「もう、いつまで ここで待てば良いの?」
「合流するまで」
銃弾が交差する戦場で、ベレー帽を被った2人のニケが会話する。
黄色を基調とした服にグレネードランチャー装備の子アニスは、明るくも苛立ちを隠さず質問し、黒に赤い流線の服、アサルトライフル持ちの子、ラピは淡々と返答。
視線は交わさず、代わりに来襲してくるラプチャーに弾丸をプレゼントしながらである。
他にも量産型ニケが数体、オリジナルボディを持つ2人を援護する様に黙々と撃っていた。
決まって皆で瓦礫の裏に隠れ、互いにカバーし合いながら銃弾を、時に榴弾を敵陣に撃ち込み続ける。
「死ぬまでじゃないよね?」
「合流するまでよ」
ラピは頑なに現状維持をしようとするから、苛立ちを覚えたアニスは声を荒げて言った。
「さっき見たでしょ!? 墜落するとこ! コンテナも爆発してた! 生き残れる訳ないよ!」
「まだ死亡報告は入ってきていない」
「その報告があるまで ずっと待つの?」
「ランデブーポイントはここ。 ここを離れると、作戦がダメになるかもしれない」
「既にダメだと思うわ!」
作戦遂行に拘るラピ、憤るアニス。
その状況を打開するように、新たな銃撃。
「!!」
機関銃のフルオート音。 横切る弾幕。
他にも小口径小銃の発砲音。
それらは陣地の横から聞こえ始め、ラプチャーの横腹に穴を開けていった。
見やれば、光る流線を纏う新鋭戦闘服を着用する人間が2名。 小口径小銃をバースト射撃、揃って1点に集中砲火。 ラプチャーの装甲をへこませ、やがて抜けて撃破していく。
持ち得る武器でも何とか効果があるように、ラプチャーを計画的に攻撃している。 無謀に、闇雲に撃たないあたりは、他の何も知らない人間、前指揮官とは訳が違っている。
「人間の兵士……EDF? 装備はレジスタンスのモノじゃない」
「まさか、輸送機の? 生き延びたの?」
「───合流します!」
「うわ! ビックリした!」
連続して陣地にニケが転がり込んできた。
合わせて軍服を着た青年も。
アニスとラピは驚きつつ、応対。 戦闘中なので互いに敬礼を省略、状況把握に努める。
『マリアンです! 指揮官及びパイロット共にランデブーポイントに無事合流しました!』
「えっ、本当に? あの墜落で生き残ったの? ニケは良いとして、あなた人間……いや、EDFなら然もありなん……」
青年を見て、遠くのEDF隊員を見て、視線を戻す頃に変な視線を這わすアニス。
EDF隊員は人間であっても、高い場所から落ちても無傷であったり、廃車やガードレールを体当たりで吹き飛ばす変態が多い為、指揮官もその手じゃないかと訝しんだのだ。
が、指揮官……人間は首を傾げた。 EDF隊員ではない様だ。 それにアニスはより怪しむ。
「怪しい。 本当に指揮官なの?」
「"確かに指揮官だ"」
「ちょっと失礼します。 指揮官認識コード、アクセス……分隊04-Fの指揮権、変更完了」
ラピは問答無用に何かの操作をしたらしい。
何事か呟き、アニスは咎める。
「ラピ! こんな正体の分からない人間と、そんな軽率に……!」
「緊急事態よ。 ラプチャーが現れた」
「それは……そうだけど!」
「現時点を以て、貴方は私達の指揮官となります。 前指揮官は命令を下せる状況では無い為、別途の命令権引継ぎプロセスはありません。 一刻を争う状況です。 詳しい説明は戦闘が終わってからにします」
皆で頭を低くしながらも、必要な事を淡々と告げていくラピ。 指揮官も わかった、と手短に頷く。
ラピは物分かりの良い指揮官に感謝しつつ、共に来たニケに視線を移した。
「マリアンといったわね。 所属と兵科は?」
