脳みそ抜かれて女の子になって人類守るんだよ!   作:ハヤモ

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前回のあらすじ
ポイ捨てされた地上部隊

今回のあらすじ
旅立ち

歴史改変点
生存者多数
ドロシーの闇堕ち回避


36.希望の旅立ち

 

 

「私たち、捨てられたの……?」

 

「総司令部め、裏切りやがった!」

 

「そんな、なんでよ!?」

 

「予想はしていたが……堪えるな」

 

「ゴッデスとストーム1諸共か、はは……」

 

「嘘だと言ってよ!?」

 

 

アークに見捨てられた話は、ストーム1から士官へ、兵士達へと伝わり、皆がツライさんになっていく。

 

幼きニケや民間人は一瞬呆けて、受け入れられないものの、周囲の雰囲気に心も理解し始めて、膝を折って大地を濡らす。

生きているだけで儲け物、なんて言葉は時に残酷だ。 正史よりマシだなんて、ワイらにしか分からぬし。

 

 

「うっ、うぅ……」

 

「なんで、どうしてよッ!」

 

「これから私たち、どうすれば良いの?」

 

 

折角生き延びたのに。

楽園に行けると信じていたのに。

全ての苦しみが報われたのに。

 

そんな子ほど、現実は残酷であった。

 

監視所には狼狽えと慟哭が響き渡っている。

やがて大人達は我に帰ると、子供達若者を励まし、荷物を纏めて片付け始めた。

 

 

「喚くな。 モグラ叩きは後にしろ」

 

 

この威勢である。 これはツヨイさん。

EDF隊員、伊達に絶望を乗り越えていない。

 

 

「ストーム1が提案した通り、最寄りのベースに向かう。 地上をアテもなく彷徨くよりマシだ」

 

「……だな。 もう此処には用はねぇ」

 

 

もうアークを守る必要は無い。

なら留まるのは危険だ。 これ以上一塊になってもラプチャーが寄って来て消耗するばかり。 ヘレティックが来たら、いよいよ耐えられない。

自分達の身どころか、入口が破壊されてアークが危険に晒される可能性すらある。 破滅願望が無いなら退くべきだ。

 

……などと、正史ゴッデスと同じ思考の元、皆は散り散りになる準備を行う。

 

 

「ゴッデスは? 同じベースに行くのか?」

 

「分からんが、此処を離れるのは一緒だ」

 

「……今後も人類に尽くすのか?」

 

「束縛されず、自分の道を歩むだけさ」

 

「皆一緒だな」

 

「死ぬなよ」

 

「お前もな」

 

 

戦友が熱い抱擁を交わし、離れて行った。

うん。 逞しい事で。

 

隊員とニケは互いに励まし合い、荷物を纏めて各々監視所を離れていった。

見た目少女のニケらが大きな荷物を持ち、大の男が背嚢1つ程度という光景が散開。

けれど墓や畑を作り、根を下ろしかけた仮住まいの監視所に名残惜しく振り返って、者によっては敬礼して去って行く。

 

後に残るはワイらとゴッデス。

そして赤ヘル少尉といった隊を纏めた者達。

彼等はストーム1に挨拶をしていった。

 

 

「お疲れ様でした。 お会いできた事、共に最後の戦列に並べた事、光栄でした」

 

「生きていればまた会って、共に戦う機会もあるさ。 可能な限り生き延びてみせろ」

 

「はい……ストーム1、ゴッデスの皆さん。 人類を守ってくれて、ありがとうございました……ッ、先に失礼致しますッ!!」

 

 

そう敬礼する彼等は涙声で敬礼。

ワイらも返礼し、遂に別れる。

彼等は目に溜まった涙を堪えていたが、踵を返した反動で雫が落ちるのが見えた。 それはゴッデスも同じだった。

 

 

「私達も共に戦えて、光栄でした」

 

「はい。 心強かったです」

 

「彼等もまた、境遇を同じくして……尚も心を奮い立たせて生きて行くのだな」

 

「見習おう」

 

 

みんな、強く生き延びて。

ただ、強く願う。

 

 

「彼等は生き延びたんやで、ピナちゃん」

 

「うん。 1つの戦場を生き延びたんだ」

 

「あの人達、生き延びるかな?」

 

「分からない。 でも、生き残る覚悟で戦い続けると思う。 希望はあるよ」

 

 

そっか。 そうやね。

上層部に裏切られる運命は変わらずとも。

訳も分からず灼かれるよりマシだろう。

 

ワイらも旅支度を進める。

余った物資なんて皆無だが、背負う物は意外と重い物ばかりである。

 

己の銃。 バックパック。 総じて運ぶ命。

未来はツライさんか、それとも……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「みなさん、荷物は持ちました?」

 

 

ドロシーが確認を取れば、それぞれが頷く。

気持ちは明るく前を向く。

 

 

「ああ、荷物といっても剣と種だけだがね」

 

「私も準備完了だ」

 

