おじさん、ポケモンの事なら何でもするんですよね?   作:石転法師

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トドロクツキレイドなんて作者の私が一番出て欲しいです


俺の人生にはスパイスなんていらない(4)

「トドロクツキね……なるほど、まさに轟く月ってわけか」

 逃げ出した先の砂浜にて、俺達はペパーが保存していた雑誌の1ページを囲っていた。月間オーカルチャーに発見報告が載っていた、ボーマンダに似た未知のポケモン。知らなければ単なるフォルムチェンジと思ったかもしれないが、それよりも類似性のある心当たりがあったのだ。

「オレ達が大穴で戦った未来のポケモンとは逆、大昔のボーマンダ……」

 持っているなら隠しても無意味だろうと、ペパーはあれが未来のポケモンだとあっさり白状した。

 俺も持っているテツノカイナはエレキフィールドで強くなる。あのトドロクツキは日差しが強くなった途端強化された。確証は無いが昔のポケモンはそういうもんだと思うしかない。

「でも、タイムトラベルなんてそんな簡単にできちゃう? 私は映画でしか見たことないですよ」

「伝説のポケモンには時渡りや時空を操る奴もいるな。それにタイムマシン自体は20年以上前に開発されてるんだ」

 作ったのはポケモン預かりボックスの設計者でもあるソネザキ・マサキ氏だ。その時のはせいぜい数年前しか遡れなかったが、それでもまさに『かがくのちからってすげー!』としか言いようがない。

 

「で、その大昔のが何でこんな所に居るわけ?」

 そう、ボタンがうんざりした顔で吐き捨てるように言ったそれが問題である。

「分からん。が、ポケモンってのは居なかった所にふっと急に湧いてくる事がままある。変に考え込むより何かそういうイベントだったと思うぐらいで良いのかもしれない」

「イベントって……あーそっか、おじさんは古い世代の人間だから、それに合わせて出てきてくれたのか……ヴぇっ!」

 ヒメカの額に空手チョップ。俺は大昔の化石オヤジではない。

「出てきちまったもんはもうしょうがないよな。おっちゃんはどうしてもアイツを捕まえたいんだろ?」

「悪いね。怪獣マニアとしてはあんなの見たらもう欲しくてしょうがない」

 手持ちでだいたい察せるかもしれないが、俺は大昔からドラゴンとか恐竜とか猛獣みたいな生き物が大好きなのだ。無論、そういう見た目ではない子も大事に思っているが。

「あんな狂暴そうなヤツなら、オレの欲しい辛いスパイスも持ってるはず。やるしかねえな!」

 

「んじゃあ攻略の話に移るが……ドラゴンなのは間違いなさそうだが、もう一つは飛行タイプでいいのか?」

「飛んでるんだからそうじゃないんですか?」

「ところがどう見ても空飛んでるのに、飛行タイプもふゆう特性も持ってない奴が結構いるんだな」

 例えばウルガモスのような羽を持っている虫ポケモンに結構多い。逆にどう見ても浮いてないだろって突っ込まれ続けた結果、浮くのを止めてしまったゲンガーみたいなのも居たりするが。

「未来のポケモンはどれも今のとはちょっとタイプが違ってたぜ。だからトドロクツキもそうかもな」

「まあどっちしろテラスタルタイプもドラゴンだ。とりあえずそこだけ警戒しといて、ダメならもう一回逃げる。それで行くか」

「じゃあ私は変わらずデカヌチャンで良いですよね?」

「良いが、晴れだから一応炎技は覚悟しておけ。勘だけどたぶん来ないと思うけどな」

 そして俺自身は預かりボックスを呼び出していた。ギャラドスでも良さそうだが、おそらく最善手ではない。4人居るのだからしっかり連携すべきだ。

「ボタン君、イーブイオタクならグレイシアも持ってるのかね」

「持ってるぞ、怪獣マニア。そっちが良いならニンフィアと交代するけど」

「宜しい。ならば作戦は決まりだ」

 こういう時に壁役をやるのは年長者の役割。覚悟を決め直した俺達は武者震いを抑え、再び地下で待ち構えるトドロクツキと対峙するのだった。

 

 

『ゴガァアアアアアアア‼』

 またもや来た不愉快な侵入者にトドロクツキが吼える。それと同時に地上から日差しが降り注ぐ。さっきと同じ、ならばこの手が通じる!

