【完結】人生舐めまくってたギャルが優しい陰キャくんにガチ恋しちゃう話   作:崖の上のジェントルメン

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5.深雪という妹(1/2)

 

 

 

 

 

 

「……ケンジ」

 

アタシは、自分の部屋にあるベッドに腰かけて、ぼーっと写真を眺めていた。

 

ケンジといろいろ撮った……たくさんの思い出。この1ヶ月で、どれだけの枚数撮ったことだろう。何回見返しても、その写真の時の気持ちを思い出して胸がワクワクするし……今、隣にケンジがいないことに、心の底から悲しくなる。

 

胸にぽっかりと穴が空いたみたいな……自分の中の大切な何かが根こそぎ消えちゃったみたいな……そんな気にさせられる。

 

 

コンコン

 

 

アタシの部屋の扉を、ノックする音が聞こえた。その後に、「お姉ちゃんいる?」と、深雪の伺う声が聞こえた。

 

「……………………」

 

アタシは、返事をしなかった。別に、深雪が部屋に入ってくるのが嫌だったわけじゃない。ただ……返事をする気分にもならなかっただけだった。

 

「……お姉ちゃん、入るよ」

 

そう一声かけてから、彼女はドアノブを開けて部屋に入った来た。深雪は今まで見たことないくらいくらいに……怒った顔をしていた。眉間にしわを寄せて、口をぎゅっと閉じて、じっとアタシを睨んでいた。

 

「……お姉ちゃん、本当なの?健治さんを騙してたって」

 

「……………………」

 

「健治さんのこと好きじゃないのに……友だちとの悪ノリで嘘の告白して、この1ヶ月……ずっと付き合ってたって……」

 

「……………………」

 

アタシは深雪の問いかけに対して、小さくうなずいた。それを見た彼女は、スタスタとアタシの前まで歩いてきて……

 

 

パンッ!!

 

 

思い切りアタシに、ビンタした。

 

「最低!!最低だよお姉ちゃん!!」

 

「……………………」

 

「お姉ちゃんがそんな人だなんて、思わなかった!だらしないし、図太くって傲慢だとは思ってたけど、人の気持ちを弄ぶような人だとは思わなかった!!」

 

「……………………」

 

「健治さんがどれだけ……どれだけそれで傷ついたと思ってるの!どれだけ健治さんが……どれだけ……!!」

 

深雪の身体中が、怒りでわなわなと震えていた。目には涙が浮かんでいて、今にも溢れ落ちそうだった。

 

(深雪は怒ると、いつも泣くんだよね)

 

場違いなほどに冷えきった頭の片隅で、アタシはそんなことを思っていた。

 

「……私、お姉ちゃんにひとつ、隠してたことがある」

 

「……………………」

 

「本当は私、健治さんのことが好きだったの。初めて会った時から、ずっと今まで」

 

「……………………」

 

「でも、お姉ちゃんと健治さんが付き合ってたから、その気持ちは胸の奥にしまってた。健治さんはお姉ちゃんが好きで……お姉ちゃんも健治さんが好きだって、そう信じてたから」

 

「……………………」

 

「だけど、本当はお姉ちゃんは……健治さんを好きじゃなかったんだったら……これからは、遠慮しないから」

 

深雪はくるりと背中をむけて、また部屋の外へと出ていった。扉を閉める直前、彼女は背中越しにアタシへ言った。

 

「もう二度と、“私の”健治さんに近寄らないで」

 

 

……バタンッ

 

 

「……………………」

 

静まり返った部屋に、アタシはまた一人取り残された。

 

「……知ってたよ、深雪」

 

その時、ぽつりとアタシの口から言葉が漏れた。

 

「あんたがケンジのこと好きなの、知ってたよ」

 

アタシは手に持っていたスマホで、また写真を見始めた。

 

……深雪は真面目で正義感も強い。だらしないアタシなんか比べ物にならないくらい、いろんなことをテキパキこなせるし……細かい気配りだってできる。

 

誰がどう見たって、ケンジとはアタシよりも、深雪の方がお似合いだってことが分かる。

 

ケンジの“家庭環境”も考えると、深雪みたいなしっかりものの方が絶対いいし、深雪だってケンジみたいな優しい奴とならずっと幸せに暮らしていける。

 

「……………………」

 

…………でも……でも。

 

でも、アタシ……。

 

 

ずっとそのこと、認めたくなかった。

 

 

