ポイ捨てされた地上部隊
今回のあらすじ
旅立ち
歴史改変点
生存者多数
ドロシーの闇堕ち回避
「私たち、捨てられたの……?」
「総司令部め、裏切りやがった!」
「そんな、なんでよ!?」
「予想はしていたが……堪えるな」
「ゴッデスとストーム1諸共か、はは……」
「嘘だと言ってよ!?」
アークに見捨てられた話は、ストーム1から士官へ、兵士達へと伝わり、皆がツライさんになっていく。
幼きニケや民間人は一瞬呆けて、受け入れられないものの、周囲の雰囲気に心も理解し始めて、膝を折って大地を濡らす。
生きているだけで儲け物、なんて言葉は時に残酷だ。 正史よりマシだなんて、ワイらにしか分からぬし。
「うっ、うぅ……」
「なんで、どうしてよッ!」
「これから私たち、どうすれば良いの?」
折角生き延びたのに。
楽園に行けると信じていたのに。
全ての苦しみが報われたのに。
そんな子ほど、現実は残酷であった。
監視所には狼狽えと慟哭が響き渡っている。
やがて大人達は我に帰ると、子供達若者を励まし、荷物を纏めて片付け始めた。
「喚くな。 モグラ叩きは後にしろ」
この威勢である。 これはツヨイさん。
EDF隊員、伊達に絶望を乗り越えていない。
「ストーム1が提案した通り、最寄りのベースに向かう。 地上をアテもなく彷徨くよりマシだ」
「……だな。 もう此処には用はねぇ」
もうアークを守る必要は無い。
なら留まるのは危険だ。 これ以上一塊になってもラプチャーが寄って来て消耗するばかり。 ヘレティックが来たら、いよいよ耐えられない。
自分達の身どころか、入口が破壊されてアークが危険に晒される可能性すらある。 破滅願望が無いなら退くべきだ。
……などと、正史ゴッデスと同じ思考の元、皆は散り散りになる準備を行う。
「ゴッデスは? 同じベースに行くのか?」
「分からんが、此処を離れるのは一緒だ」
「……今後も人類に尽くすのか?」
「束縛されず、自分の道を歩むだけさ」
「皆一緒だな」
「死ぬなよ」
「お前もな」
戦友が熱い抱擁を交わし、離れて行った。
うん。 逞しい事で。
隊員とニケは互いに励まし合い、荷物を纏めて各々監視所を離れていった。
見た目少女のニケらが大きな荷物を持ち、大の男が背嚢1つ程度という光景が散開。
けれど墓や畑を作り、根を下ろしかけた仮住まいの監視所に名残惜しく振り返って、者によっては敬礼して去って行く。
後に残るはワイらとゴッデス。
そして赤ヘル少尉といった隊を纏めた者達。
彼等はストーム1に挨拶をしていった。
「お疲れ様でした。 お会いできた事、共に最後の戦列に並べた事、光栄でした」
「生きていればまた会って、共に戦う機会もあるさ。 可能な限り生き延びてみせろ」
「はい……ストーム1、ゴッデスの皆さん。 人類を守ってくれて、ありがとうございました……ッ、先に失礼致しますッ!!」
そう敬礼する彼等は涙声で敬礼。
ワイらも返礼し、遂に別れる。
彼等は目に溜まった涙を堪えていたが、踵を返した反動で雫が落ちるのが見えた。 それはゴッデスも同じだった。
「私達も共に戦えて、光栄でした」
「はい。 心強かったです」
「彼等もまた、境遇を同じくして……尚も心を奮い立たせて生きて行くのだな」
「見習おう」
みんな、強く生き延びて。
ただ、強く願う。
「彼等は生き延びたんやで、ピナちゃん」
「うん。 1つの戦場を生き延びたんだ」
「あの人達、生き延びるかな?」
「分からない。 でも、生き残る覚悟で戦い続けると思う。 希望はあるよ」
そっか。 そうやね。
上層部に裏切られる運命は変わらずとも。
訳も分からず灼かれるよりマシだろう。
ワイらも旅支度を進める。
余った物資なんて皆無だが、背負う物は意外と重い物ばかりである。
己の銃。 バックパック。 総じて運ぶ命。
未来はツライさんか、それとも……。
「みなさん、荷物は持ちました?」
ドロシーが確認を取れば、それぞれが頷く。
気持ちは明るく前を向く。
「ああ、荷物といっても剣と種だけだがね」
「私も準備完了だ」
「はい。 私も終わりました」
