TS要素にある葛藤を強調するとか、その上で男女恋愛とかあまりなく、グダグダが続いているのを自覚しつつ。
或いは感情が、脳が震えるような展開も少なく。ニケ的には絶望とか……文才も無くツライさん。
原作ではラピの覚醒、次はアニスの話かな、という展開を見せつつも、謎は増える一方。リアル宇宙の話とか凄いけど、モヤモヤも残りつつ。
110.侵されたシンデレラ
「リリス様は、時々医務室に行かれますよね。 具合が悪いのですか?」
ピナがさりげなくドロシーに尋ねる。
歴史の修正力か、どの世界線でも2人は仲良くやっているが、その流れのままにお茶会をし、今もそうしている。
そんな事情も互いに知らず、質問に答えていくドロシー。 量産型だからと驕る事なく接する。
「そうではありませんピナ。 お見舞いに行かれているのです」
「お見舞いですか? 量産型のですか?」
「フェアリーテールモデル初号機です」
「ッ!」
ピナ、驚愕。
知らないゴッデス隊員がいたなんて。
その表情も予想してか、ドロシーは続ける。
「知らないのも無理はありません。 初陣で熱暴走を起こし昏睡状態。 以降、寝たきりですから。 戦果を上げてませんし、世間の知名度も高くないでしょう。 下手に公表して混乱を招く訳にもいきません」
「そんな方がいたなんて……」
「それでも助かった事は幸運です。 詳しくないのですが、先進技術研究所の提案で、ボディにリミッターをかけていたそうです。 それが無かったら爆散していた可能性がありました」
ツライやピナが知らない所でも、正史より少しマシな展開を見せていた。
正史の初号機は、自らの出力に耐えられず爆散、欠番となったが、この世界線ではプロフェッサーの提案でリミッターがかけられ、お陰で一命を取り留めた。 それでも熱暴走を起こし昏睡状態。 戦力外なのは共通している。
「……その、治る可能性は?」
「分かりません。 ですが貴重な適合者です。 悪いようにはしないでしょう」
「そう、ですか……良くなると良いですね」
そう願うしかない。
最悪の事態を回避してくれたプロフェッサーに感謝しつつ、紅茶を嗜む2人。 冷めた紅茶は、少し複雑な味だった。
でも不幸はいずれ無くなる。
その筈だった。 なのに。
「ぴ、ピナ!」
ツライが血相変えてやってきた。
そして不幸を告げるのだ。
「シンデレラが侵食を受けたって……!」
歴史の修正力。
もしかしたら侮っていたのかも知れない。
「なんだと!? 第2世代型が暴走した!?」
一方、その報告に本部司令官は叫んでいた。
相手はいつもの戦略情報部だ。
「正確にはシンデレラです。 出撃前の最終調整後に侵食反応を示し、研究所にいた他タイプを攻撃、大破させました。 その後、コーリングシグナルを発してラプチャーを呼び寄せました。 防衛隊との通信は途絶。 恐らく第2ニケ研究所は……全滅です」
「馬鹿な! 1度も出撃していないんだぞ!?」
司令官の謎はご尤もだ。
第2世代は正史通り人類側の内ゲバで、どこの所属か揉めに揉め、今まで出撃命令が下った事が無い。
やっと最近に纏まり始め、出撃予定が組まれたところである。 つまり今日まで1度も戦場に出ていない。 それなのに侵食とは。
「侵食はラプチャーが直接ニケに対してウィルスか書き換えコードの様なものを送り発症する。 そうではなかったのか!?」
「そう考えています。 なので研究所に裏切り者がいた、と考えています」
「そんな馬鹿な……」
堂々巡りに呟く司令官。
ストーム1に次ぐ人類最高戦力が寝返るとは。
「知る限り、侵食はラプチャー由来のものだ。 人類が扱った試しは無い。 使用する理由もない。 それでも裏切るというのは腑に落ちない」
「……追い詰められ絶望した人間は、時に破滅的な行動に出ます。 或いは歪んだ希望に縋るか……」