「シルバーガン分隊所属です。 兵科は機関銃射手です」
揺らされる大きな機関銃。
弾幕を張るには良いもので、今のメンバーの武装的にも相性が良い。
アニスは矢継ぎ早に行われる確認動作に溜息を吐きながらも、状況を優先して言葉を挟む。
「兵科もちょうど良いわ。 変態もいる事だし」
『黄色の嬢ちゃん、聞こえてるぞ!』
「げっ」
無線越し、いつの間にかチャンネルが自動設定で共用になっていたらしい。
銃撃音を掻き消すノイズキャンセラーがある事を、時々恨みながらも現実に対処した。
『喋る暇あるなら応戦してくれ!』
「はぁ、仕方ないわね。 指揮官様、どうするの?」
「命令をお待ちしております」
で、あればと。
指揮官もまた、役割を果たすべく命令を出した。
「"前方のラプチャーと交戦、殲滅する"」
「ラジャー」
「よし、やってみよう!」
銃をそれぞれ構え直し、再度撃ち始めた。
新米指揮官は不器用にも指示を出す。 先程実戦を経験したとはいえ、まだまだニケの経験、能力に頼り切りだ。
それでも指揮官が明確にいる事実は、孤立無支援だったニケに勇気を与え、士気が上がる。
「EDF!」
更に銃撃が、弾幕が増した。
それはマリアンが参戦したからではなく、更なる乱入者がきた為だ。
『251も合流だ! 援護してやる!』
ボロボロの装備の人間達と、ニケの混成部隊だ。
同じように横から現れ、ラプチャーを不意打ち。
次々に鉄屑を量産していく仕事振りを見せる。
「変態が増えたーッ!?」
「無線の、レジスタンスの皆さんです!」
「……火力集中!」
嬉しい誤算続き。
戦力が増し、最早複数の分隊による共同作戦。
これで雑魚相手に負ける道理は無かった。
「楽勝だったわね!」
「ラピとアニスです。 急な要請にも応じて頂き、ありがとうございます。 それと、251の皆さんの救援、助かりました」
「良いんだ。 やれる事をやったまでさ。 で、こっちはピナちゃんと、その相棒」
「初めまして。 プロダクト23、ピナと申します。 お会いできて光栄です」
「……ども。 プロダクト12、ツライさんです」
「量産型に個体名。 愛されてますね」
「まぁ特別珍しくないわね。 特にEDFはニケを女の子扱いして"ドックタグ"を付けたがるから」
「アニス」
「……ごめん」
「いえ。 一般的で無いのは承知していますから」
「同じく」
はい、改めてどうもツライさんです。
ワイら251は、シルバーガン分隊のみならず、ムードメーカーな黄色のアニスと、真面目な赤色のラピの分隊も助けました。
ちょっとアニスが図に乗り過ぎて、失礼なコトを言った気がしますが、良くある質問Q&Aなので気にしませんよ。
ただ全ワイ知恵袋で「黙れks」がベストアンサーに選ばれたからな。 黄色はザマァ見て、深夜に点滅する信号機やってろ下さい。
で、そんな奴らをこれ以上助けて良い事あるか分からないから、撤退したい。
一応助け終わったし、もう良くない?
雰囲気的にダメですよね、知ってます。
「ところで、どうして急に指揮官を地上へ? まさか……」
「そう。 前の指揮官様は死んだわ」
「…………」
「対人火器をラプチャーにぶっ放しちゃったの。 "ラプチャー! 人類の敵!"とか何とか言ってね。 小口径の火器がラプチャーに通じる訳ないのに、どうしてあんなことを……」
「守れなかったんですね。 おふたりは」
それこそ珍しい話じゃないかと思われ。
指揮官の初任務死亡率70%以上だ。
地上は厳しい世界なのである。
でもね、そんな理由で死ぬとかアホくさ。 こうした事をアーク市民は知っているのだろうか。 とにかく、もっと教育して欲しい。 知識も指揮能力も怪しい。 それとも口減しかな?