「俺もだ」
「大丈夫ですよ」
「ワイも同じく」
皆は無言で周囲を見回した。
そこには足掻いて生きた証の数々。
修繕した施設、手作りの墓、畑。
石に齧り付いてでも居残った楽園の外側。
名残惜しくも今日、お別れだ。
まぁ、ワイとピナちゃんは再び駐屯する機会も訪れたが。 それを言うのは無粋だな。
「参ろう」
紅蓮が言葉を切り出し。
「行こう」
スノーホワイトは淡々と。
「行きましょう」
ラプンツェルは慈悲深く。
「行きましょう」
ドロシーは決意して。
「行きましょう。 ドロシー様」
ピナちゃんが支える。
「前進だ」
ストーム1は力強く云って。
「ラジャーっす」
ワイは隣に添うばかり。
皆は歩き始めた。
けれど、ドロシーは言った。 歴史通りに。
「分かれた方が良いでしょう」
やはりゴッデスはバラバラになるんやなって。
理に適った事だし、仕方ないけれど。
「うむ。 私達の目的はラプチャーのリーダーであるクイーンを倒すこと。 地上は広く探すものは多い。 散らばった方が得策であろう」
「連絡手段はどうしましょうか?」
「狼煙を使おう。 今はそれ以外に方法が無い」
「原始的過ぎやしないかね?」
「次に会う時までに無線機や携帯電話を入手しておこう」
「うむ。 宜しく頼むぞ」
「あの、折角ですから1ヶ月に1回、決まった座標に集合しませんか? 情報も共有出来て、互いの安否も確認出来ますし」
「いいだろう」
「はい。 良いアイディアだと思います」
正史通りにコトは進む。
それ故に、この会話に虚しさも覚える。
ゴーグルの無いピナちゃんと違い、ワイにはある事を嬉しく思ってしまう。 お陰で目元の表情が見えないから。
「では、皆さん。 お別れの時間ですね。 リーダーとして1つお願いがあります。 皆さん、焦らないでください。 時間はたっぷりあります。 時間は私達の味方であり、私達を壊す敵でもあります。 クイーンを追うという大きな目的は忘れずに。 けれど他の事もしましょう。 農業であれ、死者の故郷を探す事であれ、美味しい料理を食べる事であれ。 絶対に自分を見失わないで下さい」
「心配いらぬよ」
「分かりました」
「分かった」
「そして誇りを忘れないで下さい。 絶対に」
頷く皆。
ストーム1とワイは1歩離れて俯瞰する。
「では先に行きますね。 行きましょう、ピナ、ツライ」
「はい! ドロシー様!」
「ラジャーっす」
「みんな、死んではならぬぞ」
「来月、お会いしましょう」
「ストーム1は?」
「ツライとピナに用がある。 暫し共に往く」
「分かりました。 ふふ、別れようと言っておきながら、私だけ人数が多いですね」
皆は荒廃した世界に踏み出した。
未来へ歩き始めたのだ。
それぞれ目的を持って歩くのだ。
ある者は、死者の記憶を慰め。
ある者は、命が躍動する姿を両目に焼き付けたいという思い。
またある者は、すべての根源を排除したいという、ハッキリとした目的。
そしてドロシーは───
勇気と希望を貰ったドロシーは───
「新たな楽園を見つけましょう」
「はい! 早く行きましょうドロシー様!」
「御安心下さい。 ワイらはソレを知っています」
「頼もしいパーティだな」
「ええ……本当に」
ドロシーは眩しそうに目を細め、世界を見やる。
咲き乱れる花。 飛び回る蝶。
舞い散る草と花びら。
鮮明な青空と、流浪の雲。
万物を祝福する様に降り注ぐ日差し。
世界はこんなにも美しく、広かった。
ふと、看板が目に入る。
『人類最後の楽園アークは皆様を歓迎します』
触りの良い、欺瞞に満ち溢れたその言葉。
けれどもう、ドロシーは惑わされない。
彼女は口角を少しあげ、首を横に振った。
「私は私の楽園を見つけます」
彼女は笑顔でそう言い、掠れた白線を踏み越えたのだった。
楽園に押し寄せた狂喜の波濤。
ゴッデスとEDFは防波堤となり防ぎ止めた。
多くの生存者と希望を残し、旅立つ人々。
それでも……戦いは続く。
世界は変わったのだろうか。 それとも。
OVER ZONE END
章が長過ぎたので区切りとして。
更新常に未定