「ラン、ゆきげしきだ!」

『こぉん!』

 ギャラドスの代わりに選んだのはアローラのキュウコン。日差しを打ち消す雪の天候、これなら奴がパワーアップする事はない。

 それを見たトドロクツキは邪魔者を排除しようと当然のように俺をターゲットにした。一旦地上に降りた奴が飛び上がり、そして急降下!

 これは飛行タイプの攻撃技、アクロバット。ならば想定の範囲内だ!

「オーロラベール展開!」

 天気が雪の時だけ使える、物理・特殊の両ダメージを半減する結界だ。さらに氷タイプは雪だと防御も上がる。あまり打たれ強いとは言えないキュウコンだが、これならまだまだ耐えられる!

 

「グレイシア、ひやみず」

「ヌーちゃん、いわくだき!」

 ボタンとヒメカもそれぞれトドロクツキの弱体化を図る。冷水をかけられたトドロクツキは攻撃が鈍り、さらにデカヌチャンのハンマーが竜の鱗にヒビを入れる。そこに来るのはもちろん強力な攻撃だ。

「パルシェン、つららばりだ!」

 その体から生成された鋭い氷柱が5本、トドロクツキに向けて射出される。特性によって5連打が確定する、ペパーのパルシェンの決め技! ドラゴンのトドロクツキには間違いなく効いたはずだ。

『オオォォォ……アアアアア‼』

 どうやら逆鱗に触れてしまったらしい。俺達を滅さんとトドロクツキが暴れまわる。しかしキュウコンとデカヌチャンはフェアリー、グレイシアとパルシェンも雪でオーロラベールの張られた状態での氷タイプ。ドラゴン技のダメージは最小限に抑えられている。

 俺のキュウコンとボタンのグレイシアも攻撃に転じてふぶきをお見舞いし、デカヌチャンも遊びでは済まないじゃれつきでトドロクツキを着実に弱らせていく。いくら巨大化してタフでも半分は削れたはずだ。

「いける! これなら楽勝ちゃんだぜ!」

「ペパー君、そういうのをフラグって言うんだ……」

 

『カァアアッ‼』

「ほらな!」

 この手の相手がそう簡単に済むはずがない。心配した通り、トドロクツキが再び咆哮して日差しが差し込んだ。さらに気合で弱体化した自分に喝を入れ直し、さらにさらに奴は上空で満月を描くように旋回する。攻撃と素早さを上げる竜の舞、やはり持っていたのだ。

 

「ゆきげしき!」

 とにかくまずは天気を変え直す。しかし雪にしてベールの再展開には二手必要だ。果たしてその間耐えられるか。

「ひやみず!」

「こごえるかぜ!」

 ボタンとペパーは強くなった部分を下げる技の選択。しかしその技が届くより先に、奴が空から地面に体を叩き付けて地震を発生させる!

 天気もまだ変わりきってない、非常に不味い──。

 

「みんな、頑張って耐えて!」

 いや、ヒメカだけは防御のエールを選択していた。そのおかげで、なんとか、なんとかギリギリの所で全員が踏み止まったのだ。

「……助かった! 良い判断だ!」

「あ、ありがとうございますっ!」

 ヒメカは、拳をぎゅっと握りしめた。

 天気が雪に戻った事で再びオーロラベールを張り、他の3人も回復と攻撃のエールを送って立て直す。こちらが追い込まれるならば相手もそれだけ必死なのだ。ならばここは、一気に決める時だ!

「全員、テラスタル!」

「よっしゃあ、待ってたぜ!」

 俺達のポケモンも一気に光り輝く姿となった。氷のポケモン達は雪の結晶を、鋼のデカヌチャンは斧を掲げて咆哮する。

『ふぶき!』

「つららばり!」

 ドラゴンの弱点である氷の大技を立て続けに喰らい、トドロクツキは堪らず地に足を付けた。そこを逃さず最後の一発を持っていくのは、足手纏い扱いされていたこいつの──。

 

「デカハンマー!」

 デカヌチャンだけが使える最強の鋼技!

