ツライさん、またツライな予感
今回のあらすじ
紅蓮達、近接特化部隊
yearではなくTimeにしていたり
ピナとストーム1も出さねばですが
刻を戻すなら、ゴッデスメンバーを挟みたいなと
と言う訳での紅蓮の原隊も巻き込みます。
救いがあるよう、ゲームの正史とは異なる状況にしてます。
下ネタは何処まで許されるか不安……
56.黒影の剣士
特殊改良量産 個体A 近接戦闘型ニケ。
銃ではなく剣で戦う実験体。 そんな彼女ら10人を預かる事になった中尉は荷が重かった。 半ば強制的に受領させられる際、何度も心中で溜息を吐いたか分からない程だ。
別にニケ差別をしている訳ではない。
女性の曲線がハッキリしたぴっちり黒々スーツを着ていてエッチだからでもない。
それが何処かで見た様なデザインな気がしたけど やっぱ気の所為だったとか、軽量化としつつ胸はある事とか、ハーレムで頭が花畑になったとかでもない。
その部隊設立経緯、運用思想、上層部の思惑が気に入らないのである。
中尉はEDF歴戦の兵士でもある。
人一倍、部隊の生存を優先し、危険は極力避け、けれど味方を想い見捨てない。
先の大戦においては、無謀な作戦に参加しないとしながらも、結局は駆け付けてくれる勇敢な面も持ち合わる他、敵の攻略法を見つけてもいる。
故に、上層部には反感を抱いていた。
何もこの部隊、最後の1人になるまで戦わせて、生き残った1人をフェアリーテールモデルに換装、ゴッデス部隊に編入するというものだったから。
それは他の9人を殺せ、と暗に言っていた。
さっさと死なせる為か、実験上での条件からか、補給をわざと止められており、遅かれ早かれ死ぬよう仕向けられてさえいる。
中尉の性格上、コレを許せる筈がない。
ここまでする必要があるのか。 本部の罠か。
ニケになら何でもして良いと思ってるのか。
戦局の悪化に伴う倫理観の欠如、現実的にも今更に咎めるつもりは無いが、限りある戦力の浪費には思うところがある。
憂いと怒り。 その歯軋りが こだました。
だが希望はあった。
この世界線、正史とは異なっているのだ。
近接特化部隊は本来、別の中尉……保身的でニケはさっさと死ね思考、ゴミクズお飾り無能指揮官と内乱のお陰で悲惨な運命を辿る。 紅蓮の姉である薔花が指揮官を斬り捨て、そんな姉を紅蓮は刺して涙ながらに生き残る。 より正確には姉は自死を選んだと言うべきか。
けれど、EDFとツライという喧しく愉快な存在により、既に異なる様相、未来を歩んでいるのだった。
「薔花、重要な話がある」
中尉は隊長格の薔花を呼び出した。
やがて彼女は、皆と同じくして ぴったり黒スーツで胸と腰の曲線を強調し、同時に脚の細さを際立たせて やって来た。
申し訳程度に備わるプロテクターが、かえって無垢な中身を想像させるまであり、隊員によっては股間のモノを抜刀するであろう。
そんな彼女も細長い刀剣を穿くが、感情の奔流と無縁そうな、凛とした佇まいを醸し出している。 それは見た目だけの お人形ではない事を示していた。
「なんでしょうか指揮官。 夜伽ですか?」
「中尉で良い。 それと風紀を乱すな」
「はい中尉」
が、口を開けばシモに走る彼女である。
何とも正史に囚われない積極性。
なんなら妹や皆を巻き込んで、両手に花束を握らせようと画策するまである。
が、中尉は知ってか知らずか軽く咎めつつ話を進めるのみ。 折檻棒で紅花畑を散らして、白因子を撒き散らしている場合ではない故に。
「……次の任務、全員死んだと虚偽の報告をする。 皆は人目を避けて方々のベースへ散って雲隠れしてくれ。 そして生き延びろ、命令だ」
「訳を聞いても?」
剣士故か、性格か、両方か。
柔らかな表情のまま、冷静に尋ねる薔花。
その心中は気心知れた者にも読み難い。 けれど中尉は構わず説明を始める。
「上層部は最優秀となる1人を選別する為、君達を死地へ追い込み続けるつもりだ。
その上で生き延びた者を噂のゴッデスに編入させる算段らしい。
こんな戦局とはいえ、仲間が1人になるまで続ける事には反対だ。 上の人形遊びに付き合うつもりはない。 降りるぞ」
「中尉はどうするのです?」
「何処かの地下に潜伏する」
「一緒に逃げてくれないのですか?」
「俺まで逃げたら、示しがつかないからな」
「本当に次で最後なんですか?」
「そう決めた。 突然で悪いと思っている」
切なげに、名残惜しそうに。
薔花は食い下がるも、彼は声色変えず突き放す。
そんな彼に、上下関係抜きで悲しむ薔花。
「本当に悪過ぎですよ。
唐突に別れを告げるだなんて酷いです」
「済まない」