言い淀む少佐。 溜息を吐く司令官。
先の大戦でも似た事例はあった故に。 強者を無条件に崇め、許しを乞い、市民を陽動し、歪んだ正義と平和を言い訳に犠牲を増やそうとした。 ある意味では人間らしい本能といえるが、現場からすれば冗談では無い。
「ラプチャーの目的がプライマー同様、人類の駆逐にあるならば無意味だ。 それでも愚かしい生物である人間は、そこまで考えようとは思わない。 全て都合の良いよう解釈して生き残れると思い込む。 100年後のアークでも謎の侵食経緯を報告されているが、それも人間側の仕業なのかも知れないな……」
「未来については、人語を扱う特殊個体の存在があげられます。 裏取引による生贄、という考えは出来ますが、今回はその様な事例は報告されていません」
「やはりラプチャーを崇める破滅的な思考か、それか知らない所で取引がされているのか」
宗教団体に通ずるV.C.T.を怪しむ事も出来るが、憶測だけで語っても仕方ない。
信じる者で儲ける。 すくわれるのは、足元だけ。
全否定をしているのではない。 ただその時、踏み台となり犠牲になるのはいつも無垢で敬虔な者達だ。 その者達を救済するのは誰なのか。 狂喜のラプチャーか。 それらに齎される死、破滅、絶望か。 それこそ冗談ではない。
「プロフェッサーに報告は?」
「既に参謀からされています」
「分かった……兎に角、我々は軍人だ。 現実に対処する。 今も多くの兵士が命懸けで戦っているのを忘れてはならない」
「以降、敵対したシンデレラをアナキオールと呼称。 人類にとって最大級の脅威です」
正史通りの展開に戻り始めたが、諦観するには早い。 人類の悪足掻きは続く。
「まだだ。 試作段階のアンチェインドを投薬すれば正気に戻せる可能性はある。 絶望するにはまだ早い!」
「はい。 偵察隊のスカウト、空軍の偵察爆撃機が可能な限り追跡。 チャンスがあり次第、攻撃を敢行します」
「それと研究所を捜索。 歴史通りなら主任研究員のエイブも第2世代フェアリーテールモデルも生き延びている筈だ。 政府関係者やV.C.T.が彼女達を確保する前に保護する! 万全を喫する為、プロフェッサーと護衛に大尉……ストーム2を派兵する!」
「分かりました。 軌道EV攻略作戦は延期。 ゴッデスが拠点にしているデスピナⅡに連絡します」
それぞれ足掻く。 運命に抗う為に。
この世界線を無駄死にさせる訳にもいかない。 可能な限り情報を集める。 例え駄目でも、ツライやピナが、次の世界線へ繋げて必ずやり遂げる。 そう信じて勝利への礎となる。
「生きている者がやらねばならない」
まだ何も終わっちゃいない。
EDFは戦う。 最後まで、きっと……。
最初は夢をみているのかと思った。
見えない壁越しに私を見て、仲間を見ていたから。
でも夢にしては生々しくて。
壁越しの光景が現実に気付かされた。 刹那。
「がはっ!?」
「ごふっ!」
「いやあああ!」
「やめて……! ああああ!!?」
私は、私に良く似た誰かは、大切な仲間を傷つけ始めた。
エイブを吹き飛ばして。
リトルマーメイドの顎を砕き。
ヘンゼルとグレーテルの繋ぐ手を捥いで。
レッドシューズの足を引き千切った。
動きを弱らせ、コーリングシグナルを発した私は、押し寄せるラプチャーに始末を任せ、その場を後にする。
「嘘……夢、よね。 酷い悪夢よね……?」
こんな事、私がする筈がない。
でも感覚はハッキリしている。 見えない壁越しに現実を見せつけられている。
「いや……いやよ、みんな! こんな事、私はしない! あれは私じゃない!」
すれ違うラプチャーは、私に何もしない。
コーリングシグナルといい、これじゃ。
「ラプチャー、じゃない……!」
どうしてこんな事に。
なんで私の体は勝手に動くの?
私はどうすれば良いの?
