【完結】人生舐めまくってたギャルが優しい陰キャくんにガチ恋しちゃう話   作:崖の上のジェントルメン

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2.アタシという女

 

 

 

 

 

「……でね、俺は結構、そういう芸能関係の人とも知り合いが多くて……」

 

アタシは斎藤へ嘘コクをした日の放課後、駅前の喫茶店でパパ活をやってた。

 

二人がけの丸テーブルに、お互い対面して座る。目の前にいるスーツ姿のおっさんは、喫茶店に入ってから一時間ちょいの間、ずーーーーっと自慢話しかしてない。

 

「俺、SNSでフォロワーが1000人超えてるからさ、だんだん業界の人とも繋がりが増えてきてね」

 

「へー、そうなんだ」

 

アタシはミルクティーをストローを咥えて飲みながら、心の中で「フォロワー1000人とかカスじゃん」と笑っていた。

 

(せめて5ケタいってから自慢しろよね)

 

そう思いながら、おっさんの話を聴いてるフリをしつつ、遠くにいるイケメンの店員を眺めていた。おっさんはアタシが話を聞いていないことも全然気づいていなくて、オ○ニーと同レベルの会話を延々続けていた。

 

……夕方の七時を過ぎた頃、アタシはいよいよダルくなってきたので、帰ることにした。

 

「……ん、アタシ、用事あるからそろそろ帰る」

 

「ええ?もう終わり?」

 

アタシが席を立つと、そのおっさんも立ってこう言ってきた。

 

「ねえ、“大人”の方はダメなの?」

 

「……………………」

 

「大人OKだったら、“4”出すよ?どう?」

 

……大人。要するにそれはセッ○スのこと。セッ○スに4万円まで出してくれるとおっさんは話してる。

 

ぶっちゃけ言うと、アタシは大人は絶対にやらない主義。好きでもないおっさんと寝るとかフツーにキモい。だから今まで一度も大人はやったことないし、未だに処女だ。

 

「ん……アタシ、今日はパス」

 

「じゃあ、いつならいい?」

 

「……………………」

 

アタシはおっさんの声が聞こえないフリをして、そのまま店を出た。おっさんはしきりにアタシを呼んでたけど、全部それを無視した。

 

(もうあのおっさんとも縁切りかな……)

 

アタシは帰りの電車の中で、そのおっさんの連絡先を全て消した。自慢話ばっかでめんどい人ではあったけど、逆に言えばその自慢話さえ聴いておけば勝手に気持ちよくなってくれるバカだったから、相手すんの楽ではあった。

 

でも、身体の関係にまで持ち込まれるなら、もう要らないかな。

 

(会ってちょっとその自慢聞いとくだけで2万とか……チョロすぎでしょ)

 

なんでみんな、必死こいて働いてんだろ?バカなのかな?こんなに簡単にお金って手に入るのに。

 

「ふぁ……」

 

世の中って大したことないなあと思いながら、アタシは小さくあくびをした。

 

 

 

 

 

 

 

……翌日の、夏休み初日。誰もいないリビングでひとり、アタシはソファに寝転がってアイスを頬張っていた。

 

ノーブラにキャミソールとパンツという、誰か客が来たら即終了の格好だった。

 

「……んふ」

 

スマホで見てた動画がちょっと面白くて、軽く笑った。

 

「ただいま~」

 

玄関から深雪の声がした。彼女は靴を脱ぐと、スタスタとリビングを通ってきた。セーラー服の首の部分を掴み、パタパタと揺らして、服の中に風を入れている。

 

「あー!またお姉ちゃん、そんな格好で!」

 

深雪の小言が始まった。アタシはアイスの棒を口から取って、「うっさいな~」と反撃した。

 

「アタシがどんな格好してようが、深雪にはカンケーないじゃん」

 

「関係大有りだよ!もし私が友だちとか連れてきてたら、どうするの?もう……だらしないよお姉ちゃん」

 

「深雪ってホントくそ真面目~。ママよりうるさいじゃん」

 

「そりゃあね、こんなに近くに反面教師がいたら、真面目にもなるよ。今日から夏休みだからって、浮かれすぎちゃダメだからね!」

 

最近、深雪がどんどんアタシに反抗するようになった。ちぇ、昔はお姉ちゃんお姉ちゃんってどこにでもついてくる、カワイー妹だったのに。顔はよく似てるけど、中身はもう全然違う姉妹。

 

外見で唯一違うのは髪で、アタシは長い金髪だけど、深雪はポニーテールの黒髪ってことくらい。でもそれが、アタシらの性格をそのまんま反映させてる感じ。

 

「全くお姉ちゃんはいつも……」と、深雪は未だにぶつぶつ独り言を言いながら、冷蔵庫にある麦茶を出して、コップに注いでいた。

 

「あ、ねー深雪、アタシにもちょうだいよ」

 

「ほしいんなら、自分で注いで!」

 

「はあ?ケチ」

 

ヤな妹に育っちゃったなーなんて思ってたその時、ピロリンとスマホから通知音が鳴った。

 

確認してみると、それは真由からのLimeだった。

 

 

