おじさん、ポケモンの事なら何でもするんですよね?   作:石転法師

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お前が何でもやるのかよ


なんでも屋さんとナンジャモさん(6)

「クワガノン、10まんボル……!」

「待て」

 言いかけたヒメカの口を素早く塞ぐ。

 

「……おいかぜで充電された様子がない。タイカイデンはふうりょくでんきじゃないなら十中八九ちくでんだ」

「なるほど、罠ですか……!」

 その場合、電気技を受けたらダメージどころか回復してしまう。虫と電気のクワガノンでは有効打がかなり減る。

 あるいは打たれない前提でかちきもあり得るが、ナンジャモはクワガノンを見てからタイカイデンを投げている。俺みたいなひねくれ者相手ならそんな博打もアリだろう。しかし相手はヒメカだ。

「チッ、変態知識量のウノ氏はやっぱり引っ掛からないかー」

「お前も大概変態みてえな格好だろうが。そこはマニアとか優しく言え!」

「私を挟んで口喧嘩しないでくださーい!」

 これは私のジムバトルですとヒメカが声を張り上げる。その通りなので俺も前のめりの体を真っ直ぐに戻した。

「ドオーはまだ出したくない。突っ込むぞ」

「はい、かみくだく!」

 電気が封じられてもクワガノンは虫界の猛者、クワガタだ。その大顎を活かした攻撃力は捨てたものじゃない。高速で空を舞うタイカイデンに、こちらも羽を震わせて突撃する。

「エアスラッシュ連打連打ぁ!」

 ナンジャモもセオリーに従って虫に飛行技を放つが、電気付きで抜群ではないから十分打ち合える。

 風の刃の連撃、一発目は躱し、二発目がヒット。こちらはクワガノンの顎がタイカイデンに会心の当たり!

「ムムッ。オヤジだけじゃなく、運も味方に付けちゃうか!」

「誰がオヤジだ! お前だって三十路のババアになったらそんな痛々しいキャラ出来ねえだろ!」

「やめなさぁあああい!」

 すいません。やめます。

 

 気を取り直して、耐久力ならクワガノンが上、もう一発なら耐えられる。一方でタイカイデンはもうヘロヘロと宙に浮いているだけだ。仕留めるべく、もう一度クワガノンが相手に迫る!

 しかし幸運の女神は意外と公平だったか、こんどはあちらにすり寄った。エアスラッシュ三発目、ダメージだけなら耐えられる。だがこの技にはとても有名な追加効果があるもので、試行回数が増えれば当然その時が来るのだ。

『クワッ⁉︎』

 空気圧に押されてクワガノンの動きが止まる。そう、この技は、たまに怯むのだ。

「よっしゃ、トドメじゃーい!」

 その隙が見逃されるはずもなく、追撃の風刃が吹き荒れる。クワガノン、ダウン。まずはナンジャモのリードとなった。

 

「なら、ニャローテだ」

 ヒメカの2体目は秘密兵器として隠していたこいつ、草猫ポケモンのニャローテ。秘密だからって最後まで残す悠長な真似はしていられない。

「でんこうせっかだよ!」

「ぐぬ、持っておったかー!」

 ダウン寸前の相手を仕留めるなら先制攻撃に限る。ニャローテはまばたきする間もない速さで飛び掛かり、タイカイデンも地に落ちた。これで数は互角だ。

 

「ルクシオ、威嚇しちゃれ!」

「ニャロちゃん、とんぼがえり! そしてドーちゃん!」

 ナンジャモの次鋒、こちらも猫科のルクシオ。威嚇でこちらの弱体を計るも、ニャローテには殴られつつ逃げられる。

 そして出てくるのは満を持して、地面タイプのドオー。おそらくハッコウジム攻略では多くの人が頼ったのではないだろうか。

 ルクシオにはクワガノンの張った糸が絡み付いているが、それでもまだ向こうの方が速いだろう。それだけ速いではなく、ドオーが遅いのだ。

 相性で不利、そんなのは分かりきっている。それを覆すのがタイプ統一を使うジムリーダーの腕の見せ所。

 つまりドオーを出してもまだまだ楽勝とは言い切れない。

「ルクシオ、こおりのキバ!」

「じならし!」

 案の定入っていた、電気の補完には鉄板中の鉄板、氷タイプの技。ドオーも痛手を負うが、二度のすばやさダウンには敵わずルクシオが先に落ちる。

 相手の追い風も止んだ。ここからはねばねばネットが残っているこちらが素早さで有利!