 必殺の一撃を脳天に受けたトドロクツキは、ついに頭のテラスタル結晶を四散させて倒れ込んだ。

「よっしゃ、貰ったァ!」

 こういう時の為に奮発して買っておいたゴージャスボール!

 知恵を尽くして全力の真っ向勝負を挑んだ俺を認めてくれたか、トドロクツキはすんなりとボールに収まってくれたのだった。

 

「やったやったあ! やりましたね、おじさん!」

「おう、お前もよく頑張ったぞ」

「ううう……おじさんから素直に誉められる日がくるなんて。これで私も一人前ですね」

「んー、八分の五人前くらいかな」

「もー、なんで刻むんですかぁ!」

 俺達はいつになく上機嫌で軽口を叩き合った。このやり取りの間もずっと笑っていたと言えばだいたい分かるだろう。

「ランもお疲れさん。後でたっぷりご褒美やるからな」

『ふふ、私はいつも通り油揚げで良いですからね』

 キュウコンは背を向けて9本の尻尾を俺に絡ませた。これは好物ちょうだいのサインだ。いつも通り油揚げといなり寿司を用意するとしよう。

「盛り上がってるとこ悪いけど、こっち集めるの手伝って」

 大人だけではしゃいでいたところに、子供を代表してボタンが呼び掛ける。俺は激レアポケモンを得た喜びで他がどうでも良くなっていたが、確かに問題はペパーの方だ。大量のテラスピースや経験アメはボタンがホクホク顔で回収しているが、果たしてスパイスは有ったのか。

 

「うっひょー! 山ちゃんだぜー!」

 どうやら全く要らない心配だったようだ。この一戦だけで出たとは信じられない山盛りのスパイスを抱えたペパーの姿がそこに在った。

「よかったよかった。このお仕事もこれで一件落着っと!」

「違うだろ。ペパー君はこれからこのスパイスで試作しないといけないんだから」

「あ、確かに。じゃあ晩ご飯は特製スパイス料理ですね。美味しいのが出来ると良いなあ」

 一回は集めたのだからこの材料の活かし方も知っているのだろうが、もし失敗だったらまた集め直しになるかもしれない。流石にもう歩き回るのは勘弁だ。

「ま、秘伝スパイスを使った飯が食えるんなら延長戦になっても良いかもな」

「厚かましい大人達……」

 若者に飯を食わせてもらう気満々の俺達にボタンが呆れ返っている。しかし彼女ももっと成長すれば分かるだろう。大人とはズルくて厚かましくて都合の良い生き物なのだと。

 

「ハハハ、そんじゃあ早速宿舎に帰って……あ、おっちゃん達は入れないか?」

「んー……言ってみれば俺達は業者だから、理由を申請すれば大丈夫だと思うぞ。それにまあ、俺もちょっとアカデミーには用事があるんでな」

「あるんですか? あ、そっか。オモダカさんに報告しないといけないかー」

 今回もタイムパラドックスの影響で現れたポケモンを捕まえてしまった件、ポケモンリーグの会長に伝えておくのは保身として確かにその通りだろう。

「おーし、それならアカデミーに帰ろうぜ。ボタンも、今日はありがとな。本当に助かったよ」

「おう。うちも手伝ったんだからちゃんと美味いの作るんだぞ。優勝したらお祝いしてあげるから」

 その日の晩はペパーが苦心の末に作り上げたスペシャルメニューをいただく事になった。その料理名はまだ秘密とさせていただくが、庶民的にして奥深く、これならコンテストでもかなりの結果を出せると盛り上がる一品だったと伝えておく。

 

 ここまで来たら見届けないわけにもいかないと、当然のように俺とヒメカにボタンも加わって観戦の約束をし、そしてついに料理コンテストの本番が訪れたのであった。




おじさんの中の人がブルーベリー学園に旅立つので次回ちょっと間が空くかもしれません
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