脳みそ抜かれて女の子になって人類守るんだよ!   作:ハヤモ

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前回のあらすじ
前哨基地が既に発展

今回のあらすじ
再びストーム1視点

ニヒリスターとの戦闘。
描写が難しい……


87.火竜は嵐に堕とされる。

 

 

───どれ程の研鑽を積めば

 

この領域に辿り着けるのでしょうか。

 

まるで何十年、何百年と

 

戦ってきたかのような…………。

 

EDF6 戦略情報部 少佐より

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

狂喜(ラプチャー)が来て、女神(ニケ)が生まれて。

そして"裏切り者"も生まれた。

 

女王(クイーン)が誇る精鋭。 先鋒のヘレティック。

彼女らの原点はニケにある。 人智を超えた製造過程を2度も踏んだ先の成れ果て。 故に裏切り者、敗北者とも呼ばれる人類の敵。 闇堕ち女神たち。

ただし、その能力はニケを遥かに上回る。 ニケの体から姿を変えたり、空を飛んだり。

脅威的な戦闘力に再生力は永遠の命とさえ錯覚させてくる。 本物を超える紛い物。 狂喜と混ざり合った"()()"が、何故そうした力を得られるのかは長らく解明されてこなかった。

 

だが永遠など、無い。

ストーム1とプロフェッサーが時間旅行の終着点に辿り着き、円環竜(ウロボロス)の輪を解いたように、彼は再び竜を相手取る。

互いにかつての名を捨てようと、運命からは逃れられない。 否。 必然だ。

 

 

「なんなんだよ……ッ!」

 

 

彼と戦い始めた彼女、ニヒリスターを蝕み始める不快感。 苛つきじゃない。 あるのは未知への恐怖心。

 

火竜は吠える。

縦横無尽に飛び回る人形に唸る。

 

アレを認めてはならない。

つまるところ理解してはならない。

 

今までEDFの地上部隊(ベース)やエデンのインヘルトとした虫ケラに小細工をされてきたが、理解の範疇を超えた事はなかった。

 

フッと火を吹き、終わる。

今回もそうなる筈だった。 なのに。

 

 

(目の前のは、なんだ!?)

 

 

コンバットフレーム、エイレン。

EDFの強化外骨格。 そのカスタム機。 それは分かる。 過去に交戦した事もある。

けれど有人機故の弊害か、こんなに素早い動きは出来なかった。 空中を飛び回るなんて芸当も困難だった。 装甲も己の炎に耐えられるだけの耐熱性はなく、狙わずとも周辺の地面を燃やせば、勝手に溶けて爆発した。 目の前のが進化したものにしても、動きが"()()()()()"違和感が付き纏う。

 

炎を躱され続け、逆に攻撃を受け続ける。

炎の隙間を縫いながら飛び上がってきては、接近されて拡散榴弾(エクスプロージョン)。 その爆煙を突き破った拳に殴られる。 顔面を蹴り飛ばされ、その勢いで離脱、こちらの反撃から逃れる。 その過程でもレーザーの弾幕をやめない。 つまるところ背を見せない。 有象無象の虫ケラが、こんな真似をする事は無かった。

意味が分からない。 じわじわと甚振られる感覚と未知の動き。 その異端を直ぐに排除出来ない己の未熟さ。 つまるところ向こうが格上。 怒りより先に恐怖が勝る。 同時にある可能性すら脳裏をよぎる。

 

 

(コイツ、まさかあの…………!?)

 

 

伝説の兵士(ストーム1)

脳の奥で錆びついていた太古の記憶が蘇る。

 

生身の兵士でありながら、単騎でラプチャーの大群を屠り、鉄屑の山をひたすらに築いていった死神。 女王最大の弊害にして、なりたかった本当の憧れ。 或いは()()()()()()()()

だが、いつの話だ。 もうくたばった筈だ。 仮にも人間である奴が、今日この日まで現役でいる筈がない。 いたと分かれば、女王が放置するものか。 どこに居ようと必ず探し出す。 後は説得するか殺すだろう。 そして剥ぎ取ってでも()()にする。

 

だが、現実は依然として偏在する。

己の葛藤が。 動揺が。 錯覚させ、幻想を抱かせ、思考を偏らせる。 今は相手を潰すかではなく、どう生き残るかに変わりつつあった。 目の前の、薪を幾ら焚べても消してしまう()()()()()から逃れねば。 けれど、それは己の行動に反するものでもある。

 

ひたすらに強さを求めたのに。

女王の寝首をかく事を考えたのに。

上へ上へと昇っている途中なのに。

こんなところで、こんな事で?