何もかもが分からない。
「いや……こんなの、嫌あああ!!」
私は叫び散らしながら、壁を何度も叩いた。
けれど壁は壊れない。 声は届かない。
「返して! 返してよ! それは私の体よ! 私のガラスの靴よ! あなたのじゃない! 返してよ!!」
叩く。 叫ぶ。 訴え続ける。
手と目頭が熱くなり、喉と涙が枯れ始め、心が痛くなり、私が弱って消えて逝く。
叩くのをやめ、蹲る。
こんな筈じゃなかった。
私はゴッデスを助ける筈だった。
美しい私でいたかった。
今の私は美しくない。 酷く、醜い。
「……私の事、裏切り者だって思うかしら。 皆、助けに来てくれるかしら」
弱った心は助けを求める。
言葉も譫言のようになっていく。
「……鏡よ鏡……私は、どうすれば良いの? どうすればゴッデスの役に立てる? 仲間になれる?」
その問いに、答える声が響く。
それは私が生んだ幻聴か。 それとも。
「簡単だ。 全ての者を倒し、千切り燃やして、潰して、破壊すれば良い」
「……本当にそれで仲間になれるの?」
「そうだ。 全てはゴッデスの為に」
「……ゴッデスの、為に……」
「ゴッデスの為に。 全てはゴッデスの為に」
「ゴッデスの為に……」
「全てはクイーンの為に」
「全てはクイーンの為に」
意識が微睡んでいく。 暗闇に沈む。
苦しみから逃れるように……。
第2ニケ研究所。
防衛に当たっていた量産型は、押し寄せたラプチャーに蹂躙され全滅。施設は滅茶苦茶だ。
もはや生存者はいないかに思われたが、奇跡的に生き延びたエイブは大破した第2世代のニケらを必死にシェルターに収容。
パーツをかき集め、皆を修復。 生き延びていた。
だが、シンデレラが侵食された事実は取り消せない。 あのまま人類に多大な被害を与えるのは火を見るより明らかで、この責任追及が来る事を危惧したエイブは通信を意図的に遮断。 身を隠していた。
正史だと、その事情を知らないレッドシューズが通信線が切れているだけなのを確認、直して連絡をとってしまう。 結果、オスワルド率いる武装部隊が逮捕しに来て悶着する。
だが今回はそうはいかない。
EDFは大凡だが正史を知っている。 侵食の原因は分からないが、このまま政府やV.C.T.が絡んだり、独断行動を起こされて第2世代を失う事態になるのを指を咥えて見る事はしない。
「使える予備パーツはまだある筈……」
そして今。
まだ修復途中の段階。 量産型の残骸を漁るラプチャーに気付かれぬよう、身を屈めてコソコソとパーツを集めるエイブ。
そんな時、突如として光線がラプチャーの1体を貫いた。 一瞬だけ装甲が耐えたものの、数秒の照射によりコアが溶解。 反撃の間もなく無力化されてしまう。
(なっ、EDFのブレイザー!? それも量産型じゃなく高出力タイプ! こんなものを支給されているとなれば相手は精鋭部隊! 援軍か、調査隊か、いや私が生きているのを嗅ぎつけてきたか!?)
疲労と緊迫感で冷静さを欠いた頭で、なんとか考えるエイブだったが、その間にも頭上を更に3本の光線が伸びていく。
それぞれ残りのラプチャーを貫き倒せば、やがて声が響いた。 知らない声だ。
「クリア! レーダーに感なし!」
「エブラ粒子が薄くても、電探に頼るな。 目と耳も有効に使え!」
「ちくしょう! 来るのがもう少し早けりゃ、ニケを助けられたかも知れねぇ! やるせねぇな……」
「そう言うな。 情報が正しければ主任研究員と、第2世代のボディは辛うじて生きてる可能性がある」
(ッ! やはり私と娘らが狙いか!)
動きが早いEDFに内心舌打ちするエイブ。
まだ第2世代は修理が終わっておらず、再起動は難しい。 何とか無力化を……。
そう邪な考えも始めたが、次には知った声が聴覚センサーを拾ったものだから、思わず体が反応してしまった。
「そうだ。 ここにはシェルターがある。 無事ならそこにいる筈だ」
「プロフェッサー!?」
「むっ、やはり無事で何よりだ」
遂声を荒げ、護衛と思われる部隊に銃口を向けられるので、慌てて両手をあげる。
「ま、待て……! 私に抵抗の意思は無い!」
「主任のエイブだな。 安心しろ、俺達はEDFのストーム2。 お前を助けにきた」
「ストーム2!? 伝説の遊撃隊の1班が来るとはな。 喜んで良いのか悪いのか」
やはり精鋭であったが、まさかのストームか。
ストーム1と共に戦い抜き、人類を救った精鋭中の精鋭。 量産型ニケの私が戦っても勝ち目は薄い。
そう考えたエイブは緊張と共に戦意を喪失。
プロフェッサーらに身柄を委ねる。
「……シェルターに第2世代のボディがある。 修理が必要だが、脳は無事だ」
「そして、その中に上層部に報告していないニケが2体いる。 ヘンゼルとグレーテルだ。 違うか?」