「そう思いでしたら接吻して下さい。
欲を掻いて同衾も所望します。 一生の思い出と傷を残して下さい♡」
「ナニを言っているんだ」
訂正。 意外と平気そうだった。
下腹部を細い指先でなぞり見せて、熱い視線を向けてくる。 どう見ても誘ってるとしか思えない。
が、中尉は動揺せず冷静に対処した。
おつよい。 流石は歴戦の兵士。
「馬鹿を言うな。 命を無駄にする気か」
「花を愛でる事は、寧ろ尊ぶ行為では?」
「俺の身が持たないと言っている。
君たちは通常より軽量化された体とはいえ、それでも人間にはツライ……弾薬箱が砕けてる。 後は君達同様に竿はあっても玉無しだ」
「中尉は逞しい男ですから平気ですよ。
……部隊全員を抱擁出来るのでは?」
「もう1度言う。 考え直せ」
「謙遜を。 既に夜這いで耐久性は実証済みです」
「……ナニ?」
「昨夜も おちんちん、ココに挿(さ)してましたよ。
コアより熱く剣より鋭く。 硬くもしなやかにホールイン、わんです♡」
「嘘だと言ってくれッ!!?」
まさかの事態である。
花に十日の紅無しとはいうが、既に散っていたとは。 正史通りに花は散るも、歴史の修正力は変な方向に働いている。
「本当ですよ。 毎日、隊で回し打ちでした」
「道理で疲労感が溜まると……いや、その前に気付かない事なんてあるか!?」
「飲み水に睡眠薬と媚薬を混ぜていましたから」
「馬鹿なッ!?」
上官に一服盛るヤベェ事をしていた!
とっくに風紀は桃色アバズレ乱れ咲き!
ニケじゃなかったら実りまくっている!
突然のエロ衝撃に動じる彼。 そのザマに優越感に浸り悪い笑みを浮かべる薔花。
何故こう、ニケにも穴はあるのだろう。
体がロボだからロマン機能として合体機構を設けたというのか。 いや、脳の発狂を防ぐ為により人間的にした結果か。 その果てに男が果てかけている場面が生まれているのは良いのか。 兵士の慰め用に、というのは考えたくないが可能性はあるかも知れない。 必ずしも慰めになるとは限らないが……体重によるトラブルとか。
さても今後を真面目に話す。
2人の逢瀬はさておき、現実はシビアだ。
咎もそこそこに、モードはシリアスに。
仕事への切り替えが早いのは良い事だ。 多分。
「……正直、部隊の編成や補給頻度の少なさには疑問を抱いておりました。
中尉が打ち明けてくれた事、庇ってくれた事、感謝致します。 レン……紅蓮や皆には上手く言っておきます」
「頼んだ。 身支度も済ませておけ」
「……戦局は逼迫。 脱営しても追手を掛ける余裕はないでしょう。 それでも厳しい事に変わりありません。
補給もなく、ラプチャーが跋扈する地上で生き抜くのは至難の業。 ベースに身を寄せようにも、外様の私たちを受け入れてくれるか不安があります」
「案ずるな」
「何故ですか?」
「EDFは仲間を見捨てたりしない」
薔花、一瞬キョトンと目を丸くする。
ここまでの柔らかな表情が嘘の様に消えるのは、ある種滑稽であった。
「何事にも例外はあるのでは?」
「本気で言っている」
「尚更です。 でも……信じます。
敬愛すべき指揮官の言葉ですもの」
「会って間もないがね。 もう行って良いぞ」
そんな中尉の言葉に、ただ柔らかい笑みを浮かべる薔花。 鞘を揺らし、一礼する。
その頃には、淫乱な顔から凛とした剣士に戻っていた。 ヤる気スイッチは何処にあるんだろう。
「生かしてくれた命、可能な限り咲き続けます。
そしていつか、再会できる日を待っています」
一輪の花は、そうして立ち去った。
後に続く先は戦場。 銃弾飛び交う最中、振るわれる真紅の剣。 時代錯誤、可能性に縋った浪費と誰かは笑うだろう。 けれど本人らは ただ、風の吹くまま、主の赴くがままに。
無惨に踏み躙られ、追い詰められ、自ら散った紅花は、その運命を乗り越えて1度散り、桃色淫乱に咲き誇っている。
悲惨な運命をエロに置き換えて回避した先にナニを見るのか。 それは誰にも分からないし分かりたくもない気もする。
運命とは時に悪戯が過ぎるもの。
刻を駆ける元野郎、花を散らした経験者のツライさんと邂逅するまで、残り数刻に迫る……。
どうもツライさんです。
レーダーに投影される友軍反応を追ってみたら、全身黒々ぴっちりスーツのニケ部隊と邂逅しました。
手には刀剣。 他の武装なし。 拳銃ひとつ確認出来ない極端さ。 随分と偏った兵装である。 紅蓮といい、EDFにもそうした部隊は存在するけれど、ニケにもいたとは。 紅蓮だけかと思っていた。
……いや、紅蓮から聞いたことがあるぞ。
かつて近接特化部隊がいたと。 自身の原隊であると。 もしや目前の部隊がそうなのでは?
