アークと通信
今回のあらすじ
指定座標のラプチャー殲滅
座標が分かれば良い系エアレイダー。
EDF本部司令官及び情報部の少佐は、ストーム1からの報告に頭を抱えた。
リングによるタイムリープを量産型ニケがヤッてる事実、未来の惨状。 中央政府や士官学校、民度、ニケの扱い。
この時代の段階で救いは無いが、だからと始まる時間戦術なるチート合戦の予感に辟易する。
「前例がある以上、タイムリープの話は信じるが……危険な賭けになる」
「ラプチャーにこの情報が知れてしまえば、人類はプライマーと同じ運命を辿る事になるでしょう」
「だが、量産型だけに任す訳にもいくまい」
「これから出来る事は、未来における短所を改善させるべく動く事、そして251のリングを管理する事です」
「技研主任はどうした?」
「エリシオンの第3ニケ研究所が襲撃された際、死亡したと思われます」
淡々と言う少佐。
第3ニケ研究所、シンデレラがいた場所だ。
正史通り襲撃を受け、碌な抵抗も出来ずに研究員やニケは死亡。 その中にプロフェッサーがいた可能性があるという。
司令官は努めて冷静になり、聞き返す。
「死体は確認していないんだな?」
「はい。 ですが希望的観測は現実的ではありません。 あれから時間が経ち過ぎました」
「……ストーム1には、酷な話だ」
「人類全体の損失です」
同情の念を抱く司令達。
精神を磨耗しながら漸く家族を救い、大戦に勝利した未来がこれでは、苦楽を共にしたストーム1も報われない。
そんなストーム1も、他のストームメンバーと多くの仲間を失っている。
永き刻の末、希望を勝ち得たと歓喜したのも束の間、新たな敵に蹂躙される地球。 常人なら絶望して自決級だ。
それでも生存者の為に楽園の為と、雄々しく戦列を組む英雄豪傑がストーム1と、今いる者達だ。 挫けている訳にはいかない。
「我々は軍人だ、現実と戦う。 今も多くの仲間が戦っている事を忘れる訳にはいかない」
気持ちを新たにし、未来に備える。
100年も長生きするのは無理があるので、将来への布石を打っておく。
「情報を総司令部に送信しました。 未来が変わるか分かりませんが、何もしないよりマシでしょう」
「任務完了後、残存戦力を各地ベースに潜伏させる。 残置諜者としてな……情報通りに100年も厳しい戦いを強いるが……1周目より生存者が多いという今、どう変わるか。 中央政府に対し、死に体のEDFが何処まで意見出来るかも分からん」
「結果はツライ及びピナ、その周囲のニケが共有する筈です。 そして新たに得た情報を元に再びタイムリープするでしょう」
「何度もされては困るがな。 妥協せず完璧を求める油断や行為が、結果として文明1つを滅ぼした。 人類まで同じ轍を踏んでは学びも何もない」
「人は過ちを繰り返しますが、ニケなら或いは」
「ニケは機械で出来た人間だ。 大戦時のアンドロイドの様な愚直さも無い。 過信するな」
「ニケはフェンサー以上の腕力と機動力を兼ねる戦闘兵器です」
「……今、その議題をすべきでは無いな」
「失礼しました」
EDFとて一枚岩では無い。
未来の人類もそうだ。 アーク内部でも勢力が分かれているのに、地上にはエデンという別の楽園が存在する。
1つに纏まる事なく、なんなら敵対し殺し合う事さえあるのだ。 ラプチャーそっちのけで。
「……他はともかく、EDFが分裂していては示しも何も無い。 アークと地上を結ばねば」
問題は山積みだ。
けれども今は、アーク防衛に集中する。
将来腐っていようと人類の重要活動拠点に違いない。 守るだけの価値はあると信じる。
例え政府が兵士を裏切り、捨て駒にしようとも、EDFは拾って面倒を見るつもりであった。
どうも翌日のツライさんです。
