アークでの改変
今回のあらすじ
前回に引き続き更なる改善、努力
おつむの関係上、内政話や裏事情、軍部の仕組みを書くと誤りを生む恐れが大いにありますが、裏方の努力を見せるべく引き続き……
アークへの移民、地上部隊を前哨基地に回収する作業も落ち着き、EDFが水面下含む活動基盤を手に入れた後も、様々な試みは続く。
現状、未来の情報はあまり得ておらず、それも戦局を左右する程の情報ではない。
何も対策せずに、リングを無計画に乱用するのは好ましくなく、ラプチャーに気付かれる恐れは勿論、何より調整もせず再使用を繰り返すのは危険だ。
ツライとピナに聞けば、1回目と2回目で刻の座標は微妙に異なっている。
その誤差は数年以内だが、次も同じ保証はなく、全く違う時代で目覚める可能性があるのだ。
それはそれで役立つだろうが、ストーム1の様な実績の無い一般人を、上層部が何処まで受け入れるか不明。
2回目同様、ストーム1もタイムリープするか、実力を見せれば信憑性は上がるだろうが、また成功する保証は無い。
昔の様に余裕が無く、同じ時間キッカリに行動する理由が無いなら、一か八かの挑戦は避けたい。
だからこそ慌てず、リングを調整する機会を探りつつも、他の事もやるべきだ。
マリアンの侵食経路も気になる。
アークの強固な防護壁を通り越して、ニケが侵食を受けるとは考え難く、やはり内通者がいると仮定したくなる。
が、それが人間なのかは疑わしい。
インプットされた通りに動く忠実な機械であろうラプチャー相手に、意思疎通が出来るとは考え難い。
無理に交渉団を組織、試みても、先の大戦時同様、殺害されるのがオチだ。
まともに話せるとすればヘレティックか。
それか資料に無い存在か。
侵食の意図は何か。
どういった交渉があったのか。
内側から崩壊させるのが目的か。
毒を巣に運ばせてコロニー全体を駆除する殺虫剤のように、それは有用か。
いや、そういう話ではない。
そもそも外部に出てない、最初からアークにいたニケが侵食を受けたのが謎なのだ。
そんなニケを外部に出す理由はなんだ。
まるで生贄を差し出した様ではないか。
交渉自体あったのかも不明。
侵食コードを抽出して、それをニケに打ち込んだ者がいるのか?
いや、検閲に掛からずソレは可能か?
可能にするなら、それらを行使する権力者とコネがあるか、権力者そのものが取り込んだか。
「アークの管理AI……エニック?
いや、再稼働したEDFのAIマリスが?」
つい譫言を呟いてしまう。
いや、そうだとして理由は?
アークへの侵攻を防ぐ手立てか?
憶測だけなら、幾らでもできる。
下手な妄想は身を滅ぼす。
そもそも100年後の出来事だ。
優先すべき謎の究明は、もっと別にある。
ひとまず、改修した兵器を前線に送った。
エリシオンによる改修が殆どだが、既存技術により信頼性は高い。
現場での共食い整備やコスト管理の産物であるニコイチ機体のニクスワゴンより酷い、という事は無い。
先の大戦より要望が強かった、戦車への機銃搭載、発煙弾発射装置を強化、エブラ粒子を煙に混ぜる方式を取り入れた。
敵の視認性と電子機能を妨害する、スモークとチャフの合わせ技の様なものだ。
また、これを手投げ式にした派生品も開発。
現場での戦術の幅は広がった。
問題は、これらは機械の体であるニケに対しても効果が出てしまうことにある。
最悪自爆する恐れがあるのだ。
高濃度を喰らえば、スリープしてしまう。
そうした事態を避ける為、エブラ濃度や散布範囲の調整は必要だが、現場の判断で意見も別れるのが予想され、未だ安定した結論は出ていない。
陸戦ビークル全体に不満が高かった不整地での走破性向上の為、新たなショックアブソーバーや履帯の開発、交換も行われた。
コンバットフレームやプロテウスは転倒する事は滅多に無いといって過言では無い高度な歩行システム……バランサを使用しているが、二足歩行の振動や着地の衝撃がパイロットに響いて負担となっており、同時にその際の硬直時間も戦闘に悪影響だとして少なくない苦情が寄せられたのだ。
居住性は兎も角、戦闘効率の面は確かなので、企業共々改善に取り組む次第だ。
傑作戦車、バリアスTZ4Sも例外ではない。
試作R型より発展、攻守攻防、速度がより完璧な戦闘車両となりながら、快適な走破性を実現したと開発陣は息巻いていたのだが……それも不満だと現場が言うなら、そうなのだから仕方ない。
居住性の改善に関しては、テトラからも提案があった他、業務拡大、新規参入のチャンスを逃せないミシリスからは光学兵器搭載や電子装備の打診があった。
EDFに協力的なのは有難いのだが、企業同士は分野違えどライバルで、隙あらば相手分野であろうと蹴落とす勢いでコンペが始まってしまう。
