脳みそ抜かれて女の子になって人類守るんだよ!   作:ハヤモ

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前書き
方向性がブレなければ良かったなと後悔しながら、どこまで書けるかも分からない中。

キャラ崩壊注意ですよん(今更ですよん)


106.前倒しの弊害

あの日、私は見た。

赤い光が空を覆うのを。

 

私は見た。 倒れ逝く人々を。

私は見た。 必死に戦う兵隊さんを。

 

 

「EDF!」

 

 

私は聞いた。 絶望に抗う声を。

私は感じた。 絶望を打ち破る力を。

 

今もその声が児玉する。

頭に。 地上に。 私の心に。

 

 

「助けに来た! もう大丈夫だ!」

 

 

その手を取った。 希望の温かさだった。

私もなろうと思った。 彼等のような希望に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フェアリーテールモデル、第1世代ゴッデスは間も無く実戦配備される。

第2世代も着手、機体開発にリソースが割かれた事で、武器開発はやや遅れている。 それでも戦争激化の為に、前倒しで実戦配備される事になった。

 

 

「全員分の武器を用意する暇がなかった。 まさか素手で殴って来いと言う気か?」

「理解している。 こちらで仮の武器を用意した。 素手よりマシだろう」

「本当にマシというレベルだな」

「それ程の事態だ」

 

 

エイブとプロフェッサーが会話する。

研究員同士の会話となれば、気難しいイメージだが、その暇さえ惜しいと手短に、簡潔に雰囲気で述べるのみ。

 

レッドフードにはスナイパーライフル……というより大砲のプラネット・スーパーカノンを。 連射性は皆無、専用スコープの開発も間に合っていないが、機動力を活かす戦い方をする彼女ならば、上手く立ち回ってくれると信じる。

スノーホワイトにはアサルトライフルのTZストークを。 十分ラプチャーの装甲に有効な筈だ。 更にバックパック装備にセントリーガンのZEブラスターを加えた。 起動すると敵を自動捕捉、凄まじい破壊力のあるビームを照射する。 人道的見地から開発が中止された経緯がある程だ。

ドロシーにもアサルトライフルのMA10Eスレイドを。 威力、射程、精度が高水準の大型アサルトライフルだ。 その大きさ、重量から取り回しは難しいが、それは生身の話。 ニケである彼女なら振り回せる筈だ。

紅蓮はまだ来てないが、専用武器が用意出来て無い場合、フェンサーの電刃刀か何かを渡すつもりではある。

リリーバイスは正史通り素手だ。 無理に持たせると、何故か壊れるから。

ラプンツェルはV.C.T.所属なのもあり、其方が用意した。 宗教的、政治的事情があるのだろう。 深入りはしない。

 

 

「……あのマリスとかいう鬼畜AI主導のVR訓練といい、ナノマシンNIMPHといい、一見圧縮訓練は付け焼き刃だ。 どうにも不安な要素を盛り込んだばかりに感じるが。 大丈夫なのか? 彼女達に盛り込んだ戦闘データすら信頼して良いものか……EDF総司令部の強い要望故、第2世代といい、協力を断れなかったが」

 

 

急な命令。 無理矢理に己の研究に口出しをされた不快感。 エイブは不満と不安を垂らしながら端末を操作し続けるも、プロフェッサーもまた、端末を弄りながら返答する並列作業を熟す。

 

 

「ストーム1という生身の人間が、桁外れな戦績を出している。 その実例を見てもか?」

「先の大戦の、士気高揚のプロパガンダ映像や資料かと思ったよ。 或いはフェイクか」

「普通の反応だな。 簡単に認めたら、その方が問題かも知れない」

 

 

慣れた寝不足も度が過ぎ、眩暈の中。

酷いクマを目の下に出しつつも、作業の手は止められない。 出来る事をするのみ。

 

 

「……私もニケになる。 寝る暇が惜しい」

「構わんよ。 脳は多い方が良い。 だが言っておく、極度のストレスは思考転換を起こす恐れがある。 睡眠、食事は大切だ。 ニケの体は万能では無い」

「だとしても、生身より楽が出来そうだ。 プロフェッサーもどうだ? 人の脳に飽き足らず、自らも実験台の俎上にのる度量は見せたらどうだ?」

「適性試験は落ちた。 残念だ」

 

 

ストレスから軽口、皮肉が飛び交う中。

研究室に1人の男性兵士が入室。 警備の為か緊急事態か。 鈍る脳で薄ら思うエイブだったが、次の言葉には過去1番に疑った。

 

 

「ツライさん現着。 ワイの脳を抜いて女の子にして人類守らせるんよ!」

「……誰だ変態をラボに入れたのは」

「アンタがエイブさん? ワイがニケになった後も宜しくな!」

「……私は夢を見ているのか?」

 

 

知性皆無なキモい男の登場。

或いは凶悪な精神犯罪者。

エイブは遂に現実である事を疑い始める。 というか現実逃避をしている。 嫌悪感のまま始末したくなる。

 

 

「ところがどっこいやで。 聞いて驚くなや、ワイは男なのにニケ適性あるんや。 その癖に量産型なんやけど」

「どうやら過酷な戦争で凶悪な精神犯罪者に思考転換してしまったらしい。 それか、そういう妄想をして辛い現実から目を逸らしているのか」

「エイブさん……あなた、疲れとりますな」

「おかげさまで」

 

 

