脳みそ抜かれて女の子になって人類守るんだよ!   作:ハヤモ

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前回のあらすじ
支援物資回収

今回のあらすじ
疑問を呈しつつ補給品

メス堕ちポイントを長引かせると進まないので、切り上げて先へ。


33.輜重漁り

 

 

『エレベーターの破壊を確認しました。 後は封鎖作業が終わるまで待つのみです』

 

 

物資を回収後、昇降機は破壊された。

何故か味方から精神攻撃を喰らう珍事が起きるも、基本は歴史通りの展開を見せている。

 

スキップ機能ない?

ある訳ないよね、うん。

 

 

「食糧の中に建材が混ざっていたが」

 

「……レンガみたいだからね」

 

 

通信越しにストーム1が尋ね、ワイは未来でも見たソレを見やる。

パッと見、食欲が湧く代物ではない。

 

けれど、それにすら涎を垂らす者が。

言わずもがな、スノーホワイトだ。

 

正史だとドロシーがコレをオスワルドの間違いガイドを元に料理し、物体Xが出来た。

食えぬからと捨てる時、その役を買って出たのはスノホワだった。

たぶんアレ、誰も見てない所で食べて処理した可能性があるんだよな。 100年後といい何でも食う娘である。

 

そんな様子が見えないオスワルドは答える。

アークの主食となる原料不明なモノについて説明したのだ。 ワイとしては不明な部分を説明して欲しいが……やっぱ良い、怖いから。

 

 

『それはパーフェクトです。 アークの主食となるもので、名前の通り完全食です。 これに味を含ませ加工する事で様々な味を再現出来ますが……口にするのは、やむを得ない時にした方が良いでしょう』

 

 

微妙に怖い事を言うオスワルド。

非常食だからいきなり食べるな、以外の意味が含まれていそう。

 

 

 

パーフェクト。

安直で分かりやすい名前のコレは、100年に渡り1千万人のアーク市民の胃袋を支え続ける食糧となる。

加工する事で、様々な味と形を成し、本物に負けず劣らずの"作品"を再現出来る万能飯。

 

逆に天然物は簡単に口に入らない。

土地も無く日も届かぬ地下空間だ、想像に難しくないと思う。

それでも欲しいとなると、管理局が育てた僅かなモノを買う事になるが、とんでもなく高価で、ロイヤルみたいに金持ちじゃないと手が出せない。

 

なので、ほぼ全ては原料不明のパーフェクトで食事を済ます事になる訳だが。

アークは効率重視のディストピアな楽園だから、食への倫理崩壊をも招いている気がしてならぬ。

 

文句あるなら食べなきゃ良いじゃんって?

それが出来る程、贅沢したいね!

 

ワイは口にする時、考えない様に食べた。

生きる為だ。 欲求に負けたとも言う。

 

地上は食糧事情に乏しいんだ。

消費期限切れの缶詰やレーションは上等で、後は横流しの腐敗物でも前哨基地の残飯でも、大量の水で薄めて火を通して、薄いスープを啜り、食えないモノを吐き出しながら頑張って咀嚼する事は珍しく無い。

 

それも栄養を取る為、生きる為。

パーフェクトともなれば尚更である。

 

でもワイはニケだから、まだ良い。

味覚センサーを切れるし、体が機械だから食中毒を起こさないし、最悪は食わない選択を取れる。

 

でも隊員は人間だから食わなきゃ死ぬ。

そして腹も壊れ、病気にもなる。

医療品は貴重で、治療出来ず自然治癒任せ。

 

本物の果物や魚を食べれる事はあるが、いつラプチャーが来るか分からない地上でノンビリ果物狩りや釣りしたり畑を耕すなんて出来ない。

 

なので食糧自給率は安定せず、飢饉は笑えないレベルで突如とやって来る。

つまり、食える時に食っとかないとって事。

 

その辺、エデンは優位。

日光を取り入れられる地上に基地が建設され、光学迷彩でラプチャーからは見つからない。

そうした進んだ技術を保有し、家畜やリンゴを育てられ、培養じゃない新鮮な肉と果物を食べられる。

 

……果たして食の倫理崩壊を最も起きているのは、どの勢力なのだろうか。

どう思考しようとエゴの域を抜けずとも。

 

とりま個人的に願う。

この世界線では少しでも改善して、残飯雑炊や不衛生な食事から脱せますよう。 無理か。

 