『佳奈、斎藤への愛の告白はどないでしたかー?♡』

 

 

斎藤……つまり、あの陰キャくんへの告白が成功したかの確認をLimeでしてきたのだ。ちぇ、ムカつく。

 

『愛の告白なわけねーし』

 

アタシがそう返すと、真由は間髪入れずに返信してきた。

 

『ほんで、どうだったん?成功した?失敗した?』

 

『アタシがあんな陰キャにフラれるわけないじゃん』

 

『さすが佳奈!これでラブラブカップルの誕生やな~!おめでとうさん!』

 

『マジうざい』

 

『あらあら?ウチ、キューピッドなんやで??そんな口きいてええんか?』

 

真由の煽りは、どんどんエスカレートしていった。アタシは「いつか絶対仕返ししてやる」と心に決めた。

 

『ええか佳奈、ちゃんと1ヶ月は付き合わなあかんで?』

 

『はいはい、分かってるよ』

 

『なんかデートの予定とか立てとる?』

 

『まだ何も』

 

『ちゃんとデートしてあげな、斎藤くんカワイソーやでー!wwあ、あと写真の方のノルマも忘れんといてや!』

 

『分かってるってば』

 

アタシの返信に、真由は親指を立てたキャラクターのスタンプを送信してきた。

 

「……はあ」

 

アタシは静かにため息をついた。

 

デート……デートねえ。何をすればいいのやら。

 

(まあとりあえず、ご飯でも奢ってもらおうかな。“パパ”ほど金はないにしても、ご飯くらいは大丈夫でしょ)

 

アタシは斎藤の連絡先を開き、デートに誘ってみた。一応、表向きは彼女ってことなので、連絡先はちゃんと交換しておいたのだ。

 

『ねえ、斎藤。あしたヒマ?』

 

(さて、どんな返事が来るのやら)

 

さっさとノルマを終わらせて、この茶番を終わらせたい。

 

「……はい、お姉ちゃん」

 

アタシの顔の横に、麦茶の入ったグラスがあった。それは、深雪が持ってきたものだった。

 

彼女はむすっとした顔をしながら、寝そべっている私を見下ろしていた。

 

「なに?深雪」

 

「麦茶……欲しかったんでしょ?いつまで経ってもお姉ちゃん、自分でいれないから、持ってきたの」

 

「んー、もういい」

 

「もういいって……いらないの?」

 

「なんか、気分じゃなくなった」

 

「……はあ」

 

深雪はアタシをじっと睨みながら、心底呆れた声でこう言った。

 

「お姉ちゃん……前々から言おうと思ってたんだけど、『ありがとう』くらいはね、言ってほしい」

 

「……………………」

 

「麦茶がいらなくなったのは別にいいけど、せめてさ……私が持ってきたことに対して、一言何か……」

 

「うっさいな、あんたが勝手に持ってきたんじゃん。アタシのせいにすんなし」

 

アタシは深雪から眼を逸らして、スマホをいじった。

 

「いや、お姉ちゃんのせいにするとかしないとか、そういうことじゃ……」

 

深雪はアタシへいろいろ話をしようとしたみたいだけど、アタシがずっとスマホを触ってるので、最終的には諦めた。

 

「……はあ、もういいよ。麦茶いらないんなら、貰うからね」

 

そう言って、深雪はコップに入ってた麦茶を全部飲み干した。

 

その時、アタシのスマホに通知が入った。それは、斎藤からの返信だった。

 

『明日は暇ですけど、どうかしましたか?』

 

もう、察しが悪いなあ陰キャは。

 

「だいたいデートの誘いだってわかるでしょ、フツー」

 

思ってたことが、口からそのまま出ていた。それを聞いた深雪は、「なに?デートするのお姉ちゃん?」と質問してきた。

 

「ん、まーね」

 

「新しい彼氏、できたんだ」

 

「そんなとこ」

 

「……今度はどんな人なの?」

 

「さあ」

 

「さあって……なんで付き合ってる人のこと、知らないの?」

 

「……………………」

 

アタシはその質問には答えなかった。ここで正直に『嘘コクをやった』なんて言ったら、深雪は間違いなく『なんて酷いことを!』って怒鳴り散らすのは目に見えてるもん。

 

深雪もアタシの何かを察したのか、それ以上問いかけることはなかった。その代わり深雪は、アタシに対してひとつ、話しかけようとした。

 

「お姉ちゃん、ちゃんと相手の人……大事にしないと……」

 

……でも、そこまでは言葉にしたけど、それから先の続きはなかった。

 

「……いいな、お姉ちゃんばっかり」

 

「なに?深雪、あんた彼氏いたことないの?」

 

「……うん」

 

「ま、確かにあんたが彼女だと、小言ばっかでうるさそうだもんね。それに、理想も高そうだし」

 

「……ふんだ、別にそんなことないもん。誠実で優しくて、私の話をちゃんと聞いてくれる人でいてくれたら……」

 

「はいはい、誠実ね」

 

「……………………」

 

深雪は黙ったまま、空になったグラスを持って、また台所へ戻っていった。

 

 

 

 

 

 

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