「正解だよプロフェッサー。 貴方に隠し事は難しいのかも知れないな」
ストーム2に睨まれつつも、大人しくするエイブ。 そのままシェルターに案内し、横たわる4体のボディを見せる。
「確かに。 シンデレラを入れて3タイプの筈が、これでは5タイプだな」
「どういうことだ。 上に黙ってニケを作るなんて真似、必要だったのか?」
「済まないが詳しく説明する暇がない。 プロフェッサー、危険を冒してまで来てくれたという事は、味方で良いんだよな?」
「勿論だ。 手伝おう」
「……頼む」
作業に入るエイブとプロフェッサー。
その間、ストーム2の護衛は続く。
ただ、こうしている間にもシンデレラことアナキオールは地上を蹂躙。 多くの被害を出して回っていたのだった……。
「所属不明の人型物体接近! あ、あれはアナキオール! 敵です!?」
通信兵が悲鳴に似た報告を上げれば、部隊は蜂の巣をつついた大騒ぎになる。
「人類最大戦力のニケが侵食を受けたか!? 迎撃しろ! 無抵抗のまま死んで堪るか!」
高速で迫り来る赤目のシンデレラに向かって、ネグリング自走ミサイルが誘導弾を撃ちまくり、ケブラーも同様に弾幕を張る。
「対空車両、弾幕を張れ!」
「レールガン喰らわせろ! 隊列は崩して良い!」
「コンバットフレーム、撃ちまくれ!」
自走レールガンは遠方から狙いを定め次第、狙撃を開始。 何とか装甲を貫けないか試みる。
対空仕様のコンバットフレーム、ニケスリボルバーカスタムは、両肩のミサイルポッドからミサイルを発射しつつ、両腕にマウントされたリボルバーカノンを唸らせ、弾幕を張った。
だがシンデレラは不敵な笑みを浮かべてミサイル群を全て交わし、銃弾は浴びてもびくともしない。 特殊装甲のガラスの靴とボディは伊達ではないのだ。
「効いてません! 効果なし!」
「諦めるな! 可能な限り攻撃を続けて注意を引くんだ! 時間を稼げば、それだけ仲間が助かる!」
続く必死の抵抗。
それを嘲笑うように、シンデレラは細い片腕をひとふり。 すると、ガラスの靴から無数の光線が放たれ、次々とビークルに突き刺さり爆散。 一瞬で全滅してしまう。
「遠距離兵器群全滅ッ!!」
「これ以上の対抗手段がありません! く、来るな……こっちに来るなああああ!!」
「嫌だ、死にたくない、死にたくないい!?」
「助けて……助けて下さい……!」
「ぎゃああああ!!?」
シンデレラは生身の兵士にも容赦がない。
無表情の赤い目を向け、動く者全てに攻撃を加えていく。 やがて鉄屑の島が点々と浮く血の海が出来てやっと移動を開始したのだった。
「合流予定のシンデレラが侵食を受け、名前をアナキオールに改名。 以降、こうした個体をヘレティックと呼称する事になった」
「この事態を受けて軌道EV攻略作戦は変更、アナキオールの無力化を優先する事になったわ」
指揮官とリリスがブリーフィングで皆に言うと、それぞれ反応を示す隊員ら。
主に困惑。 疑問、不安が続く。
「侵食って、ニケがラプチャー側に寝返るヤベェ現象の事だろ? 原因はなんだ?」
「詳しくは分かりませんが、簡単に言うと催眠闇堕ちですね……はぁはぁ」
「ここにも危険な存在がいる様ですね」
「えーと……どういう事ですか?」
「おチビちゃんには、まだはえーよ」
微妙に緊張感の無い女神たち。
いつもの事だが、指揮官は真面目だ。
「今回は深刻なんだ。 侵食経路も不明、既に多くの部隊が攻撃を受けた。 被害は甚大、尚も拡大している」
「だから私たちゴッデスに討伐依頼が回ってきたの。 妹を手にかけるなんてしたくないけど……希望もあるの」
「へぇ。 希望は必要だわな」
レッドフードがチャラチャラ言うも、気にせず話を続けていくリリス。
「……アンチェインド。 新薬みたいなものなんだけど、これは侵食を消す効果が期待されている。 これをシンデレラに投薬、鎮静化を試みるわ」
「信用出来るのですか?」
「そういう話よ。 今は賭けるしかない」
祈りの弾丸と化したアンチェインド。
正史におけるアンチェインドの発見経緯、研究は不明だが、この世界線はEDFの未来情報から開発される事となった。
勿論、製法含めて誰にも教えられないが、今次大戦において重要な要素である。
「それで、作戦はいつ頃ですか?」
「早い内だ。 EDF側も準備がある。 整い次第、直ちに出撃する」
「……祈りましょう。 平穏を取り戻す為に」
ツライとピナもまた、この作戦に数合わせとして参戦する。 量産型の域は抜けない為、戦闘力は露払い程度の価値しか無いが、記録、観測係としての存在価値はある故に。
歴史は繰り返すのか。 それとも……。
後書き
更新常に未定