じゃあ紅蓮いるんじゃね?
100年前の若き剣士見れんじゃね?
そう思ってゴーグル越しに凝らして探すと……いた。 それらしき面影のニケが。
ワイの時代と雰囲気が全然違うが、思考転換前と見た。 ちょっと気になる。 原点の彼女はどんな性格だったんやろな?
そんな興味もありつつ、ワイは盾兼剣を求めて彼女らに近付いた。 本来の目的も忘れないようにしつつ、両手を上げて無抵抗アピールをしながら。
「止まれ。 どこの者だ?」
早速というか、紅蓮らしきニケに剣を向けられてツライさん。 剣は真紅でワイの知る得物とまるで違う。 口調も違う。 ス◯ゼロでキめてそうなアル中酩酊巡礼者と雰囲気が全然違う。 最早別人だ。
けれど、剣の腕は本物だろう。 ちょいと振るえば、ワイの首なんか簡単に胴体とお別れするのは分かっとる。 剣筋を認識する間も無く死亡するまである。
なので冷静に、刺激せんよう説得を試みた。
「落ち着いて聞いて下さい。
ワイはエリシオン第3ニケ研究所の警護に着く為に移動中なだけです」
「たった1人でか」
そりゃ怪しいよな、うん。
兵士が単独で動くとか基本ない。
あるとしたら、他の隊員が全滅して孤立しているとか、偵察や伝令で一時的に動いているとかだ。 さもなくば脱走兵か。
どう言い訳するべきか。
この時代、既に苦しい戦局だ。 隊が全滅したとも言えそうだし、照会する暇もないだろうから適当に言える。 かといって油断すればボロが出る。 ワイは小細工は苦手なんや。 頭悪いし。
なので悪いなりの扱いをされた事にする。
「……部隊じゃ鼻摘み者でして。
戦局を変える程の重要施設の防衛などと言葉巧みに言われ、死地へ追いやられている最中なのです」
「言い方に癖があるが、一先ず信じよう」
そう言って、刃を納めてくれた。
こちらとしても一先ず安堵する。
「実のところ、私たちも似た境遇だったのでな。 気持ちは分かるつもりだ」
「だった、とは」
「剣1本で何処まで戦えるのか、という実験隊だった。 被害が出ても構わぬ捨て駒という事だ。 つい数刻前までは。
だが、突如と解散。 行く宛を失い浪人だ」
「マジっすか」
思わず口に出てもうた。
そんな事情があったんかいと。
100年後の紅蓮からは詳しく聞いてなかったからな。 剣を振るうニケを未来で見かけない辺り、上手くいかなかったんだろうとは考えていたが。 聞いてみるか。
「それは不採用の烙印を押されて?」
「どうかな。 指揮官と姉さんに簡潔に言われただけなのでな。 ただ大方、そんなところだろう」
「酷い。 都合の良い女ってワケですかい」
「こんなご時世だ、否定する気はない」
「謙虚といいますか、殊勝といいますか」
「とはいえ、このままでは食い扶持に困る。
どこかの部隊や基地に傭兵として置いてくれないかと皆で移動していたところだ。
なに、剣士は正規に要らなくても、弾除けとして欲しがる個人は多いだろうからな」
「それも悲しい話ですね……」
などと相槌を打つが、悲観的でもない。
大鎚や大槍を振り回すフェンサー部隊がいるし、なんなら大剣、大太刀もあるからだ。
戦場で見るのは紅蓮以上にレアだが、活躍しているのを知っている。 紅蓮ら剣士も、正当に評価してくれるに違いない。
「EDFなら、きっと受け入れてくれます」
「お主も言うのか」
あれ。 既に先人がいた系ですか。
「指揮官といい、姉さんといい、全く同じ事を言う。 何の根拠があってか知らんが……第三者までいうのなら少しは信じてみようではないか」
「はぁ……適度にした方が良いかと」
「急に弱腰になるな。
どちらにせよ、行く宛を決めねば始まらん」
まだ叩く門を決めてないのか。
なら、ダメ元で言ってみよう。
「では、ワイの護衛を頼んでも?」
「何故そうなる」
「互いに利益のある話だからです。
ラボの守備隊として置いてくれるかもですし、EDFの天才、プロフェッサーがいるそうですから。
繋がりが生まれるのは良い事じゃないかと」
「ふむ……暫し待て。 皆に相談してみよう」
「ありがとうございます」
やがて帰ってくると、僅かに口角を上げてくる。
上手くいきそうだ。
「引き受ける事になった。 良かったな」
「助かります」
「私は紅蓮。 お主、名はあるか?」
やはりそうか。
ここから100年後、アル中顔になるとは想像出来ないな。 思考転換って怖い。
「ツライです。 皆はそう言います」
「ではツライ。 宜しく頼む」
「こちらこそ」
こうして100年前の戦場を再走する。
けれど未知の光景だ。 この先にナニが待ち受けているのか、何とかなるものなのか、それは分からなかった。
更新常に未定