おしゃべり
今回のあらすじ
遅れてやってくる。
展開を巻きで。
ツライさんが痛い目に。
行けば死ぬぞ。
───分かってる。
なら良い。 逝くか。
EDF6 殿軍 死神と軍曹の会話より
突如として現れた特殊個体、
ゴリラみたいな形状で2足歩行。 或いは拳を地面に付けるナックルウォーク。 既存の4脚とは明らかに当て嵌まらない。 挙句に人の言葉を発しおる。 妙な違和感があるが、何の冗談か。
「コイツがトーカティブですか。 明らかに異端ですし、強そうな見た目してますけど!」
「情報としては此方の方ね。 まさか、こちらを嵌める知性があるなんて聞いていなかったけれど」
「指揮官は捕まってるし、ラピは動かないね。 死んで無いだろうけど、最悪はここに置いていく事になっちゃうかも」
面々に狼狽える。 ワイもソリャソーナノ。
200年くらい地上を生きてきての初体験。
まだまだ未知で溢れとる素晴らしきこの世界。
こんな調子で人類救う世界線を目指すワケ?
道のり険しくてツライさんッ!
「指揮官様を返して!」
アニスが砲口を向けて言い、ワイらも銃口を向ける。 が、トーカティブは指揮官を盾にすることで安全を得た。
「構うな! 撃て!」
「できるワケないでしょ!」
「そうです! 諦めたら試合終了です!」
指揮官は言うが、出来んとゴネる。
個人差あるが、ナノマシンの影響でトリガーが引けないんやて。 そうでなくても本能が拒絶しおる。 ワイとか。
それを奴は知っとるのか。 少なくともラプチャーに見られない言動で煽りよる。
つまり、ザマァと嘲笑った。
「『フハハハ! 良いザマだな人間もどき!』」
ぬかしおる。
言って良いのは言い返される覚悟のある奴だけやって全ワイが言うてた。
「けっ。 ワイらが人間もどきなら、お前はゴリラもどき! それも異種◯で生まれた雑種やなぁ!?」
「『……なんだと?』」
するとナニか琴線に触れたんか、明らかに不機嫌な声色になった。 ザマァ見さらせ!
その隙ありとばかりに、ワードレスの2人が感覚交換と遮断の波動を放つ。 刹那、奴の手から指揮官が滑り落ちた。
足を捻ったのか、地面に倒れて悶えてる。
「指揮官!」
「『なんだ? 感覚を遮断したのか』」
「そう。 本当はアナタを捕まえたいのだけれど、今は諦めてあげる」
「えへへ。 目も見えないでしょ?」
相手は慌てる様子がないが、此方は急ぎや。
悠長におしゃべりを楽しんどる場合ちゃう。
背後からはラプチャーの群れが津波となって寄って来とるんや。 さっさと逃げたいの。
そんな訳なんで、ワイは撃ちまくるわ。 煽り足りない分も含めてな!
「この距離で喰らうフルオートはどうやぁ!」
奴の体表面に無数の火花が散る。 効いてるのか知らんが、先にやったモン勝ち。
「ピナ!」
「分かってる!」
ワイの言葉に弾かれたピナ。 スラスターを噴かし、複雑な軌道をとりつつ指揮官に接近。 トーカティブの腕払いを避けつつ、すれ違いザマに拾い上げて、そのまま後方へ退却していく。
「ナイス! これで容赦無くやれるわね!」
「倍返しといきましょうか!」
「『……音からして
「きゃあっ!?」「うっ!」
「危ねッ!?」
薙ぎ払いは続き、ワイはブースターで上に逃れるも、ワードレスの2人と、アニスとネオンが吹き飛ばされてしもうた。
せやけど小破で済んどる。 気を失っとるが。 叩きつけられてグチャらなくて良かった。 いや良くない状況なんで悲鳴上げとくが。
「おいおい、ワイ残して
「『感覚を遮断したなら、同じ場所に立っていない事だ。 余計な音もな』」
此方へ視線を送ってくる奴。
ワードレスの能力が今ので解けたらしい。
儚い天下ですら無かったなオイ。
「敵にアドバイスとか随分と余裕やないの、こんのゴリラもどきがぁ!」
「『当然だ。 数でも力でも、俺が上。 あとはお前だけ。少しは戦えるようだが、時間の問題だ。 精々踊って貰おう。 ハハハ!』」
「舐め腐りおって!」
そのまま構わず撃ちまくる。
奴の汚ねぇ面を吹き飛ばす気でやるも、表面に火花が散るばかり。 いや、一応は抜けている様子はある。 見難いが弾痕が見えた。 が、すぐ塞がりおった。 せこくね?
「自己修復とか、汚ねぇのは面だけにせぇ!」
「『同じ顔が多い奴に言われたくないな、人間もどき』」
勝負にならないと吐き捨てられツライさん。
一方、背後からはバキュンバキュンとビームの群れ撃ちが周囲に着弾。 土が爆ぜる。 ヤバい。
「『ここからの相手はアイツらだ。 俺は人間を追うとする。 機嫌が直ったら、あの量産型の首を土産にしてやろう。 その時、お前は首すら無いかも知れんがな。 ハハハ!』」
「なっ、駄目に決まっとるやろがい!」
阻止せんと背を向けた奴に撃ちまくる。 が、脅威的な跳躍からのダッシュで去っていく。
ワイもスラスターで追いかけようと思うたが、足元に転がるアニスたちを放置出来ん。
「くそぅ!」
ワイ、反転して匍匐姿勢。 二脚を立て、基地からの津波に撃ちまくる。 けど止まらん。 止まるワケがない。
「ラピ! アニス! ネオン! ミハラにユニ! さっさと起きてワイを助けろ!?」
1人でどうこうできる数やない。 せやからと味方を見捨てたら気分が悪い。
「来るな! 来るなって! 量産型やからって、碌でも無い人生やからって、死にたくない!」
ビームの精度が増す。
いよいよどうにもならない。
「後は任せた! ピナ、ストーム1……ッ!」
刹那、視界が閃光に包まれた。
咄嗟に痛覚センサーを切る。 手足の感覚も消える。 あとに感じるのは体の浮遊感。 口から生暖かい液体が吐き出る不快感。
アカン。 オワタ。
……最悪、タイムリープで生き返れる。
それまでは少し眠るだけ。
そう思わんと、闇に狂っちまうわ。
聞こえるビーム発射音。
けど音が微妙に違う。 発射間隔も短い。
「おねんねするには、まだ早いんじゃないか?」
懐かしい、野郎の声がする。
つい、目を開ければ、そこには。
「ストーム1、あんた、なのか……?」
大きなブースターのある背中。
コンバットフレームが、そこに立っていた。
「100年ぶりの おしゃべりだ。 寝られちゃ困る」
優しく力強い声。
ああ。 この時代でも、また会えた。
口の中が赤い泡で溢れてく。 目頭が熱くなる。
興奮のままに震え、ワイは強がった。
「……へ、へへ。 早かったやん。 もう少し遅く来てくれても良かったんやで?」
いつだってヒーローはワイやない。 アンタや。
もはや嫉妬もない。 間違いようのない真理に、戦場に巻き起こる理不尽な嵐を前に、どうして僻んでいられようか。
更新常に未定
火竜とは云々は次回話せれば……