ここまでの努力が。 己の価値が。

存在が、オレの全てを否定するってのか?

 

 

(ふざけんじゃねえ!!)

 

 

意識してはならない。 考えてはならない。

そうさせる存在は消炭にしなければならない。

 

彼女は不快感を吐き出すように火炎ブレスを放った。 地平線に火の壁が並ぶ。 大地が火の海に沈む。 空を赤く照らし、いよいよエデンの虫ケラが逃げていく。

なのに。 ここまでしても奴の目から放たれる妖光は消えない。 陽炎越しにずっと見つめてくる。 罪を憐れむように。 咎めるように。 大人が子供を叱っているように。 そして断罪するように撃ち続けてくる。

 

融解させる側が、逆に溶かされていく矛盾。

武装が潰され。 翼を折られ。 燃えたぎる闘志と心が折られていく。

 

何の冗談か。 何故こんな事が出来る?

人類が抱いてきたものが侵食してくる。

 

疑問は恐怖に変わる。 浮かぶ言葉は謝罪。

けれどプライドが、寸前の命乞いを飲み込んだ。

 

そんな彼女に出来るのは精一杯の威嚇のみ。

使える竜の大口を開けて、大きく息を吸う。

 

 

「なんなんだよ、お前ーーーッ!!」

 

 

叫ぶ。 消えろとばかりに。

瞬間、彼が担ぐ大砲が先に閃光を放った。

描かれた太線は、高速で立体起動をしていた機体からとは思えぬほどの精度で、寸分の狂いなく口の中へ入った。

 

刹那。

 

 

「───ッ!!」

 

 

ドゴォンッ!!!

 

 

口の中で大爆発。

爆風が顎を外し、口内炎が口やレーザーに開けられた体中の穴から吹き出す。

竜の体を構成していた赤い体が内側より弾け飛び、火の玉となって辺り一面に飛び散った。

 

その中でもニケの体となり、堕ちていく彼女。

プライドもコアエネルギーも消耗し、己が散々燃やしてきた大地に叩きつけられる。

体は大きく損傷。 辛うじて顔の識別ができるも、腕と脚は変な方向に圧し曲がり、最低限生きていくだけの力のみ残留する。

 

 

「───ッ…………!!」

 

 

赤色の目が地と天を斜めに映す中。

それを覆ってくる機械の脚。 突き付けられる光線銃。 己と違い傷ひとつない。 憤慨。 恐怖。 己の敗北。 認められない苦痛が支配する。

 

 

「火遊びを続けるからだ」

 

「!!」

 

 

ソレは突然に喋った。

男の、若くはないが老いてもない逞しい声。

 

 

「といっても、止めやしないだろ。 だからこそトドメを刺すべきなのだろうな。 自己修復(ナノマシン)を阻害するという、アンチェインドを撃ち込んで。 裏切り者の末路。 落とし前。 指揮官(ヨハン)ならそうするか」

 

「…………!」

 

 

やはり。 オレはこんな所で終わるのか。

逃げるだけの自己修復は間に合わない。

聞くことしか出来ない彼女に、彼は語る。

 

 

「だが俺は俺だ。 そして裏切る奴は、また裏切るという」

 

「…………?」

 

 

銃口が視界から退けられる。

 

 

「提案がある。 仲間になれ

 

「───ッ」

 

 

恐怖が増した。

 

 

 

ここは台風の目に過ぎない。

嵐は止んじゃいない。

 

 

 

 

 

*ニヒリスターが選べる道は、ひとつだ。

 

 

 

 




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