 

 

「そうしよう」

 

 

察してか、非常時に備えてか。

ストーム1は素直に従った。

 

 

『……封鎖作業は遅延がありましたが、後3週間で完了します。 それまで防衛のほど、お願いします』

 

 

歴史通り。

今更ジタバタしても変わらない。

 

嫌味の1発くらいかましたいが。

そんな想いが通じてか、ストーム1は変わらぬ口調ながらも言った。

 

 

「その後、防衛戦力はベースに向かう。 特に指示がなければな」

 

『……アークは迎え入れる準備をしています』

 

 

偽りの希望を尚も押し付けてくるが、ストーム1は怒るでも呆れるでもなく、許す様に述べる。

 

 

「そっちは任せるぞ、"オスワルド"」

 

『なっ───』

 

 

そう言って通信を終えた。

伝えていない筈の名で呼ばれ、最後に驚く声が聞こえたのは、良い気味だった。

 

 

『アークとのリアルタイム通信を終了しマス』

 

 

やってくれるね、ストーム1。

グッジョブサインあげちゃう。

 

 

「へっ、こいつぁえぐいや! 気持ち良い!」

 

「人の苦悩を責めてやるな」

 

「何を今更。 抜かしやがる!」

 

 

人ってね、誰かに責任を押し付けるゴミ成分を豊富に含んで健康デブになりたいからね、仕方ないね。

アークの為、仲間の為にと死んでいった兵士たちが報われないから余計にだ。

 

超強いストーム1だって、人間である以上、どうせワイを置いて先立つに決まってる。

そんで歴史通りってか。 残される側は溜まったもんじゃない。

 

 

「先手は必要だ」

 

 

そんな気持ちも知らず、彼は続ける。

 

 

「彼の判断が全てじゃない。 アークの総意とやらで、地上部隊は見捨てられる」

 

「今回もそうなる"予定"じゃねぇかと」

 

「総意とやらは、どんな基準で決まったんだ。 大勢の移住で混乱している市民を誘導してアンケートでもして、命惜しさに命懸けで守ってくれたゴッデスや俺たちを肉壁にして捨て駒にしろと言わせたのか? それとも政府の自己判断か?」

 

「さぁ、けど知って何になると。 見捨てられた結果は変わらんですたい」

 

 

冷たく返す。

ワイ的には後者だと思うけれど。

 

多数決云々なんて余裕があると思えないし、市民がゴッデスやストーム1を見捨てろと言うとは思えない。

もし言ったなら……性善説を信じる訳じゃないが、100年経過した後も遺失物やら人伝手やらで記録に残って良い筈だ。

 

それともアークや市民の情報統制が想像以上にダーク過ぎて、丸ごと闇に丸めてポイしたか。

もしそうなら随分見上げた結束力である。

 

 

「政治的な問題が絡むにせよ……総司令部も了解しての事か?」

 

「考えても答えなんて出ねぇっすよ」

 

 

EDFの権限はアークで縮小した筈だ。

大半の戦力を失い地上喪失、失態の責任は既に負わされ、政府の傀儡と化した可能性はある。

 

特にここから約50年後に行われる地上奪還作戦が失敗に終わると、政財界への発言権は益々失われた。

結果、中央政府1強状態と化し、ワイらの知るニケ奴隷化ヘイトクライムパラダイスが完成されていく。

 

 

「そうだな。 オスワルドも封鎖責任者とはいえ、政府で1番偉い人物という訳でもないだろう、何か知っていても機密だと答えてくれそうにない」

 

「でしょ。 先手も何も無いんじゃ」

 

「だが通信ログが監視されているならば、多少は意味がある。 そっちの情報を知っているぞ、と脅されて、どうアクションを起こすか。 楽しみだ」

 

「何も起きないかも知れませんがね」

 

「何もしないより良い。 ツライもピナと共に補給しに行くと良い、互いに望む物が手に入ると良いな」

 

 

そう言うと、ストーム1は去っていく。

脅しにどれくらいの意味があるのかは、アホなワイには分からん話やけども。

 

 

「敵を増やして良い事ないんよ」

 

 

それは誰にとっても言える事だろうさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「飯だ! 飯が来たぞぉ!」

 

「おおっ!」「やったぜ」「イヤッホー!」

 

「武器弾薬、装備もある」「配れ配れぇ!」

 

 

臨時監視所は、久し振りに届いた補給物資に歓喜の声を上げつつ、リスク回避と整理の為に小分けにされていった。

その作業に量産型が参加しない理由はなく、ワイとピナちゃんは働かされているのであります。

 

大小様々な形の木箱や鉄箱。

レーション以外にも弾薬箱や予備部品、医療品、ニケ用パーツ。 そしてワイが欲しかったオプションパーツまであった!

