おじさん、ポケモンの事なら何でもするんですよね? 作:石転法師
確かに、ジムリーダーはそのタイプに合わせたテラスタルじゃなきゃいけないなんてルールはない。ただ、タイプ違いのポケモンがそうなのだから、その前までのポケモンも当然そのテラスタルという思い込みを突かれた。
どうせいつもはムウマージなんだからいいじゃんと仕込んでいた隠し球が、いつもと違うこの時にまさしく最終秘密兵器として襲いかかっていた。
「ハラバリー、テラバーストじゃー!」
しっかり覚えていた、テラスタルタイプに変化する特殊攻撃!
ドオーの地面攻撃は飛行テラスタルの力で透かされ、お返しに結晶の輝きが竜巻となってドオーを襲う。
「うう、ドーちゃんが……」
先に氷の牙を受けて消耗していたドオーもここでリタイア。
残るは既にバレている秘密兵器のニャローテ。しかも飛行に弱い草タイプ。嫌でもこれを出す以外の手はない。
「こうなりゃ後は有るもの全部出し切るだけだ。頑張りな」
「……がんばります! ニャロちゃんもがんばって!」
ラスト同士、一対一。泣いても笑ってもここで決着だ。ついでに俺の土下座も掛かっている。だからやるべき事をやらねばならない。
「負けられませんから、今こそ使いますよ! テラスタル!」
「なぬっ⁉︎ 持ってたのかー!」
「一昨日貰ったばかりのホヤホヤです!」
そう、貰っていた。テラスタルにはテラスタルという事で申請を出していたのだ。何しろあんな問題を起こしたばかりのヒメカだから難航するかと思ったが、エリアゼロ助太刀のおかげか意外にもあっさりと。
「だけど、ハラバリーはそんなんじゃ落ちないぞ!」
そう、問題はここからだ。ハラバリーは既に指示を受けて攻撃態勢に入っている。ニャローテはへんげんじざいでタイプを変えるから、本来草には効きにくい電気技でも十分打つ価値はある。だから勝敗は、ナンジャモがどの技を予想したかで決まるのだ。
ニャローテの体も結晶に包まれて姿を変える。攻撃の姿勢を取る。俺自身のバトルではないが、俺もすっかり手に汗握っていた。
『テラバースト!』
ビンゴ!
選んだのは双方同じ、テラスタルタイプに変わる技。そしてニャローテの頭上に輝くごつごつとした結晶は──。
「い、いぃいいいい~⁉」
いわ、岩のテラスタル。
今度はナンジャモが目を見張る番だ。
「アヴァンギャルドおじさんの逆の手です!」
長いのでコルサと呼称するが、彼の持つ木に擬態するポケモン、ウソッキーは本当に草タイプにテラスタルする。一見ネタっぽいが、そもそもあの擬態は岩の弱点を草タイプの振りで打たせない合理的なものなのだ。
ならば、逆も然りである。
光り輝くポケモン同士がぶつかり合う。草から岩へ、本来の飛行タイプとの関係からは逆転する相性へ。効果抜群の一撃がハラバリーの腹部へクリーンヒットした。
決着の時、最後まで立っていたのは勿論──。
両者だった。
「……耐えられました、ね」
飛行タイプを半減したニャローテはもちろん、ハラバリーも敵ながら流石である。弱点の大技だろうが一発は耐えてみせたのだ。
「耐えたが、しかし……」
「……うん、ボクの負けだね」
ニャローテとハラバリー、言うまでもなく遅いのは後者。ましてや大ダメージを受けてフラフラの状態だ。ならば次の攻撃で先に倒れるのはハラバリーだ。
自分のポケモンが無駄に殴られて倒れる場面を見たがるトレーナーなどいない。ナンジャモは潔くボールにハラバリーを収めた。
「対戦、ありがとうございました!」
「ぐやじぃ~~~! 勝てると思ったのに!」
だるだるの袖を振り回して地団駄を踏む。ジムリーダーとしてはあるまじき、だがポケモントレーナーとしては当然の感想か。
「怪しんで電気技を打たれていたら危なかった。叫んどいて良かったな」
「でもおじさん、結構ガチで怒ってましたよね」
「そうだよ、本当は勝ったと思ってたんだろタヌキオヤジめ!」
「……今後使うと思って仕込んでたんだがな。まさか電気ジムであんな暴挙に出るとは思わなかったが」
これがプライベートだからいいが、誰かに撮影されていたら大炎上必至だっただろう。まあカメラが無いからこそこうなったのだが。
「……いいや、まだだもん。まだ終わっちゃいないもん」
「は?」
「そうだもん、まだ終わってないもん。ボクにはまだ6匹目が残ってるじゃもん!」
「いや、さっき負けを認めたよな?」
勝ったのにゴネてバッジを渡さないなんて、そんなジョウト地方のめんどくさい女共みたいな。
「ヒメカ氏には負けたよ。でもウノ氏にはまだ負けてないもん!」
「まだも何も戦ってないだろ」
「ゴチャゴチャうるせー! いいからウノ氏もポケモン出せし! 電気ポケモン同士で真っ向勝負じゃー!」
最早ヤケクソでナンジャモが投げたのは、芝刈り機姿のロトム。しかも明らかにチャンピオンクラスの高レベルな、マジもマジな奴だ。
「……おじさん、女の子に恥かかせちゃダメだよ。バトルしてあげましょ?」
「もうとっくに大恥だろ。俺が負けたらバッジも無しなのか?」
「それはあげる。負けたらドゲザ! そこは絶対に譲らんぞコンニャロー!」
奴のロトムは既に芝じゃなく俺の命を刈り取ろうと身構えている。このままぐずって雷でも打たれたら死ぬのでやるしかない。
「電気タイプなら何でも良いんだな?」
「構わーん……と言いたいところだけど、電子レンジロトムとか、ロコツに相性有利なのは無しでオネガイします」
そういう指定をされてしまうとジバコイルは出しにくい。そもそも草タイプ付きロトムだって電気タイプに二重耐性持ちでズルいわけだが、他には何かとボックスを覗けば丁度良いのが居たではないか。
「ナカイくーん、初陣だぞ」
電気タイプと、草タイプには有利でも不利でもないタイプが付いているポケモン。これならナンジャモも文句は無いだろう。
「……ハ、ハリテヤマ?」
『ナカイ、カイナ……』
「ハリテヤマのリージョンフォームだ!」
電気・格闘タイプ、テツノカイナ。先日パルデアの大穴で捕獲した、本当の本当に秘密にしておかなきゃいけない奴だ。
「いやいやそんなリージョン聞いたことないし! バグ技かなんか使ってない⁉」
「いい歳して使うかそんなもん。ナカイくん、れいとうパンチ」
「チクショー! やっぱりそういう技持ってやがったーッ!」
ナンジャモとロトムの断末魔が大海原へと飲み込まれていった。
次回でやっといろいろ一段落しそうです