職種違い。 畑違いも良いところな、というか同じ人間の会話なのか現実か夢なのか幻覚なのか。 疲労感で正常な判断が出来ていないエイブ。

一方、プロフェッサーは作業に区切りを終え、ツライさんを案内する。

 

 

「今来たところか。 行こう。 ボディの準備は出来ている。 換装をしようか」

「なぁプロフェッサー。 こちらの方、エイブさんに何も話してないん?」

「簡単には説明した。 だがまともに取り合ってくれないな。 今もだが」

「嫌われとります?」

「そうだな。 彼女の研究に無理矢理割り込んだからな。 信用が無くても仕方ない」

「チ◯コ無くす絶望よりマシやろ。 今や慣れたもんで、些細に感じてまうが」

 

 

挙句に下品な単語が聞こえたが無視する。

自分の作業に没頭して他に耳を塞ごう。 それが最善の策かも知れない。

 

 

「……私は第2世代型の仕上げに入る。 頃合いを見て私もニケにしてくれ」

「担当者には伝えておく」

「そんじゃまた会う時は互いにニケかな?」

「出来れば会いたく無いがね」

 

 

どうやらツライまで嫌われたようだが、当人は早くメスに堕ちたいのか、会話もそこそこに奥へ引っ込んでしまった。

エイブは何も見なかった、聞かなかった事にし、やがて作業に区切りをつけると、そのまま研究室の冷たい床の上で眠り込む。

 

 

「ぐごおおぉ……」

 

 

酷いイビキは元からか。 それともニケになれば色々と改善するのか。

なんであれ時間は待ってくれない。 技術進捗もまた、待ってはくれなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんだよこれ! 照準器も簡単な奴で狙い難いし! もっとこう、連続でバンバン撃てる武器ねぇのか? それともドリルみたいな武器とか、もっと格好良いヤツ!」

 

 

前倒しで実戦配備されたゴッデス。

その内の1人、真紅髪のレッドフードは文句たらたらである。

手にはプラネット・スーパーカノン。 レンジャー用の強力な狙撃銃であり、銃身が長く反動が凄まじい。 鍛えた生身の兵士がやっと使えるギリギリの銃である。

だが強靭な体を持つニケなら大した問題にならない。 それより特殊な装填機構で次弾が遅いのにケチがあった。

それを宥めるは、小さな白雪スノーホワイト。

 

 

「武器は製作中です。 もう少しの辛抱です」

「そういうおチビちゃんは、何を使ってるんだ?」

「アサルトライフルのストークTZです。 至近弾ならラプチャーの装甲をも貫通します。 それとセントリーガンでありながらビームを放つZEブラスターを……自分なりに手は加えてはありますが」

 

 

役割、立ち回り上、貸与された武器を改造していたスノーホワイト。 流石というか。

それを聞いたレッドフードは素直に感心しつつ、自分もとせがむ。

 

 

「すげーじゃん! 私のも強くしてくれよ!」

「良いですけど……EDFには悪い事をしている気分になってきます……」

「良いじゃねぇか! 寧ろ向こうが悪いだろ、こんな使い難いのを押し付けて戦場に放り出すんだからさ!」

「まぁ……事情があったにせよ、もう少し訓練時間を増やすとか、武器と共にロールアウト出来なかったのかなとか、思うところはありますが」

 

 

純粋なスノホワもまた、技術職的にも思うところはあったらしい。

ニケという革新的な存在を、こうも短期間で開発したのは凄いけれど、随分乱暴なやり方でもあるから。

けれど。 それだけ人類は切羽詰まってる。 そうみるべきだとも、薄ら気付いている。

 

 

「私も出来る事をしなきゃ」

 

 

そう意気込み、小さな体に大きな決意を秘めるスノホワに、水を刺すようにドロシーが言う。

 

 

「では気持ちを改めたところで。 私のもお願いします。 よろしいですか?」

 

 

彼女もまた、武器に不満があった故に。

MA10EスレイドはスノホワのTZより強力ではあるが、大型で取り回しが悪く、何よりそのゴツさと赤い色は、野蛮なレッドフードに向いてるとすら思っていた。

 

 

「あっ、はい……では威力の底上げを……」

「いいえ。 もっとスマートに気品溢れる形に直して下さい。 でなければ、この銃はレッドフードにくれてやります」

 

 

そんな事をいったから、レッドフードはドロシーにも絡んでいく。 性格が合うとは言えなかった。

 

 

「何だよお嬢サマ〜! 銃に気品とから求めちゃってさ。 敵を倒すアンティークが欲しいなんて、さすが、お高く止まるお嬢サマですわ〜……っておいいい!? 今、頬を銃弾が掠めたんだけど!?」

「あらすみません。 暴発したようです。 やはりこの銃は野蛮な者にぴったりのようですね」

 

 

ウザ絡みするから、遂には脅しを入れてしまうドロシー。 その様子に、離れた所で頭を抱える指揮官。 困惑するラプンツェル。 温かい目で見守るリリス。

 

 

「え、ええと……あはは……」

 

 

そして苦笑するスノーホワイトなのであった。

 

これが今のゴッデス。 勝利の女神ニケ。

やがて希望の象徴となり、ストーム1を越える名声と称賛を得ていく部隊である。

 

そして影で支える、名も無き人々。

 

特に男からニケになった日陰者の物語なんて、誰も見向きもしないだろう。

 

ツライ物語。

名誉も尊厳も無い。 けれど人類に尽くした。

 

そう言えるなら、価値ある物語だろうか。

けれど結末は誰にも分からなかった……。




後書き
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