「はい。 私も終わりました」

 

「俺もだ」

 

「大丈夫ですよ」

 

「ワイも同じく」

 

 

皆は無言で周囲を見回した。

そこには足掻いて生きた証の数々。

修繕した施設、手作りの墓、畑。

石に齧り付いてでも居残った楽園の外側。

名残惜しくも今日、お別れだ。

 

まぁ、ワイとピナちゃんは再び駐屯する機会も訪れたが。 それを言うのは無粋だな。

 

 

「参ろう」

 

 

紅蓮が言葉を切り出し。

 

 

「行こう」

 

 

スノーホワイトは淡々と。

 

 

「行きましょう」

 

 

ラプンツェルは慈悲深く。

 

 

「行きましょう」

 

 

ドロシーは決意して。

 

 

「行きましょう。 ドロシー様」

 

 

ピナちゃんが支える。

 

 

「前進だ」

 

 

ストーム1は力強く云って。

 

 

「ラジャーっす」

 

 

ワイは隣に添うばかり。

 

 

皆は歩き始めた。

けれど、ドロシーは言った。 歴史通りに。

 

 

「分かれた方が良いでしょう」

 

 

やはりゴッデスはバラバラになるんやなって。

理に適った事だし、仕方ないけれど。

 

 

「うむ。 私達の目的はラプチャーのリーダーであるクイーンを倒すこと。 地上は広く探すものは多い。 散らばった方が得策であろう」

 

「連絡手段はどうしましょうか?」

 

「狼煙を使おう。 今はそれ以外に方法が無い」

 

「原始的過ぎやしないかね?」

 

「次に会う時までに無線機や携帯電話を入手しておこう」

 

「うむ。 宜しく頼むぞ」

 

「あの、折角ですから1ヶ月に1回、決まった座標に集合しませんか? 情報も共有出来て、互いの安否も確認出来ますし」

 

「いいだろう」

 

「はい。 良いアイディアだと思います」

 

 

正史通りにコトは進む。

それ故に、この会話に虚しさも覚える。

ゴーグルの無いピナちゃんと違い、ワイにはある事を嬉しく思ってしまう。 お陰で目元の表情が見えないから。

 

 

「では、皆さん。 お別れの時間ですね。 リーダーとして1つお願いがあります。 皆さん、焦らないでください。 時間はたっぷりあります。 時間は私達の味方であり、私達を壊す敵でもあります。 クイーンを追うという大きな目的は忘れずに。 けれど他の事もしましょう。 農業であれ、死者の故郷を探す事であれ、美味しい料理を食べる事であれ。 絶対に自分を見失わないで下さい」

 

「心配いらぬよ」

 

「分かりました」

 

「分かった」

 

「そして誇りを忘れないで下さい。 絶対に」

 

 

頷く皆。

ストーム1とワイは1歩離れて俯瞰する。

 

 

「では先に行きますね。 行きましょう、ピナ、ツライ」

 

「はい! ドロシー様!」

 

「ラジャーっす」

 

「みんな、死んではならぬぞ」

 

「来月、お会いしましょう」

 

「ストーム1は?」

 

「ツライとピナに用がある。 暫し共に往く」

 

「分かりました。 ふふ、別れようと言っておきながら、私だけ人数が多いですね」

 

 

皆は荒廃した世界に踏み出した。

未来へ歩き始めたのだ。

それぞれ目的を持って歩くのだ。

 

ある者は、死者の記憶を慰め。

ある者は、命が躍動する姿を両目に焼き付けたいという思い。

またある者は、すべての根源を排除したいという、ハッキリとした目的。

 

そしてドロシーは───

勇気と希望を貰ったドロシーは───

 

 

「新たな楽園を見つけましょう」

 

「はい! 早く行きましょうドロシー様!」

 

「御安心下さい。 ワイらはソレを知っています」

 

「頼もしいパーティだな」

 

「ええ……本当に」

 

 

ドロシーは眩しそうに目を細め、世界を見やる。

 

咲き乱れる花。 飛び回る蝶。

舞い散る草と花びら。

鮮明な青空と、流浪の雲。

万物を祝福する様に降り注ぐ日差し。

 

世界はこんなにも美しく、広かった。

 

ふと、看板が目に入る。

 

 

『人類最後の楽園アークは皆様を歓迎します』

 

 

触りの良い、欺瞞に満ち溢れたその言葉。

けれどもう、ドロシーは惑わされない。

 

彼女は口角を少しあげ、首を横に振った。

 

 

「私は私の楽園を見つけます」

 

 

彼女は笑顔でそう言い、掠れた白線を踏み越えたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

楽園に押し寄せた狂喜の波濤。

 

ゴッデスとEDFは防波堤となり防ぎ止めた。

 

多くの生存者と希望を残し、旅立つ人々。

 

それでも……戦いは続く。

 

世界は変わったのだろうか。 それとも。

 

 

 

 

 

OVER ZONE END

 




章が長過ぎたので区切りとして。

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