確かに深雪の方が、ケンジに一番ふさわしいとしても……アタシがそばにいてもいいじゃんって……好きだから仕方ないじゃんって……。

 

 

 

『いいんだ、田代さん。気を使わないで。1ヶ月っていう短い期間だったけど……僕は、良い夢を見られたよ。だから、ありがとう』

 

 

 

……だけど、もうケンジと一緒には、きっといられない。

 

ケンジはアタシなんか、失望して……大嫌いに、なっちゃったはずだよね。

 

アタシなんかよりも、深雪がケンジのそばにいる方がいい。

 

深雪が……深雪が……

 

「……………………」

 

アタシはもう、枯れてしまったと思うほどに泣いていたけど、またもや涙が溢れ出てしまった。

 

バカな自分に対するムカつきと、深雪への……分不相応な激しい嫉妬。

 

自分の浅はかさに嫌気がさして、胸が締め付けられる。

 

深雪と、ケンジ……。

 

二人が初めて会ったのは、アタシとケンジが三回目のデートをしてた時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……動物園?」

 

アタシがスマホ越しに真由へ聞き返すと、彼女は『そーそー!ええやろ?』と言って笑った。

 

『おかんが福引きで入場料の半額券を引き当てたのをくれたんやけど、ウチ動物は臭くて好かんのよ~。せやから、佳奈にあげたろと思って』

 

「動物園ねえ……」

 

『ほらほら、例の陰キャくんとのデートにでもつこたらええやんか』

 

「……まあ、そうね。一応貰っておこうかな」

 

『おっけ!ほな今度、そっち持っていくわ』

 

「わかった」

 

『なんやなんや?結構“サイトーくん”、気に入って来たんと違う~?♡』

 

「っさいなあ~!そんなんじゃないっての!アタシが気分転換のついでに、デートのノルマこなせば一石二鳥ってだけ」

 

『はいはい、そういうことにしとくわ♡』

 

「ウザいなあもう……」

 

アタシの呆れた口調をまるで気にしていない真由は、『きゃははは!』とスマホのスピーカーが音割れする勢いで笑った。

 

『あ!そうそう、この半額券な、ちょっとめんどいことが1個あってな?』

 

「めんどいこと?」

 

『なんかな?三人以上で入場せんと、券が使えんのやって!ケチ臭いと思わん~?』

 

「はあ?マジなのそれ?」

 

『せやねん。そうなると、そのサイトーくんの他にも誰か一人、連れていかないかんのよなあ』

 

「全く……ダルいの押し付けんなっての」

 

『ウチに言うたかてしょうがないやんか~!まあでも、一人くらいならなんとかなるやろ?』

 

「うーん、アタシと斎藤と、あと一人ねえ……」

 

……この時、アタシの頭の中にぼんやりと浮かんできたのは、深雪の顔だった。

 

深雪であれば、勝手に気を遣って斎藤と仲良くなるだろうし、斎藤の方もアタシの妹を嫌がるってこともないだろう。アタシの友だちを連れてってもいいけど、動物園ではしゃぐ奴ってあんまいないんよね。アタシは動物好きだからいいけど、だいたい真由みたいに「臭いから無理」ってやつばっか。

 

かと言って、斎藤の知り合いを連れて来られるのも、なんか面倒。陰キャ仲間と友だちになる気なんてさらさらないし、1ヶ月後には別れる彼氏からの知り合いを増やす意味なんて皆無すぎる。

 

なので、深雪が一番手っ取り早いと思った。

 

「……………………」

 

でもその時……なんとなーく、嫌な予感がした。

 

予感っていうか、胸騒ぎ?的なやつ。よくわかんないけど。

 

何もビビる要素ないって思うんだけど、でも……何かがアタシの胸をざわつかせた。

 

(深雪と……ケンジを会わせる)

 

そう言えば、前に深雪とケンジをくっつければ、罰ゲーム回避になるなって思ったことあったっけ。

 

実際、なんか気が合いそうな感じするもんね。斎藤はバカ丁寧で貧乏くじ引きまくるお人好しだし、深雪は委員長キャラばりにクソ真面目だし。

 

あれ……?なんで前、会わせるの止めたんだっけ?なんか理由があったような……。

 

「……………………」

 

その時のことを思いだそうとしたけど、全然記憶を引っ張り出せなかった。

 

(……まあでも、とりあえず深雪でいっか)

 

そうして、自分の感覚を無視することにした。

 

よくわかんないけど、なんとかなるでしょ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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