ストーム1は司令部に報告を入れたそうですが、今すぐのアクションはなく、とりま指定座標にいるラプチャー部隊を殲滅する為に行動するところです。
「ストーム1もいる事だし」
歴史通りドロシーと紅蓮、ワイとピナちゃん。
違うのはストーム1がいる事だね。 というか、この世界線はずっといそう。 いや寧ろいて欲しい。 チーターが味方にいる分には助かるのよ。
「でも100年は無理か」
当然の事を呟いた。
ニケは脳や部品が劣化する事あれど、見てくれは永遠の若さを保っている。
けれど人間は違う。
生まれ、老いて、死んで逝く。
寿命の差が出てしまう。
例え戦場で死なずとも。
それは生物として当たり前の事なんだけど、時間を共有出来ない気分にもなり、地味にツライさんなんだよね。
「仕方ないよ」
ピナちゃんは次の準備をしながら言った。
背負うスローターEZが揺れる。
「私たちもだけど、生きている間にできるだけ事を成す、それだけかな」
「生きてる証をって?」
「そう」
「なんだかねぇ」
歴史に残る偉人になりたい訳じゃ無い。
でも出来たなら、死後も皆の記憶に残ってくれたなら嬉しく思える欲が出る。
100年後のアークにおける、ゴッデス神話のように語られない部分はどうかと思うが、何も語られないワイら量産型よりマシだろうさ。
「準備は出来ましたか?」
ドロシーが声をかけてきた。
相変わらず戦場に似つかわしくない純白ドレスをヒラヒラさせてるが、表情は前を向いているかに思える。
ピナちゃん特効が効いた様で何より。
正史より希望があるとはいえども。
「あっ、はい! ツライは?」
「大丈夫です。 銃身も交換したし。 スリングやサイトやバイポットがあれば、もっと大丈夫になりますがね」
「ふふっ、ツライは欲張りですね。 エレベーターで最後の補給物資が送られる際、パーツがあれば良いのですが」
「そうっすね、でも1番欲しいのは、マイジョイントスティックですけどね。 あれば戦場のストレスを軽減する快楽を得られるかもと。 その時はピナちゃんと一緒に楽しみたいです♡」
「紙巻き煙草の話ですか?」
「すみませんドロシー様。 気にしないで下さい」
ドレス同様、心身穢れなきドロシー様は疑問を呈し、ナニかを知ったピナちゃんは顔を赤らめてツッコミ。
ああっ、ヤメテ。 足踏まないで。
いくら安全靴の類とはいえ、ニケパワーでグリグリされたら壊れちゃうから。
「こっちは準備出来とるよ」
そうこう戯れていたら、紅蓮がやって来る。
剣1本で服装も軽装の彼女はラクそうで、実は重いのかも知れない。 物理的にも。
「俺もだ」
ストーム1もやって来た。
共通して銃火器を持っていない組み合わせである、ラプンツェルもだったが。
「では出発しましょう」
「確認なんだが、座標は間違いないな?」
「はい、予定通りに……ストーム1?」
聞くや否や、無線機を弄り始める彼。
あいや、まさか……。
「今要請した」
「早い! 早いよ!?」
予想通りで草も飛ぶ。
早速というか、上空をKM6戦闘爆撃機4機編成が通過した。
『機銃掃射、開始ィッ!』
パイロットの声が無線に響けば、遠方でズドドドドッと音が鳴り響き、砂埃が立ち上り始めたんだが。
同時にレーダーに映る敵性反応が消失。 早い。
「足は運ぶ。 エブラ粒子の影響で、レーダーに投影されたモノが全てとは限らないからな」
そう言ってストーム1は先頭を歩き出した。
その背を見て呆れと驚嘆の声を上げる皆。
「ストーム1、もう少し慎重にやって下さい」
「お主の戦場は、いつもこうなのかね?」
「どこか懐かしい言葉だ」
「……速攻クリアしちゃったよ この人」
「そういう兵科、いや、人だって事だね」
まぁ、その、なんだ。
やはり彼には活躍して貰おう。 出来る限り。
更新常に未定