 

1周目じゃ見つからなかったのに。

歴史改変で補給が宝の山に見えて来たよ!

 

 

「ピナちゃん。 コイツを見て、どう思う?」

 

 

興奮のままに目を輝かせ、ブツを見せる。

ワイの望むパーツが入った欲張りセットを!

 

 

「予備銃身と君が欲しがっていたスリングに、ハイマウントサイト。 それにバイポットもあるね」

 

「そうなんよ。 前は無かったのに!」

 

 

量産型が使用する銃火器にも取り付けられるとか、良いモノじゃないか。

専用サイトじゃないけど、ハイマントにより腰の負担を軽減した照準が出来て、バイポットで据えて射撃が出来る様になった。

抱え続けるのもシンドイので助かるのよね。

 

 

「生存者が多いのと、ストーム1の影響で豪華になったんだと思う」

 

「違ェねぇや」

 

 

前のしょっぺぇ物資より遥かに豪華。

まぁ……前回はワイとピナちゃん入れても、たった6人だからね。 補給も相応か。

 

 

「それでも捨てられるのさ」

 

 

けれどマズ飯以上に吐き捨てるモンはある。

 

 

「何度も言わないの。 出来る事をやろう」

 

「ピナちゃん、真面目が過ぎると滅びるよ」

 

「怠慢が過ぎても同じだよ」

 

「言わせろ。 やってらんねぇんだから」

 

 

戦場で「やったか!?」とか「あっ」とかフラグ言うよりマシであろうて。

どちらにせよツライさんに変わりないがね。

 

 

「でも働いてね?」

 

「ほんまツライさんですわ」

 

 

会話もそこそこに物を移す。

重機関銃にオプションパーツを取り付けて、弾帯が押し込められた背嚢から初弾を引っ掴んでぐいっと伸ばすと、重機関銃に嵌め込んだ。

私用が済んだら各火点にある銃座、その塹壕の頼れる引き篭もり共に重い弾薬箱を放り、カロリーバーを投げて回る。

特にビークルに使われる砲弾、コンバットフレームの超大口径弾等は、重過ぎてフェンサーでもないと人間個人で運べない。

 

手押し台車使えって? 不整地の戦場でか?

なら輸送車使え? タンクデサント?

貴重な燃料を浪費するなって怒られるんで。

 

その意味でも力仕事は、ニケが一層働かねばならない。 ガードレールやら普通自動車をローリングで吹き飛ばせる連中なんだから、やれそうな気がするんだがな、腰をヤられても困るのでワイらがやります。

あれ? 結局腰を酷使してるんだけどワイ。

 

 

「あー、しんど」

 

 

これはツライさん。

正史より働かされるとか、ねぇわ。

あいや、改変する労力は払わねば。

 

 

「こんな調子で何が変わるんだか」

 

 

尚も文句言いつつ働きます。

変にジッとして無理矢理に希望を妄想して未来信者化して祈りまくって絶望に堕ちるより、文句言いつつも動いて腹空かせてアレ食べたいコレ食べたい、あんな事やこんな事をしたいし欲しいと欲望剥き出した方が生きる気力を絞れるってもんだ。

 

それが生きるってか、生きるに足る行為なのだと愚考して息をするワイは価値なき鉄屑なのかも知れないが。 人間としては死んだ訳だし。 愚息共々な(白目)。

 

 

「ところでゴッデスの皆様は?」

 

「各方面を警戒しているよ。 前と違って人手が足りているからね」

 

 

そうか。 その方が良い。

前みたいにドロシーとピナちゃんとワイだけで迎撃とかやりたくないからな、2度と。

あの時は正面の群勢をドロシーが蹴散らしたけど、ワイらの5倍はある侵食を誘発するラプチャーが側面からやって来て、ビビリ散らしながら戦ったものだ。

我ながらよくピナちゃんを助けられたと思う、100年経った今でも自慢なのだ。

あいや、今となっては記憶上の出来事だが。

 

 

「飯はドロシー様が"また"作るん?」

 