思わぬ所で争いを生んでしまったが、これに関しては意外と悪い気はしない。
先の大戦でもそうだった。
あの時の参謀は、科学者を集める要望に答えず、敢えて政財界の有権者に掛け合った。
経済を地球共々回し、世界を動かしたのだ。
そうして流れた金が回りに回り、EDFにも良い潤滑剤となり、兵力の大幅な増員と武器装備開発の加速を促進、戦争中でありながら経済発展した都市部が形成される程に人類は強くなった。
当時は開発や改変に囚われ、焦っていたばかりに、そうした考え、戦い方は思い付かなかった。
餅は餅屋というが、それぞれの戦場があり、1つでも欠けてはならず、そして協力しなければならないと酷く痛感した。
今回も手を加えてくれたのだろう。
これでより戦力が上がるなら構わない。
どちらにせよ、技術の更なる発展の為に現状に満足せず、次を目指す姿勢は悪い事ではない。
そうして人類は勝てる時に勝ち、この世界の支配者となったのだ。
今としては、ラプチャーに抜かれたが、巻き返す為に、こうして足掻いている。
シンデレラだが、一応の調整を終えた。
彼女も間も無く前哨基地に配備される。
口数は少なく、相変わらず継戦能力が高いとはいえないが、空軍が壊滅した今、代替戦力として大きな助けとなる事は間違いない。
管理、所属には大分揉めたが。
アーク全体、中央政府からすれば、彼女は地上のロストテクノロジー、機密の塊だ。
戦力そのものの価値も凄まじい。
彼女を懐刀にしたい勢力はEDFだけではない。
ミシリスは整備を買って出る裏で下劣な笑みを浮かべているのは想像に難しくなく、それを察したエリシオンとテトラは大反対、EDFにこれ以上増長されたくない中央政府は手に入れようと実力行使手前まで来た。
そうして散々会議が紛糾し、拗れた結果。
僻地の前哨基地、ストーム1麾下となる。
それが1番安全だ、というのが上の意見だ。
ストーム1は前のループでも中央政府に恐れられていた事から、彼の下に入れる事で手を出させないようにした。
もし手付けたら……あの異能生存体の事だ。
テンペストの直撃より恐ろしい目に遭わす。
そう、暗に脅す事で ようやっと落ち着いた。
逆に落ち着いたのに驚きだが……。
刀といえば、近接特化部隊だ。
総勢10人、今日まで落伍する事なく生き延び、再び元の鞘……中尉の指揮下に戻った。
その部隊からはEDF製の刀剣を要請され、取り敢えずフェンサーの電刃刀を支給。
ニケ用のは在庫がない故の処置だ。
元々量産品では無いので仕方ない。
旧データを漁り、再開発しなければな。
それから忘れてはならないのが量産型ニケだ。
自我が薄い者がなるニケとされ、オリジナルボディより性能が劣る印象がある彼女達だが、大切な戦力に違いなく、蔑ろにする理由はない。
だが、ニケそのものの構造には謎が多く、この理解もナシでは製造どころか改良も整備も不可能だ。
まさか分解する訳にもいかず、これを知る3大企業に尋ねるも、企業秘密だの最高機密だのと拒否されてしまう。
敵対的な政府が反対するなら分かるが、企業まで首を横に振るとは。
余程隠蔽したいのか。 EDFまでニケを製造し始めては堪らないのか。
その前に倫理観が欠如している事から、そうした事には気が進まない。
いや、これは戦争だ。 平時の倫理観は役に立たない。 心を殺さねば……。
話が逸れた。
戦力を上げる、という意味では何も身体の改造に拘る必要はない。
普通の兵士に見立てて考えれば良く、彼女らに提供する武器装備の質を上げれば良い。
実際、3大企業はEDFの協力の元、そうしてくれている。 銃火器のスペック向上、訓練の見直しなどだ。
ただし、AIマリスによる仮想現実訓練の導入は、度が過ぎれば逆効果だ。
故に監視する必要はあると進言しているがね。
ここで驚いたのは、ニケへの待遇が悪いミシリスまで行動していた事だ。
その行為を自社喧伝に使用している事から、ツライとピナの活躍が絡んでいるのは容易に想像できる。
良くも悪くも企業という事だ。 人類の為とはいえ利益もなしに動きはしない。 当然か。 逆に2大企業が寛容と見るべきだ。
まぁ良い。 状況は良い方向へ向かっている。
先の大戦でも、参謀はこうした現実的問題を考慮、折り込んでいた。
今回も上手くいってくれるなら言う事はない。
他にも細かい変更……レストア、マイナーチェンジを挙げればキリがない。
こうした努力は報われると信じる。
次の改変は間を置くよう相棒らに伝えた。
それまでに、出来る事をするつもりだ。
「脳だけになっても、働かされるのはゾッとする話ではあるがな……」
倫理観が崩れていく世界にて、足掻く。
この先の未来は、まだ誰にも分からない。
更新未定