脳みそ抜かれて女の子になって人類守るんだよ!   作:ハヤモ

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前回のあらすじ
(既に歴史改変が)始まってる!

今回のあらすじ
ストーム1とプロフェッサー

ニケ自体、謎が多い中。
明かされている設定もありますが、どこまで信じて良いものか。
EDFの装備品にも謎は多いですが、時に独自設定を含ませつつ進めねば……


57.追憶

存在しない記憶。

夢だけど夢じゃなかった記憶。

永きに渡り人類に貢献して勇退した英雄は、失われた100年分を強制インストールされて戻ってきた。

 

白い視界が晴れれば、広がる100年前の景色。

隊員とニケ、民間人が地上で生きていた頃。

人類がアークへ撤退する前の出来事。

 

把握すると、今度は自らの記憶に戦慄した。

時間戦術を行使し、幾度と修羅場を抜けては戦果を上げたが、ここまでの地獄(インフェルノ)は未だかつてない。

 

ストーム1、心と股間を痛める。

どう足掻いでも絶望。

 

 

「馬鹿なッ!」

 

 

地に膝をつけ、頭を抱え、天を仰ぐ彼。

幾度とタイムリープを繰り返し、神話の怪物達を始末し、神をも殺し、1つの文明を滅ぼした男が、今や個人の量産型ニケに怯える程落ちぶれていた。

それが誰かは言わずもがな。

 

 

「ツライが男……だと!?」

 

 

それはツライさん。

当時は本人も彼も熱に浮かされるままS◯Xしたが、いざ刻を駆けると黒歴史に早変わり。

 

時間ってね、残酷だね。

だれだよ、時間は皆に平等って言った奴。

時間旅行者にはヒエヒエじゃねえか。

 

 

「しかも俺の体が死んだ後、脳を抜かれてデータストーム化……だと?

くそっ、人類の倫理観は何処まで落ちた?」

 

 

英雄、シットストーム。

脳が生かされ続けた弊害だった。

死後はニケのバトルデータとしても、ツライとピナの信憑性を上げるのにも役立ったが、本人からすれば生理的に受け入れ難い事実である。

 

 

「いや、今はそれどころではない!

戻ってきた以上、行動を起こさねば!」

 

 

嘆きもそこそこに、切り替えるストーム1。

伊達に絶望を乗り越えていない故に。

 

男とヤッた黒歴史は一先ず封印。

先ずやるべき事はと本部に繋ぐ。

記憶にある限りの情報を伝える為に。

 

この辺はNIKKE1と同じだが、時間軸的には此方の方が早い。 戦局は悪いが猶予がある分、幾らかの希望があった。

 

 

「本部、聞こえるか?」

 

『こちら本部。 ストーム1、どうした?』

 

「単刀直入に言う。 未来の情報を伝える」

 

『なに?』

 

 

突然の事だが、特別驚かない本部の司令官。

何故ならタイムリープを知っているから。

先の大戦にて敵が時間戦術をしていたし、それを解き明かしたのはプロフェッサーとストーム1である。

 

 

「詳しく説明する暇はない。

今は何月何日だ? 軌道EV(エレベーター)を攻撃したか?」

 

 

その知識を前提とし、話を始めるストーム1。

目安に軌道EVを挙げた。

このニケ世界、宇宙へと伸びる超巨大EVが建造されているのである。 スペースシャトルを使わずに宇宙に行ける巨大建造物は、宇宙開拓や調査にあたり、人員や物資輸送のコストを削減出来る可能性のある夢の塔である。

建築材や費用、技術的、政治的問題を解決出来たという事か。 EDFも電磁投射砲(レールガン)や、降下翼兵(ウィングダイバー)の光学兵器などを実用化しているものの。

 

そんな夢ある建造物である軌道EVだが。 正史にて狂喜(ラプチャー)に占拠されていた。 開戦時にシャトル発射場や他、宇宙基地が真っ先に破壊された事、けれど軌道EVは破壊されず過剰な防衛がされていた事から、その先にある宇宙ステーション、そこにラプチャークイーンなる親玉の手掛かりがあるのではとされている。

 

その可能性に縋って戦局を覆すべく、EDFは(ストーム)女神(ゴッデス)主軸(メイン)に、大規模な攻撃を仕掛けるのだが失敗に終わるのである。

 

 

『情報部が作戦立案中だ。 問題があるか?』

 

「ああ、作戦は失敗。

ストーム隊は俺を残し全滅。

ゴッデスはアナキオールの妨害で撤退する。

その後、敵防衛線は強化され突破は不可能。

ゴッデスメンバーも戦力が低下する。

レッドフードが侵食を理由に除隊。

リリーバイス少佐は稼働限界。

人類はアークに撤退、地上を放棄する』

 

『……最悪のシナリオだ。

しかし、アナキオールとは何者だ?』

 

 

どうやら時系列的にまだ存在しないらしい。

ストーム1は返答した。

 

 

灰被り姫(シンデレラ)が侵食された姿だ。

研究所が襲撃され、その勢いで感染する」

 

『なんて事だ』

 

 

本部は理解し、無線越しに頭を抱える。

見通しは明るくはない。 望みが絶たれた気分だ。

 

 

『シンデレラといえば、エリシオンの第3ニケ研究所で調整中の童話型(フェアリーテールモデル)だ。 それが寝返るというのか』

 

「そういうことだ。

今、現場はどうなっている? まだ無事か?」

 

『報告は入っていない。

だがシンデレラは稼働に入る直前だ、時間の問題だろう。 童話型は人類の切札に成り得るニケだ。

そんな重要機密を敵に渡す訳にはいかない。

ストーム1は可及的速やかに現地入りを果たし、襲撃に備えろ。

技研主任(プロフェッサー)も稼働の立ち合いで現場にいる筈だ、合流及び保護を行え。

こちらは動ける部隊を探して向かわせる』

 