 

「こンのぉ……それならこれでいっちゃる!」

「……は?」

 ナンジャモ、3体目。それはまさかのムウマージ。しかも出してそのまま攻撃態勢に入っている。

 持っているのは当然知っているが、それは最後に出す切り札のはずだ。

「おい、電気テラスはどうした。お前は電気のジムリーダーだろ」

「いいじゃん別に! 電気使いなのにオクタン出すジムリーダーもヨソにはいたし!」

 余所は余所だ。ピカチュウとコリンクとパチリス族しかいなかったシンオウ地方とパルデアを一緒にしないでほしい。

 しかし、ムウマージじゃなかったらおそらく次はハラバリーだ。水タイプの技も使えるが、特性がちょすいのドオーには本当に有効打がなくて無駄死にとなる。ジムリーダーらしい戦いという制限が無いなら、俺だってそうするだろう。

 

「大体さあ、狙いがバレバレなんだよ! さっきのニャローテ、へんげんじざいでしょ。アレでボクの電気化ムウマージにでんこうせっかでゴースト技スカしてドヤる気だったんだろ!」

「ぐ……」

「おじさん、図星なんだ……」

 流石に俺が嫌な奴だと熟知しているナンジャモには見透かされていたようだ。まあ、秘密兵器なんてそんなものである。本当に主力なら秘密になんてしない。

 

「ドオー下げ、ナカヌチャン」

「まだドーちゃんはやられちゃ困りますね。じゃあヌーちゃん、はたきおとす!」

「でんじは! かーらーのー、たたりめ!」

 ナカヌチャンも一発は悪タイプで弱点を突けたが、麻痺で動きの鈍った所に威力が倍増するゴーストの技。これを受けては流石にキツい。テラスタル無しとはいえナンジャモの切り札の前にナカヌチャンも屈する。

 

「まだまだ! ニャロちゃん、タネばくだん!」

 死に出し、ニャローテ。今出せる最大火力、タイプ一致の攻撃!

 ムウマージも落ち、残り2体。しかしこちらもニャローテの他は、消耗したドオーに、電気は苦手なフワライド。あとはどう詰めるか。

 

「マルマイン、またまたでんじは!」

 4体目はマルマイン。おそらくねばねばネット込みでもまだ向こうが速い。

「受けたくない。フワライドに素で交代」

「はい、フワちゃん!」

 ニャローテが麻痺するのは負け筋となり得るのでとんぼがえりは使わない。代わりに出すのは気球ポケモンのフワライド。麻痺は食らってしまうが、ある程度は折り込み済みだ。

「麻痺したら、エレキボール!」

 相手より素早い程威力が増す、最速ランキングトップクラスのマルマインにはうってつけの技!

 発光するマルマインが、落雷を思わせる不規則な軌道の剛速球となってフワライドに突撃する。

 

「……だが、耐える!」

 フワライドの中に仕込んでいたアイテムが効力を発揮する。

「ソクノの実じゃん! グヌヌ、露骨にメタを張りおってぇ~……!」

 フワライドはゴーストと飛行タイプ。電気のジムに挑んで電気弱点を放置しておくものか。この木の実は電気のダメージを半減させるのだ。

「だけど、一発耐えて何ができる⁉」

「あるよなあ、とっておきが」

『マ⁉』

 わざわざ突撃してくれるなんて好都合。フワライドの腕がマルマインの丸い体に絡みつく。そしてその体が今にも破裂しそうなほどパンパンに膨らんでいく。

 そう、この状態でやる事なんて一つしかない。

 

「じばく‼」

「ナヌーッ⁉」

 死なば諸共!

 爆弾ポケモンマルマインのお株を奪う自爆攻撃。本来勝てない不利な相手、それを倒せるなら一対一の交換で上等だ。フワライド、マルマイン、両方ダウン。ナンジャモはいよいよラストの5体目だ。

 

「クックック……流石はボクが見込んだウノ氏とヒメカ氏。だけど本番はここからなんだよ!」

「本来のジムバトルならもう勝ってるところだぞー。いいからさっさとラストを出しやがれ」

「うるしゃー! ここからが一番盛り上がる所じゃろがい! 行けぇ、ハラバリー!」

 最後となったのはナンジャモが一番可愛がっていると噂のハラバリー。とぼけた見た目のカエルだが、ともすれば伝説級のポケモンすら返り討ちにするポテンシャルを秘めている、決して油断ならない相手だ。

 

「……ドオーだな」

「はい! ツラいだろうけど頑張って、じならし!」

 既にダメージは受けているがセオリー通りドオー。ここまで使っていなかったテラスタルは絶対に切ってくるだろう。それでもでんきにかえるの特性で強化された電気技さえ受けなければ──。

 

「行くぜぃ! ハラバリー、テラスタル!」

 やはり来た!

 ハラバリーの体が光り輝く結晶体と化し、その頭上に現れたのは電気タイプを示す丸い、電球……電球、じゃなくて──。

 

 風船?

 

「いや、お前電気のジムリーダーだろがい!!」

「電気タイプのポケモンだからモーマンタイじゃろがい!!」

「だからケンカしないのッ!!」

 

 テラスタル、タイプ飛行。

 そしてこちらの残りは地面タイプと草タイプ。

 そんな掟破りの相手が、俺達の前に最後の難関として立ちはだかるのだった。




毎回こんなバトルしてたら作者が持ちません
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