「違うわ。 私達は指揮官様を守る。 何があっても。 この命に代えてもね。 でもね、自分から死のうとする人を守るのは無理」
「…………」
「まぁ、そういう訳ね」
ワイとしては、そんな立場だけの お荷物は戦場に欲しくない。 本当の敵は無能な味方となる危険性すらある。
今回は変な指揮を執られて、全滅する前に自滅してくれて良かったのだろうけどね。
あ、勿論これは口にしないよ。 したら人間だけじゃなくニケにもボコられるから。
「失礼ですが、お名前をお伺いしても宜しいでしょうか」
雑談もそこそこに、ラピが指揮官に尋ねる。
ワイらは口を挟まず周囲を警戒、"上"の話を待つ。
「"イヌヤマ"」
「アニス」
「うん、検索してみるね。 どれどれ……うん?」
「どうしたの?」
変わった名前に感じる。
東洋の名前かな。 でも何処かで聞いた事あるような。
「……この指揮官様、完全な新人見たいよ」
「……は?」
「昨日、士官学校を卒業したんだって」
うん。 それは「は?」だよね。
そんな実戦の無い奴、荷物だと思うよね。
でもコレがアークの現実、その一部だろう。
人類を今更嘆いても仕方ないだろうけど。 というか、こんな問題以前に、人権だの道徳だの差別だの、色々深刻である。
「……取り敢えず、近くの市街地まで移動しましょう。 ここは危険です」
「本当に昨日、任官されましたか?」
「"何か問題でもあるのか?"」
「……作戦中に死亡した指揮官の代わりに来たという、新人の指揮官。 何を考えているのやら」
「はい?」
今度はマリアンが反応。 威圧感マシマシで。
指揮官を守らなきゃ、という想いが溢れているニケだからね、マリアン。 否定されてツライさんなのだ。 いやオイカリさんだ。
やめてくれよ。 折角助けた分隊が空中分解とか。
ゴッデスの様な例は仕方ないにしても。
「いや、何でもない。 とにかく、あなたは今から本分隊の指揮官となります。 現在進めている作戦の引継ぎが必要ですが、宜しいでしょうか」
「"問題ない"」
「作戦について簡単に説明します。 46時間前、この区域を捜索していたニケ1分隊との通信が切断されました。 通信履歴が何も残っておらず、捜索が必要との判断から私達が投入されましたが、指揮官が死亡するという事故がありました」
「問題は。その指揮官だけが作戦区域の座標を知ってたってコト。 指揮官様、座標について何か聞いてない?」
「"聞いてない"」
「そうだよね。 だと思った、うん」
情報共有はしとけよ。
アークは何処まで……いや、もう言うまい。
ワイら下々ニケの声は届かんのや。
そして連鎖的に任務続行不可能、そして解散、251は帰還出来るんですよね?
「私が知っています」
ところがどっこい。
マリアン、知ってるってよ。
「うんうん、そうだよね、うん……うん?」
「作戦前に入力されました。 私が先頭に立ちますから、ついてきて下さい」
「あっ……OK」
「それからあなた、ラピでしたっけ?」
「……?」
「自分の指揮官を守れなかった癖に、新米だの何だの、難癖付けないで下さい。 この方も私達と同じく、人類の為に戦われるのです。 ですので、また今度このような事を口にした時は、私も黙ってはいません」
「おお、なにこれ。 もうギクシャクしてる?」
してる。 でも予測出来たコトだったね。
でねアニス。 なんで嬉しそうな声なの?
もしかしてS属性なの君?
「……そうね。 私の失言だった。 謝る」
「謝るのなら私にではなく、指揮官へ お願いします」
「申し訳ありません」
「"私の事は気にするな。 大丈夫だ"」
「ええ、怒らないの? はは、今回の指揮官様は変わってるね」
ナニ。 ヒートアップして欲しかったの?
オラオラは見たくないから、これで良いよ。
アニスは指揮官を少し見習って分別して。 ムードメーカーは部隊にとって嬉しい存在だと思うけどね。
それからアニスの発言的に、アークの指揮官は想像通りの屑が多そうである。
やはりヒトカス……滅ぶべし。
「では移動しましょう」
「EDFの皆はどうするの?」
「ついていく。 この辺でニケが行方不明になる原因を突き止めたい。 このまま逃げ帰ってたまるか」
「わぉ勇ましい男達。 変態って言ってごめん!」
そしてアニスは明るく謝った。
そして野郎共は喜んだ。 単純な奴は羨ましい。
書くの難しい……
更新未定