「生存者に給養員がいたから大丈夫だよ。 どんな食材からでも美味しい ご飯やスープを作れるんだとか」

 

 

そこまで息巻くか、それは良かった。

物体Xは見なきゃ良い、2度と。

 

元より不味い飯を更に不味くして食ったり捨てるのが当然になるのは駄目だ。

100年の間にいた、1番良い食材を使って辛うじて食えるナニかを生み出す隊員にも思う所はあったが。 食べ物に対する冒涜を感じたというか。 愛情はあったにせよ。

 

 

「この際、未来で飲んだ様な薄いスープでも許すわ。 精神崩壊を起こすレベルのダークマターを食うより遥かにマシだ」

 

「そんな経験あった?」

 

「被害妄想」

 

「うん、現実に対処しようね」

 

 

ピナちゃんにツッコミを入れられつつも、作業は終盤へ差し掛かる。

 

山だった箱積みも地面にバラけ始める。

ボチボチ終わりそう。

 

 

「でさ」

 

「うん?」

 

「ゴム見かけた?」

 

「まだ言ってるの君」

 

 

不意打ちギャグにピナちゃんは呆れた。

でも揶揄い好きのツライさんと言ってみ?

 

 

「そんなにストーム1の事が好きなの?」

 

「だから違うって言ってるよね!?」

 

 

ストーム好きのツライさんにされてるよぉ!

まさか噂が広まってないよな!?

 

 

「必死なところがそれっぽくて」

 

「違うから必死だと、何故考えない!?」

 

 

人はね、面白い方向に持って行きたがる悪い生き物だよね、ホンマ酷い癖よの。

 

ワイは憤り顔真っ赤やったと思うの、それ見たピナちゃんがクスッと笑ってきおる。

おのれ、覚えとれよ翼ちゃん。

 

 

「ごめん、そんな怒らないで? こんなに可愛いツライを見るのは中々無いから」

 

「かわっ!? 揶揄うのも大概にせぇって!」

 

 

顔が熱い。

ワイを皆してメス堕ちさせようとしてね?

 

 

「ピナちゃんには何度も言ってきたけど、ワイは中身男なんやぞ。 虐め反対!」

 

「死ぬまで言う気かな?」

 

「事実やで」

 

 

そう抵抗するも「はいはい」と言われて、残りを片付け始めるピナちゃん。

くそぅ、納得出来ぬわこんなん。

 

 

「とりま、作業終わりっと」

 

 

手を叩いて見渡せば、箱山は消え失せた。

話している内に、あっという間だった。

 

監視所の様々な所に隠されるように分散され、纏めて吹き飛ばない様にした。

弾薬や武器は必要な場所に配り終え、後はピナちゃんの言う通り、出来る事をやるしかない。

 

 

「前はN 6で地表を灼いたけど、今回はソレがない所為でラプチャーの数が記憶より多かったからな……残りの期間、凌げると良いんやけども」

 

 

これで歴史の修正力が働いて、ワイとピナちゃんとゴッデスメンバーだけ生き延びるとかだと笑えない。

 

頼れるはストーム1か。

彼はタイムリープ経験者であり歴史改変者でもある、修正力に抗えると信じる。

 

 

「そんな彼は何処?」

 

 

見つけた時にゃ、ゴッデスや他の隊員、ニケ、共に来た民間人を励まして回っていた。

それは結構だが、自身の補給は済んだのかね?

 

 

「ストーム1!」

 

 

ワイは気になって、一応駆け寄った。

歴史改変の先駆け者に教えを説いて貰うにせよ、何にせよだ。

 

 

「ツライか、仕事は終わった様だな、ご苦労」

 

「う、うっす!」

 

 

強く優しい彼の手は温い。

不思議と安心する。

 

でも。

100年後は、彼の温もりは失われる。

きっといつか、思い出せなくなる。

 

だからといって、100年の歳月を無意味に刻む、そんなのは絶対に嫌だ。

何の為に此処に戻ったのか分からなくなる。

 

生きる意味も見失う。 変に足掻いてピナちゃんや、ゴッデスの皆を失う危険性だってある。

 

でも。

リスクを抱えずして未来は変えられない。

耐えずして勝利はない。

 

 

「ツライ、また撫でられて喜んでる」

 

 

違う。 これは耐えている。 羞恥心に……!

耐えずして勝利はないんや……!




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