「了解」

 

 

通信を終えると、直ぐに動くストーム1。

ビークルを要請、ラボへ向かう準備をする。

 

 

「……相棒がいるのか。

行方不明の時期もこれくらいだ。

つまり、そういう事だろう。 急がねば」

 

 

シンデレラの防衛だけじゃない。

相棒プロフェッサーも救わねば。

ツライとピナとも合流しないと。

 

 

「重労働だ。 英雄はツライ」

 

 

色々やらなくっちゃならないのがツライさん。

かつての荒廃世界でもそうだったが。

曹長がドヤしてこないだけマシか。

けれど汚珍棒事件は無かった事にしたい。

 

そう細やかな願いを祈りつつ、輸送機ノーブルが飛来。 投下されたコンテナが開けば、武装装甲車両(グレイプ)が大地に着く。

ストーム1は乗り込むとアクセルを踏み込み、戦火で歪んだ道なき道を征く。 慣れているのか、荒いフルスピードのようで横転する事なく突き進む。

そんな彼の行き先は最前線。 いつだってそうだ。 戦局を左右する、そんな重要な局面ばかりに居合わせる。

ツライ達もそう。 ただの量産型だけど、微力ながら戦い続けている。

そんな悪足掻きが報われるかは分からないが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうもツライです。

研究所(ラボ)に向かう中、隊長格と挨拶する。

紅蓮(ぐれん)の姉らしいが、見聞きするのは初めてや。

 

 

「私は薔花(そうか)。 宜しくね」

 

「はい。 宜しゅう お願いします」

 

 

素直に礼を述べつつ、観察してみた。

好戦的な表情をしがちな紅蓮と比べ、柔らかな表情の薔花。 顔は似てるけど、彼女らの素体は量産型と聞く。

モデルは分からんが。 魔改造されてるからか。

そうでなくても、多く出回らなかった型か。

気にするだけ時間の無駄やろうけど。

 

 

「紅蓮の姉、ですか」

 

「ええ。 妹が気になる?」

 

「それもありますが。

人間時代の記憶が残っているんで?」

 

「少しだけね。

レンは私より曖昧かな、それでも私たちが姉妹だったのは覚えてる」

 

 

レン……紅蓮か。

親しい仲での呼び名。 羨ましいのぅ。

家族が共にいるのもそう。 裏山。

 

 

「ワイも記憶が残っとります。

碌な思い出じゃありませんがね。 その意味、お二方の関係が僅かでも眩しく思えます」

 

「そうなの?」

 

「せやで」

 

 

その辺こそ、NIMPH(ニーフ)仕事しろよと思う。

こんな記憶、ツライさん過ぎる。

メス堕ちや処女失った記憶以上に要らん。

 

ああ、あかん。

嫌な事を思い出してしもうたわ。

 

ほんまに家族に良い思い出が無かった。

両親が誤って中出ししたのが全ての始まりよ?

本当は生まれる予定の無かった忌み子なの。

 

父は働かず酒浸りの暴力野郎で、母は家を出て他の男の所に行ったんよ。

ワイも1人じゃ生きていかれへんと思い、無理矢理ついて行ったけど、男はガキ嫌いなもんで、そらもう殴る蹴るよ。

母は止めもしない。 子より男優先。 転がるボロ雑巾なワイを横目に、野郎の腕に絡んで夜の街に消えおったわ。

 

で、捨てられたワイ。

夜の街や裏の住民になるしかないと、アウトローな組織の門を叩きかけていた矢先、運良くEDF隊員募集の紙を見つけて即入隊。

軍隊生活はツライさんだったけど、衣食住は保証されていたし、多くは無いが給与もあって、苦楽を共にする仲間もできた。

まぁ……これからって時に、ラプチャー侵攻。

ワイは戦闘に巻き込まれて死亡。

ミシリスのマッドサイエンティストに脳みそ抜かれてニケにされ、あれよこれよと戦って生き抜いて、挙句に時を駆けて今になる。

人生、波瀾万丈。 いや、全然かもやけどな。

 

 

「今は今じゃない?」

 

「そうでしょうな。 割り切らんと」

 

 

そうは言うてみるも。

簡単に過去と決別できりゃ苦労せんて。

こんな時、記憶改竄や記憶消去技術に縋りたくなるもんやな。 なんでワイはNIMPHがバグっとるんやろ。 男なのにニケなんやろ。

疑問と理不尽は遠い過去に仕舞い込んだ筈が、また再燃して でしゃばってくる。

複雑怪奇に絡み合う人間関係や組織、法の癖して、好き勝手する奴らは何も罰せられず、ワイだけが苦しんだ気になってくる。

 

ああいや、ワイが最も罪深かったんやろう。

生まれる筈もなく生まれ、我儘言うたから。

生かしてくれた感謝もせず、怨んだから。

軍で少しでも幸せを感じてしもうたから。

身の丈に合わず英雄と共に過ごしたから。

ツケが、罪が、当然の報いとして来たんや。

 

 

「はぁ〜……アホくさ」

 

 

己の存在がゴミクズであれ。

結局は死にたくないと駄々を捏ね。

折角手にしかけた小さな幸福すら奪ったラプチャーと、この世界の運命とやらに中指を突き上げて1発くれてやりたく足掻いて生きる。

 

この戦争は、きっと過去の清算も含む。

クソッタレな人生だったが、悪くなかった。

そう言えるよう、進まねば。

 

 

「少なくとも今は……仲間もおるし」

 

「そうでしょ。 頼ってね?」

 

 

ピナ、ストーム1。

待ってろ。 もう少しで会える筈やから。




自分語りは痛さや余計さもあるかもでしたが……
更新常に未定
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