人と何気なく会話が出来ることさえ奇跡に等しいのだ。
「え、えへ、えへへぇ…そんな、褒め過ぎですわよぉ…」
「お前、そんな笑い方出来たのか…ちょっと気持ち悪いぞ…」
「はあぁぁぁぁ〜〜〜〜っっ!!?レディーに向かってサイっテェ ーー!!!自分だってユウカ達がいなかったらあの数相手に一人では確実に無理でしたわよ!!」
彼女の怒りの導火線に火を点けたカロンに、激昂するノエルに引き気味のカロン。二人のやり取りは遠くで見てて微笑ましいものがある。
二人一組の大悪魔、なんて言ってたけど…何となく理解してきた。特にノエル先生は全く大悪魔に見えず、本当に自分達が想像していたキヴォトス外部の人間とそっくりなイメージだ。
「だが、私とノエルはあくまで対等な立場としてお前達の戦闘の手助けをしたまで……お前達の立ち回りも、動きも悪くない。自分達の力で、努力で、汗を拭って成し遂げた結果だ――そしてその結果も経験も努力も、必ず後々と自分のモノになる」
「先生、鎖に巻きつけられた経験も自分のモノになるんですか?」
「お前なぁ……奇襲を仕掛けるにはアレくらいド派手なのが良いんだよ。大体痛くなかっただろう?これでも結構緩めた方だ」
「せめて説明くらいして下さいよ!!びっくりし過ぎて夢に出てきたらどうするんですか!」
「一々大袈裟な…怪我もないんだから良いだろう。それだけ元気なら、多分大丈夫だろう」
「まあ、ユウカの言ってることも理解できますわ。私なんて一回、カロンに落とされそうになりましたし…」
「いや、アレは本当にわざとじゃない…偶々だ。掘り返すな…」
落とされそうな場面ってどんな場面?とユウカは逆にツッコミを入れたくなってしまった。
「話は変わりますが……その、倒れてる生徒達はどうしますの?」
「警察か連邦生徒会が何とかするだろう…というか何ならこれを見越してリンが動いてる可能性もあるがな」
「……貴女、リンについてはかなり信頼を寄せてますのね。偶に息が合ったり何というか……」
「優秀な能力、相手が大悪魔であるにも関わらず私に対して礼儀正しいアイツの評価は買っている。連邦生徒会という権利が強い立場にあるリンは…生徒会が不在の中たった一人で代行として色々な問題を抱えている。アイツは大人びてはいるが…お前やユウカ達と同じ、一人この世界で生きる子供だよ。努力してる人間の成果は買う――其れ迄だ」
遠回しに言ってはいるが、此処まで誉めてるのはかなり珍しい部類だ。昔のカロンとは本当に見違える程だ。
いや…相手の潔さと、大悪魔に頼りっきりではないという相手の本質にこそ、カロンは惹かれてるのかもしれない。
「あらあら…どうやら派手にやられてしまった様ですわね……うっふふ、このワカモ――久しぶりのお楽しみになりそうです…ウフフフフ♡」
建物の地下にある連邦生徒会が大事に保管した『とある物』――それが特殊なオーパーツなのか、トリニティ産の聖書なのか、此方が理解すら及ばない特別なナニカなのか…。
嗚呼、壊したくて壊したくてしょうがない――破壊衝動に駆られ、略奪を趣味とする女狐。
妖狐のお面を被る厄災の狐は、遠くから見下ろしていた。
補足:カロンとノエルは生まれ変わったという事で、弱体化こそされましたが、一応キヴォトスには馴染める程度の戦闘能力にはなっております。というかカロン…バロウズと契約してた頃めっちゃ強かったじゃん…。ゲーム式だからか、恐らく弱く見えたりするんでしょう。
人間視点からすれば、人間としては強く、大悪魔から見れば弱いので、戦闘不向きというのは個人的にはあくまで「大悪魔と比べて」と解釈しております。
ブルアカの主人公は基本的に性別が判断されていない。
それは主人公はプレイヤーであり、男性でも女性としても捉えられるから。神話の元ネタとして両性と判断されてる様子もあったとか。
室町アカネの絆エピソードでも、お兄さん、お姉さん、先生の選択肢が現れてたので…
ノエルとカロンが二人一組の大悪魔な為、ノエルとカロンで大悪魔(先生)一人分と考えると、合法的に生徒達と接することができるんですよ。
女性プレイヤーにも、男性プレイヤーにも考慮してくれたブルアカ、有難う…!!
逆に考えてみよう。男性と女性どちらでも可能なら、ジーノ・ロレンツィも先生として可能なのだ。きっとヴァルキューレ学校やSRT学園は、不知火カヤやベアおばみたく利用されてしまうに違いない。
「カンナちゃんやユキノちゃんって視野の狭い、本当に…おバカな子♡」
有り得そうで背筋が凍りました。
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